medicina 50巻9号 (2013年9月)

『medicina』50周年を迎えるにあたり

特集 内科医のためのクリニカル・パール2

藤田 芳郎
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 うーんと唸ってしまいました.原稿を拝見し感動のあまり言葉を失いました.とにかく読んでみてください.素晴らしい内容であります.知識はもちろんのこと,各先生方の臨床医としての熱意あふれる文章に引き込まれます.時に短編小説を読んでいるという錯覚にとらわれるほどでした.あまりに素晴らしい文章を目の当たりにし,「ずうずうしい」お願いをお引き受けくださった先生方にこの場をお借りし心からお礼を申し上げたいと思います.読者の皆様におかれましては型破りの挨拶で始めることをお許しください.

 内科診療の幅は広くなり,さあ今日から内科を勉強しようと思っても何から始めていいかわからないまま,教科書の厚さに圧倒される.そこで,一流の臨床医の先生方の頭のなかにある基本や要点のほんの一部でもご披露いただけないか,そこを起点として勉強を始めることができないかと「虫が良すぎる」話を頭に描いて,「ずうずうしい」かもしれない企画をしたのが2009年9月号「内科医のためのクリニカル・パール」でした.今でも私の座右の書の一つであります.

特集の理解を深めるための20題

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藤田(司会) 本日は先生方のいろいろなご経験をお話しいただいて,そこから学んでいける座談会になるのではないかと思っています.では,よろしくお願いいたします.

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心臓マッサージは究極の対症療法.原因検索と原因療法を

 院外心肺停止の蘇生率はいまだに低く厳しい症例ばかりである.適切な二次救命処置(ACLS)のため,特に気道確保やラインの確保ができなかった際のplan Bやplan C(エラスティックブジーの使用や輪状甲状靱帯穿刺・切開,中心静脈路や骨髄針の使用など)を常にもっておきたい.

 適切なACLSの施行はもちろん,なぜ心肺停止になったのかを探る必要がある.6H6T(表1)はよく知られた原因検索であるが,“Treatable”と枕詞が着いている.これらは救急室で積極的に検索し治療を開始するべき疾患として挙げられている.しかし,6H6T以外の原因で心肺停止となることも多く経験する(くも膜下出血,大動脈解離など).最近では死因究明のため死亡時画像診断(Autopsy imaging:Ai)を施行することで死因究明に至る症例も経験する.

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 救急外来では,まったく診断がつかなくて困ってしまうような事態に頻繁に遭遇するが,こんな時に,その場の誰かが「これって,○○じゃ…」と呟いた瞬間に霧が晴れるように診断が確定してしまうような場合も少なくない.

 本稿では,「意識障害+高体温+頻脈+発汗」というキーワードで心にのこった症例を紹介する(どの疾患も受診者20,000~40,000人/年,救急車6,000~7,000台/年という規模の救急外来で数年に一度は経験するものである).

総合診療

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「認知症だから仕方ない」ではなく,「認知症だからこそ」より工夫をしてしっかり問診・身体診察を行う!

 認知症,精神疾患,小児など,意思疎通が難しく,問診・身体所見を十分にとれないケースは確かにある.そこで,「意思疎通が難しいので,さっさと検査だ!」となっても,大抵うまくいかない.意思疎通の困難なケースほど,より一層工夫して問診・身体診察を行うことが重要である.これは,「好中球減少症だから炎症所見がどうせ出にくいだろう」といって絨毯爆撃的な検査を行うのではなく,「より一層問診・身体診察に力を入れて,感染巣を絞り込む努力をしよう」という思考によく似ている.例えば,認知症患者における瞳孔の観察でArgyll-Robertson瞳孔(対光反射は消失するが近見反射は保たれているもの)を認めると,神経梅毒を疑うきっかけとなる(表1).妥協をするのは簡単であるが,妥協は診療をより複雑にするので後でしっぺ返しがくる.困難な症例ほど基本に忠実でありたい.

総合診療 〔心にのこる症例〕

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原因はチマキ?

症例1

70歳女性.1年前に脳動脈瘤クリッピング術と両側硬膜下水腫の手術歴があり,脳循環代謝改善薬(イブジラスト),気分障害に対してアリピプラゾールを内服していた.1カ月前から過活動性膀胱に対して抗コリン薬(イミダフェナシン)の内服を開始した.来院3日前に夫がベトナムで購入したチマキを食べた後に下痢症状を認めた.その後,徐々に意識レベルが低下し,来院当日呼びかけに反応を示さなくなったため夫が救急車を要請した.

救急室搬送時の意識レベルはJCS(Japan Coma Scale)Ⅲ-200.瞳孔は左右ともに3mmで対光反射を認めた.

感染症

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院内の発熱患者につけられる「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」という診断の多くは間違っている!

 感染症医の仕事のなかに,血液培養の陽性例のチェックがある.これを見ているとさまざまな気づきがある.それは,血液培養採取時の診断名として「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」がきわめて多いことである.そしてその臨床診断は,残念ながら,多くの場合外れてしまっている.

 なぜこういうことが起こるのだろうか.発熱患者を診たときに,一見では問題がわからず,診断に困ってしまう場合がある.症状が非特異的である,身体所見で特記事項がないなどの場合に多い.このような場合に医師は本能的に何らかの診断をつけようとする.その際に用いられる診断として「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」がきわめて多い.一見症状や所見に乏しいが「発熱+尿中白血球陽性」であるので腎盂腎炎と診断する.一見症状や所見に乏しいが「高齢者であって,胸部X線写真で陰影があるように見える」から誤嚥性肺炎と診断する.このようなことが起こってしまう.診断にたどり着けないがゆえに,手近な診断である腎盂腎炎や誤嚥性肺炎に頼ってしまう.いわば認知バイアスとしてのanchoringが起こってしまうのである.

感染症 〔心にのこる症例〕

追憶と学び 柳 秀高
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 難しい症例を診断できたことも多少なりともありますが,それよりも,よくある疾患による重症患者を救命できたことのほうがよく覚えています.そして失敗したケースのほうが上手くいった患者さんよりも深く胸に刻まれています.

血液・腫瘍

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貧血の診断は,まず網状赤血球をみることから始める

 貧血の病態として,骨髄での赤血球の産生が低下している場合と,末梢での消費(出血,溶血など)が亢進している場合がある(時にはこの両者が混在する).骨髄での赤血球産生量の指標として役に立つのが網状赤血球数(reticulocyte)である.網状赤血球は赤芽球が脱核したばかりの赤血球で,細胞質のRNAが網状に染色されるが,翌日には通常の成熟赤血球になる.赤血球の寿命が120日なので,日々失われる赤血球と新たに産生される赤血球が平衡状態にある場合(すなわち健常な状態)では,赤血球の1%程度が網状赤血球ということになる(絶対数として2~8万/μL).骨髄の機能や腎のエリスロポエチン産生能が正常の場合,貧血状態になればエリスロポエチンの上昇に伴って赤血球の産生量が増加するため,網状赤血球絶対数は増加する.

網状赤血球絶対数=全赤血球数×網状赤血球割合(%)

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すべてのがんに,早期発見・早期治療が有効というわけではない.検診が有効ながんは一部のみ.PET検診は勧められない

 すべてのがんに,早期発見・早期治療が有効であるわけではない.がんの進行は,非常に緩徐に進行するものから,急速に進行し,あっという間に死に至るものまでさまざまである.早期発見・早期治療は理論的には良いように思われるが,緩徐に進行するがんや,急速に進行するがんには,適応することはできない.がん検診を考える場合,検診がどこまで有効かどうかを知っておく必要がある.有効性の評価をするには,発見率だけではいけない.がんの発見率が高くなったとしても,最終的にがんの死亡率まで下げることができなければ,検診を勧めるだけの意味がない.厚生労働省は,胃がん,子宮頸がん,肺がん,乳がん,大腸がんを科学的根拠に基づくがん検診として推奨している1,2)が,このうち,国際的にもランダム化比較試験,メタアナリシスでのエビデンスをもって推奨されているのは,乳がんのマンモグラフィー3),大腸がんの便潜血検査4)のみである.また,最近では,乳がんマンモグラフィー検診で,早期がんは増えたが,進行がんが減っていないことのアンバランスから,乳がん検診は過剰診断が行われているだけであり,検診の利益は少ないのではないか,ということがNew England Journal of Medicineに投稿され,乳がん検診の是非が話題になっている5)

 このように,がん検診に対するエビデンスには限りがあり,すべてのがん腫に適応できるものでもない.また,検査による過剰診断,偽陽性の問題もあり,適応は慎重であるべきである.PET(positron emission tomography)検査は,特異度が高く(約95%),近年多くのがん腫の病期診断,治療の評価として使われるようになってきたが,検診として勧めるだけのエビデンスは確立されていない.国立がん研究センターの研究で,PET検査は従来の検査に比べて,感度が低く(17.8%),従来の検査で見つかったのに,PETで見落とされていた偽陰性率が高かった(82.1%)ことを報告している6)

血液・腫瘍 〔心にのこる症例〕

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症例

50歳の男性.ここ2~3週間で現れた腹部膨満を伴う全身倦怠感,食欲低下を主訴にERを受診.数カ月ほど前から倦怠感には気づいていたが,調理師としていつも通り働いていた.ここ数十年医師にかかったことはないため,特記すべき既往歴も認められなかった.

身体所見は,膨満した腹部以外は,特筆すべき所見なし.

血液検査では,血算,腎,肝機能異常はなかったが,著明なアルブミン低下(2.3g/dL)が認められた.ERで撮られた腹部CTにて,肝臓に10cm大の腫瘤を認め精査目的で総合内科入院となった(図1).

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病態生理の把握から

 クリニカル・パール,心にのこる症例は,他人から言われると「そういうのもありね」になる.本当のクリニカル・パールは,自分自身で経験した症例のなかから生まれてくる.しかし,同じ症例を経験しても,チーム医療のなかでの議論(あるいは他者との議論),基礎的知識(知識を生かす智恵)がないと,クリニカル・パールは出てこない.臨床はわからないことだらけである.日常臨床で忙しいなかでも,少し後戻りして,基礎(基本)的立場から見直してみると,「目から鱗が落ちる」場合がある(図1).

呼吸器 〔心にのこる症例〕

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症例1

16歳男性.緊急手術後の気管切開口閉鎖後,不眠.

頸椎疾患(環軸椎亜脱臼,頭蓋陥入症)で通院中に症状が増悪し,緊急手術(頸椎C1前方除圧術)が行われ,気管切開術も施行された(1997年2月26日).2週間後に後頭頸椎後方固定術(C1~4),腸骨骨移植術も施行され,その後2週間抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)の徴候もみられたが,改善し,2回目の手術施行後約20日目に気管切開口が閉鎖された(3月31日).

アレルギー・膠原病

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 アレルギー疾患は,特に先進国や都市部においての増加が著しく,例えば三大アレルギー疾患についてみると,アレルギー性鼻炎は39.4%,喘息は7.9~12.9%,アトピー性皮膚炎は8.2~10.5%という高い有病率が報告されている1,2).アレルギー疾患の有病率は高く増加傾向にあり,今後もその診療はますます重要となるであろう.

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膠原病は4つの観点から疑う

1)明らかな特異的な診察所見があるとき

 パターン認識が可能な特異的所見があるかをまずは身体所見などで探すが,ある程度の鑑別診断が整理されてから診察する必要がある.まずは,鑑別診断のストーリーとしてつじつまが合うように必要な病歴を納得するまでとることが必要である.特異的所見の例としては,蝶形紅斑,ヘリオトロープ,Gottron徴候,爪上皮毛細血管変化,皮膚硬化,livedo疹,環状紅斑などがある.

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関節リウマチの診断

多関節炎患者をみたら頻度の高い関節リウマチを考えるが,その診断は除外診断である

 生物学的製剤など治療の進歩が著しく,早期診断を目的に30年ぶりに関節リウマチ(RA)の診断基準(正式には分類基準)が表1のように変更になった.関節所見,血清反応,持続期間,炎症反応の4項目の最高点を足して6点以上をRAと分類することとなったが,この基準を使う前に,以下の前提条件がある.

アレルギー・膠原病 〔心にのこる症例〕

いつもの症状と同じ? 金城 光代
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 日々の診療において,診断に至る過程で困難に直面する場面はいくつかある.1つ目は,自分では診断がはっきりわからない他科の疾患に分類されると考えた場合.例えば耳や眼の訴えは,「内科的疾患とは関連がない」と思考過程から外してしまうことがあるかもしれない.2つ目は,「ずっと続く同じ主訴」に対して「慢性化している状態」などと新たな評価を加えず漫然とフォローしてしまう場合.このような,自分の診断過程にチャレンジとなった症例を通して振り返りたい.

神経

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 日常臨床において神経診察と診断を行ううえで,注意すべきと考えられた事項につき,頭痛を主訴として来院した患者について最近経験したことを中心に述べてみたい.

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脳卒中は発症後できるだけ早く対応すべき救急疾患である

 脳卒中は,脳梗塞,脳出血,くも膜下出血に大別される.そのなかで最も多いのは脳梗塞であり全体の約7割を占める.脳梗塞に対しては,発症4.5時間以内のrt-PA(アルテプラーゼ)静注による血栓溶解療法や発症8時間以内の血管内治療などの超急性期治療が可能である.これらの治療は発症から治療開始までの時間が早ければ早いほど効果が期待できるため,一刻を争って対応しなければいけない.救急外来でのベッドサイド処置としては,意識・呼吸・血圧・脈拍などのバイタルサインチェックをしながら同時並行で,病歴聴取,神経学的診察を行う.併せて,心電図,静脈ルート確保,血液検査,胸部X線検査を行ったうえで,頭部CT,MRIなどの画像検査へと進めていく.

神経 〔心にのこる症例〕

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診断は病歴から

症例1

68歳,男性.1994年2月頃から始まる右手の脱力を主訴に同年9月に来院した.進行性の経過で趣味の絵画作成にも支障をきたしていた.歩行や階段昇降はまだ可能で,感覚障害や構音,嚥下の障害は生じていなかった.診察すると右前腕から右小手筋の萎縮を認めるほかに,四肢で,上肢および右側優位の筋力低下,筋線維束性収縮(fasciculation),腱反射の亢進を認めたが,足底の病的反射(Babinski徴候)はindifferrent(extensorでもflexorでもなかった).表在感覚,振動覚とも正常で,運動失調も認めなかった.診察所見から,運動ニューロン疾患を疑い,入院精査を勧めた.

循環器

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器質的心疾患があるときⅠ群薬は使いにくい:CAST試験が教えたこと

 心筋梗塞後に心室期外収縮(PVC)や非持続性心室頻拍(nsVT)が多いと予後が悪いという観察に基づいて,CAST study1)が計画された.「陳旧性心筋梗塞のPVCやnsVTを薬物治療で減らすと予後が良くなる」という仮説の検証が目的であった.エンドポイントは心臓死あるいは心停止からの蘇生である.平均年齢61歳の1,498例を対象に,エンカイニド,フレカイニドのいずれかによってPVCが80%以上,nsVTが90%以上減少できた症例のみを選んで試験が行われている.

 結果として不整脈死は実薬群43例,プラセボ群16例(p=0.0004)と,予想とは逆の結果が得られた.急性心筋梗塞やうっ血性心不全など不整脈以外の心臓死は実薬群17例,プラセボ群5例(p=0.01).実薬のほうで予後は悪く,試験は中止された.さまざまな視点から原因が論じられたが,「フレカイニドやエンカイニドと急性虚血との“相互作用”でイベントが増えたのかもしれない」という推測がある.

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狭心症の7割は病歴聴取で診断できる

 病歴聴取は医師の最も重要な技量であり,病歴のみで診断にたどり着くことも多い.狭心症は病歴聴取が重要な代表的な疾患であり,うまく特徴を聴き出せば約7割は診断できるとまでいわれている.病歴聴取の際は以下のOPQRST2Aに従えば効率良く症状をとらえることができる.

 O:Onset(発症)

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急性期

収縮期血圧は,最も簡便かつ強力な予後規定因子である

 急性心不全の予後規定因子は多数あるが,最も簡便で明確なものに,入院時収縮期血圧がある(図1).ただし,病態は刻一刻と変化するために,最初は血圧が高かったが低下してくることもある.血圧を測定したら,病態をしっかりと把握し1分でも早く治療を開始することが大切である.このような観点に立ってクリニカルシナリオが提唱されている.クリニカルシナリオは血圧で病態を決めるものではなく,血圧を参考に病態を考慮して少しでも早期に治療を開始し,病態の再評価をしながら,軌道修正をしていくことを提唱している点に注意してほしい.

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「感染性心内膜炎」の概念を把握する

 感染性心内膜炎(IE)は,不明熱の鑑別疾患として重要であり,その診断に身体所見や血液培養,心エコーの重要性が強調される.

 従来は剖検例から「心内膜炎」との認識が強い疾患であったが,今では「弁に付着した疣贅」を感染源とする敗血症,あるいは弁破壊により心不全をもたらす疾患という認識がなされることが多い.

消化器・肝胆膵

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突発発症の激しい腹痛では病歴が重要.激痛直後の硬便排泄と,それに続く下痢・血便があれば虚血性腸炎を疑え

 消化器診療において,腹部の激痛に続いて発症した下痢と血便のために受診する患者は稀ではない.このような患者のなかには,虚血性腸炎が潜んでいるので,それを見逃してはならない.虚血性腸炎は,病歴だけでほぼ診断できて,教科書には詳述されていないが,臨床の現場ではよく診るコモンな消化器疾患である.

消化器・肝胆膵 〔心にのこる症例〕

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腹水のアプローチ

 日常診療では,腹部膨満はよくみられる症状であり,腹水の貯留を伴うことも多い.詳細な病歴と,注意深い身体診察により,鑑別疾患を考え,腹腔穿刺により腹水の原因を確定する必要がある.

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発熱と咽頭痛を訴えた患者では甲状腺疾患を必ず鑑別診断に入れる

 発熱と咽頭痛を訴える患者では感冒と決めつけずに,亜急性甲状腺炎,急性化膿性甲状腺炎などの甲状腺疾患を必ず鑑別診断に入れながら診察する.診断のヒントとして亜急性甲状腺炎では甲状腺中毒症症状が,急性化膿性甲状腺炎では12歳以下で生じる左側(90%以上)の痛みが特徴的である.一方で,甲状腺癌の多くは頸部のしこりで気づかれることが多く,甲状腺結節が頸部の痛みにより見つかった場合,甲状腺良性腫瘍の出血をまず考える.

内分泌 〔心にのこる症例〕

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 内分泌代謝疾患に限らないことではあるが,患者の訴えをよく訊き,簡単ではあっても必要最小限の診察を行い,一般検査成績のわずかな異常を見逃さないことが重要である.臨床医としてのセンスを磨くということは,listen,touch,thinkという一連の作業のなかで「あれ,これはいつもと違う…」という感覚を持つことではないかと思う.

腎臓・酸塩基平衡・水電解質

腎疾患のクリニカル・パール 八田 告
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腎機能異常をみたときに,慢性と決めつけない(特に初診患者で)

 注意すべきピットフォールも含めて複数例を紹介する.

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腎不全・糸球体濾過量(GFR)低下時の酸塩基・電解質異常

体液量過剰だけでなく,体液量欠乏にもなりやすい

 GFR低下時では体液量過剰になりやすいことは想像しやすいが,実は体液量欠乏にもなりやすい.これは,塩分摂取量が急に低下した場合,尿細管ではNaCl再吸収を増やすことによって,塩分喪失を最小限にとどめているが,腎機能が低下している場合にはこの反応が遅れるため,しばらくそれ以前の塩分摂取量に相当する塩分排泄が続き,塩分喪失が大きくなるためである.これは臨床的には夏の熱中症や冬の感染性腸炎などにより,急激な塩分の摂取量低下や腎外喪失が増える場合に急性腎障害(AKI)を起こしやすいことに繋がる点で重要なポイントである.

腎臓・酸塩基平衡・水電解質 〔心にのこる症例〕

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 今回,この特集で,“心にのこる症例”の執筆を依頼されたとき,真っ先に浮かんだのがこの症例である.とても口惜しい,今思い出しても自分に腹がたつ,とても“心のこりの症例”だ.腎臓病ではないが,この特集を企画された藤田芳郎先生のご許可を得て,この症例を選んだ.

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 わが国の臨床研究は,基礎医学研究と比較して低調であり,主要臨床医学雑誌におけるわが国の貢献度は現在25位である1).一方で,わが国の臨床医はきわめて勤勉であり,多忙な診療の合間を縫ってデータを集めて分析し,学会発表に勤しんでいる.それにもかかわらず,発表された研究の多くは医学論文として国際的学術誌に受理されるまでに至らない.識者は多くの要因を挙げるが,なかでも最も大きな理由の一つが,臨床研究の「black box」の中身を卒前・卒後教育で教えられることがなかったことにあると筆者は考えている(図1).「black box」とは,研究デザインを意味する.

 本稿では,臨床研究において教えられなかった 「black box」=研究デザインの重要性を解説する.解説の方略として,学会抄録例のブラッシュアップを試みる.

連載 顔を見て気づく内科疾患・9

仮面様顔貌:Parkinson病 石丸 裕康
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症 例:81歳女性

病 歴:歩行障害にて内科通院中.内服にてコントロールされていたが,徐々に進行しており,押し車歩行でなんとか自立.2日前に転倒し,以降,腰部痛が強く動けなくなり,状態が持続するため救急搬送となった.

連載 実は日本生まれの発見・9

レボフロキサシン 二木 芳人
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 レボフロキサシン(LVFX)の発見・開発は,当時わが国でニューキノロン系薬として最も頻用されており,有効性・安全性の評価も高かったオフロキサシン(OFLX)の次の新薬の開発を目的として行われたものであった.しかし,OFLXの周辺化合物からは有望なものが見当たらず,そこで注目されたのが,光学異性体であった.OFLXは2つの光学異性体(l体,d体)が一対となったラセミ体構造で,光学異性体は同じ分子構造でも,しばしば作用の違いがみられる.OFLXのそれぞれの光学異性体を分離し,それぞれの抗菌活性や毒性を調べてみると,l体のほうがd体よりも8~125倍も抗菌活性が強く,毒性もはるかに低かった.つまり,l体のみを分離精製すれば,OFLXよりも強力で,安全性も優れた新しいニューキノロン薬ができあがることとなる.当時新しく開発された技術を用いて,このコンセプトを実現し,開発されたのがLVFXである.LVFXはOFLXの半量の臨床使用で,OFLXと同等以上の臨床効果とより優れた安全性を示すことが確認され,発売以降,わが国はもとより世界の多くの国や地域で,最も信頼される感染症治療薬の一つと評価されるようになった.

 LVFXの発売当初,PK-PD理論はわが国では一般には十分浸透しておらず,濃度依存的な殺菌性を示すニューキノロン系薬も,わが国では1日3回の分割投与が行われていた.しかし,欧米ではPK-PD理論の応用から,発売当初から1日1回の投与で,投与量も500mgと高用量が用いられていた.さらに,経口薬のみが臨床使用されてきたわが国と異なり,海外では発売当初から注射剤型の臨床使用も開始されていた.わが国でこの1日1回投与や注射剤型が用いられるようになったのは最近のことであるが,わが国で開発された薬剤が適正使用で海外に後れを取ったということは,ある意味奇異な現象である.現在もLVFXは,わが国のみならず海外でも最も多く処方されている抗菌薬の一つである.しかし近年,LVFXにも耐性化の問題が生じつつあり,大腸菌などではすでに事態は深刻である.また,呼吸器感染症で最も重要な病原菌である肺炎球菌でもその兆しがみられ,アジアの一部の地域ではすでに高頻度との報告もある.これを少しでも遅らせるための努力は臨床医にとって重要な使命であり,そのためにはLVFXの適正な使用,すなわち不必要な使用を避け,使用に際しては投与法や投与量,投与期間に十分な配慮が求められる.昨今ではLVFXに勝る活性を有する新しいニューキノロン薬もいくつか登場しており,耐性化防止のためにはこれらの活用も必要であろう.しかし,きわめて優れた安全性を誇るLVFXは,それゆえに海外ではさらに投与量を増して1日750~1,000mgでの使用も行われており,わが国でもそのような試みが行われてもよいのではないかと考えている.

連載 Step up腹痛診察・1【新連載】

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[主訴]間欠的な腹痛,便秘

[現病歴]来院7カ月前より,明け方に腹痛を自覚し覚醒するようになった.痛みの性状は張るような痛みで20~30分間持続した.臍周囲から下腹部にかけて痛み,排便により痛みは軽減した.痛みの部位が移動することはなかった.痛みは自然に軽快したため医療機関を受診することはなかった.

10年前から便秘気味のため市販の便秘薬を服用していた.2年前に便潜血陽性の精査目的で大腸内視鏡検査を受け,大腸メラノーシスを認めたのみであった.

半年間で3kgの体重減少を認めた.経過中に食欲低下,発熱,嘔気・嘔吐はなかった.

連載 神経診察の思考プロセス 一般内科外来のカルテから・6

ろれつがうまく回らない 大生 定義
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症例:高岡 靖(仮名)46歳男性

生来健康で職場の健診で異常を指摘されたことはない.酒は付き合い程度でタバコは吸わない.1年前から飲みこむ時に,違和感があった.総合病院の耳鼻科に受診し,のどの内視鏡検査や頸部MRIでも異常はないと言われたという.大学の非常勤講師をしていて,週に3回ぐらい2時間の授業をしているが,半年くらい前から,授業の初めの部分はそうでもないが,途中からろれつが回りにくい,言葉がもつれることに気がついた.改善せず,少しずつ悪くなるようなので,受診した.

問診票の診察前の血圧118/75mmHg,脈拍70回/分 整,体温35.4℃.

連載 皮膚科×アレルギー膠原病科合同カンファレンス・18

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後期研修医(皮膚科) 今回の患者さんは,乳癌の治療目的で転院された37歳の女性です.今回の入院半年前にPET健診にて異常を指摘され,その後の検査で乳癌と確定診断され外科的治療と化学療法を受けられましたが,皮疹と肝障害のため治療中断となり当院に転院されました.治療開始前にも日光曝露により類似の皮疹の既往があります.皮疹は顔面の内眼角から鼻周囲にかけての浮腫性紅斑,中手指節関節(MCP)などの関節背面の丘疹性紅斑,爪囲紅斑,腰背部から臀部の浮腫性紅斑,大腿伸側の色素脱失と色素沈着を伴う萎縮性紅斑が認められています(図1).

後期研修医(アレルギー膠原病科) 悪性腫瘍合併という点では皮膚筋炎が想起されますが,発症年齢,日光過敏の既往からは全身性エリテマトーデス(SLE),そして病歴から薬剤性も鑑別に挙がりますね.一緒に診察させていただきましたが,筋力低下や近位筋の圧痛などはありませんでしたね.

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 日本人における睡眠時無呼吸症群(sleep apnea syndrome:SAS)は,推定500万人が罹患していると推測され,肥満化が進む日本ではSAS患者はさらに増加することが予測されます.

 SAS患者は,睡眠中の中途覚醒・日中の過剰な眠気といった症状を呈するのみならず,高血圧症,不整脈,心房細動,虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞),心原性突然死,脳血管障害といった疾病を発症し,その結果,重症SAS患者は健常者と比較し短命と報告されています.

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最近の動向

 「食生活の欧米化に伴って大腸がんが増えている」と言われて久しい.しかし,近年,大腸がんは欧米より日本で多いのが現状である(図1)1).欧米主要国では大腸がんの年齢調整死亡率を右肩下がりに減らしてきたのに対して,日本では頭打ちにはなったものの,まだ高い水準にある.さらに,大腸がん死亡数でみると日本では増加の一途をたどり,2011年には4万5,000人(厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」)を超えた.日本の2.5倍の人口を有する米国では死亡数も年々減少しており,年間5万人程度に過ぎない2).このように日本で大腸がんが多い理由の1つとして,諸外国に比べて低い検診受診率が挙げられる(図2)3~6)

 日本の大腸内視鏡技術は世界トップレベルである.今後も当面の間,大腸腫瘍の診断・治療の中心は精度が一番高い内視鏡が占めていくだろう.しかし,大腸がん検診の精検受診率は6割程度に過ぎず,2010年度に要精検となった約51万人のうち実に18万4,000人を超える市民が精密検査を受けていない.せっかく大腸がん検診を受けたのに検査陽性者が精密検査を受けない理由はさまざまであるが,「検査がつらそう」という漠然とした不安が一番多いとされている7)

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 研修医たちと接していると感じるのは,彼らが急性上気道炎(以下,本書に倣い「風邪」と表記する)の診かたを知らないということである.市中肺炎や腎盂腎炎,髄膜炎の診療は知っているのに,である.何とも不思議な状況であるが,無理もない.かわいそうなことに,医学教育の流れのなかで,風邪を系統的に教わることはまずないのだ.こんなにありふれた疾患であるにもかかわらず,だ.

 恐らく多くの医師は,風邪自体を「そんなことは当たり前」として,そもそも医療上の問題として捉えていないと思われる.いわば医療化されることのない,体調不良の一種として捉えていることがほとんどである.しかし当事者である患者が風邪による症状に対して,民間療法では対処不能として医療を求めはじめたとき,結果として施される診療の中身は,顔をしかめてしまうものが多い.

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 一説によると,医師としての人生で,患者との出会いの95%は外来において行われるとのことである.その割には,卒前・卒後教育における外来診療の位置付けは大きくはない.外来教育といえば多くの場合救急外来での教育を指し,一般外来での教育は始まったばかりである.現在でも,一般外来を担当する医師たちは,手さぐりで学んでいくことが多いのであろう.本書はそのような医師を対象に書かれた,優れた内科外来マニュアルである.

 外来診療に熟達するために会得すべきもの,それは急性疾患の診断アプローチに始まり,慢性疾患のマネジメント,予防とスクリーニング・健康増進,そして複雑な問題を時間内で適切な解決に導く交渉技術に至るまで,カバーすべき分野は広大である.とりわけ,総合内科外来においては,これらの基本知識と,適切な戦略スキルを,ありふれた健康問題全般にわたって身につけることが求められるのであるが,これは簡単なようにみえて難しい.特にジェネラリストは,これらの問題に対し,いかに幅広く,いかに深く,そしていかに最新の知識で対処し続けられるかが,その診療の質を決めるものになるのである.

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 本書の特徴は,単純X線写真の所見を記し,その所見を得るために必要な解剖や疾患の知識が簡潔にまとめられていることである.最初にCR画像の基礎知識,次に領域別の各論(頭部・頭頸部,胸部,腹部,骨軟部組織)を掲載し,単純X線写真が最も威力を発する胸部と骨軟部組織領域に多くのページを割いている.各項目はコンパクトにまとまっているが,最新の疾患概念にも言及し,さらに,単純X線写真の横に答えとなるCTやMRI画像を掲載した理解しやすい本である.研修医必携の一冊であるとともに,放射線診断,内科,外科のスタッフも,楽しく知識を確認することができ,日常の臨床に役立つ良書である.大先輩の先生方により執筆された「ビューワー」(フィルムレス時代に合わせて「しゃーかすてん」から変更になったとの記述あり)と名付けられた10編のコラムは,画像診断のうんちくや読影力向上の極意が含まれ,読んで楽しく,大変ためになる.

 本書の編集者である黒﨑喜久先生は,頭頸部領域や超音波診断の第一人者であり,多くの著書や論文を執筆されている.しかし,私は,黒﨑先生はそのような分野にとどまらず,あらゆる領域の画像診断に造詣が深い,general radiologistの代表選手だと思っている.黒﨑先生は,私に画像診断の楽しさと奥の深さを教えてくださり,画像診断の「いろは」をたたき込んでくださった恩師である.私が研修医であったころ,黒﨑先生から読破するように勧められた本は,『Paul and Juhl's Essentials of Radiologic Imaging』であった.本書『単純X線写真の読み方・使い方』を読み終えたとき,Paul and Juhlを思い出した.本書は,名著Paul and Juhlをコンパクトにし,さらに最新の疾患概念を付け加えた本であるといえるのではないだろうか.

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主題●透析患者の合併症に備える

日時●2013年10月20日(日)9:00~16:10

場所●ホテルモントレ グラスミア大阪「スノーベリー」

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 特定非営利活動法人GLOWでは,日本の地域(3年間)や開発途上国(1年間)の実地経験および研修を通じて,地域医療および国際保健のキャリアアップを目指す「GLOW医師長期研修プログラム」の参加者を募集しています.

募集人数●3名程度

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基本情報

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medicina
50巻9号 (2013年9月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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