胃と腸 32巻3号 (1997年2月)

特集 炎症性腸疾患1997

序説

  • 文献概要を表示

 最近では“炎症性腸疾患(inflammatory boweI disease; IBD)”が主題として取り上げられない消化器関連の学会はない.そういった意味ではIBDは良性腸疾患の代表であり,IBDに通暁していない消化器病の臨床家は皆無と思われる.

 本来IBDという言葉は感染症,寄生虫など原因の明らかな腸疾患と,潰瘍性大腸炎やCrohn病など原因不明の腸疾患と一線を画すために1930年ごろnon-specific inflammatory bowel diseaseとして用いられたのが始まりらしい.

 現在ではこの両者は遺伝子学的にも,免疫学的にも,病因論からも形態学の面でも,更に治療の面でも全く異なる疾患であることが明らかにされているが,今でもIBDとして一括されて論じられてる.

 本稿では古い「胃と腸」をひもといて,IBDの中でも本邦で芽生えた形態学的業績を中心に述べ,現状と今後の問題点についても考えてみたい.

  • 文献概要を表示

初診時年齢24歳,女性.主訴:粘血便,下痢.

  • 文献概要を表示

37歳,男性.主訴:腹痛と頻回の血便.

  • 文献概要を表示

20歳,男性.1992年2月初旬から粘血便あり.下腹部痛,発熱を伴い,2月12日当科初診.

  • 文献概要を表示

34歳,女性,潰瘍性大腸炎の発症は12歳.全大腸炎型,慢性持続型.

  • 文献概要を表示

62歳,男性.1996年3月ごろから下痢で発症.

  • 文献概要を表示

34歳,女性.1981年(18歳時)に腹痛,下痢を主訴に某病院を受診し大腸Crohn病と診断された.

  • 文献概要を表示

36歳,男性.主訴:下痢,腹痛,体重減少.

  • 文献概要を表示

15歳,男性,主訴:下痢,腹痛.初回検査時の大腸に縦走潰瘍・敷石像がみられた.

  • 文献概要を表示

初診時年齢16歳,男性.

  • 文献概要を表示

初診時年齢17歳,男性.

  • 文献概要を表示

19歳,女性.下痢症状で発症.小腸,大腸にも病変があり,大腸病変はアフタ様潰瘍の多発から1年7か月の経過で典型的な縦走潰瘍へ進行した.

  • 文献概要を表示

36歳,男性.主訴:肛門痛,腹痛.

主題 Ⅰ.診断 1.潰瘍性大腸炎

  • 文献概要を表示

要旨 潰瘍性大腸炎の診断は,慢性に持続・反復する粘血便の主訴から本症を疑うことから始まる.放射線照射歴,抗生剤服用歴,海外渡航歴などを聴取し,細菌学的・寄生虫学的検査を施行し類縁疾患を除外する.次に前処置なしでS状結腸内視鏡検査と生検を施行する.その特徴的所見により,積極診断と除外診断を行い確診に至る.内視鏡で口側の正常粘膜を観察できれば罹患範囲が決定する.重症例では治療を優先させ,深部の状態を知る必要があるときには,前処置なしで水溶性prednisoloneを混入した薄いバリウムを用いた充盈法により注腸X線検査を行う.前処置や検査による悪化を避けるよう,心がける.

  • 文献概要を表示

要旨 大腸内視鏡検査は,潰瘍性大腸炎の診断,治療法の選択,治療効果の判定に欠かすことのできない検査である.急性期には,病状に悪影響しないように前処置なしで検査するのが原則であり,無理のない検査を心がけなければならない.本症の内視鏡像は病型,病期,病状および部位により大きく異なり,多彩である.また,初期には,一般の急性腸炎の内視鏡像と全く同様に浮腫,発赤,易出血性,びらんなどがみられるので,1回の検査のみで本症と診断することは危険である。小黄色斑がみられれば診断に有力な手がかりになるが,経過を追って"時間の目"で見ることが非常に大切である.少なくとも1~2年に1回ぐらいは,緩解期にも内視鏡検査を行うべきであり,これが本症に合併しやすい大腸癌の早期発見に非常に役立つ.

  • 文献概要を表示

要旨 潰瘍性大腸炎のX線検査について前処置法とバリウム濃度などを述べた.潰瘍性病変のX線所見を5型に分け,内視鏡所見を加味してみると,2型から活動性病変であった。更に,各型と緩解期の所見をみた.5型・4型では炎症性ポリープを残存する.再燃緩解型は4型に多かった.また,本症の経過で,潰瘍性病変が不均一な分布をした解離性と,ほぼ同様な分布をした同調性に分けた.臨床経過で初回型はすべて同調性であり,再燃型は解離性であった。長期経過で早期癌がみられる肉眼形態では,丈の低い平盤型病変が多かった。これらの病変を描出するには前処置を工夫して,微細な所見に注意する必要がある.

  • 文献概要を表示

要旨 1979年から1995年までの17年間に当科で行われた潰瘍性大腸炎に対する癌のサーベイランスについて報告する.7年以上経過した全大腸炎型あるいは左側大腸炎型の163例に対し,年1回の大腸内視鏡検査および10cmごとの生検を少なくとも1回行った.5例(3.1%)の大腸癌を発見したが,同時期にサーベイランスを経ずに発見された5例の大腸癌に比し予後は良好であった,dysplasiaは全大腸炎型104例から23例(22%),左側大腸炎型59例から4例(7%)が発見された。high-grade dysplasiaを認めた7例中3例(43%)に浸潤癌の合併が確認されハイリスクグループと考えられた.low-grade以下のdysplasiaについては診断および自然史について不明な点が多く,今後の課題である.

  • 文献概要を表示

要旨 潰瘍性大腸炎(UC)の病理診断は,“患者の病歴や症状のほかに,現在の所見と経時的所見とを含む以下の所見;一般検査所見,X線・内視鏡所見および病理形態所見”を総合したうえで行うことが基本である.UCは特徴的な肉眼像と組織像を有し,それらが内科的治療によって大きな変化を受ける.これらのことを熟知していると,肉眼像で正確に病変部を認識でき,診断に最適の部位から生検材料を採取することができる.更に,生検上での鑑別診断のためには,材料採取が,病変部内での種々の肉眼像から,病変境界部から,また正常に見える部からも行われるべきであることを強調したい.

主題 Ⅰ.診断 2.Crohn病

  • 文献概要を表示

要旨 Crohn病診断の手順と診断基準について解説した.本症診断のポイントは以下の点にあると考えた.(1)診断基準(案)適用以前に要を得た病歴聴取,一般検査所見が必要である.(2)X線・内視鏡検査を行う場合,小腸X線検査を施行すればCrohn病の8割は確診できると推定される.大腸のX線・内視鏡検査で確診できる頻度はこれより低率である.(3)縦走潰瘍を起こす腸疾患として,虚血性腸炎,腸重積,閉塞性大腸炎,急性腸炎(感染性腸炎,薬剤性腸炎),潰瘍性大腸炎など,著しい浮腫を伴った虚血性病変およびBehçet病が知られている.臨床的事項を加味すればCrohn病との鑑別は容易であろう.(4)敷石像は平坦な粘膜を欠く区域性に密集した隆起に対する呼称である。エルシニア腸炎,腸結核,閉塞性大腸炎,大腸癌などでも敷石像様病変がみられる.(5)Crohn病では敷石像が消槌すれば縦走潰瘍が出現する.したがって,両者を診断の目安とすれば診断困難な症例は少ない.(6)非乾酪性類上皮細胞肉芽腫は他疾患にもみられる.X線・内視鏡所見など臨床所見と合わせて診断することが必要である.(7)縦列する不整形潰瘍またはアフタ,特に十二指腸潰瘍に縦列するアフタがみられれば本症である可能性が高い.(8)アフタのみのCrohn病の場合,アフタ性腸炎などの除外が必要である.

(2)大腸内視鏡検査 長廻 紘
  • 文献概要を表示

要旨 Crohn病(CD)の内視鏡診断の要点は潰瘍の特徴をよくつかまえることに尽きる.潰瘍の大小種々であるが,サイズにかかわらずCDの特徴を持っている.しかし,大きなものほど特徴(discrete,縦走)が明瞭であり診断を下しやすい.小さい潰瘍は個々の潰瘍から診断することは難しく,それらを群として捉えて,群としての特徴(縦走配列)が明らかなものは診断可能である.潰瘍以外のことは内視鏡で解明があまり期待できず,X線検査の併用が必要である.

  • 文献概要を表示

要旨 現在の炎症性腸疾患(Crohn病を含む)のX線診断は二重造影像が主体で,所見のチェックも大部分が直接所見である.白壁は炎症性腸疾患の診断の要点を4つ挙げているが,その中の変形は従来は単に病変の存在をチェックする手段としてのみ理解されていた.われわれは,Crohn病の摘出標本レントゲノグラムを用いて変形と肉眼所見,組織所見との関係を検討した.変形による診断の意義は,①小病変のチェック,②病変の性状診断,殊にその方向性の診断である.検討した結果,小腸にみられた変形は一側性,両側性,膨隆型(タッシェ様,偽憩室変形)の3つに分けられた.この考え方は大腸の読影に際しても対応できるが,大腸の変形で最も重要なものは膨隆型変形である.

  • 文献概要を表示

要旨 Crohn病における小腸X線検査の意義は,①縦走潰瘍,偏側性変形,敷石像,不整形潰瘍,アフタ様潰瘍,裂溝,瘻孔,管腔狭小,管腔狭窄,瘢痕,炎症性ポリープなどの所見を描出し診断を確定する,②病変の罹患範囲と程度を把握する,③術後の再発を診断する,④治療効果を判定する,⑤小腸病変の経過を観察する,⑥初診時のX線所見から合併症の出現を予測する,などに要約される.ルーチンの小腸造影は経口法で十分であるが,縦走潰瘍や小病変描出のため,更には上述した小腸X線検査の意義達成のためには二重造影法を用いることが必要である.また他疾患とのX線学的鑑別も小腸二重造影法を行うことによって容易となる.

  • 文献概要を表示

要旨 手技上の困難さから,小腸Crohn病に対する内視鏡観察は容易ではない.筆者らはCrohn病に対する小腸内視鏡検査の目的を,①他の類縁疾患との鑑別診断,②確定診断の下されたケースに対する治療方針,治療効果判定,などとしている.小腸Crohn病の内視鏡の特徴は大腸病変と同じである.X線検査と比較すると,より小さい不整形潰瘍やアフタについては内視鏡の診断能が優れている.したがって内視鏡検査は粘膜面のわずかな炎症所見の診断,すなわち本症の初期像や炎症の増悪時の診断,炎症が消褪し瘢痕化した時期の診断に適応がある.拡大内視鏡やEUSなどの導入によって,小腸Crohn病の診断や病態の解明にも新しい機運が生まれているものの,内視鏡観察そのものが難しいため,まだX線診断を凌駕するには至っておらず,これからの進歩に期待しなければならない.

  • 文献概要を表示

要旨 Crohn病患者47例について,胃・十二指腸病変の特徴をまとめた.Crohn病の特徴所見は,主に十二指腸にみられたノッチ状外観11例,数珠状隆起4例,粗大顆粒4例,多発性アフタ7例,胃前庭部のたこいぼ型びらん5例,胃体部小彎の竹の節状外観25例などであった.生検ルーチン標本からの肉芽腫検出率は,これらの特徴病変では23%(12/52)であったが,それ以外の病変や正常部では2.5%(1/40)にすぎなかった.上部消化管検査によるCrohn病の発見や肉芽腫の検出には,Crohn病の胃・十二指腸病変の特徴を把握しておくことが大切であり,なかでも竹の節状外観の頻度が高いことを強調した.

  • 文献概要を表示

要旨 Crohn病145症例の171手術標本の分析に基づき,本症の病理肉眼所見と組織所見を概説した.特徴ある縦走潰瘍,敷石像,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫,全層性炎症,裂溝,閉塞性リンパ管炎などのうち,前3者が本症に比較的特異性が高く,その病理診断にはこの3者の組み合わせが大切であることを強調した.そして,新しい診断基準の正当性に言及した.また,本症の病理形態像も治療によりある程度変遷することがあるので,その診断に際してはこのことも念頭に置いて取り掛かる必要があることを述べた.更に本症の生検診断と標本の取り扱いについても簡単に触れた.

  • 文献概要を表示

要旨 炎症性腸疾患の内科的治療について概説し,新しい薬剤・治療法についても紹介した.潰瘍性大腸炎ではsalazosulfapyridine,mesalazine,prednisolone,免疫抑制剤などの薬物療法が主体で,それらを用いた重症度別の初期治療と緩解維持療法の治療指針を解説した.また,現在その有用性が検討されている白血球除去療法・顆粒球吸着法にも触れた.Crohn病では成分栄養法を中心とした栄養療法の重要性を述べ,更に病型別の薬物療法の実際について解説を加えた。

  • 文献概要を表示

要旨 潰瘍性大腸炎(UC)の外科治療は重症(大出血,中毒性結腸拡張,穿孔),難治(ステロイドに対する副作用,効果不良,大量投与例),大腸癌合併,発育障害,腸管外合併症などに対して行われる.緊急手術では,救命を優先し,結腸全摘,回腸人工肛門造設が行われ,待機手術では,大腸粘膜を全摘し,肛門機能を温存する大腸全摘,回腸囊肛門吻合術が広く行われている.一方,Crohn病(CD)では,狭窄,閉塞,瘻孔,膿瘍,難治などが主な手術適応で,このほかに穿孔,大出血,発育障害,腸癌,肛門病変などに対して手術が行われる.病変部位の切除が原則であるが,小腸の狭窄には狭窄形成術(strictureplasty)が行われる.UC,CDともに原因不明の腸潰瘍を主体とする疾患であり,UCでは薬物療法で,CDではこれに加えて栄養療法で長期緩解を目指して治療が行われている.外科も治療の一端を担っており,両疾患について手術適応,手術時期,手術方法などについての考え方を述べたい.

  • 文献概要を表示

要旨 炎症性腸疾患,特にCrohn病に合併する肛門部病変は頻度が高いうえにquality of lifeを左右する重要な合併症である.肛門部病変は,痔瘻,潰瘍,skin tagを含めた腫脹に分けられる.なかでも痔瘻は最も重要な合併症であるが,低位痔瘻またはⅠ型,Ⅱ型痔瘻の根治手術による治療成績は良好である。しかし,高位痔瘻またはⅢ型,Ⅳ型痔瘻は治療に抵抗性であるため,切開排膿やseton法などによる姑息的治療を治療の中心とすべきである.更に高度な肛門部病変に対しては,fecal diversionが必要となるが,術後のquality of lifeは良好である.直腸肛門の排便機能が廃絶し修復が不能となったものでは最終的には直腸切断術の適応となる.

  • 文献概要を表示

要旨 潰瘍性大腸炎(UC)とCrohn病(CD)に伴う腸管外合併症の主なものは,皮膚病変(UC 19.2%,CD 32.3%),関節病変(UC 12.7%,CD 26.9%),結石症(UC 5.3%,CD 7.7%)などであり,合併疾患を伴っていないものは,UC 49.1%,CD 38.5%で何らかの腸管外合併症を有するものが多い.病型別にみると,UCでは全大腸炎型に多く,CDでは大腸型に多い.炎症性腸疾患(IBD)に特徴的とされる皮膚病変は,壊疽性膿皮症,結節性紅斑などであるが,前者はUCに多く,後者はCDに多い合併症である.腸管外合併症は,IBDの病態と関係し発症するもの,偶然合併したもの,治療による副作用として発現したものなどが含まれる.

  • 文献概要を表示

要旨 潰瘍性大腸炎の長期予後について,発症から10年以上の長期経過例(105症例)を対象として画像(X線,内視鏡)からみた長期経過を含めた検討を行い,以下の結果を得た.①死亡率は1.0%,累積生存率は99.0%とその長期予後は比較的良好である.②手術率は10.5%で,その大半は相対的適応例であった.③癌発生率は0%,癌併存率は1.0%と少なかったが,癌の早期発見には特に緩解期における質の高い画像診断が有用である.④経時的に再燃率は低下し,10年以後の再燃率は軽症再燃まで含めても49,2%で,中等症以上での再燃率は21.1%と少ない.⑤罹患部位の口側進展率は19。0%と少なく,発症時に罹患部位はほとんど決定された.⑥発症時の画像所見は,長期予後(再燃率,緩解率,手術率など)の推定に有用である.更に,難治性潰瘍性大腸炎の画像について述べた.

  • 文献概要を表示

要旨 Crohn病の長期予後について,10年間以上X線学的に経過を追えた22例(平均13.7年,最長22年)を対象として,画像所見(敷石像,縦走潰瘍,瘻孔,狭窄など)の推移を中心に述べた.増悪し手術に至る例のみならず,長期間緩解を維持しX線所見の著明な改善を認める例もみられた.10年間で検討すると,開放性潰瘍は診断時に比し治療経過とともに次第に軽減する傾向がみられた.また,治療中における狭窄病変の推移は小腸と大腸では違いがあり,小腸では改善~不変例が多く,逆に大腸では増悪例が多かった.在宅栄養療法や薬物治療などの内科的治療を主体とし,必要に応じて臓器温存を念頭に置いた外科治療を行うことが,長期予後を改善するうえで有用と考えられた.本症は高率に再燃し累積手術率も高いが,生命予後は必ずしも不良ではない.短期的緩解導入やその維持を主体としながらも,長期的視野を持って検査と治療を行うことが重要である.

  • 文献概要を表示

要旨 過去10年間に,臨床症状および画像所見から,虚血性大腸炎との鑑別を要した症例は,既知の炎症性腸疾患例を除くと181例あり,うち,最終的に狭義の虚血性大腸炎と診断されたものは45例であった.急性期は,感染性および薬剤性の出血性大腸炎と,治癒期の狭窄型はCrohn病との鑑別が重要と思われた.詳細な病歴聴取と便培養検査が重要であり,更に臨床経過および画像所見の推移をみることによって,本疾患の鑑別診断は,ほぼ臨床的に可能と考えられた.しかし,起因菌の同定できない感染性腸炎との鑑別は困難と思われた.

  • 文献概要を表示

要旨 活動性腸結核13例のうちの5症例を挙げ,主にX線所見について解説し,それぞれの症例と鑑別診断を要するCrohn病,潰瘍性大腸炎症例を挙げ,鑑別点についてまとめた.腸結核の潰瘍は輪状潰瘍,横走潰瘍と“横”の配列,走行を示した.そして,個々の潰瘍は浅い,不整潰瘍とはっきりした周堤を伴う溝状,不整潰瘍がみられた。Crohn病では縦走潰瘍,不整小潰瘍,アフタ様潰瘍の縦の配列など“縦”の走行,配列を示した.また,潰瘍性大腸炎では“対称性”,“びまん性”の変化がみられ,これらの所見で腸結核,Crohn病との鑑別診断がなされる.腸結核の所見と対比させることによりCrohn病,潰瘍性大腸炎の所見が浮き彫りにされ,これら慢性炎症性腸疾患の病因解明への形態的アプローチの道が開かれる.

  • 文献概要を表示

要旨 腸型Behçetと単純性潰瘍の典型像は,回盲部近傍の打ち抜き様の深い潰瘍で,形態学的には病理組織像を含めて両者の鑑別は不可能であり,Behçet症状の有無で鑑別されている.しかしながら,腸型Behçetでは口内アフタと同様にアフタ様潰瘍が消化管に多発し,反復して出現することをしばしば経験する.この点が両疾患の鑑別点になるのかもしれない.両者の鑑別は困難であるにしても,そのほかの疾患との鑑別に困ることはまずないが,Crohn病,潰瘍性大腸炎,腸結核に類似した所見を呈した腸型Behçetの症例を提示し,それら疾患との鑑別点について述べた.

  • 文献概要を表示

要旨 非特異性多発性小腸潰瘍症は比較的まれな疾患であるが,Crohn病と鑑別すべき病態を有しているため,両疾患の病態を正確に把握すべきである.本症は急激な病勢の増悪は少ないが難治性で,手術後も再発する.臨床的には持続する出血と貧血が特徴で,遺伝的にはCrohn病とは異なる.小腸病変は下部回腸が主座の潰瘍性病変で,形態と病変像は特徴的でCrohn病や腸結核とは異なる.小腸潰瘍は辺縁鋭利な線状あるいは菱形で,斜走あるいは輪走し,多発し,浅い.病理学的には線維化は少なく,毛細血管に富み,炎症細胞浸潤は軽い.小腸のほかに,十二指腸にも類似の潰瘍がみられる.また,大腸にも輪状傾向の潰瘍が生じうる.本症の確診には小腸X線検査が重要で,近接して多発する辺縁硬化像,管腔狭小化,Kerckring皺襞の偏側性欠如に加え,浅いニッシェを描出すれば診断が確定する.

(5)薬剤起因性腸炎 桜井 幸弘
  • 文献概要を表示

要旨 薬剤起因性腸炎は偽膜性腸炎と出血性腸炎に大別できる.潰瘍性大腸炎との鑑別のうえで重要なポイントは,内視鏡所見,病変の部位と範囲である.潰瘍性大腸炎に少しでも非典型的な所見があれば,本疾患も疑い,薬剤の服用歴を聴取する.内視鏡検査では可能な限り大腸全体を観察する必要があるが,不可能な場合は超音波やCTを併用することで病変部位の診断は可能であり,鑑別の助けになる.典型的な内視鏡所見を熟知し,非典型例を参照すれば鑑別は容易である.

  • 文献概要を表示

要旨 感染性腸炎の存在は,詳細な病歴の聴取と特徴的な臨床経過により推定できる場合が多い.慢性感染性腸炎では,比較的特徴的な内視鏡所見がみられ,大腸内視鏡検査は診断に有効であるが,急性感染性腸炎では,病原体に特有な内視鏡所見が少なく,大腸内視鏡検査の果たす役割は,病変部位とその拡がり,程度,他の炎症性腸疾患との鑑別などが主である.感染性腸炎では病原体の検出が必要であり,非特異性腸炎の初期像との鑑別には,経過を追った“時間の目”でみることが必要である.感染性腸炎は社会環境の変化によって大きく消長し,常に新しい疾患の出現も予想され,1つ1つの症例を十分に注意しながら観察していくことが大切である.

  • 文献概要を表示

要旨 国際化の時代を迎え,輸入感染症としてのアメーバ赤痢は増加傾向にあり,その理解と医療対応が望まれる.診断面では,海外渡航歴,同性愛行為などの感染経路の問診による検索,腹痛を伴わない慢性の粘血便,腹部膨満感などの臨床症状,更に内視鏡像では易出血傾向の強い浮腫,びらん,たこいぼ所見,潰瘍病変などの特徴的所見を把握し,特に潰瘍性大腸炎との鑑別が重要である.また,糞便や生検材料によるアメーバ原虫の検出,特に血清学的診断法としてのゲル内沈降法は特異性と再現性に優れている.治療薬としてはmetronidazole(750mg/日)の有効性が高い.

  • 文献概要を表示

要旨 消化管アミロイドーシス56例と,Crohn病18例,潰瘍性大腸炎16例の小腸および大腸のX線・内視鏡所見を比較し,各疾患の形態学的差異を検討した.アミロイドーシスのアミロイド蛋白型は,AA型38例,AL型14例,AH型3例,AF型1例であった.AA型において微細顆粒状隆起の多発から成る粗糙な粘膜が,AL型において粘膜下腫瘤様隆起の多発と皺襞の肥厚が,小腸を中心にびまん性かつ連続性にみられた.したがって,縦走潰瘍,敷石像と偏側性変形が区域性かつ非連続性に出現するCrohn病とはX線所見の有意な差異を認めた.潰瘍性大腸炎では,粘膜粗糙,粘膜の脆弱性,haustraの消失所見にAA型アミロイドーシスとの重複を認めた.しかし,潰瘍性大腸炎の粘膜粗糙像が凹凸顆粒状粘膜と不整なびらんの多発によって形成されていたのに対し,AA型アミロイドーシスでは比較的均一な微細顆粒状隆起の多発によって成り立っていた.以上の成績から,二重造影と色素撒布を併用した内視鏡検査で粘膜の微細な変化を捉えることにより,消化管アミロイドーシスとCrohn病,潰瘍性大腸炎との鑑別は形態学的にも可能であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 直腸粘膜脱症候群は,①隆起型,潰瘍型,平坦型などの多彩な形態をとり,それらが混在することもある,②直腸中下部の前壁~前側壁に多く,全周性に病変がみられることもある,③長時間の排便時間,いきみの習慣,顕在または潜在の直腸脱などがみられる,などの点から本症の存在を思い浮かべることが診断上最も重要である,生検で線維筋症が証明されれば確定診断される.急性出血性直腸潰瘍では,高齢者で寝たきり状態にある患者に大量の無痛性の下血がみられた場合,まず本疾患の可能性を考え,本症の好発部位である下部直腸を反転観察で丹念に観察することが診断上重要である.

  • 文献概要を表示

要旨 放射線腸炎は放射線治療によって生じた腸管の炎症性病変である.腸管の障害は,照射中に生じる早期障害と照射終了後に生じてくる晩期障害に分けられる.画像上で診断できるのは後者で,びらん,潰瘍,狭窄,穿孔,瘻孔などが出現してくる.病変は中央部で著明で,周辺部になるにつれて軽度となる.組織学的には炎症性細胞の浸潤や肉芽組織の形成が乏しく,血管に閉塞性変化やしばしば血栓形成がみられる。放射線大腸炎には,健常者に比して大腸癌が2~3倍合併しやすく,その場合,①扁平な癌の率が高い,②癌が多発しやすい,③癌病変と非癌部との境界が不明瞭である,④粘液癌の率が多い,⑤周囲粘膜に異型性細胞が認められる,などの特徴を示す.

  • 文献概要を表示

要旨 炎症性腸疾患に内視鏡的超音波検査法(EUS)を施行し,病変部の腸管壁における炎症の病態を検討した.正常層構造は5層構造として描出され,炎症は低エコー変化として,潰瘍は欠損として観察された.潰瘍性大腸炎では重症度に応じて,炎症は粘膜層から連続する垂直方向の変化として観察された.一方,Crohn病では粘膜下層を中心とした変化として描出され,潰瘍性大腸炎で観察される病態とは明らかな差異を認めた.EUSは粘膜面の内視鏡的観察とともに腸管壁の垂直断面の観察が可能であるため,炎症性腸疾患の病態診断,更には重症度の判定および治療方針の決定に重要である.

  • 文献概要を表示

要旨 炎症性腸疾患を含め消化器疾患に対して,X線検査や内視鏡検査の前に腹部超音波検査やCT検査が行われることが多い.これら非侵襲的検査法は消化管癌はもちろんのこと,炎症性腸疾患のスクリーニングとして有用であるのみならず,最近の機器の進歩により炎症の範囲,炎症の程度,合併症などの評価が可能である.また,MRIも高速化され分解能もよくなり,消化管病変の診断に利用される時代になった.これら画像診断による炎症性腸疾患の腸管壁の所見,腸管壁外の所見について述べる.

  • 文献概要を表示

要旨 炎症性腸疾患の欧米での罹患率は,人口10万人対,UC 1.5~17.0,CD O.3~6.7で,本邦のUC 1.95,CDO.51を上回っている.欧米での有病率も,UC 21.4~225.2,CD 8.3~105.7で,本邦のUC 18.12,CD 5.85を上回っている.欧米ではUCの罹患率,有病率に変化はなく,CDは増加しているが,本邦ではともに増加している.本邦での発症年齢は,UCでは男性20~24歳,女性25~29歳に,CDでは男性20~24歳,女性15~19歳にピークがみられる.この傾向は欧米でも同様である.また,UCの死亡率は,欧米では0.1~O.25であるが,本邦では約0.1と低い,本邦,欧米ともに1980年代以降UCの死亡率は低下する傾向にある.一方,CDは,欧米では本邦に比べ死亡率が高い.

  • 文献概要を表示

要旨 炎症性腸疾患の病因,病態はいまだ不明な点もあるが,近年の免疫学的研究の急速な進歩により,その病態は徐々に解明されつつある.IL-2,IL-10およびTCRβなどのノックアウトマウスやIL-7 transgenic mouseで慢性腸炎を発症することが報告され,腸局所での炎症形成にサイトカインネットワーク異常に基づく粘膜内での免疫異常反応の関与が証明されている.更に抗大腸抗体などの自己抗体や細胞障害性T細胞が潰瘍性大腸炎の粘膜障害に重要な働きをしていることが示唆されている.Crohn病でも炎症性サイトカインの関与が示唆されているほか,粘膜内CD4陽性細胞が病変形成に重要な役割を果たしていると考えられており,CD4陽性細胞を標的としてその活性化を抑制する治療法が検討されつつある.

--------------------

  • 文献概要を表示

 ここ十数年の間に,各種画像診断器機が急速に進歩・普及し,臨床的に発見される肝癌あるいはその類似病変のサイズはどんどん小さくなってきた.日本肝癌取扱い規約では,最大径2cm以下の単発肝癌を細小肝癌と規定しているが,臨床の現場では1cm前後の微小な結節性病変も画像上診断可能の時代である.しかしそれらの生検や切除材料の病理組織学的診断となると,病理診断医の間でも意見が分かれることが往々にしてあり,臨床医を困惑させることも少なくないのが実情である.このような時期に「早期肝癌と類似病変の病理」が上梓されたことは誠に時宜を得たと言うべきであり,正に待望の書の出現とも言える.

 著者の神代正道教授は,肝癌および門充症の病理学で一時代を築かれた中島敏郎名誉教授の高弟であり,病理学教室の後継者でもある.恩師の下で培われた剖検材料による肝癌の病理学を土台として,神代教授は早くから外科切除材料を用いた生体の肝癌病理の必要性に着目され,特に胃癌や大腸癌と同列に論じられるような早期肝癌像の解明に精力的に取り組んで来られた.その卓越した研究成果と見識で肝臓学会,肝癌研究会などで常に指導的役割を担って来られた.本書はその集大成と言うべきものである.

  • 文献概要を表示

 この度,山本俊一博士著の「死生学―他者の死と自己の死」が医学書院から刊行された.

「死生学」の執筆は哲学者や神学者などの人文科学の畑の専門家または医学や看護に携わる医療従事者,その中でも一番多くが致死患者を扱う臨床医によって書かれたものであり,ホスピスの終末期医療の経験者によって書かれたものが最も多い.

  • 文献概要を表示

 この度,画像診断のための基礎シリーズの第3弾として甲田英一,古寺研一,平松京一の共著で「画像診断のための知っておきたいサイン」第2版が医学書院から出版された.初版は1983年なので,その後の目覚ましい画像技術の進歩に対応してその内容が改訂されている.全頁数は248頁,価格は3,800円,そして大きさはA5判,いずれも手ごろで簡便な画像診断の参考書である.

 目次では部位別または臓器別に画像サインが並べられている.全画像サインの数は228で,全診断領域に及んでいる.各頁は画像サインの名,その特徴的所見を示すシェーマ,そのサインの説明,そしてその臨床的意義と文献で構成されている.特にシェーマは頁面積の約50%の大きさで描かれ,画像サインの本態を視覚的に記憶しやすく,また理解しやすくしてある.画像サインのイメージモダリティは,単純X線,各種の造影検査,CT,US,核医学に及んでいる.索引は和文と欧文から成り,特に知りたい画像サインは欧文索引から引けるようになっている.

  • 文献概要を表示

 薬剤師法が一部改正され,本年4月から薬剤師は,調剤した薬剤の適正な使用のための必要な情報を患者に提供することが義務化された.患者に提供すべき情報とは,最近の医療環境および医療裁判の判例などから医薬品名,効能・効果,用法・用量,副作用,相互作用などの注意事項ならびに回避方法などが挙げられる.しかし,薬剤師がこれらの情報を的確に患者へ提供するためには,臨床の現場で医師がどのような治療方針を立て,薬物療法を行っているのかを理解することが必須となる.本書は初版発行以来,40年近く毎年刊行され,日本の保険診療に対応した現時点の最新・最高の治療法を収録した治療年鑑である.97年度版は943名の専門医が最新の知識に基づいて,966に及ぶ疾患項目を病態,病期,重症度に応じて,具体的にきめ細かく治療方針,処方例を提示しており,臨床に携わっている医師の薬物療法の意図が薬剤師へ明確に伝わってくる.また,付録として収載されている“抗生物質の使い方”,“抗癌剤の使い方”,“皮膚外用薬の使い方”なども使い方のポイントや副作用などが明快に解説されている.更に,保険適用の項目を中心に日常よく用いられるものを選んで一覧にした“基準値(正常値)一覧表”,頻用される医薬品の“副作用と相互作用の総説および,一覧表”,発行直前までの新規認可になった医薬品,発売予定の医薬品がすべて網羅された“治療薬使用の手引き”なども非常に便利であり,薬剤業務に直ちに活用できる.

  • 文献概要を表示

 「引用」の範囲を超えて他人の著作物を,自身の著作物へ取り込む場合(“転載”)には相手方(著作権者・出版社)の許諾が要ります.(許諾の条件として著作権使用料を請求される場合もあります)但し,「引用」の条件を満たして利用する場合は自由に利用できます.

編集後記 樋渡 信夫
  • 文献概要を表示

 潰瘍性大腸炎とCrohn病の診断基準(案),治療指針(案)が示されてから,約20年が経過した.それ以来同じ概念や基準の下に,診断や治療成績の討論がなされてきた.

「胃と腸」時代には炎症性腸疾患の特集は2,3年に1回程度だったが,「胃と腸」になってからはその頻度が増し,最近は年に2本程度特集が組まれている.患者数の増加と相まって,その診断学は確実に進歩してきた.当時はCrohn病と腸結核の鑑別が大きな問題であり,治療的鑑別診断がよくなされた.その後,診断するわれわれの眼も慣れてきて,現在ではX線1枚でも典型例なら診断可能になってきた.

基本情報

05362180.32.3.jpg
胃と腸
32巻3号 (1997年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)