看護管理 18巻7号 (2008年7月)

特集 緩和ケアに求められる役割と質保証

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施設から在宅へというサービス提供の場の拡大,がん対策基本法の施行など,緩和ケアをめぐる環境が大きく変わろうとしている。早期からの緩和ケア,在宅や外来での緩和ケアなど,緩和ケアサービスが必要とされる時期や場所が多様化するなかで,その質を保証するための仕組みや人材育成,専門家の活用も重要な課題である。

本特集では,そうした流れも視野に入れながら,緩和ケアの本質と今後期待される役割,施設のあり方などについて,問題提起とともに整理する。緩和ケアについて看護管理者が何を知り,どのような意思決定をしていかなければならないのかを探りたい。

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緩和ケアとの出会いと現在

河 緩和ケアサービスは制度の変化や社会の要請によってさまざまに変わってきた面があります。今日は,そのなかで私たちが大事にしていかなければいけないところ,あるいはこれからつくり出していかなければいけないところを課題としてあげ,将来の緩和ケアサービスの展望を見出していきたいと思います。

 緩和ケアが初めて緩和ケア病棟入院料として診療報酬に位置づけられたのが1990年ですが,私はその前年にできた救世軍清瀬病院の緩和ケア病棟(最初はホスピス)で非常勤看護師として働いたのが緩和ケアに関わった最初です。その後東京大学でターミナルケア看護学の講師を務め,10年ほど教育・研究の場にいました。いまは緩和ケアサポートグループという活動組織を立ち上げ,それをNPO法人にするべく努力しているところです。

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はじめに

 わが国の死亡の第1位を占める悪性新生物(がん)の死亡数は年々増加の一途をたどっている。また,がん罹患数も死亡数とともに増加し続けている1)

 2005(平成17)年にがんで死亡した人は32万5941例(男性19万6603人,女性12万9338人)であり,2001年に新たに診断されたがん(罹患全国推計値)は56万8781例(男性32万5213例,女性24万3568例)2)である。

 これらがんの死亡数と罹患数の増加の主な要因は人口の高齢化であるといわれている。人口の高齢化の影響を除いた年齢調整率でみた場合で,全がんの死亡は,男性で1980年代後半まで増加し,1990年代後半から減少し,女性では,1960年代後半から減少している。罹患についても,男性で1980年代後半まで増加し,1990年代後半から横ばいであり,女性でも1980年代後半まで増加し,1990年代後半から横ばいの状態が続いている。

 がんの粗死亡率,粗罹患率はともに増加していることからも,国家的ながん対策を推し進めていく必要性がある。

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 2007(平成19)年4月にがん対策基本法が施行され,がん診療連携拠点病院(以下,拠点病院)を核とした国を挙げてのがん医療の均てん化および質向上への取り組みが始まっている。

 がん対策推進基本計画の目標に,がんによる死亡者の減少と並んで,「全てのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の維持向上」という人々の生活の視点が挙げられた1)。また拠点病院の要件には,緩和ケア体制や地域医療の連携体制,相談支援機能などが明確に示され,四国がんセンター(以下,当院)でもがん相談支援・情報センターが設置され,がん看護専門看護師が配属されている。高度な実践能力を有する専門看護師が質の高いケアを提供することは当然の使命であるが,拠点病院全体としての質を高め,地域がん医療の質向上に貢献していくためには,システム構築などの組織的な取り組みが重要である。

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はじめに

 現在,がん対策基本法およびがん対策推進基本計画の施行に伴い,わが国のがん医療の全国的な均てん化が求められている。特に緩和ケアに関しては,がん対策基本法でもその充実の必要性が指摘され,がん診療連携拠点病院の指定要件の1つとして重要な役割を有している。

 本稿では,2007(平成19)年度厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「がん患者のQOLを向上させることを目的とした支持療法等のあり方に関する研究」班(主任研究者:宮下光令)で実施した,2007年9月時点における全国のがん診療連携拠点病院(以下,拠点病院)の緩和ケアの提供体制に関する調査をもとに,拠点病院の緩和ケアに関する役割と課題について,看護師に求められるもの,看護管理者が理解しておくべき事項を中心に考察する。

 なお,拠点病院の指定要件は2008(平成20)年4月に改正された(表1)。本調査が行なわれた時点で指定されていた拠点病院は288施設であり(みなし拠点病院である国立がんセンター中央病院・東病院を含む),2008年5月時点では353施設と増加している。本調査は改正前に行なわれたものであることに注意していただきたいが,本稿の目的は今後の拠点病院の緩和ケアのあり方を論じるものであるから,原則として指定要件は2008年4月に改正されたものにもとづき論じることにする。なお,現在すでに指定されている拠点病院では,2009(平成21)年度末までに新しい要件を満たしたうえで更新される必要があり,そのためには,2009年10月末までに要件を満たしたうえで,都道府県から厚生労働省に推薦される必要がある。

連載 看護部長から新人ナースへ,新人ナースから看護部長へ・7

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神奈川県西部に位置する足柄上病院は,丹沢や箱根の山々,大磯丘陵などに囲まれた自然豊かな足柄平野にあり,地域の中核的総合病院として急性期医療を担い,地域医療連携を推進している。

教育研修は,県立病院共通のキャリア開発・支援システムに基づき,自院の強みを活かした体制をとり,特に,高齢患者が多いことから,内科病棟をモデル病棟とし,高齢者の急性期医療を充実させるため,高齢者看護認定看護師育成に力を入れている。

連載 今に生きるあのヒトコト・7

“一粒の麦となれ” 江口 恵子
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 今年も多くの新人看護師を迎えることができた。採用前の看護技術研修を皮切りに,集合教育と各部署での現場研修,夜勤の研修と続き,緊張のなか輝き出した彼女たちの瞳に安堵感を覚える。新人が落ち着くと,各部署の看護師長・副看護師長との今年度の目標面接が始まり,新たな決意を聞き頼もしく,うれしく感じる。

 思い起こせば30余年前,看護師になって5年目の夏,私は母を胃がんで亡くした。母の希望に沿って在宅で看取った2か月の間の,母のさまざまな言動に,これまでの自分がいかに患者さんの気持ちをわかっていなかったかを,思い知らされた。

連載 スクラブナース4年生・38

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 死にゆく患者をケアしているときは,たとえDNR(Do Not Resuscitate)であっても,結構気が張っているものである。そんな緊張状態のなかで,さらなる精神的負担となるのが,あと1,2日で亡くなろうというときに突然現れる“遠い”家族である。“遠い”とは必ずしも血縁関係ではなく,ほとんどお見舞いに来ず,ベッドサイドにもいなかったという意味である。“近い”家族は患者の長い経過をずっとそばで見ている。例えば最近,造血幹細胞移植後のGVHD(移植片対宿主病)で亡くなった患者の場合では,泊り込みで看病に当たってくれた家族には,負担どころかナースは助けられることのほうが多かった。

 何しろ,GVHDの消化管症状はひっきりなしの生臭い血便の下痢で,患者は意識のあるうちは,体力が減退してフラフラになりながらも,最後まで直腸チューブの挿入を拒み,ポータブルトイレを使おうとするので,家族の協力なしでは転倒予防や陰部皮膚の保全も困難なのだ。皮膚症状が強いと,陰部どころか全身の表皮がポロポロとはがれ落ち,仕舞いに皮膚は水に浸したスポンジのようになることもある。肝症状も含め,GVHDはかなりの疼痛を伴うので,患者にとってベッドサイドの家族は何よりの心の支えだと思う。モルヒネの持続点滴などによる疼痛コントロールはもちろん,ステロイド,免疫抑制剤,免疫グロブリン,ATG,化学療法などの懸命の治療をするが,経過を長引かせるだけで,悪くなっていくのが誰の目にも明らかなのがまたつらい。

連載 医療安全リーダーシップ・7

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 医療機関におけるさまざまな状況のなかでも,緊急対応が求められる状況への速やかな対応と医療安全の確保が重要な課題であることは周知のとおりである。本稿では緊急対応が求められる状況における医療安全確保のために必要な,システムの整備と緊急対応チーム,コミュニケーションの改善方法,およびそこで求められるリーダーシップについて述べる。

連載 医者ときどき看護師・7

2つの山の間で 平林 大輔
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 最近,病棟のナースと話をしていると,よく患者の状態や治療方針について質問をされる。「この患者さんは昨晩ずっと腹痛を訴えていたけれど,原因はいったい何?」とか,「酸素飽和度を測定してほしいというオーダーを追加したのは,どういう理由から?」など,非常に当を得た質問が次々と飛んでくる。

 こちらとしても,病態や治療方針を共有できるのはありがたいことであるし,なにより誰かに説明することは自分の勉強にもなるので,そんなときは嬉々として質問に答えている。ただ,それが自分でもこれから調べようと思っていたレアな疾患に関する質問だったり,指導医に治療方針の確認を取る前にされた質問だったりすると,言葉はしどろもどろで背中は汗びっしょりになっていたりするのだけれど。

連載 はじめてのMaIN――『ナースのための管理指標MaIN』活用レシピ・7

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 今回も引き続き,MaINによる自己評価を病棟師長に試行してもらい,その感想や効果について聞きました。MaINを実践することによって,これまでとは異なる視点から仕事を捉えられるようになったことや,点数には表われてこない効果があったことなどの興味深い発見があったので,ご紹介したいと思います。

連載 仕事に燃える現場づくりのヒント・4

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インセンティブとは何か

 まず,インセンティブ(incentive)とは何かということから考えましょう。インセンティブとは,広義には“人や組織に特定の行動を促す,外部から与える刺激”のことをいいます。つまり「動機づけ」「誘因」です。動機づけ,というとモティベーション(motivation)という言葉がありますが,こちらは本人が自発的に行なう動機づけです。「100点とりたい」「やせたい」「管理職をやってみたい」など,“たい”がつく概念,といえばわかりやすいでしょう。

 インセンティブの例としては,プロ野球選手やサッカー選手が,その活躍に応じて契約金を更新することがあげられます。企業の営業マンの場合では,給与とは別に目標をクリアした場合の褒賞があります。おもしろいところでは,大きな失敗に対して褒賞金を出す企業もあります。もちろん無駄な失敗ではなく,よく考えて企画し,リスクを意識しながらトライしたけれども,成果につながらず失敗に終わった場合です。「失敗額3000万円」と書いた表彰状と金10万円也を,スタッフの笑いと拍手のなかで社長から授与されていました。頭をかきながら何度もペコペコ下げ,笑顔で「また頑張ります」と話していた若手社員がとても印象的でした。

連載 やじうま宮子の看護管理な日々――看護師長でいこう!・28

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巡視の時の短いおしゃべり

 看護師長になって以降,私の楽しみのひとつは夜間の管理当直での巡視です。当直は16時から朝の9時までで,スタッフの夜勤と同じ。会議や業務の関係で早めに出ることはありますが,日勤の後で当直に入る形ではないので,恵まれた条件だと感謝しています。

 どんな時でも,「お疲れさまです。管理当直です」と明る~い声で挨拶しながら病棟に入っていく。これが自分で決めたお約束です。夕食前後の病棟は,多くの部署で,まだ日勤者が残り,雑然としています。途方に暮れるほど残務が残った日勤者や,これからの長い夜を思ってか暗い表情の夜勤者……。時には声をかけるのもはばかられるほど,殺伐とした部署もあります。

連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・36

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 私は昼間は外出が多いので,毎夜,午前5時か6時まで仕事をしている。午前5時以前に寝るなどというのは週に1回あるかないかだ。日の出の時刻が遅い冬はべつとして,3月頃になると,世の中が明るくなり,新聞配達のバイクの音やクルマの音が響きだしてから寝るということになる。

 私の家(といっても借家)はスウェーデン・ハウスというコテージ風の2階建てで,屋根が急斜面になっている。そして,2階の書斎の天井の斜面にやや大きめの天窓が2つ並んで開けてある。雲の愛好家である私にとっては,願ってもない窓だ。昼間は,ふと顔を上げると,流れゆく積雲が見えたり,羊雲の広がりが見えたりする。時には,真赤な夕焼け雲に驚くこともある。目を休め,心を穏やかにするうえで,天窓があるのは絶好の条件だ。

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はじめに

 厚生労働省は,2006(平成18)年に「がん対策基本法」を制定し,“がん患者の療養生活の質の向上”を最優先課題としている。このような状況の下,さまざまな場面でホスピス,緩和ケアの提供ができるエキスパートナースの育成が強く求められている。こうした社会の要求に先駆け,2002(平成14)年度診療報酬改定において,緩和ケアチームによる診察と,これに準じた緩和ケアについて,緩和ケア基本診療料が加算となった。さらに,在宅での看取りを進める体制づくり,在宅ホスピスケアの拡充も重要視されてきている。しかし,認定看護師の研修を希望する訪問看護ステーションに勤務する看護師などにとって,長期の研修に参加することは現実的には困難である。また,病院施設においても,長期の休職は難しく,研修を受けるために退職せざるを得ない場合さえある。

 これらの状況をふまえ,働きながら受講できるよう,神奈川県看護協会(以下,当協会)は,2004(平成16)年4月に,認定看護師教育としては初めての仕事を続けながら受講できる1年間のホスピスケア認定看護師教育課程を開設した。

 3年が経過した2007(平成19)年,受講者の研修修了直後のアンケート結果からカリキュラムの評価を行なった。1年間の教育課程は初めての試みであり,このような認定看護師教育の評価はこれまでにないため,認定看護師教育のひとつのあり方として報告する。

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院内横断的プロジェクトの幕開け

 東京女子医科大学病院は38診療科をかかえ,ベッド数1423床,医師800余名,看護師数も約1200名にのぼる。特定機能病院の再認定を受け,約3300名の全職員がこれまでの歴史を踏まえ,新たなるチーム医療の実践に着手している。

 全国的に叫ばれている医療現場スタッフの疲弊や医療制度の変化などを背景にした医療人の努力,自己犠牲はかなりなものであるが,一方で社会は医療ミスや医療事故の防止を常に追い求めている。当院においても医療安全の強化としてのリスクマネジメント推進,過去の医療記録不備の指摘にもとづく医療記録記載の標準化やガイドライン作成に,巨大組織ゆえのジレンマに苦悩しながら積極的に取り組んできた経緯がある。

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はじめに

 近年,バリアフリーやユニバーサルデザイン(共有化)の一環として,視覚障害者に対して点字の併記が行なわれるようになってきた。身近な例としては,缶入り酒類への「おさけ」といった表記がある(図1)。

 臨床においては,1998(平成10)年,厚生省(現厚生労働省)から各地方医務(支)局長宛に,「視覚障害者等に対する服薬指導」と題し,視覚障害者への服薬指導について,薬袋の記載事項を点字で表示するなどの,個々の障害者の状況に応じた適切な配慮を行なうよう努めることが通知された(平成10年8月19日医政第289号厚生省保健医療局国立病院部政策医療課長)。これを受けて,点字薬袋を作成している医療施設がみられ始めているが,「個々の障害者の状況に応じた適切な配慮」という点では課題も多い。

 とりわけ臨床現場においては,視覚障害者が外来受診し,入院,退院する過程に,説明同意文書をはじめとする多くの医療用文書が存在する。そのため,ケアプロセスの各場面で,個々の状況に応じて,点字による適切な情報を提供することができれば,視覚障害者の医療参加に向けた自己決定への支援につながる。

 これをふまえ,神戸大学医学部附属病院看護部では,2007(平成19)年より,科学研究費補助金(萌芽研究)「自動点訳プログラムを利用した,視覚障害者向け点字文書提供システム構築の試み」のサポートを受け,点字文書の簡便な作成による視覚障害者への個別医療対応(テイラーメイド)を目指し,看護部とゲノム医療実践講座との共同研究として両部門で取り組んでいる。

 そこで,ここでは点字翻訳(以下,点訳)システム開発の経緯と実際について述べる。

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 2008(平成20)年5月17日,医療安全全国共同行動推進会議による「医療安全全国共同行動“いのちをまもるパートナーズ”キャンペーンキックオフフォーラム」(議長/高久史麿医療の質・安全学会理事長)が東京・大手町の経団連ホールで開催された。

 モデルとなっているのは2004(平成16)年12月から2006(平成18)年6月の間,アメリカで実施された“10万人の命を救え”キャンペーン〈通称100Kキャンペーン)。全米では,約5500ある病院のうち3100の病院(全米急性期病床数の78%)が参加したこの取り組みにより,入院中の死亡者数を大幅に減らすことに成功したという。日本でのこの共同行動の実施期間は2年間を予定。医療の質・安全学会,日本病院団体協議会,日本医師会,日本看護協会,日本臨床工学技士会が呼びかけ団体となり,業界の壁を越えた取り組みとして,有害事象の減少を目標に行なわれる。

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 今年の日本看護管理学会年次大会は東京で開催いたします。メインテーマは「評価」としました。看護管理のプロセスには評価をする場面が頻繁にあり,一方,看護管理は評価を受ける立場にもおかれます。医療が疲弊しているといわれるなかで,看護管理が医療において,そして社会に対して果たす役割はますます重くなっているように思います。

 評価の相は非常に多様なので,2日間の催しでカバーできるものではありませんが,できるだけ多彩なプログラムを準備して,皆様をお待ちしています。

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 九州地区では初めての日本災害看護学会年次大会を大分で開催いたします。地震,洪水などの自然災害の発生の可能性のない所は存在しないといっても過言ではない状況になっています。また,大規模交通災害や,新型インフルエンザ,化学物質などが関連した事故,原子力・放射線事故など人間活動に伴うさまざまな災害の危機も社会不安の一因となっており,常に,予期せぬ災害の発生を意識せざるを得ない状況にあります。自らのいのちを守るための「防災教育」も盛んに行なわれる時勢になってきました。

 災害に強い地域づくりには,災害を「予知する」「理解する」「伝える」機能を整備し,行政,民間,地域住民が一丸となって,「自助」「共助」「公助」の機能を活用し防災,減災に強いまちづくりをしておかなければなりません。

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波乱万丈の一生が赤裸々に

 近代的な看護理論としては初めて書かれた『人間関係の看護論』(原題/International Relation in Nursing. 1952)の著者であり,“精神科看護の母”として知られるヒルデガード・E・ぺプロウの波乱万丈の一生が,本人と関係者への丹念なインタビューと多くの記録物から再構成されている本である。まさに“女の一生”を米国看護界の歴史とともに興味深く読むことができた。

 ポーランドからの移民の子であったぺプロウが米国の知識人として認められるまでには相当な努力が必要だった。「女性に学歴はいらない」「長いものには巻かれろ」に類する古い蔑視的な観念。米国も日本と変わらない状況があったことを改めて知らされた。そのなかにあってぺプロウは,どんなときも自身の正義と信念を貫いて行動してきた。大学内部の問題(“長”にふさわしい人を探すのに苦労するとか,明らかに適任の人が落選するとか)やアメリカ看護協会(ANN)の組織の腐敗さえ赤裸々に綴られ,ゴシップを目にするような楽しみさえあった。これは現代の日本でも起こらないとはいえない組織の問題である。自分の所属する組織に置き換えて考えてみてもよいのではないか。

基本情報

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看護管理
18巻7号 (2008年7月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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