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はじめに
ステロイド鼓室内投与は,突発性難聴に対して行われる治療の1つであり,近年ではメニエール病に対する治療としても注目されている1)。ステロイド鼓室内投与は,高濃度の局所投与で治療効果を狙う目的と全身副作用のリスクを軽減する目的の2つがある。本治療はAAO-HNSガイドライン2)の突発性難聴に対する治療において,ステロイド全身投与後の回復不良例に対する救済治療として「推奨」とされている2)。逆にその他の使用方法については「推奨」とされていない2)。しかし,ガイドラインの基となっている文献のステロイド鼓室内投与のメタアナリシスをみるとプロトコルが統一されておらず,報告ごとに投与時期や,投与期間が異なり,有効性に関しても意見が分かれている。
実際の臨床現場においては,患者のさまざまな事情にあわせて,ステロイド全身投与終了後の救済に使用するだけではなく,全身投与と同時に行い上乗せ効果を狙う場合,さらに全身状態によっては,単独で施行する場合もある。内服および点滴でのステロイド投与量増量による上乗せ効果については,ほかの疾患ではステロイドパルス療法が行われることがあるが,突発性難聴に関しては複数の報告で通常量のステロイド治療と比べて効果に差がなかったと述べられている3,4)。さらに,全身投与中の鼓室内投与の上乗せ効果に関しては否定的な意見が多い5〜7)。また,鼓室内投与自体には全身投与と同等か,それ以上の効果があるとされ,経口と鼓室内投与の比較試験で,両者に差がないとする報告8)がある。現在のAAO-HNSガイドラインでは,初期治療としては全身投与および鼓室内投与の両者ともOptionの位置付けである。コントロール不良の糖尿病など,全身投与が許容できない併存疾患がある場合は鼓室内投与が推奨され,そうでない場合には治療の選択肢の1つとして提案される9)。
われわれの施設では患者のさまざまな事情にあわせて症例により投与方法を選択している。今回われわれはステロイド鼓室内投与を,全身投与後に救済治療として行った症例と全身投与と同時併用した症例,さらに全身投与を行わず鼓室内投与のみを行った症例について,標準的に全身投与した症例と成績の比較を行い検討した。
The treatment for sudden hearing loss primarily usually involves systemic steroid administration. Intratympanic steroid administration may also be used in combination with hyperbaric oxygen therapy. In our facility, we select our treatment on a case-by-case basis. Commonly, a combination of systemic and intratympanic steroid administration is used. The methods include simultaneous systemic and intratympanic administration, intratympanic administration as an additional treatment after systemic administration, or intratympanic administration as a standalone treatment. In this study, we investigated the additive effects of intratympanic steroids.
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