増刊号 臨床力UP! 耳鼻咽喉科検査マニュアル
Ⅰ 聴覚検査
2 語音聴力検査
内田 育恵
1
1愛知医科大学耳鼻咽喉科
pp.8-14
発行日 2017年4月30日
Published Date 2017/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411201227
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●目的
日本聴覚医学会の語音聴覚検査法(2003)では,語音聴覚検査の目的は次の2つに大別できると記載されている(以下抜粋)。
・難聴者のことばの聞き取り,聞き分けの能力を測定することによって,社会生活における不自由度や社会適応度などを推定する。具体的には,法的な面で聴覚障害による身体障害者福祉法の障害程度認定の尺度として必要である。また,難聴者(児)の教育,リハビリテーションには不可欠な資料となり,さらに補聴器および人工内耳の適応の決定や効果の評価を行う際に重要な情報をもたらす。
・語音聴取能は純音聴取能に比較すると,単なる閾値レベルの評価にとどまらず聴器末梢より聴覚中枢に至る経路において,きわめて複雑な情報処理の機能が関与する。したがって,両者の所見を比較検討することにより難聴の鑑別診断に重要な情報をもたらす。さらに積極的に,検査語音に種々のひずみを加えた加工音声,または聴取方法を工夫した両耳聴取などにより,難聴の鑑別,きこえの仕組みの解明に関する資料を提供する。
●対象
小児では,一般に純音聴力検査で安定した測定値が得られるのは就学前後からであり,語音聴力検査ではさらに被検者の協力を必要とすることから,未就学児では難しい。ただし,純音聴力検査に対する反応で信頼性や再現性が低い幼児では,純音に対する閾値の測定結果を確認する意味で,語音了解閾値検査が有用な場合がある。
高齢者では,後述するように実施スピードについていけない場合や,視覚や巧緻性の低下により実施手技に配慮が必要な場合がある。認知機能が低下している場合は,検査上の協力が得られないことが多い。
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