臨床雑誌内科 128巻5号 (2021年11月)

特集 CKD患者を診たら―最近のCKD診療の知見とその活かし方

特集のねらい 蘇原 映誠
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 現在わが国で8人に1人が罹患している「国民病」として慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は認識されてきている.当然,これだけ多くの患者がいる以上,一般内科医・非腎臓専門医がCKD患者を診療する機会は非常に多い.しかしながら,CKD患者をどのようにマネジメントすべきか,どのような注意点があるのか,そしてどのようなタイミングで専門医の介入が必要なのか,という点において多くの臨床医が悩んでいると聞く.

Overview

CKDの疫学 祖父江 理
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Summary

▪CKDの頻度は従来成人人口の8人に1人と報告されていたが,最近の健診データなどからはもう少し多い15~20%程度の有病率が報告されている.新規透析導入患者数の増加は鈍化しているが,まだ頭打ちにはいたっていない.

▪包括的CKDデータベース(J-CKD-CB)事業より,電子カルテの自動抽出データを用いたCKD合併症の有病率を評価した報告がなされた.腎性貧血・電解質異常などの合併症は十分なガイドラインの目標達成率をクリアしているとは言い難く,今後の経年的な推移を見守る必要がある.

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Summary

▪CKDは腎機能や腎関連諸検査の持続的異常により定義づけられる包括的な疾患概念であり,末期腎不全および心血管病の危険因子として確立されている.

▪CKDの末期腎不全や心血管病のリスクには推算GFRによる腎機能に加えて原疾患とアルブミン尿(蛋白尿)の程度が関連していることから,重症度はこれらの因子によって分類される.

▪CKDの進行抑制や合併症管理などには薬物療法および生活習慣の是正などの集学的治療が必要であり,そのためにはかかりつけ医と専門医・専門医療機関との連携のほか,多職種連携による多方面からの介入が有効である.

▪かかりつけ医から専門医・専門医療機関への紹介基準はCKD重症度分類を応用して策定されている.

一般内科医が知っておくべきCKD診療のTIPS

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Summary

▪腎機能評価法の種類(eGFRcreat,eGFRcys,CG式推定CCr,実測CCr)とその特徴を知ることで正しく腎機能を評価することが重要である.

▪脂溶性薬剤は薬剤間相互作用や体内分布容積が大きい点に注意する.

▪薬剤性腎障害の原因薬剤上位4種(NSAIDs,抗腫瘍薬,抗菌薬,造影剤)を投与する際には投薬開始後の腎機能,そして尿検査(とくに蛋白尿)をフォローする.

▪透析除去効率に重要な3項目(蛋白結合率,体内分布容積,水溶性/脂溶性)を踏まえた投薬計画・過量投与時の対応が必要である.

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Summary

▪CKD管理には,かかりつけ医と腎臓専門医との診療連関が非常に重要である.

▪① 血尿を伴う蛋白尿,あるいは血尿単独であっても腎炎型沈渣所見を認める場合,② 高度蛋白尿を認める場合,③ すでに腎機能が低下している場合,であれば腎臓専門医への紹介を勧める.

▪CKDは早期の段階で腎臓専門医へ紹介することができれば,腎機能悪化抑制や患者の生命予後改善につながることが期待される.

末期腎不全患者の内科診療

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Summary

▪透析患者は高齢化が進んでおり,原疾患も糖尿病や腎硬化症といった全身合併症を認める患者が増加している.

▪血液透析濾過(HDF)を受ける患者が増加していて,オンラインHDFが広く行われている.

▪透析によっても,十分な腎機能の補助ができないため,血圧異常,貧血,CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD),低栄養・消耗など幅広い合併症がみられる.

▪透析患者の診療で留意すべき点として,薬剤の調整,抗凝固薬の使用,周術期管理,造影剤の使用,電解質コントロールがある.

▪体液からみた体内環境を適切に保ち,合併症を予防するために,医療者・患者の側で適切な対応が必要とされる.

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Summary

▪腎移植医療において,腎移植患者およびドナー側ともに移植前後の患者管理において(腎臓)内科医が関係すべき多くの分野があると考えられる.

▪移植手術後の免疫抑制薬を服用している腎移植患者の感染症の初療や,腎提供を行って単腎となったドナーをCKDとしてフォローすることを,一般内科の先生方に求められる場面も増えてくることが想像される.

▪腎移植医療は普遍的な医療へと進化を遂げてきており,(腎臓)内科医の腎移植医療に対する知識の共有が望まれる.

CKD進行を抑制するためにすべきこと

血圧管理 上原 立己 , 涌井 広道
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Summary

▪現在わが国におけるCKD患者の血圧管理に関するガイドラインでは,蛋白尿の有無,糖尿病合併の有無,年齢によって降圧目標・治療薬の選択が定められている.

▪糖尿病合併の有無にかかわらず蛋白尿がみられる(CKD重症度分類区分A2・A3)場合には,130/80mmHg未満が推奨されている.

▪降圧薬の選択は,微量アルブミン尿もしくは蛋白尿の有無,糖尿病合併の有無によって分類されている.

▪糖尿病非合併例では,蛋白尿陽性(0.15g/gCr以上)の場合はRA系阻害薬を推奨し,蛋白尿陰性の場合はRA系阻害薬,Ca拮抗薬,利尿薬のいずれかを選択することが推奨されている.

▪糖尿病合併例では,微量アルブミン尿陽性(30mg/gCr以上)または蛋白尿陽性(0.15g/gCr以上)の場合はRA系阻害薬を推奨し,微量アルブミン尿陰性の場合は糖尿病非合併例と同様に,RA系阻害薬,Ca拮抗薬,利尿薬のいずれかが第一選択薬として推奨されている.

▪処方時の注意として,既知の合併症を考慮することに加え,高齢者に関しては過降圧への注意,個別の忍容性への配慮が必要となる.

食事療法 足立 浩樹 , 古市 賢吾
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Summary

▪高齢のCKD患者では,サルコペニアならびにフレイルを合併している可能性があり,個々の患者に合わせた蛋白質制限を考慮する必要がある.

▪食塩摂取の制限は血圧管理のうえで重要であるが,過度の制限は急性腎障害および総死亡のリスクにもなるため注意が必要である.

▪糖尿病性腎臓病患者に食事指導を行う際は,腎症の進行により糖質制限と蛋白質制限のバランスが変わることを理解してもらうことが重要である.

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Summary

▪糖尿病性腎臓病はわが国の透析導入原疾患の第1位であり,その克服に向けた取り組みが必要である.

▪糖尿病性腎臓病の発症・進展予防には,厳格な血糖管理,脂質管理,RAS阻害薬を用いた降圧治療による早期治療介入が重要である.

▪集学的治療に抵抗性を示す顕性アルブミン尿の克服は,糖尿病性腎臓病からの透析導入数減少のために最も重要な課題である.

▪近年,糖尿病患者のなかに顕性アルブミン尿を伴わない腎機能低下症例が増加傾向にある.

▪SGLT2阻害薬はアルブミン尿期によらず,糖尿病性腎臓病の腎予後改善をもたらす可能性がある.

脂質異常と尿酸の管理 横井 秀基
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Summary

▪脂質管理はCKDステージ3の患者では心血管イベントを抑制する.

▪透析患者ではスタチンによる有意な心血管イベント抑制効果は認められていない.

▪CKD患者においてスタチンによる腎機能悪化抑制効果については不明である.

▪脂質管理目標は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」に準拠する.

▪高尿酸血症はCKD発症のリスクである.

▪高尿酸血症を伴うCKD患者では,尿酸降下治療が腎機能低下の抑制や尿アルブミン排泄量の低下に寄与するという報告がある.

▪血清尿酸値8.0mg/dL以上のCKD患者は尿酸降下療法が推奨されている.

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Summary

▪CKD患者において血清K値は4.0mEq/L以上5.5mEq/L未満の管理が推奨されている.

▪CKDステージ4以降では代謝性アシドーシスの頻度が増える.

▪高K血症予防や腎機能障害進行の抑制効果などから,重炭酸値が21mmol/Lを下回ればsodium bicarbonateでの治療開始が推奨されている.

▪過度なK制限の弊害が報告されており,病期に合わせた食事制限を行う必要がある.

▪最近の報告ではCKDステージ4以降でのRAS阻害薬の有効性が示唆されているが,高K血症のリスクを伴うため,継続のためにはアシドーシス管理やK吸着薬を適切に使用していく必要がある.

▪新規K吸着薬であるsodium zirconium cyclosilicateは長期管理におけるK低下作用やアシドーシス改善効果が示されており,既存薬剤との比較を含め,今後のさらなる報告が期待される.

CKD患者のマネジメント

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Summary

▪CKDは慢性的に経過するすべての腎疾患を包括しており,末期腎不全(透析)だけでなく,心血管疾患に対する危険病態として提唱された疾患概念である.

▪心臓と腎臓については,以前からその相互関係を指摘する声が多かったが,近年はもっぱら「心腎連関」という用語で表現される.

▪CKD患者における心血管疾患発症の危険因子は多岐にわたり,それらの管理が患者の予後を左右する.

貧血の治療 安倍 寛子 , 田中 哲洋
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Summary

▪腎性貧血の主な原因は,腎臓においてヘモグロビンの低下に見合った十分量のエリスロポエチンが産生されないことである.

▪貧血は独立したCKDの進行要因であるとともに,心不全の独立した増悪因子でもあることから,腎性貧血の治療は非常に重要である.

▪現在の治療の中心は,赤血球造血刺激因子製剤(ESA)と鉄補充である.

▪新規の腎性貧血治療薬として経口のHIF-PH阻害薬が開発され,とくに機能的鉄欠乏のある患者などへの効果が期待される.

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Summary

▪CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)は検査値異常,骨代謝異常,軟部組織の石灰化からなる全身の疾患概念である.そのアウトカムは骨折,心血管イベント,死亡である.

▪保存期の病態において,リン(P)のpositive balanceがFGF23を上昇させ,このことでビタミンDの活性化が阻害され二次性副甲状腺機能亢進症が起こる.腎不全末期までPは上昇しない.正P血症ではP吸着薬を処方してはいけない.

▪透析,保存期でまず重要視されるのはまずはPの管理であり,その後にカルシウム(Ca),副甲状腺ホルモン(PTH)を管理することが重要であるが,透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症ではCa受容体作動薬による治療でPTHを管理することで,PとCaの管理ができる.

▪各種ガイドラインにおいて透析期,保存期に応じたP,Ca,PTHそれぞれの管理目標値が設定されている.

高齢者CKD管理の注意点 長洲 一
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Summary

▪高齢者CKD患者の管理は重要な課題である.問題点の一つは十分なエビデンスがないことがあげられる.

▪電解質異常や降圧治療の目標値などは,ガイドラインでも非高齢者と別に目標値を掲げている.

▪とくに低ナトリウム血症は死亡リスクを上げることが知られており,その介入と原因の検索が必要である.

▪血圧管理においては降圧目標のみならず使用薬剤に関してもARBなどRAS阻害薬の使用には慎重になる必要がある.

▪同時に社会的背景にも考慮する必要がある.サルコペニアなどによるADL低下やポリファーマシーなど一つずつ問題点を列挙し,丁寧に診療することが重要である.

▪人生100年時代に合わせた診療が求められる.

CKD患者と感染症 菊地 勘
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Summary

▪CKDによる腎機能低下や尿毒症が免疫機能の低下を起こすことが報告されている.

▪さらにCKD患者には高齢者が多く,糖尿病を合併している割合が高いことから,一般人口と比較して免疫機能が低下している状態となる.

▪実際に,末期腎不全患者の死因の約20%は感染症による死亡である.

▪CKD患者や末期腎不全患者における感染症対策は重要であり,ワクチンで予防できる感染症については,積極的なワクチンの接種が推奨される.

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Summary

▪CKD患者では腎機能が低下するにつれて身体機能は低下し,身体機能の低下はQOLの低下や死亡率の上昇につながる.

▪運動療法により運動耐容能や身体機能に関するQOLが改善する.

▪推奨される運動として有酸素運動・レジスタンス運動・柔軟体操があり,リハビリテーションの介入にあたっては十分なリスク評価,そしてリハビリテーションを継続できる支援体制・環境づくりが大切である.

一般診療でも遭遇する腎臓の指定難病

IgA腎症 鈴木 仁
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Summary

▪IgA腎症は,糸球体メサンギウム領域へのIgA優位な沈着を呈する原発性糸球体腎炎であり,本邦における原発性糸球体腎炎の約40%を占める最も疾患頻度の高い糸球体腎炎である.

▪本邦における腎生検症例の約1/3がIgA腎症と診断されている.本症の年齢分布は30~39歳にピークがあるものの,10歳代から50歳代まで広く分布しており,発症率,有病患者数における性差は認めない.

▪糖鎖異常IgA1やその関連免疫複合体が病因に深く関与していることが明らかとなってきており,扁桃を主とする粘膜免疫応答異常の病態への関与が考えられている.

▪2020年に「IgA腎症診療ガイドライン2020」が作成され,エビデンスに基づく治療アルゴリズムが提唱された.

▪近年病態の解明に基づき,抗APRIL抗体をはじめとする新たな分子標的治療薬の国際治験が開始されている.

多発性囊胞腎 吉川 純平 , 西尾 妙織
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Summary

▪常染色体優性遺伝性多発性囊胞腎(ADPKD)は,長らくその進行に対する根本的な薬物療法はなく,いわゆるCKD管理のような保存的加療が中心であった.

▪近年進行を増悪させる因子の解明が進んできており,なかでもバソプレシンが環状アデノシン一リン酸(cAMP)を介して囊胞を増悪させることが明らかとなった.

▪バソプレシンV2受容体拮抗薬であるtolvaptanは囊胞増大速度および腎機能低下速度を抑制する治療薬として承認され,現在多くの患者に投与されている.

▪内服治療に加えて,食事・体重管理・飲水・降圧などの生活指導の大切さも報告されてきており,複合的な管理をしていくことが大切である.

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Summary

▪ネフローゼ症候群は,尿蛋白,低アルブミン血症,浮腫をきたす腎疾患である.

▪明らかな原因疾患がない一次性ネフローゼ症候群と,その他の原因疾患に由来する二次性ネフローゼ症候群に大別される.

▪一次性ネフローゼ症候群は副腎皮質ステロイドや,ciclosporinなどの免疫抑制薬で治療され,効果不良の場合はrituximab投与やLDLアフェレーシスの追加治療が行われる.

▪B7-1はネフローゼ症候群のバイオマーカーや治療標的として期待されている.

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Summary

▪急速進行性糸球体腎炎(RPGN)は「急性あるいは潜在性に発症する血尿,蛋白尿,貧血と急速に進行する腎不全をきたす症候群」(WHO)または「腎炎を示す尿所見を伴い数週~数ヵ月の経過で急速に腎不全が進行する症候群」(厚生労働省)と定義される.

▪過去になかった血尿や蛋白尿が認められ,eGFR<60mL/分/1.73m2,CRP高値や赤沈促進,3ヵ月以内に30%以上のeGFR低下がある場合は,RPGNの可能性があるので,腎臓専門医に紹介する.

▪抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の初期治療には副腎皮質ステロイドと可能な限りcyclophosphamideあるいはrituximabの併用が推奨される.

▪抗糸球体基底膜(GBM)抗体型半月体形成糸球体腎炎では副腎皮質ステロイドパルス療法,cyclophosphamide,血漿交換療法の併用が推奨される.

トピックス

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Summary

▪これまで遺伝子情報に基づいてCKD患者を診療することは一般的ではなかったが,近年では次世代シークエンサーの登場により網羅的遺伝子解析が身近なものとなり,CKD患者の遺伝子背景が明らかにされつつある.

▪実はCKD患者の約1割は遺伝性疾患であり,メジャーな責任遺伝子も比較的限られていることが判明してきた.

▪代表的な常染色体優性多発性囊胞腎はもとより,近年KDIGOにより提唱された常染色体優性尿細管間質性腎疾患,Alport症候群,菲薄基底膜病,遺伝性巣状分節性糸球体硬化症などが該当する.

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Summary

▪近年,CKD進行抑制において,SGLT2阻害薬やNrf2活性化薬が注目されている.

▪SGLT2阻害薬は,糖尿病性腎臓病(DKD)患者,さらには非糖尿病性CKD患者を対象とした大規模臨床試験において,心血管疾患の発症予防効果,腎疾患の進展予防効果が報告されている.

▪Nrf2活性化薬はKeap1-Nrf2システムを介して酸化ストレスを軽減することにより,DKDを含むCKDを改善する可能性が示唆されており,現在DKDを対象とした臨床試験が進行中である.

▪SGLT2阻害薬やNrf2活性化薬とも,まだ本邦ではCKD治療薬として承認されていないが,今後の基礎・臨床試験において新規の治療薬となることが期待される.

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 蘇原 本日は,CKD診療の最前線に立っている先生方にお集まりいただきました.CKD診療は常にアップデートされていますので,最近のCKD診療のさまざまなエビデンスや治療方法の多様化について,幅広くお話を伺いたいと思います.

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 2019年の大晦日にひっそりと原因不明の肺炎の集積がWHOから報告され,それが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)であると判明して以後,前例のない巧妙なこのウイルスは世界を席巻し,医療を翻弄している.国内の医療機関はその大小を問わず,COVID-19に対する院内マニュアルを作成し,対応に追われたことと思われる.

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 経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)の黎明期にimaging modalityは臨床の場に登場し,リサーチツールとしてその歴史は始まった.そして,imaging modalityとデバイスの進化はPCIの進歩において両輪としての役割を担ってきた.すなわち,imagingによる検討でデバイス治療のメカニズムが解明され,デバイスの進化が促進され,治療成績が改善されてきた.病理学的検討やプレクリニカルの試験では得にくい情報を生体内で直接観察,把握することを可能とするimaging modalityは,まさにPCIに適した検査であったといえる.本邦のPCIの成績が諸外国よりも優れていることは周知の事実であるが,ルーチンでimaging modalityを使用できる環境がその理由としてしばしば指摘される.それは事実であるが,日常臨床で症例を重ねることで自己研鑽を重ねてきた結果と考えるのが正解であろう.

今日の臨床検査2021-2022 鋪野 紀好
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 本書の帯には「臨床医,メディカルスタッフ必携/臨床検査のエッセンスをコンパクトに!」と書かれているが,まさにそのとおりだと実感する一冊である.言わずもがなではあるが『今日の臨床検査』は1987年に初版が刊行され,以降も改訂が繰り返されている超ロングセラーである.私も実際,医学生のときから総合診療医として臨床の現場で働く現在まで,本シリーズを活用させていただいている.

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日本の臨床腫瘍学のstate-of-artそのもの

 『新臨床腫瘍学』は,臨床腫瘍学における本格的な教科書として,日本臨床腫瘍学会(JSMO)みずからが腫瘍内科やがん診療に携わる関係者のために編集している.「がん薬物療法専門医のために」とサブタイトルが付けられているが,専門医研修カリキュラムのパンフレットをイメージしていただいては困る.700頁を超える大冊であり,3年ごとに版を重ねたこの書籍は本邦の臨床腫瘍学のstate-of-artそのものである.

脳卒中データバンク2021 戸田 達史
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わが国の脳卒中医療の現状を映す鏡

 国内多施設での登録事業「日本脳卒中データバンク」が活動を始めてから20年余が過ぎました.本事業を創始された小林祥泰先生(島根大学名誉教授)を中心に数年ごとに解析結果をまとめて出版されるのを,これまで楽しみに読んできました.数年前に国立循環器病研究センターに管理運営が移管されたと聞き及んでいましたが,移管後初めてのまとめとなる最新版『脳卒中データバンク2021』が,今春刊行されました.「脳卒中・循環器病対策基本法」も法制化され,一般市民の方々の脳卒中への関心も高まる中で,時宜を得た企画といえます.

連載 ドクターGとドクターS ~「Generalist⇄Specialist」連携のポイント~

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今回のポイント

かかりつけ医の役割 Generalist

✓目の前の血糖やHbA1cに一喜一憂せずに,長期的に安定した良好な血糖コントロールが得られるように,患者に寄り添う.

✓初診で受診した患者を決して叱らず,治療継続の重要性を説明し受診しやすい関係性をつくる(アドボカシー).

✓病態に合わせて経口血糖降下薬を組み合わせ,血糖コントロールを図る.

✓定期的な合併症や併存症の検査を行い,他科や多職種と連携を図る.

専門医との連携 Specialist

✓2型糖尿病以外は基本的に専門医を紹介する.

✓急激な血糖の悪化,体重減少,ケトン体の出現などが認められた場合には,速やかに専門医に紹介する.

✓インスリンやGLP-1受容体作動薬といった注射薬の導入が必要な場合は,専門医を紹介する.

連載 ~知っているようで,実は十分に理解していない~ 医療に関する制度のあれこれ

第8回 がん患者の就労支援 松永 直子
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 がん患者の3人に1人が就労可能年齢で発病しています.がんと診断を受けて退職・廃業した人は就労者の19.8%,そのうち初回治療までに退職・廃業した人は56.8%に上ります.これから治療で家計費が負担増となるなかで,経済的な破綻によって治療継続が厳しくなることも予測されます.がんの診断を受け,「治療のことで頭がいっぱい」「仕事と両立などできない」と思い込み退職してしまう人や,再就職先へのアプローチに悩む人もいます.

 2016年のがん対策基本法改正時に患者の就労支援の強化が盛り込まれました.がんになっても仕事と治療を両立できるよう,企業などの事業主に対して患者の雇用継続に配慮する努力義務が課されました.今の職場で配慮を得ながら仕事を継続したり,新たな仕事に就くために整備された制度があります.

連載 悩むケースに立ち向かう! 臨床推論のススメ方 ~全国GIMカンファレンスより~

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連載のねらい

 GIMカンファレンスは,臨床推論の技術を向上させることを目的とした内科全般の症例を扱う検討会であり,全国各地で組織され開催されています.本連載では,全国のGIMカンファレンスにおいて検討された症例をご紹介いただき,診断過程を時系列に沿って解説いただきます.

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 梅毒は新大陸からヒトを介し欧州へもち帰られ,爆発的に増加した性感染症である.病原体Treponema pallidumは性行為に伴い皮膚・粘膜より体内に侵入し,9~90日の潜伏期間を経て下疳などの第1期梅毒を発症し,一部は早期神経梅毒へ移行する.第2期梅毒は多彩な症状と全身・皮膚軟部組織(脱毛を含む)・肝・腎・眼・耳・中枢神経などの複雑な臓器障害が誤診へと導くことから「偽装の達人(the great imitator)」ともよばれる.潜伏梅毒は感染から1年を境に早期・晩期に分類され,無症状で偶発的に発見される.第3期梅毒では感染性は消失し,大動脈瘤,ゴム腫,神経梅毒(脊髄癆,進行性麻痺)等の回復不可能な合併症の要因となる.トレポネーマ抗体検査(TPLA)は過去~現在までの感染の有無を,非トレポネーマ脂質抗体検査(RPR)は病勢を表す.感染初期ではトレポネーマ抗体検査が陰性となり2週間後の再評価を行う.身体所見と病歴(問診)で総合的な判断が必要である.治療はペニシリン系薬による点滴静注・内服が原則であり,病期や背景に応じた治療期間やフォローアップを行う.未診断の梅毒患者が多数存在している可能性があり,早期診断と適切なマネジメントを行うことが重要である.

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 は じ め に 鈍的頸部外傷により椎骨動脈損傷(vertebral artery injury:VAI)が生じることがある1,2).病態は頸椎の骨傷などによる椎骨動脈の外傷性動脈解離や動脈破綻と考えられ,損傷血管の閉塞あるいは損傷部からの血栓遊離による脳梗塞のリスクがある.VAIは一般に脊椎外科医と血管内治療医が診療にあたり,当該科以外での認識は比較的薄い.今回,内科・脳神経内科にてVAIの急性期の管理をする機会を得たので報告する.

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 は じ め に 末梢静脈挿入式中心静脈カテーテル(peripherally inserted central venous catheter:PICC)は従来の中心静脈カテーテルに比べ挿入に伴う重篤な合併症の危険性が低いとされている1).しかしながら,PICC留置後に生じた合併症も報告されており,臨床症状の変化には注意が必要である.とくに左上肢からカテーテルを刺入した場合,解剖学的な理由から先端が上大静脈(superior vena cava:SVC)に急峻な角度で接触することがあり,輸液の血管外漏出の原因になり得ることが指摘されている1).当院で左上肢から刺入したPICCカテーテル先端の留置位置を後ろ向きに調査した.

基本情報

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臨床雑誌内科
128巻5号 (2021年11月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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