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すべてのがんに,早期発見・早期治療が有効というわけではない.検診が有効ながんは一部のみ.PET検診は勧められない
すべてのがんに,早期発見・早期治療が有効であるわけではない.がんの進行は,非常に緩徐に進行するものから,急速に進行し,あっという間に死に至るものまでさまざまである.早期発見・早期治療は理論的には良いように思われるが,緩徐に進行するがんや,急速に進行するがんには,適応することはできない.がん検診を考える場合,検診がどこまで有効かどうかを知っておく必要がある.有効性の評価をするには,発見率だけではいけない.がんの発見率が高くなったとしても,最終的にがんの死亡率まで下げることができなければ,検診を勧めるだけの意味がない.厚生労働省は,胃がん,子宮頸がん,肺がん,乳がん,大腸がんを科学的根拠に基づくがん検診として推奨している1,2)が,このうち,国際的にもランダム化比較試験,メタアナリシスでのエビデンスをもって推奨されているのは,乳がんのマンモグラフィー3),大腸がんの便潜血検査4)のみである.また,最近では,乳がんマンモグラフィー検診で,早期がんは増えたが,進行がんが減っていないことのアンバランスから,乳がん検診は過剰診断が行われているだけであり,検診の利益は少ないのではないか,ということがNew England Journal of Medicineに投稿され,乳がん検診の是非が話題になっている5).
このように,がん検診に対するエビデンスには限りがあり,すべてのがん腫に適応できるものでもない.また,検査による過剰診断,偽陽性の問題もあり,適応は慎重であるべきである.PET(positron emission tomography)検査は,特異度が高く(約95%),近年多くのがん腫の病期診断,治療の評価として使われるようになってきたが,検診として勧めるだけのエビデンスは確立されていない.国立がん研究センターの研究で,PET検査は従来の検査に比べて,感度が低く(17.8%),従来の検査で見つかったのに,PETで見落とされていた偽陰性率が高かった(82.1%)ことを報告している6).
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