耳鼻咽喉科・頭頸部外科 89巻5号 (2017年4月)

増刊号 臨床力UP! 耳鼻咽喉科検査マニュアル

Ⅰ 聴覚検査

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●目的

・難聴の有無の判断

・聴覚障害の周波数別の評価

・聴覚障害の責任部位(伝音難聴,感音難聴,混合難聴)の鑑別

 純音聴力検査は聴覚機能検査のなかでも極めて古典的な検査であるが,現在でも難聴診断において最も重要な検査に位置づけられる。聴覚障害の認定にもこの検査の結果が用いられる。

●対象

 聴覚刺激に対して被検者自らが応答する検査なので,検査の方法を理解し適切な応答が行える必要がある。年齢ではおおむね5歳以上から可能になるが,マスキングを行う場合には学童期以降でないと信頼できる結果が得られないことが多い。年齢がそれ以上でも精神発達遅滞や認知症がある症例では施行が困難な場合がある。

2 語音聴力検査 内田 育恵
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●目的

 日本聴覚医学会の語音聴覚検査法(2003)では,語音聴覚検査の目的は次の2つに大別できると記載されている(以下抜粋)。

・難聴者のことばの聞き取り,聞き分けの能力を測定することによって,社会生活における不自由度や社会適応度などを推定する。具体的には,法的な面で聴覚障害による身体障害者福祉法の障害程度認定の尺度として必要である。また,難聴者(児)の教育,リハビリテーションには不可欠な資料となり,さらに補聴器および人工内耳の適応の決定や効果の評価を行う際に重要な情報をもたらす。

・語音聴取能は純音聴取能に比較すると,単なる閾値レベルの評価にとどまらず聴器末梢より聴覚中枢に至る経路において,きわめて複雑な情報処理の機能が関与する。したがって,両者の所見を比較検討することにより難聴の鑑別診断に重要な情報をもたらす。さらに積極的に,検査語音に種々のひずみを加えた加工音声,または聴取方法を工夫した両耳聴取などにより,難聴の鑑別,きこえの仕組みの解明に関する資料を提供する。

●対象

 小児では,一般に純音聴力検査で安定した測定値が得られるのは就学前後からであり,語音聴力検査ではさらに被検者の協力を必要とすることから,未就学児では難しい。ただし,純音聴力検査に対する反応で信頼性や再現性が低い幼児では,純音に対する閾値の測定結果を確認する意味で,語音了解閾値検査が有用な場合がある。

 高齢者では,後述するように実施スピードについていけない場合や,視覚や巧緻性の低下により実施手技に配慮が必要な場合がある。認知機能が低下している場合は,検査上の協力が得られないことが多い。

3 簡易聴力検査 石川 浩太郎
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●目的

・職場や学校での健康診断

・難聴の有無の簡易鑑別

・伝音難聴(気骨導差)の有無の簡易鑑別

・標準純音聴力検査や精密聴覚検査の適応の決定

●対象

 自覚的検査のため,検査音に対する反応が確認できる者が対象となる。このため乳幼児など検査刺激に対して反応することが難しい,もしくは正確な反応が得られない場合は対象とならない。

4 乳幼児聴力検査 吉冨 愛
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●目的

・乳幼児の聴力評価

●対象

・新生児から乳幼児まで

 ただし発達が遅れている児では学齢期以降も適応になりうる。被検児の精神発達年齢によって検査方法(BOA,COR,遊戯聴力検査)を選択する。

・聴性行動反応聴力検査(BOA):新生児期〜1歳前後。発達障害や重複障害がある場合は,適用年齢の範囲が広い。

・条件詮索反応聴力検査(COR):6か月〜ピープショウテストや遊戯聴力検査ができるようになる3歳頃まで。発達遅滞児は,刺激音に対する条件付けの成立が遅れるため,発達年齢で10か月頃1)から実施可能。

・遊戯聴力検査:3歳以上。ピープショウテストは,条件付けが可能であれば2歳後半でも適用可能。標準法は,ピープショウテストが可能になり,ヘッドホンの装着が可能になったら。

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●目的

・感音難聴の障害部位診断(補充現象の有無から内耳性難聴の確認)

・閾値上のレベルの音に対する聴取の評価(快適レベル,不快レベルの確認)

 難聴の正確な診断には,障害部位の特定が重要である。純音聴力検査では伝音難聴と感音難聴の鑑別は可能だが,感音難聴が内耳性か後迷路性か区別できない。感音難聴症例を診療する際,内耳局所の病態か,第Ⅷ脳神経症状と捉えるかによって鑑別診断も変わり,その後の画像検査や治療方針も変わってくる。この両者を鑑別するために有効とされているのが,耳音響放射と補充現象検査である。

●対象

・感音難聴を認め,障害部位が内耳性か後迷路性か鑑別したい症例

 検査法によって適応対象の範囲が異なる。

・バランステスト:一側性感音難聴であり,かつ,両側の聴力差が50dB以内の症例がよい適応となる。その理由は,対側が健聴耳であることを前提として左右のラウドネスを比較する検査であり,両耳の聴力差が50dBを超えると陰影聴取が起こるため患側と健側を比べることができないからである。

・SISI検査:両側難聴でもそれぞれの耳で検査できるため適応は広くなるが,測定する耳の閾値上20dBの音で検査するため,重度難聴耳には検査ができない。

・Békésy自記オージオメトリー:それぞれの耳について検査できるが,被検者が細かくスイッチのon-offを行わなければならないため,検査法を正しく理解できる被検者でないと結果の信頼性が低下する。

 一般的に行われる補充現象検査のうち,Metz test(p.55参照)以外はいずれも自覚的聴力検査であり,乳幼児や意識障害のある場合,あるいは検査の意義が理解できない被検者では検査が困難である。症例に応じて実施可能な検査を選択し,施行することとなる。

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●目的

【耳鳴検査】

・音響心理学的な耳鳴の性状の評価

・患者が自覚する耳鳴に近似する音の抽出

【聴覚過敏検査】

・聴覚過敏を直接評価する目的の聴覚検査は存在しない

 補充現象を評価する閾値上聴覚検査(SISI検査,ABLB検査など)は,聴覚過敏を測定する検査とは異なる。不快閾値検査(UCL検査)を聴覚過敏検査として代用することが,一定程度受け入れられている。

●対象

【耳鳴検査】

・自覚的な耳鳴のある患者はすべて適応

 あくまで自覚的な症状である耳鳴の他覚的評価法が確立していない現状において,耳鳴の自覚的表現と並び,耳鳴を評価する検査法として用いられる。ただし,自覚的な変化と耳鳴検査上の変化が必ずしも相関しないといった問題点もあり,治療効果評価としてはsecondary outcomeとして用いられることが多い。

【聴覚過敏検査】

・自覚的な聴覚過敏のある患者

 聴覚過敏は音に対する異常な感受性の亢進と捉えることができるが,コンセンサスの得られた定義はまだない。「音に対する異常に低い許容」状態と考えられ,不快感,恐怖などの負の情動を併せもつことが特徴である。

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●目的

・耳管機能障害(耳管開放症,耳管狭窄症,耳管閉鎖不全症)の診断

・中耳疾患の病態の評価

・耳科手術(特に中耳手術)の術前評価

・滲出性中耳炎:難治例の検出や鼓膜換気チューブの抜去時期の評価

・ダイバーや航空機搭乗者:耳抜きが可能かどうかの評価

●対象

 嚥下などの指示に従い行う必要があるため,3〜4歳以上の小児,成人で耳管機能障害を疑う症例が対象となる。高血圧,心疾患,一側耳疾患の患者にバルサルバ法を行わせる場合は注意が必要であり,鼓膜穿孔がある場合にはインピーダンス法での測定はできない。

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●目的

・滲出性中耳炎の診断

・耳管機能不全の診断

・鼓膜穿孔のない伝音難聴の診断

・末梢性顔面神経麻痺の重症度判定

・機能性難聴の診断

●対象

・ティンパノメトリー:滲出性中耳炎,耳管機能不全

・アブミ骨筋反射:耳小骨固着または耳小骨離断など,鼓膜が正常な伝音難聴

 末梢性顔面神経麻痺例では神経障害の診断が可能である。また,客観的聴力検査として,高〜重度例では機能性難聴の診断が可能である。

 絶対的な禁忌はないが,鼓膜が高度に菲薄化している症例では加圧により穿孔をきたす場合がごく稀にある1)。また,内耳瘻孔では外耳道の加圧で,めまいをきたすことがある。

9 耳音響放射検査 原田 竜彦
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●目的

・他覚的聴覚評価

・聴覚障害の部位診断

 耳音響放射は外耳からの音刺激に対する蝸牛の反応を外耳道内で音響として測定するものであり,耳音響放射が検出できれば蝸牛と中耳の機能が良好であるとみなすことができる。聴覚障害の原因の多くは蝸牛や中耳の障害であるため,耳音響放射の有無から聴覚の良否の推定にも活用できる。また,感音難聴(児)者にこの検査を併用することで,蝸牛障害による難聴か蝸牛神経より中枢側の障害によるものであるかの判別にも用いられる。

●対象

・難聴の疑われる乳幼児

・感音難聴者

 耳音響放射検査の臨床検査としての一番のメリットは,鎮静や電極貼付が不要で外耳道内に測定用プローブを挿入するのみで測定できる点である。このため,純音聴力検査が容易に実施できない乳幼児においては聴覚評価のための検査として最初に行うべき検査である。新生児期については聴性脳幹反応が自然入眠でも測定しやすく脳幹部の障害まで反映されるため,新生児聴覚スクリーニング目的では耳音響放射よりも聴性脳幹反応(自動ABR)が用いられることが多くなっている。

 純音聴力検査を実施し感音難聴であった場合にも,難聴の確認と障害部位の診断に耳音響放射を併用することが望ましい。特に急性発症の感音難聴においては,治療に先立ち機能性(心因性)難聴の除外診断を行うべきであり,初診時に積極的に施行するべき検査である。また,乳幼児にて聴性脳幹反応で難聴の診断が確定した場合も障害部位を確定しauditory neuropathyとの鑑別を行うために耳音響放射検査の実施は必須である。このほか,騒音性難聴など蝸牛障害が明白と考えられる感音難聴者についても,耳音響放射検査を行うことで患者に提示できれば難聴が蝸牛障害による不可逆的な障害であることを患者に説得力をもって説明ができ,その後の障害の進行予防への動機づけができることが多い。

10 聴性脳幹反応検査 鴫原 俊太郎
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●目的

・新生児聴覚スクリーニング検査(自動ABR)とその後の精密検査

・伝音難聴,内耳性難聴,後迷路性難聴の鑑別

・聴神経腫瘍など脳幹障害の病態診断

・聴神経,脳幹機能の術中モニタリング

・機能性難聴の診断

・脳死の判定

●対象

・新生児から高齢者まですべての年齢

 検査施行に入眠が必要になる場合を除き,特に制限はない。

11 聴性定常反応検査 伊藤 吏
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●目的

・新生児聴覚スクリーニングrefer後の精密聴力検査

・乳幼児に対する他覚的聴力検査

・機能性難聴の診断

 聴性定常反応(ASSR)は,クリック音刺激による聴性脳幹反応(ABR)に比して,周波数特異性の高い刺激音を用いることで周波数ごとの聴力を他覚的に推定することができる1)

●対象

 標準純音聴力検査が施行不可能または結果の信頼性に問題があるような場合に他覚的聴力検査としてASSRが施行される。具体的には,新生児,乳幼児,発達障害があり遊戯聴力検査や標準純音聴力検査ができない症例,機能性難聴を疑う症例などである。

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●目的

・先天性難聴児の早期発見

・難聴児の早期発見,早期診断による早期の療育開始

 先天性難聴の出現頻度は1000人に1〜2人といわれている。早期に難聴の発見・診断を行い,早期に補聴器装用を開始し療育へ繋げることにより,先天性難聴児の言語発達は良好になる。補聴器を装用しても効果が十分ではない重度難聴児に対する人工内耳手術を1歳で実施するためには,新生児聴覚スクリーニングでの難聴発見が必須となる。

●対象

・理想的には,全新生児が検査対象

 新生児期に実施するため,耳鼻咽喉科ではなく,産科または小児科で実施される。産科で入院中に実施されることがほとんどであるが,NICUなどに搬送された場合は,小児科で実施されることもある。現在は,公的補助のない地域が多く,スクリーニング機器を有する産科で出産し,保護者が希望した場合に検査が実施されている。

13 補聴器適合検査 西村 忠己
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●目的

・補聴効果の評価

・補聴器が有効かどうかの診断

 装用閾値や語音明瞭度の改善を評価することで,補聴器の有効性を診断する。

●対象

・補聴器のフィッティングを行う難聴者

 聴器装用者では装用している補聴器が有効か評価することもできる。後述する検査が実施可能な難聴者であり,主に成人を対象とする。

14 人工内耳検査 南 修司郎
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●目的

【電極インピーダンス検査】

・他覚的非生理的反応の評価

・短絡電極や開回路電極の確認

・インピーダンスは経時的に変化するので,マッピングのたびに確認

【電気的誘発複合活動電位検査(ECAP)】

・他覚的生理的反応の評価

・人工内耳デバイス作動の確認

・聴神経機能の確認

【電気刺激聴性脳幹反応検査(EABR)】

・他覚的生理的反応の評価

・人工内耳デバイス作動の確認

・脳幹までの聴覚伝導路機能の確認

●対象

・人工内耳手術が行われているすべての患者

 ECAPは人工内耳手術時に,人工内耳デバイス作動の確認,および聴神経機能の確認として世界的にルーティンに行われている。内耳奇形や蝸牛神経低形成症例では,EABRで脳幹までの聴覚伝導路機能を確認したい。

15 難聴遺伝子検査 野口 佳裕
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●目的

・難聴遺伝子変異に関する小児人工内耳例外的適応条件の検索

・難聴関連の指定難病(若年発症型両側性感音難聴など)の診断

・難聴進行の有無の推定

・難聴の発症・悪化の予防(m.1555A>G例)

・人工内耳・残存聴力活用型人工内耳の予後推定

・適切な難聴カウンセリングと遺伝カウンセリング

●対象

 原則として先天性・言語獲得期前難聴や家族歴のある難聴患者,若年発症型両側性感音難聴が疑われる患者では全例に行う。そのほか,他臓器疾患に家族歴(母系遺伝の糖尿病など)がある難聴患者,特発性両側性感音難聴患者,50歳以降に発症しても両高度・重度感音難聴を示す患者などには積極的に行う。

 ただし,保険適用となるのは先天性難聴と若年発症型両側性感音難聴のみであり,そのほかは研究として検査を行う。

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Answer 松島可奈,仲野敦子

生後3か月頃までにABRなどによる精密検査を実施しましょう。精密検査の解釈にあたっては,日常の聴性行動の確認や乳幼児聴力検査の結果も重要です。結果に応じ補聴や療育の開始,もしくは聴力経過観察計画を立てます。

両側高〜重度難聴の場合には,遅くとも生後6か月までに補聴器による聴覚支援が望ましいです。軽〜中等度難聴が疑われる場合にも,定期的な聴力検査,言語発達のフォローなどを行い,個々の状況によって適切な支援を考える必要があります。

Ⅱ めまい・平衡機能検査

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●目的

・眼振や眼球運動を通した末梢〜中枢前庭系の異常の有無の同定・障害部位の推測

●対象

・めまい患者,特に一側末梢前庭機能障害,良性発作性頭位めまい症(BPPV),中枢障害を疑う患者

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●目的

・めまい症例における眼球運動の他覚的記録

●対象

・すべてのめまい症例

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●目的

・体平衡スクリーニング

・平衡障害の有無と程度の評価

・障害側および部位の推定

・経過および代償過程の評価

・治療効果評価

●対象

 平衡機能のスクリーニング検査法としては,すべてのめまい,平衡障害症例が適応となる。ただし,運動器官の障害や視力障害を有する症例では実施方法や検査結果の解釈に注意が必要である。

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●目的

【温度眼振検査】

・めまい疾患の患側決定

・末梢前庭機能の左右個別評価

・固視抑制障害による中枢平衡障害の評価

【回転刺激検査】

・迷路機能障害に対する中枢代償過程の評価

・内リンパ水腫推定検査(フロセミドVOR)

●対象

【温度眼振検査】

・メニエール病,前庭神経炎,聴神経腫瘍,あるいは前庭眼反射経路の異常が推定される疾患

 中耳炎は必ずしも禁忌ではないが,鼓膜穿孔を伴った外リンパ瘻は,感染による内耳炎を起こす可能性があり,禁忌と考えられる。

【回転刺激検査】

・前庭神経炎治療後の中枢代償過程

・中耳(鼓膜穿孔,耳漏を伴う中耳炎)・外耳(外耳道閉鎖など)疾患にて温度眼振検査が施行できない,あるいは検査結果にバイアスがかかるような症例

 禁忌ではないが,椅子に固定できない小児などは検査の実施が難しい。

5 VOG(video oculography) 野村 泰之
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●目的

・眼球運動や眼振の観察・記録・解析

・ENGと同様な前庭平衡障害・めまい疾患の診断と鑑別

・頭位や体位を変化させた際の眼振と頭位の同時記録(ただし機種による)

●対象

・めまい患者,平衡障害患者,異常眼球運動や眼振を伴う患者など

・開眼状態を維持できる患者

 めまい感などで目を閉じてしまう場合には記録できないため対象外となる。

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●目的

・球形囊〜下前庭神経由来の前庭頸反射系の機能評価(cVEMP)

・卵形囊〜上前庭神経由来の前庭眼反射系の機能評価(oVEMP)

●対象

 めまい・平衡障害を主訴とする患者で,上記を目的とする検査が必要な者。また,めまい・平衡障害の訴えがなくとも,例えば,人工内耳手術の術前に前庭機能を評価するなど,上記を目的とする検査が必要な患者。cVEMPを胸鎖乳突筋から記録する場合は,胸鎖乳突筋の緊張が可能な者。oVEMPを下斜筋から記録する場合は,上方視が可能な者。気導刺激のVEMPを測定する場合は,中耳伝音連鎖の異常による聴力の気骨導差のない者。

7 重心動揺検査 瀬尾 徹
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●目的

・身体動揺の客観的,数量的な把握

・平衡障害から生じる身体動揺の有無や程度を把握

・疾患の経過による身体動揺の推移を把握

・治療効果による身体動揺の改善を把握

・特徴的な身体動揺を認める病態の診断補助

・平衡機能の発達,老化の程度の観察

●対象

・めまい・平衡障害を訴えるすべての患者

 ただし,本検査は開眼と閉眼でそれぞれ30〜60秒間の直立が必要であり,身体的に直立姿勢の維持が不可能な患者は対象外である。また回転性めまいの発作期などで自立が困難な場合も対象外となる。

8 Head impulse test 瀧 正勝
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●目的

・半規管障害の検出・スクリーニング

・半規管機能の定量

 定性HIT:急性めまいにおける末梢性か中枢性かの判断に用いられる。

 vHIT:VOR gainの定量や肉眼では確認できない頭部回転中のサッカード(covert saccade)まで検出するために用いられる。

●対象

・めまいを訴える患者

 救急の現場では,前庭神経炎とWallenberg症候群は眼振を見ただけでは区別がつかないため,スクリーニング的な判定に定性HIVが有用である1)。vHITはめまい症状の強い患者や小児など,カロリックテストが行えない症例に最適である。

 ただし,どちらも頭部を素早く回転させる検査のため,頸椎の問題のある患者には施行しない。

9 自覚的視性垂直位検査 小川 恭生
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●目的

・耳石器機能(主に卵形囊)の評価

・内耳機能の左右差の評価

・めまいの責任部位診断

●対象

 前庭機能の評価目的としてすべてのめまい患者が適応となる。検査は容易であり,検査の理解ができれば,幼児から高齢者まで可能である。ただし,視力障害を伴っている場合や,座位を保てない場合,施行が困難である。

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Answer 堀井 新

蝸電図検査,グリセロール検査などの内リンパ水腫推定検査や内耳造影MRI検査,前庭機能検査,聴覚検査や心理テストなどを行うべきです(表1)。

Ⅲ 顔面神経検査

1 顔面表情の検査 濵田 昌史
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●目的

・顔面神経麻痺の重症度診断(予後評価)

・顔面神経麻痺の経時的評価

・顔面神経分岐別評価

●対象

・Bell麻痺やRamsay Hunt症候群

・外傷性麻痺,医原性麻痺

麻痺発症早期から回復期までの全過程において使用可能である(図1)。

2 アブミ骨筋反射 中川 尚志
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●目的

・顔面神経麻痺の部位・予後診断

・耳小骨の可動性・離断の有無の評価

・他覚的聴力検査

・リクルートメント現象の有無の評価

・蝸牛神経・脳幹(橋)の機能評価

●対象

・年齢を問わず,すべての者

 鼓膜に穿孔がある場合はティンパノメトリーと同様にコンプライアンスの変化の記録が難しいため,検査の信頼性が低い。

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●目的

・神経損傷の客観的・定量的評価

・Bell麻痺,Ramsay Hunt症候群の予後評価

・耳下腺腫瘍による神経浸潤の有無

・側頭骨骨折の顔面神経損傷程度

●対象

 顔面神経の損傷程度を他覚的に評価でき,nerve excitability test(NET)とともにBell麻痺,Ramsay Hunt症候群の予後予測に主に使用される。Bell麻痺,Ramsay Hunt症候群に限らず,側頭骨骨折,聴神経腫瘍術後などにおいて顔面神経の損傷の有無を評価することが可能である。

 ただし,Bell麻痺発症早期(7日未満)や,両側性麻痺や再発性麻痺など左右を比較できない疾患ではENoGの解釈に注意が必要である。

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●目的

・顎顔面形態異常の原因検索

・原因遺伝子を同定することによる,顎顔面形態異常以外の臓器障害の早期発見

・遺伝カウンセリングでの利用(次子再発率の推定など)

●対象

・顎顔面の形態異常をもつ者

 口唇口蓋裂,口蓋裂,頬骨低形成,下顎低形成(Pierre Robin症候群),耳介形成異常など,主に肉眼的に観察しうる形態異常が対象となる。ただし,口蓋裂やPierre Robin症候群が単独でみられる症例は,2016年現在原因遺伝子が同定されていないため,原則として解析対象とならない。また解析については,遺伝子解析の特殊性(不変性,予測性,共有性)1)を十分に理解し,患者・家族の自発的な同意が得られた者のみが対象となる。施行前後に十分な遺伝カウンセリングを施行するために,臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラーと連携することが望ましい。

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Answer 濵田昌史

麻痺発症7日〜10日目に予後診断精度が増すと考えられます。

Ⅳ 鼻・副鼻腔の検査

1 嗅覚検査 三輪 高喜
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●目的

【基準嗅力検査(T & Tオルファクトメトリー)】

・嗅覚障害の診断

・検知域値,認知域値の測定

【静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)】

・嗅覚脱失の診断

・嗅覚障害の予後の推測

●対象

・嗅覚障害患者

2 鼻腔通気度検査 竹内 裕美
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●目的

・鼻腔抵抗または鼻腔気流量を指標とした鼻腔通気性の客観的評価

●対象

①鼻閉を訴える症例

 患者が訴える鼻閉は,鼻閉感であり,鼻腔通気性とは必ずしも一致しない1)。多くの場合,鼻副鼻腔疾患や鼻中隔彎曲などの解剖学的異常により鼻腔通気性が低下して鼻閉感を生じるが,萎縮性鼻炎やempty nose syndromeのように,鼻腔通気性は良好に保たれているにもかかわらず鼻閉感を訴えることがある。鼻閉感を訴える患者を診るときは,まず鼻腔通気性の低下を伴っているかどうかを評価しなければならない。

②鼻閉が疑われる小児

 小児は,自身の鼻の通り具合を言葉で適切に表現できないことが多いため,鼻腔通気性を客観的な数値で表現できる本検査は有用である。近いうちに,小学生の鼻腔抵抗の基準値が日本鼻科学会から示される予定であり,基準値と比較することで診断が容易になることが期待できる。

③鼻腔のスクリーニング検査が必要な症例

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群などの鼻腔通気性の評価が不可欠な疾患では,耳鼻咽喉科医以外の医師が行う鼻腔のスクリーニング検査の1つとして本検査が使用されている。鼻腔通気性の低下が疑われた場合には,耳鼻咽喉科医に依頼して精査を行うことになる。

3 鼻アレルギー検査 藤枝 重治
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●目的

・アレルギー性鼻炎の診断

・本態性鼻炎(血管運動性鼻炎)の診断

・アレルゲン感作状況の確認

・アレルギー性結膜炎の補助診断

・喉頭アレルギーの補助診断

●対象

・アレルギー性鼻炎の診断ため,全年齢が対象

・くしゃみ,鼻水,鼻づまりのある人

・特定の季節に目が痒くなる人

・喘鳴を伴わない3週間以上持続する乾性咳嗽がある人

 ただし,皮内テストでアナフィラキシーショックを起こすことがあるので注意する。

 抗ヒスタミン薬を内服していると皮内テスト,スクラッチテスト,プリックテストが偽陰性になることがある。

4 鼻粘膜誘発テスト 三輪 正人
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●目的

・アレルギー性鼻炎の確定診断

・アスピリン喘息などの下気道疾患の診断

・血管運動性鼻炎など非アレルギー性鼻炎の診断

・上記疾患の薬剤有効性,治療効果の判定

 アレルギー性鼻炎の診断基準では,①皮膚テストまたは特異的IgE抗体,②鼻汁中好酸球,③鼻誘発テスト,の3項目のうち2項目以上陽性の場合,確定診断ができるとされる1)。①あるいは②が陰性の場合は,鼻誘発テストが確定診断に必要となる。また,特異的IgE抗体は,感作されたことは証明できるが,その次のステップである発症していることの証明とはならないため,原因抗原により発症していることを証明する唯一の検査法である。

 気管支喘息患者でも,鼻症状の有無にかかわらず,鼻誘発検査でアレルゲンを特定することが可能である。

 誘発刺激としてcold dry airなどを用いることにより,非アレルギー性鼻炎の診断が可能となり,日常診療および研究の両面で,非常に重要な検査である。

●対象

・アレルギー性鼻炎

・気管支喘息(特にアスピリン不耐症や小児喘息など吸入誘発が躊躇される症例)の原因アレルゲンの診断

・血管運動性鼻炎などの非アレルギー性鼻炎

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Answer 三輪高喜

慢性副鼻腔炎による嗅覚障害では,アリナミンテストで10〜15秒以上の持続があれば,高い改善率が見込まれます。ただし,嗅感が発来しなくても改善の見込みがないとは限りません。

Ⅴ 口腔・咽頭・唾液腺の検査

1 口腔アレルギー検査 内藤 健晴
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●目的

・口腔アレルギー症候群の診断

●対象

 新鮮な果物(リンゴ,モモ,サクランボ,イチゴ,バナナなど)や野菜(セロリ,スイカ,アボカド,キュウリ)あるいは種実(クリ,ピーナッツ,アーモンドなど)を食べた後15分程度で口唇,口腔,咽頭の掻痒感,浮腫が生じる人が対象となる。花粉症かラテックス(ゴム製品)アレルギーを合併していることが多い。

 ラテックスアレルギーの症例では口腔,咽頭の反応だけでなくアナフィラキシーを起こすこともあるので注意を要する。

2 味覚検査 任 智美 , 阪上 雅史
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●目的

【電気味覚検査,濾紙ディスク法】

・味覚機能評価

・味覚障害の予後推測

・中枢性味覚機能障害の診断

・中耳手術後などの味覚神経障害程度の評価

・顔面神経麻痺の部位診断

【血清微量元素測定】

・受容器(味蕾)障害に対する原因精査

●対象

・味覚機能評価としては,味覚異常を訴えるすべての患者

 検査施行後,病態を検討したうえで味覚障害と診断しうる。そのほか,顔面神経麻痺の際に鼓索神経,大錐体神経の閾値を測定し,障害部位を診断する。また中耳手術や扁桃摘出術,喉頭鏡下微細手術など味覚神経障害が起こりうる手術前後も対象となりうる。ただし,電気味覚検査はペースメーカーや人工内耳装用者には原則行わない。亜鉛,鉄,銅などの血清微量元素測定は受容器障害が疑われる場合に施行する。

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●目的

・唾液の量や質と関連する口腔内愁訴の診断

・シェーグレン症候群の診断

・唾液腺関連疾患の病態評価

●対象

 唾液分泌検査の対象となるのは,唾液の量や質と関連する口腔愁訴および唾液腺と関連する症候である。口腔愁訴では口腔乾燥症(ドライマウス)や唾液過多(流涎)に加えて,口腔灼熱症候群・舌痛症や味覚異常,口腔カンジダ症,齲歯の多発や歯周病も唾液と関連する。唾液腺関連疾患では,シェーグレン症候群の診断には唾液分泌検査が必須であり,ミクリッツ病・ミクリッツ症候群(IgG4関連疾患),唾液腺症,反復性耳下腺炎などでも唾液分泌検査は病態評価に有用である。

4 唾液腺造影検査 山村 幸江
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●目的

・シェーグレン症候群の診断

・耳下腺・顎下腺における導管系の形態評価

●対象

 唾液腺造影検査は耳下腺と顎下腺における導管系の形態評価が必要な病態,すなわち慢性炎症や唾石,シェーグレン症候群などが対象となる。唾液管開口部から逆行性に造影剤を注入するという侵襲的な検査でもあるため,CTやMR,超音波検査の普及につれて施行頻度は減少し,近年では主にシェーグレン症候群の診断目的に,手技の容易な耳下腺に対して行われる。急性炎症およびヨード過敏症では禁忌である。

5 免疫関連検査 高野 賢一
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●目的

・IgG4関連疾患の診断

・シェーグレン症候群の診断

・唾液腺疾患の鑑別

●対象

・持続する唾液腺腫脹や口腔乾燥症状を呈し,IgG4関連疾患やシェーグレン症候群が疑われる患者

 IgG4関連疾患では血清IgG4値が高値となり,シェーグレン症候群では高頻度に抗SS-A抗体,抗SS-B抗体が陽性となる。ただし,両疾患ともに血清学的所見のみで鑑別および確定診断はできない点に注意が必要である。

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●目的

・睡眠時無呼吸症候群の確定診断

●対象

・問診,身体所見または他の検査所見から睡眠時呼吸障害が強く疑われる患者〔小児(新生児)から大人までが適応〕

 実施にあたっては下記に掲げる検査のすべて(睡眠時呼吸障害の疑われない患者については①のみ)を当該患者の睡眠中8時間以上連続して測定して記録する。

 ①脳波,眼球運動およびオトガイ筋筋電図

 ②鼻または口における気流の検知

 ③胸壁および腹壁の換気運動記録

 ④パルスオキシメーターによる動脈血酸素飽和度連続測定

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Answer 内藤健晴

現在では放射性物質での測定は行われていません。

Ⅵ 腫瘍の検査

1 穿刺吸引細胞診 廣川 満良
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●目的

・甲状腺病変の質的診断(良性,悪性)

・腫瘍の組織型(乳頭癌,髄様癌,未分化癌など)

・良性と診断することによる不必要な手術の減少

●適応

・結節性病変

・超音波検査での腫瘤様低エコー部分

・びまん性甲状腺腫に伴う結節様病変

・抗甲状腺抗体陰性のびまん性甲状腺腫

・囊胞の排液

・炎症性疾患の確認

・甲状腺切除後に出現した結節

〈禁忌〉

・甲状腺機能亢進状態のバセドウ病

・頸部を静止できない患者

・検査協力・インフォームドコンセントが得られない患者

 抗凝固薬の服用や出血傾向は絶対的禁忌ではない。

〈適応外〉

・明らかな亜急性甲状腺炎・慢性甲状腺炎・良性囊胞

・5mm以下の結節,10mm以下の超音波上良性の結節,20mm以下の囊胞1)

2 免疫染色 伊藤 智雄 , 山本 侑毅
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●目的

・より正確な病理診断

・治療選択

・予後予測

 頭頸部の病理診断は形態を基本としつつも,適切な免疫染色の利用によって,より正確な診断を得ることができる。また,近年は予後予測や治療選択にかかわる免疫染色の重要性も増しており,より正確な知識が求められる。

●対象

 病理検査を行うすべての患者に必要なわけではない。ほとんどの病理診断はHE染色で得られた形態にのみ基づき行われる。病理医の判断で,HE染色のみで診断が難しい場合,例えば低分化な腫瘍,悪性リンパ腫,肉腫などで行われる場合が多い。また,近年は予後予測や治療の選択にかかわるものも増えてきた。

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●目的

・ウイルス関連腫瘍の診断

 p16:HPV関連頭頸部がん(主に中咽頭がん)

 EBER:EBV関連腫瘍(上咽頭がん,鼻性NK/T細胞リンパ腫)

・原発不明がん頸部転移の原発巣検索

●対象

 頭頸部腫瘍のうち,臨床所見や原発部位からウイルス関連腫瘍が疑われる症例が適応となる。また,原発不明頸部転移性がん症例における原発巣検索にも有用性が高い。

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●目的

・腫瘍遺伝子診断

・治療方針の決定

・患者予後の推定

●対象

 染色体・遺伝子転座は主に腫瘍細胞で観察されるため,腫瘍病理診断の補助的検査として免疫染色とともに用いられる。耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の腫瘍としては,特に唾液腺腫瘍が多彩な組織像を示すため,病理診断が時に困難である。近年,多くの腫瘍特異的な染色体転座・遺伝子転座が唾液腺腫瘍に報告され,その有用性が高まっている。そのほか,軟部腫瘍や甲状腺腫瘍にも多くの染色体転座が報告されている。

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●目的

・癌の補助診断:癌の診断は組織診で確定されるが,腫瘍マーカーが陽性で,特に高値の場合は癌である確率が高い。

・癌治療の効果判定:放射線治療,化学療法の効果に伴う数値の変動を確認することで効果判定の補助手段として活用される。

・癌治療後の経過観察の指標:腫瘍マーカーが陽性である症例に根治治療が行われた場合,治療後にその数値は陰性化する。陰性化が認められない場合は腫瘍の残存が疑われる。また陰性化後の経過観察中に陽性化した場合は,再発や転移が疑われる。

●対象

 Squamous cell carcinoma antigen(SCC抗原)は頭頸部がんを含む扁平上皮癌の腫瘍マーカーとして保険適応となる。Cytokeratin fraction 21-1(cytokeratin 19 fragment,CYFRA)はSCC抗原との相関はなく両者を組み合わせることで再発の早期発見に有用と考えられているが,保険適応は小細胞癌を除く肺がんのみである。

 Thyroglobulin(Tg)は甲状腺がん,甲状腺腺腫,バセドウ病,腺腫様甲状腺腫,橋本病が,抗Tg抗体は橋本病,バセドウ病,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,甲状腺腫,甲状腺がんがそれぞれ保険適応となる。抗Tg抗体が陽性の場合,実際のTgが高値であっても測定上低値を示すことがある。甲状腺がんでは20〜30%で抗Tg抗体が陽性のため,両者を同時に測定する必要がある。

 Carcinoembryonic antigen(CEA)は大腸がん,胃がん,食道がん,肺がん,膵がん,胆管がん,膀胱がん,卵巣がん,肝がん,乳がん,甲状腺がん,子宮頸がん,その他腺癌,家族性大腸ポリポーシス,大腸腺腫症,転移性腫瘍が保険適応となる。

 Soluble interleukin-2 receptor(sIL-2R)は非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin's lymphoma:NHL),成人T細胞性白血病(adult T cell leukemia:ATL)が保険適応となる。

6 遺伝子検査 家根 旦有
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●目的

・がんの診断

・遺伝性疾患の診断

・治療効果の予測

・薬剤の副作用の予測

 疾患の早期発見・予防のほか,本人だけでなく血縁者の健康管理も重要な目的の1つである。

●対象

 遺伝性腫瘍はすべてのがんの約5%と考えられている。その臨床的な特徴として,

 ①若年発症性(がんの平均発症年齢より若く発症)

 ②多発性(1つの臓器に複数のがんを発症,あるいは両側性,複数の臓器に原発性のがんを発症)

 ③家族内集積性(血縁者に特定の遺伝性腫瘍の関連がん罹患者が複数名いる)

が挙げられる1)。遺伝性腫瘍に対して遺伝子検査を行う目的は,疾患を早期発見することや予防することであり,本人だけでなく血縁者の健康管理も重要な目的の1つである。ただし,生殖細胞系列遺伝子検査を行うにあたっては遺伝カウンセリングが必要とされる。

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Answer 槇 大輔,大上研二

NBI内視鏡を用いた頭頸部領域の診察,頸部エコー,頸胸部造影CT,上部消化管内視鏡,PET-CT,穿刺吸引細胞診などを行います。

Ⅶ 嚥下検査

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●目的

・嚥下内視鏡や嚥下造影検査の専用の機器や設備がない施設における,嚥下機能障害の有無の検出

・経口摂取の可否や嚥下造影検査の必要性を判断するためのスクリーニング

●対象

・嚥下機能障害が疑われるが,従命が可能である患者

 意識障害の存在や,誤嚥性肺炎を繰り返し呼吸状態が不良,発熱など全身状態が不良な状態である場合は,対象とならない。

2 嚥下内視鏡検査 甲能 武幸
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●目的

・嚥下機能異常の有無の評価

・経口摂取の可否,食事内容の妥当性の判断

・治療,嚥下リハビリテーションの効果判定

●対象

・嚥下障害が疑われる患者,あるいは嚥下リハビリテーションを行っている患者

 近年は胃瘻造設前の嚥下機能のスクリーニングとして行われる場合もあり,日本耳鼻咽喉科学会監修の『嚥下障害診療ガイドライ2012』1)において,嚥下機能評価のファーストラインとして位置づけられている。ただし,指示動作に従えない患者は適応外である。

3 嚥下造影検査 津田 豪太
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●目的

・経口摂取への手段の探索

・誤嚥のリスク評価

・障害部位の同定

・外科的治療の適応検討

 目的は大きく2つある。誤嚥の有無とそのタイミングや誤嚥の量,そしてムセの有無や誤嚥物の喀出能力など誤嚥性肺炎や窒息など医療事故につながる部分を精査することで危険性を評価し外科的治療の適応などを求める目的と,嚥下機能の障害された部位の同定とともに,姿勢・食内容・量・タイミング・代償機能などを評価して,経口摂取への手段を求める目的がある。いずれも重要な視点であり,常にこの2つを念頭に置き検査を行うべきである1,2)

●対象

・摂食嚥下障害を疑う患者

 特に,嚥下内視鏡で早期咽頭流入が高度に認められる場合や,咀嚼中に誤嚥が認められる場合,嚥下時の頸部視診で喉頭挙上が不良な場合などで有用である。

4 嚥下圧検査 田中 加緒里
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●目的

・咽頭期嚥下障害の病態診断

●対象

・嚥下障害の病態把握が必要な症例

 リハビリ方法,手術術式選択などの治療方針を決定する際の理論的根拠として,上記の症例が対象となる。また,治療効果判定,進行性疾患などにおける嚥下機能の経時的変化を観察する際などにも有用である。

【禁忌】

・鼻腔からのカテーテル挿入に耐えられない症例

・カテーテルを挿入することで深刻な出血の可能性がある症例

・鼻腔,咽喉頭や食道に既知の狭窄があり,カテーテルが挿入できない症例

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Answer 鹿野真人

経口摂取の可否の判断には,嚥下障害の重症度のスクリーニングと精密検査である嚥下内視鏡や嚥下造影検査の総合的な判断が必要とされます。

Ⅷ 声の検査

1 聴覚印象評価 香取 幸夫
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●目的

・音声障害の治療を行う検者による患者の声の主観的な評価

●対象

・「なんらかの声の異常」を主訴に受診した患者

 「発音のしづらさや話しづらさ」といった声の症状と異なる症状を訴える患者のなかにも「声の異常」を伴うこともあるため,本検査の適応となる。そのほか,喉の違和感を訴えて受診した患者のなかには声帯病変を伴う場合もあるので,声の状態を評価することが大切である。

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●目的

・音声障害の原因検索

・治療方針決定と効果判定

【喉頭内視鏡検査】

・器質的疾患の診断

・声帯運動障害の診断

・機能性疾患の診断

【喉頭ストロボスコピー】

・声帯振動と声門閉鎖状態の評価

・声帯粘膜の微細な異常の検出

・器質的疾患の鑑別

●対象

・嗄声や発声困難感,発声時の疲労感・のどの痛みなど,自・他覚的に音声障害を認める患者

 通常の喉頭内視鏡検査のみでは病態を解明するうえで不十分な場合,喉頭ストロボスコピーを続けて行う。咽頭反射が強く詳細な評価が困難な患者では,全身麻酔下での喉頭直達鏡検査を検討する。

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●目的

【発声持続時間の検査】

・発声機能の評価

・治療適応の判断

・治療効果を評価

【音域の検査】

・発声可能な声の高さを測定する(生理的声域)

・日常会話における声の高さを測定する(話声位)

・地声とうら声の変換点を測定する(声区の変換点)

●対象

【発声持続時間の検査】

・音声障害を呈するすべての患者

 簡便に行うことのできる検査であり,発声障害のスクリーニングとしても用いることが可能である。特に反回神経麻痺などの声門閉鎖不全をきたすような疾患において,治療適応の決定や治療前後の評価に重要である。

 ただし,無響性発声の場合は計測できず,評価できない。

【音域の検査】

・音声障害を呈するすべての患者

・声楽家のような声を職業にしている者

4 空気力学的検査 岩田 義弘
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●目的

・発声のエネルギーである呼気量の評価

・声の高さ・強さの記録,およびそれぞれの変動と発声効率の評価

・発声中の変化の確認

・治療の評価

・訴えと検査結果に解離がないかを確認

・音声訓練の目標設定と訓練前後の音声機能評価

●対象

・音声に異常がみられる例

 ex)大きな・小さな声が出ない

   高い・低い声が出ない

   声が続かない

・機能性発声障害,特に呼気タイミングand/or呼気不足に伴う症例

・発声中声門閉鎖の程度の確認

・音声訓練の必要のある者,および訓練中の者

 具体的な対象疾患としては,声帯固定・反回神経麻痺(不全型を含む),声帯ポリープ,ポリープ様声帯,萎縮性声帯炎,機能性発声障害が挙げられる。

5 音響分析的検査 城本 修
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●目的

・嗄声の程度の客観的評価

・同一患者の治療前後での音声の客観的評価

●対象

・音声障害患者

 正常音声との鑑別や喉頭疾患の鑑別には適さない。また,音声波形の各周期(ピッチ)を正確に抽出するピッチ同期分析を行うので,嗄声の程度が著しくピッチ同期が困難な症例は分析に適さない。

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●目的

 喉頭筋電図の目的は,安静時や活動時に発生する内喉頭筋の活動電位を経時的に記録することにより,筋およびその支配神経の動態(活動性)を明らかにすることにある。これまでに呼吸および発声などの喉頭機能における生理学的研究のために欠かせない検査として用いられてきたが,実際の臨床においては以下の場合に適応となることが多い。

・声帯麻痺の鑑別(神経原性か筋原性か)と予後判定

・声帯運動障害の鑑別(麻痺性か関節固着または脱臼か)

・機能性発声障害の病態把握(心因性発声障害,痙攣性発声障害など)

・声帯内注入術の際のモニタリング(痙攣性発声障害に対するボツリヌストキシン注入など)

●対象

・発声障害

・声帯運動障害

・神経筋疾患(ミオパチー,神経筋接合部異常,運動ニューロン障害など)

 抗凝固薬などを服用している場合は出血のリスクがあるため,休薬のうえ,検査を行う。

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Answer 田口亜紀

特徴的な音声所見の評価,喉頭所見を観察するための喉頭内視鏡検査が有効です。

Ⅸ ことばの検査

1 言語発達の検査 福島 邦博
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●目的

・さまざまな障害に伴う言語発達の遅れの診断

・児の発達的特徴の把握。他の領域(運動や操作)の発達と比較した児のプロフィールの理解

・言語聴覚療法などの介入時の指標

・介入指導効果の評価と今後の方針決定

・難聴児における補聴器・人工内耳などの装用効果の評価,今後の方針決定における指標

・障害がある児の就学などへの助言,支援方法の選択のための指標

●対象

・いわゆる「ことばの遅れ」がある児

2 構音障害の検査 大津 雅秀
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●目的

・構音の誤りの有無の系統的な評価

・誤りの性質の把握と構音治療の指標

●対象

・構音に異常のある患者全般

3 吃音の検査 森 浩一
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●目的

・どもり(吃り・吃音)の診断と鑑別

・重症度の評価

・合併症の検索

・原因の診断

・コミュニケーション,学業,就労,QOLへの影響評価

●対象

・吃音が疑われる症例,ないし吃音の評価が必要な症例

 なお,「どもり(吃り)」はマスコミでは差別用語として使用禁止のため,吃り=吃音ということを知らず医療機関受診に至らない症例も多い。積極的な啓発が望まれる。

4 失語症の検査 藤田 郁代
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●目的

・失語症の有無,タイプ,重症度を診断する

・症状の経時的変化を把握する

・言語治療の手がかりを得る

・脳画像情報と照合し症状の発現機序について検討する

●対象

・脳血管疾患,脳腫瘍,脳炎,脳外傷,脳変性疾患などにより言語の理解,表出に困難をきたし,失語症が疑われる者

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Answer 宇高二良

まず耳鼻咽喉科的に聴力,口腔咽喉頭の発声発語器官に異常がないかどうかを確認する必要があります。

付録 細菌ウイルス検査

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検査目的

ヘルペス感染症,水痘帯状疱疹ウイルス感染症が疑われた場合の補助診断(顔面神経麻痺,ヘルペス感染が疑われる咽頭炎など),単純ヘルペスⅠ型,Ⅱ型(Herpes simplex virus-1,2:HSV-1,HSV-2),水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus:VZV)の抗原抗体を測定する。

2 EBウイルス抗体検査 小川 洋
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検査目的

EBウイルス感染症が疑われた場合の診断補助(伝染性単核球症,EBV再活性化の疑い,既往確認,バーキットリンパ腫,上咽頭がん,慢性活動性EBV感染症など)

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検査目的

サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus:CMV)感染症が疑われた場合の補助診断

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検査目的

インフルエンザウイルスA型およびB型感染の診断補助

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検査目的

肝炎ウイルス感染症,特にB型(HBV)およびC型(HCV)の診断補助

6 HIV関連の検査 留守 卓也
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検査目的

HIV感染スクリーニングまたはHIV感染症の経過観察の指標

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検査目的

 結核菌を含む抗酸菌に対する感染症が疑われた場合の原因菌同定・薬剤耐性検出・診断補助

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検査目的

中耳貯留液・耳漏または上咽頭(鼻咽腔)鼻汁中の肺炎球菌抗原の検出(肺炎球菌感染症の診断補助)

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検査目的

咽頭炎でのA群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症の診断補助

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あとがき

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
89巻5号 (2017年4月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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