臨床雑誌内科 128巻4号 (2021年10月)

特集 高齢者における消化器診療

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 本邦をはじめ先進諸国では,医学・医療の進歩・発展と相まって急速な勢いで超高齢社会を迎えており,生活習慣病などの健康問題が一般国民の生活のなかの関心事となっている.今後も高齢者率は増加すると予測されており,2060年には約40%に達するとみられている.高齢者では,生理的に心身のあらゆる器官の機能低下が加齢とともに起こり,その結果として感染防御機能や免疫機能が低下し,恒常性の維持機能も容易に破綻しやすくなると考えられる.このような背景のなかで高齢者の消化器病は,若年者のそれとは異なったさまざまな特徴を有すると考えられる.したがって,高齢者に対しては,若年者の延長線上で得られた知見と高齢者の生理学的な理解など,これまでとは視点を変えた特別な配慮が必須である.高齢者では悪性腫瘍の増加や生活習慣病の増加はもちろんであるが,機能性疾患において非高齢者とは構成が変化することや,新たに免疫機能の恒常性の破綻を背景にアレルギー性疾患の増加が目立ってきている.

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Summary

▪2021年,65歳以上の高齢者は3,621万5千人と過去最多となっている.

▪悪性新生物は死因第1位であり,年齢階級別死亡率は60歳代から増加し,高齢になるほど高い.部位別死因では,男女合わせて1位が肺,2位が大腸,3位が胃,4位が膵臓,5位が肝臓と,消化器がんが上位を占める.

▪高齢者の炎症性腸疾患は増加傾向にあり,一般的に高齢者では臓器予備能が低下しており,併存疾患が多いことから介入のタイミングが重要である.鑑別も困難なことがあり早めに専門医に相談するようにする.

▪高齢者では,B型肝炎ウイルス既往感染者が2~3割いるとされ,生物学的製剤,免疫チェックポイント阻害薬の投与後にB型肝炎再活性化を起こすことがあり,投与前に肝炎ウイルスマーカーの確認と専門医に相談することが重要である.

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Summary

▪65歳以上の胃がんにおいて,罹患率は減少傾向,死亡率は85歳以上を除き大きく減少している.これは胃X線による胃がん検診さらに内視鏡による胃がん検診による影響と思われる.

▪一方で,65歳以上の大腸がんの罹患率は増加傾向,死亡率は1990年代半ばから85歳以上を除き横ばいかやや減少傾向である.これは,1992年より始まった便潜血検査による大腸がん検診による影響と思われる.

▪今後本邦でも大腸内視鏡検診の早期導入が期待される.

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Summary

▪加齢性変化である残存歯数の減少は,鳥獣類由来の蛋白質や脂質摂取量を減少させ,高齢者の食事摂取量の減少に大きな影響を与えている.

▪加齢に伴う胃,胆囊,膵臓,小腸の変化は,低栄養をきたすような高度な消化吸収障害をもたらすことはない.

▪バランススタディの結果,脂肪および蛋白質の総合的な消化吸収機能は加齢によって低下することはなく,食事内容が栄養状態を左右する可能性がある.

加齢と免疫反応 仲瀬 裕志
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Summary

▪加齢が免疫系の構成要素にもたらす多くの変化は「immunosenescence(免疫老化)」とよばれ,感染症による高齢者の罹患率や死亡率の増加につながることが示唆されている.

▪自然免疫系細胞におけるサイトカインのシグナル伝達,一酸化窒素の産生および好中球の貪食機能は,高齢者ではすべて低下している.

▪獲得免疫系においては,Tリンパ球とBリンパ球,胸腺と骨髄の間質は,加齢によって大きな影響を受ける.

▪加齢に伴い,分裂促進させる抗体や抗TCRアゴニストに対するT細胞の増殖やIL-2の産生が減少する.

▪老化したB細胞では,活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)の誘導不足がみられる.この結果,高齢者では抗体の親和性が低下し,抗体を介した防御機能が低下する.

高齢者における消化器疾患ガイドラインとその解説

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Summary

▪日本高齢消化器病学会では「高齢者GERDガイドライン」を2019年に発刊した.

▪若年者と比較して高齢者胃食道逆流症(GERD)では,びらん性GERDが多く,狭窄・出血をきたしやすく,また,胸やけなどの定型症状を訴える症例は少ない.

▪初期治療における第一選択薬として,高齢者びらん性GERDではプロトンポンプ阻害薬(PPI)またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)を推奨し,非びらん性GERDではPPIを推奨する.

▪長期治療における維持療法として,高齢者びらん性GERDではPPIを推奨,P-CABを提案し,非びらん性GERDではPPIを推奨する.

▪高齢者におけるヒスタミン(H2)受容体拮抗薬(H2RA)の使用は,若年者に比較しせん妄などの副作用を引き起こす可能性が高いため,適応を慎重に判断し必要最小限にすることを提案する.

▪高齢者におけるPPIによる維持療法の安全性は高いが,長期投与に際しては注意深い観察が必要である.必要に応じた最小限の用量で使用すること,継続使用の必要性について定期的に評価することを提案する.

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Summary

▪本邦での消化性潰瘍の有病率は減少しているが,好発年齢は高齢化がみられる.

▪高齢者消化性潰瘍患者では生理機能の低下,併存疾患や常用薬剤が多いことが問題となる.

▪出血時の予備能力が低いことから,輸血に関しても非高齢者に比べて柔軟な対応が必要である.

▪血栓塞栓症の高発症群では,抗血小板薬は休薬しないこと,抗凝固薬についても止血のために必要があれば休薬するがなるべく早期に再開することが望ましい.

▪出血性胃潰瘍が疑われた場合には,高齢者においても内視鏡による観察,および必要があれば内視鏡的止血術が推奨される.

▪高齢者胃潰瘍においては血餅付着例(Forrest分類Ⅱb)病変についても内視鏡的止血術を弱く推奨する.

胆石症 林 伸彦 , 安田 一朗
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Summary

▪高齢者では症状が目立たず非典型的な症状を呈することがあるため,急性胆囊炎あるいは急性胆管炎を疑った際には,積極的に血液検査および画像検査を行うことが勧められる.

▪高齢者の胆石症においては胆囊がんの合併が多く,胆囊壁の詳細な画像評価が必要である.

▪有症状化した胆囊結石に対しては外科手術(胆囊摘出術)あるいは胆囊ドレナージを,総胆管結石症に対しては内視鏡治療を行うことが望ましい.

▪背景疾患の存在,臓器機能の低下により侵襲的処置が困難な場合も存在するが,多くの症例では十分な準備のもとで行うことにより若年者と同様の治療を行うことが可能である.

高齢者における代表的消化器疾患とその治療

胃疾患 浅岡 大介 , 永原 章仁
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Summary

Helicobacter pylori感染を,未感染,現感染,除菌後を含む既感染の三つのカテゴリーに分けて,胃炎診断を行うことを目的として,「胃炎の京都分類」が作成された.

▪除菌後の胃がんリスクは除菌時胃粘膜萎縮高度例で最も高く,経過が長くなると萎縮の軽度~中等度症例でも未分化型胃がんのリスクが増加することが報告されており,除菌後は長期にわたる内視鏡フォローが必要である.

▪超高齢社会を背景に高齢者のフレイル・サルコペニア合併率が増加しており,今後胃がん診療においても,フレイル・サルコペニアの病態を考慮した治療戦略が求められる.

▪高齢者の増加に伴い,低用量aspirinや非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の使用頻度が高まり,薬剤性胃粘膜傷害に対する慎重な対応が求められる.

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Summary

▪高齢者の下部消化管出血の原因として大腸憩室の頻度が高く,長期臥床例では急性出血性直腸潰瘍が鑑別疾患となる.

▪まずバイタルサインの安定を図り,可能な限り低侵襲性の画像検査で原因検索を行う.

▪大腸内視鏡検査は経口腸管洗浄薬による前処置後に行うことが望ましいが,服用困難例が少なくない.

▪抗血栓薬は再出血の危険因子である.しかし,安易な中止は控えるべきであり,個々の症例に応じて治療方針を決定する必要がある.

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Summary

▪慢性便秘症は高齢者に多い疾患である.

▪便秘症があると生命予後が有意にわるいこと,心血管イベントが多いことが明らかになってきた.

▪高齢者では結腸運動能の低下,直腸感覚閾値の鈍麻など高齢者特有の病態異常が明らかになるため,単なる便秘ではなく直腸に便塊が貯留する糞便塞栓の発症に注意しなければならない.

▪便秘は食欲低下を惹起させサルコペニア・フレイルの悪循環を形成する可能性がある.

▪治療はmagnesium oxideをまず使うが,高齢者ではとくに高マグネシウム血症に注意する必要があり,刺激性下剤はレスキュー薬としての使い方が望ましい使い方である.

▪治療のゴールは排便の有無ではなく便形状の正常化,バナナ状便にすることである.

▪近年,安全かつエビデンスレベルの高い新規慢性便秘症治療薬の登場で高齢者便秘症治療が大きく変わりつつある.

潰瘍性大腸炎 東山 正明 , 穂苅 量太
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Summary

▪高齢潰瘍性大腸炎(UC)患者は,若年で発症して高齢化した高齢化UCと,高齢で発症した高齢発症UCに区別される.

▪高齢発症UCは非高齢発症患者に比べ,家族歴が少なく,腸管外合併率が低いことから,遺伝因子より環境因子の影響が強いと考えられる.

▪罹患期間の短い高齢発症UCは,高齢化UCに比べ入院率や手術率が高く,また発症年齢が高いほど重症化しやすい.

▪フレイルが高齢UC患者の予後に影響している可能性が高い.

▪高齢UC患者では,併存疾患と治療薬との相互作用,易感染性,発がんリスク,静脈血栓症などにいっそう留意する必要がある.

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▪わが国の肝硬変・肝細胞がん患者の多くが高齢者である.

▪高用量の利尿薬投与は電解質異常や腎機能増悪の危険性があり,高齢者ではtolvaptanの適用を利尿薬の増量前から検討する.

▪高齢者に対する腹水排液は少量から開始し,輸液,アルブミン投与を併用する.

▪サルコペニア合併例は分岐鎖アミノ酸製剤を含む栄養療法と運動療法を行う.ただし,運動は軽微な運動から段階的に強度を上げることが望ましい.

▪加齢に伴う認知機能低下と肝性脳症の鑑別はしばしば困難である.

▪高齢者の肝細胞がんでは,より侵襲の少ない治療が推奨される.個々の症例におけるperformance statusや合併疾患を考慮して,ガイドラインに沿った治療が可能か検討する.

肝 炎 小木曽 智美 , 徳重 克年
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▪本邦では慢性肝疾患の主たる原因はC型肝炎ウイルス(HCV)であったが,直接作用型抗ウイルス薬(DAA)によりHCVの治療成績は大きく向上した.

▪高齢者でも安全性が担保され,DAAによる治療が可能となったが,腎障害の合併や他の内服薬との薬剤相互作用に注意を要する.

▪B型肝炎ウイルス(HBV)に対しては,耐性変異を誘導することの少ない核酸アナログ製剤とワクチン接種が可能となった.

▪高齢者ではワクチン接種率が低いことが指摘される.

▪肥満の増加により非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は増加し,今後,最も高頻度な肝疾患となると考えられる.

▪高齢者でもNAFLDの頻度は高率であり,サルコペニアに起因する非肥満NAFLDにも留意する必要がある.

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▪日常診療で遭遇する機会のある膵炎としては,主なものとして急性膵炎・慢性膵炎・自己免疫性膵炎があげられる.

▪高齢者では症状が非典型的であることも少なくない.また,性差や発症原因なども非高齢者とは異なることも理解しておく.

▪高齢者に対してはさまざまな消化器症状を膵炎に関連づけて診察にあたることが求められる.

▪治療・経過観察の際には,加齢に伴うさまざまな生理機能の低下,併存疾患などを考慮して慎重に対処しなくてはならない.

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▪本邦は超高齢社会に突入しており,ポリファーマシーの問題が出現するとともに消化管傷害を惹起する薬剤の使用例が増加している.

▪非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)および抗血栓薬は局所作用に加えプロスタグランジンの減少を介して粘膜傷害を惹起する.

▪上部消化管においては酸分泌抑制薬により消化管粘膜傷害に対して一定の予防効果が期待できる.

▪小腸においては酸分泌抑制薬による予防効果が期待できず,プロスタグランジンE1製剤や防御因子増強薬などを併用することが重要である.

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▪消化管の代表的アレルギー性疾患は好酸球性食道炎・好酸球性胃腸炎であるが,アレルゲンの同定は困難である.

▪好酸球性食道炎の診断には食道の炎症による症状が必須であり,症状は嚥下障害,つかえ感が代表的である.

▪健診内視鏡で無症候性食道好酸球浸潤が発見されるが,好酸球性食道炎と同様の経過をたどるかはわかっていない.

▪好酸球性食道炎の治療目的は症状の改善,食道の線維性狭窄の予防である.第一選択はプロトンポンプ阻害薬(PPI)であり,抵抗例では局所ステロイド治療が奏効する.

▪好酸球性胃腸炎では小腸や大腸で好酸球性炎症をきたす頻度が高く,症状は腹痛や下痢が多い.

▪好酸球性胃腸炎ではステロイドが多くの例で著効するが,再燃例が多い.

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Summary

▪高齢がん患者の特徴は,① 余命が短い,② さまざまな併存疾患,③ ポリファーマシー,④ 生理的な臓器機能の低下,フレイルの増加,⑤ 認知機能の制限,⑥ 個人差が大きい,などがあげられる.

▪がん全体の約半数を占める消化器がんで,がん罹患率では大腸がん,胃がんが上位を占めている.

▪高齢者の早期消化管がんに対して,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)は広く適用されている.高齢者では偶発症が致命的になり得ることを念頭に置く必要がある.

▪進行消化器がんに対しても,高齢のみを理由に治療選択はしないが,適応は臓器予備能だけでなく認知機能,余命,QOLなどを統合的に判断する.

▪近年「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」「高齢者がん医療Q & A」など高齢者のがん診療の指針が発刊されているが,高齢者がん医療にはさまざまな課題が残されたままである.

高齢者の消化器診療を支える体制

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Summary

▪消化管手術の既往歴がある場合は栄養素の吸収障害への影響が残っていることを認識する.

▪術後長期間経過していても癒着性腸閉塞などの術後障害が起こり得る.

▪消化管手術は高齢者の不定愁訴の原因となっている可能性がある.

▪新たに発症した疾患の管理法として経管栄養ルートが候補になった場合は既往歴の術式を確認する必要がある.

▪少し食べられるようになったからといって,安易に静脈栄養を中止しないことが大切であるが,その一方でいたずらに経鼻空腸管を長期使用することも避けなければならない.

▪栄養支援が必要になった場合は,管理栄養士など複数の専門職と連携する.

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Summary

▪在宅療養者の約8割は「低栄養」「低栄養の恐れあり」である.

▪在宅診療を支える在宅での栄養管理は「栄養補給をしっかり行い栄養障害を進行させないようにする」ことである.

▪訪問栄養食指導には,介護保険「居宅療養管理指導」,医療保険「在宅患者訪問栄養食事指導」,総合事業「訪問型サービスC」の3種類がある.

▪多職種連携での問題解決の方法の一つに地域ケア会議がある.

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Summary

▪日本人高齢者の腸内細菌叢の特徴は,アクチノバクテリア門とファーミキューテス門の減少,バクテロイデス門とプロテオバクテリア門の増加である.

▪長寿地域の京丹後市ではファーミキューテス門酪酸産生菌が維持され,サルコペニア,フレイルが少ないことが特徴である.

▪早老症マウス研究から,Akkermansia muciniphila菌移植により,胆汁酸代謝の回復を伴って老化現象が抑制され,寿命が延長することが明らかにされた.

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Summary

▪摂食にはグレリン-神経ペプチドY(NPY)空腹系が深く関わり,健康長寿をもたらすカロリー(エネルギー)制限では増加が,また老化や体重減少病態ではその抑制がみられやすい.

▪高齢者の食欲不振・意図的でない体重減少は,炎症性疾患(悪液質:進行がん,心不全,慢性閉塞性肺疾患(COPD),腎疾患,慢性感染症など)や非炎症性疾患(飢餓,吸収障害,甲状腺機能亢進症,神経性食欲不振症,うつ病など)の鑑別が必要である.

▪高齢者の摂取不足は種々の要因で生じ,フレイル発症の引き金ともなる.蛋白質(男性60g/日,女性50g/日)やビタミンDの摂取が推奨されている.

▪日本人の食事摂取基準(厚生労働省,2020年版)は年齢・性別・身体活動量に規定され,たとえば75歳以上で身体活動レベルⅡ(自立)の場合,男性は2,100kcal/日,女性は1,650kcal/日とされる.

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Summary

▪Parkinson病(PD)およびLewy小体型認知症(DLB)では運動症状などをほとんど伴わず,便秘が初発症状となるLewy小体型便秘(LBC)が知られており,消化器科救急として偽性腸閉塞/麻痺性イレウスをきたす場合もある.

▪LBCは腸管壁内(Auerbach)神経叢の変性・Lewy小体の出現を反映しているものと思われ,一部,大脳黒質・青斑核の病変も関与していると考えられる.

▪早期介入の立場から,消化器内科と脳神経内科の協力が重要と思われる.

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 穂苅 本日は,「増え続ける高齢患者に提供すべき消化器診療とは」と題し,日本高齢消化器病学会の理事も務められている3人の先生方にお集まりいただきました.塩谷先生は上部消化管を専門とされており,消化器疾患における性差医療にも造詣が深く,数少ない女性教授としてご活躍されています.寺井先生は肝硬変に対する自己骨髄細胞投与療法を世界で初めて開発され,現在は日本肝臓学会の理事も務められています.久松先生は炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)の病態解明と新規治療法を研究されている下部消化管のエキスパートで,厚生労働省の難病班の班長を勤めていらっしゃいます.

 上部消化管,肝臓,下部消化管,各領域の専門家である先生方から各疾患の疫学の推移を皮切りに,どこまで治療を追求することが高齢患者さんの最大の利益になるのか,といった内容についてご意見を伺いたいと思います.

 webでの開催となりますが,どうぞよろしくお願いいたします.

Book Review

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 炎症性腸疾患(広義のIBD,以下IBD)のほとんどは命に関わらない良性疾患であり,また疾患数も格段に多く確定診断が得られないことも多いため,診断はないがしろにされがちである.腫瘍は “診断して切除すればそれで終了” といった面があるため,病態・画像は動かないが,IBDは初期,極期,治癒期,瘢痕期でその病態・画像は激しく動き,さらには初期像や治療の介入,虚血性変化の合併などにより非典型像を呈し,これらの像が混在して出現することもあるため,その画像はきわめて複雑である.そのため,端から画像診断を諦めてしまう輩も多いと思われる.

呼吸器疾患最新の治療2021-2022 石井 誠
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呼吸器診療に携わるすべての臨床医のバイブル

 『呼吸器疾患最新の治療2021-2022』がこのたび刊行された.同書の初版は「1998-2000年版」であり,長い歴史のあるロングセラーである.小生も内科医・呼吸器内科医として駆け出しのころから,本書をバイブルとして病態のメカニズムや,診断・治療方針の決定,さらに具体的な処方例も大変参考にして診療にあたってきた.また小生が呼吸器専門医・指導医となった現在でも,自身のサブスペシャルティ領域に関する内容,そしてそれ以外の内容に関しても大変興味深く,現在の最新の情報をアップデートができる,まさに呼吸器領域のエッセンスがすべて詰まっている大変秀逸な本である.

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 本書の著者である豊島治先生が院長をされている「とよしま内視鏡クリニック」は消化器内視鏡医の精鋭が集まる都内でも屈指のクリニックである.豊島先生は,常に消化器内視鏡学への探求心をもたれ,内視鏡診断,消化管診療,患者負担の少ない内視鏡検査を追求し続けておられる.多忙な日常診療の傍ら,学会発表や論文執筆も間断なくされ,最近母校の東京大学から学位(博士(医学))も授与されている.

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 2021年1月に,血液形態学を学ぶバイブルである『ビジュアル臨床血液形態学』が改訂され,改訂第4版が出版された.

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 がん診療に携わるすべての医療スタッフ待望の良書が発刊された.タイトルは,『アプローチと実践がわかる 高齢者の乳がん診療』である.『国盗り物語』(司馬遼太郎・著)には「病人なら投薬すればなおる.しかし老人を死からまもることはできぬ」といった一節がある.本書のアドバンスケアプランニングの項にも解説があるように,高齢者は人生の最終段階に近いと言えなくもない.現代の医療は,“病を抱える高齢者” にあらゆる治療法を提案可能であり,治療方針決定の判断に悩む状況も少なからず生じてくる.タイトルにあるように,とくに「アプローチと実践がわかる」というところが本書の特徴で,高齢者の多様性に配慮してあらゆる支援を意識するといった趣旨が貫かれている.

連載 ドクターGとドクターS ~「Generalist⇄Specialist」連携のポイント~

ケース ③ 心不全 森内 健史 , 泉 知里
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今回のポイント

かかりつけ医の役割 Generalist

✓高血圧,糖尿病,脂質異常症などの心血管疾患のリスクを適切にコントロールする.

✓身体所見,胸部X線検査,心電図などから早期に心疾患,心不全を発見する.

✓生活習慣改善,内服管理,体重・血圧管理などの心不全自己管理をサポートし,長期予後改善,心不全入院回避を目指す.

専門医との連携 Specialist

✓心不全の原因精査に必要な心臓超音波検査,心臓カテーテル検査などについては提携先の専門医と連携して施行し,積極的に原疾患の確定を進める.

✓生活指導や服薬調整で心不全症状の改善が乏しい場合や,カテーテル治療などの専門的な治療を要する場合には専門医療機関に紹介する.

連載 ~知っているようで,実は十分に理解していない~ 医療に関する制度のあれこれ

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 医学の進歩に伴い患者予後は改善していますが,それに伴い医療費も高くなっています.平成元年度の国民医療費は19兆7,290億円でしたが,平成30年度は43兆3,949億円と,30年で2.2倍に増加しました.高額な医薬品や治療方法がこの増加の原因の一つとしてあげられます.現在,最も高価な医薬品は,1回の治療で1億円を超すようなものまで出てきています.これほど高額な医薬品ではなくとも,たとえば慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)の治療でも毎月50万~60万円の医療費(薬剤費)が患者の負担となります.CMLは薬の進歩によってほぼ死なない病気となりましたが,最低でも数年以上治療薬を継続しなくてはいけません.自己負担額が3割としても,毎月20万円程度を長期にわたって負担することは,ほとんどの患者が不可能です.そこで利用されるのが,高額療養費制度です.今回は,高額療養費制度について最低限知っておいていただきたいことをまとめます.

連載 悩むケースに立ち向かう! 臨床推論のススメ方 ~全国GIMカンファレンスより~

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連載のねらい

 GIMカンファレンスは,臨床推論の技術を向上させることを目的とした内科全般の症例を扱う検討会であり,全国各地で組織され開催されています.本連載では,全国のGIMカンファレンスにおいて検討された症例をご紹介いただき,診断過程を時系列に沿って解説いただきます.

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 わが国は喀血先進国である.2017年以降,わが国からは数多くの喀血関連のエビデンスが輩出されている.喀血に対するカテーテル治療である気管支動脈塞栓術(BAE)は,かつての外科手術までの橋渡し治療という位置づけから,現在では有効性と安全性の向上により第一選択治療とされている.喀血による院内死亡率は10%程度ときわめて高い.ところが先進国たるわが国でさえ年間数万人に及ぶ喀血入院患者の4%にしかBAEは実施されていない.BAE発祥の地,フランスではさらに低く2.4%である.このような興味深い記述疫学データがリアルワールドデータを用いて明らかになった.本稿ではここ数年でわれわれが構築したエビデンスを軸に,喀血とBAEの最先端を解説する.

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 は じ め に 2019年12月以降,中華人民共和国湖北省武漢市での報告をはじめとして,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2021年3月現在も全世界に拡大している1)

 亜急性甲状腺炎は,インフルエンザやEBウイルスなどのウイルス感染が原因とされる,甲状腺の炎症性疾患である2).今回,亜急性甲状腺炎を合併したCOVID-19の症例を経験したため,報告する.

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 は じ め に 卵巣甲状腺腫は全卵巣腫瘍の1.0%以下,奇形腫の2~4%にみられるまれな疾患であり,機能性を有し甲状腺機能亢進症を呈する頻度はさらに低い.Basedow病と卵巣甲状腺腫の合併はまれであり,甲状腺に対する治療不応性から卵巣甲状腺腫の存在が明らかになることが多く,Basedow病と卵巣甲状腺腫が同時期に診断された例は乏しい.今回われわれは,放射性ヨウ素(123I)シンチグラフィおよび卵巣腫瘍組織の病理所見より,機能性卵巣甲状腺腫とBasedow病を同時期に診断し得た1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

基本情報

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臨床雑誌内科
128巻4号 (2021年10月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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