特集 内科医のためのクリニカル・パール2
感染症
感染症のクリニカル・パール
大曲 貴夫
1
1国立国際医療研究センター国際感染症センター
pp.1548-1550
発行日 2013年9月10日
Published Date 2013/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106973
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院内の発熱患者につけられる「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」という診断の多くは間違っている!
感染症医の仕事のなかに,血液培養の陽性例のチェックがある.これを見ているとさまざまな気づきがある.それは,血液培養採取時の診断名として「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」がきわめて多いことである.そしてその臨床診断は,残念ながら,多くの場合外れてしまっている.
なぜこういうことが起こるのだろうか.発熱患者を診たときに,一見では問題がわからず,診断に困ってしまう場合がある.症状が非特異的である,身体所見で特記事項がないなどの場合に多い.このような場合に医師は本能的に何らかの診断をつけようとする.その際に用いられる診断として「腎盂腎炎」,「誤嚥性肺炎」がきわめて多い.一見症状や所見に乏しいが「発熱+尿中白血球陽性」であるので腎盂腎炎と診断する.一見症状や所見に乏しいが「高齢者であって,胸部X線写真で陰影があるように見える」から誤嚥性肺炎と診断する.このようなことが起こってしまう.診断にたどり着けないがゆえに,手近な診断である腎盂腎炎や誤嚥性肺炎に頼ってしまう.いわば認知バイアスとしてのanchoringが起こってしまうのである.
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