連載 Focus On
日常診療で梅毒を見逃さないためのマインドセット
平井 由児
1
1東京医科大学八王子医療センター感染症科
キーワード:
butterfly appearance
,
snail tract
,
Jarisch-Herxheimer反応
Keyword:
butterfly appearance
,
snail tract
,
Jarisch-Herxheimer反応
pp.1098-1104
発行日 2021年11月1日
Published Date 2021/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_1098
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梅毒は新大陸からヒトを介し欧州へもち帰られ,爆発的に増加した性感染症である.病原体Treponema pallidumは性行為に伴い皮膚・粘膜より体内に侵入し,9~90日の潜伏期間を経て下疳などの第1期梅毒を発症し,一部は早期神経梅毒へ移行する.第2期梅毒は多彩な症状と全身・皮膚軟部組織(脱毛を含む)・肝・腎・眼・耳・中枢神経などの複雑な臓器障害が誤診へと導くことから「偽装の達人(the great imitator)」ともよばれる.潜伏梅毒は感染から1年を境に早期・晩期に分類され,無症状で偶発的に発見される.第3期梅毒では感染性は消失し,大動脈瘤,ゴム腫,神経梅毒(脊髄癆,進行性麻痺)等の回復不可能な合併症の要因となる.トレポネーマ抗体検査(TPLA)は過去~現在までの感染の有無を,非トレポネーマ脂質抗体検査(RPR)は病勢を表す.感染初期ではトレポネーマ抗体検査が陰性となり2週間後の再評価を行う.身体所見と病歴(問診)で総合的な判断が必要である.治療はペニシリン系薬による点滴静注・内服が原則であり,病期や背景に応じた治療期間やフォローアップを行う.未診断の梅毒患者が多数存在している可能性があり,早期診断と適切なマネジメントを行うことが重要である.
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