連載 他科との連携
リンパ腫をめぐって
安積 淳
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1神戸大学大学院医学系研究科器官治療医学講座(眼科)
pp.2014-2015
発行日 2004年10月15日
Published Date 2004/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100778
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このところリンパ腫に「はまって」いる。もともと免疫だのリンパ球だのといったことに興味があったのだが,診断・治療を通じてさまざまな科の先生から刺激を受ける機会が多いことも大きな理由の1つだ。リンパ腫にかかわる他科との連携を思いつくままに書き落としてみる。
リンパ腫ですか? ― 病理医との連携
少し前まで,MALTリンパ腫という診断は悩みの種だった。ほとんどの場合,放射線照射が有効なのだが,ちっとも効かないケースもあるのだ。プレドニン内服に変更すると,涙腺の腫瘤はたちどころに消退するではないか。これってほんとにリンパ腫なの? 免疫グロブリン遺伝子再構成は陰性と出ている。「先生,これって反応性リンパ過形成じゃないでしょうか?」「うーん」。その後,病理医からは次のような回答が返ってくることが多くなった。「反応性リンパ過形成(MALTリンパ腫)と考える。しかし,MALTリンパ腫(反応性リンパ過形成)との鑑別には遺伝子再構成やフローサイトメトリーの結果を合わせて判断すべきである。」この回答を病理医の優柔不断と捉えるのは正しくない。眼窩に発生するリンパ増殖性病変の診断は,それを専門としない病理医にとってけしてやさしい仕事じゃないのだ。臨床屋として嬉しいのは,病理医が遺伝子再構成の結果や治療経過を病理診断にフィードバックしてくれている姿勢だ。眼科医は重要情報の発信源とみなされているのだ。逆に,「患者さんのその後についての連絡がない」と別の病理の先生から厳しくお叱りを受けたことがある。「へへーっ」と病理診断頂戴,というだけでは病理医とのいい連携なんてありえないのだ。
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