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書評「早期肝癌と類似病変の病理」
岡本 英三
1
1兵庫医科大学第1外科
pp.288
発行日 1997年2月26日
Published Date 1997/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105059
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ここ十数年の間に,各種画像診断器機が急速に進歩・普及し,臨床的に発見される肝癌あるいはその類似病変のサイズはどんどん小さくなってきた.日本肝癌取扱い規約では,最大径2cm以下の単発肝癌を細小肝癌と規定しているが,臨床の現場では1cm前後の微小な結節性病変も画像上診断可能の時代である.しかしそれらの生検や切除材料の病理組織学的診断となると,病理診断医の間でも意見が分かれることが往々にしてあり,臨床医を困惑させることも少なくないのが実情である.このような時期に「早期肝癌と類似病変の病理」が上梓されたことは誠に時宜を得たと言うべきであり,正に待望の書の出現とも言える.
著者の神代正道教授は,肝癌および門充症の病理学で一時代を築かれた中島敏郎名誉教授の高弟であり,病理学教室の後継者でもある.恩師の下で培われた剖検材料による肝癌の病理学を土台として,神代教授は早くから外科切除材料を用いた生体の肝癌病理の必要性に着目され,特に胃癌や大腸癌と同列に論じられるような早期肝癌像の解明に精力的に取り組んで来られた.その卓越した研究成果と見識で肝臓学会,肝癌研究会などで常に指導的役割を担って来られた.本書はその集大成と言うべきものである.
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