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●目的
・他覚的聴覚評価
・聴覚障害の部位診断
耳音響放射は外耳からの音刺激に対する蝸牛の反応を外耳道内で音響として測定するものであり,耳音響放射が検出できれば蝸牛と中耳の機能が良好であるとみなすことができる。聴覚障害の原因の多くは蝸牛や中耳の障害であるため,耳音響放射の有無から聴覚の良否の推定にも活用できる。また,感音難聴(児)者にこの検査を併用することで,蝸牛障害による難聴か蝸牛神経より中枢側の障害によるものであるかの判別にも用いられる。
●対象
・難聴の疑われる乳幼児
・感音難聴者
耳音響放射検査の臨床検査としての一番のメリットは,鎮静や電極貼付が不要で外耳道内に測定用プローブを挿入するのみで測定できる点である。このため,純音聴力検査が容易に実施できない乳幼児においては聴覚評価のための検査として最初に行うべき検査である。新生児期については聴性脳幹反応が自然入眠でも測定しやすく脳幹部の障害まで反映されるため,新生児聴覚スクリーニング目的では耳音響放射よりも聴性脳幹反応(自動ABR)が用いられることが多くなっている。
純音聴力検査を実施し感音難聴であった場合にも,難聴の確認と障害部位の診断に耳音響放射を併用することが望ましい。特に急性発症の感音難聴においては,治療に先立ち機能性(心因性)難聴の除外診断を行うべきであり,初診時に積極的に施行するべき検査である。また,乳幼児にて聴性脳幹反応で難聴の診断が確定した場合も障害部位を確定しauditory neuropathyとの鑑別を行うために耳音響放射検査の実施は必須である。このほか,騒音性難聴など蝸牛障害が明白と考えられる感音難聴者についても,耳音響放射検査を行うことで患者に提示できれば難聴が蝸牛障害による不可逆的な障害であることを患者に説得力をもって説明ができ,その後の障害の進行予防への動機づけができることが多い。
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