がん看護 25巻2号 (2020年2月)

特集 がん薬物療法による有害反応への対応 ~こんな時どうしたらよいの?~

編集にあたって 菅野 かおり
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 がん薬物療法は日進月歩で変容しており,今まで治療効果が望めなかったがん種や進行がん患者にも適応が拡大してきています.1940年代からある殺細胞性抗がん薬,2000年に登場した分子標的治療薬,がん免疫の解明によって創薬された免疫チェックポイント阻害薬など,これまでに多くの治療薬が開発されてきました.このことによって多くのがん患者が恩恵を受けられるようになった一方で,取り扱い方法の複雑さやつらい有害反応(副作用症状)の出現という問題点があります.とくに,有害反応は治療を遅延させたり,治療を断念することになったり,治療がきっかけで他の疾患を併発したり,症状によって日常性が大きく変化するなどの問題を起こすことがあります.副作用症状は予防と早期発見,適切な対応が重要で,がん薬物療法を受ける患者を支援する看護師の重要な役割であるといえます.

 がん薬物療法を治療計画どおりに,安全で安心して受けられるようにするには,適切な薬剤投与管理と副作用症状マネジメントが重要です.とくに,がん薬物療法による有害反応への対応は,薬剤を十分に理解し,症状を早期に発見することが必要です.そこで,本特集では,がん薬物療法によってひき起こされる副作用症状に対して,知識をもってケアにあたれるようにがん薬物療法の現場で活躍中の執筆陣に解説していただくことにしました.

 症状マネジメントをテーマにした書籍や雑誌の記事は今までも多く出版されていますが,本書では項目の冒頭にある事例へのケアを「読者と一緒に考えていこう!」というイメージから解説を展開するといった,新しいスタイル(構成)を考えました.皆さんが現場でよく出会う事例をあげていますので,状況判断,症状のとらえかた,対応方法を考えていくときに,どのように考えればよいのかのヒントになればと期待しています.さらに,それぞれの症状の定義や患者への具体的な指導内容なども入れていますので,ぜひ活用していただければと思います.

 本特集が,がん薬物療法看護の現場で奮闘中の看護師の方々のケアへの迷いを解消し,患者の安全な治療の遂行と生活上の安楽に役立つものとなれば幸いです.

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事例

 パクリタキセル投与開始5分経過したところで血圧低下,意識低下が起こりました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 この事例は,薬剤性の過敏症の可能性が高い.パクリタキセル投与5分後に循環器症状とそれに伴う意識レベルの低下が起こっている.原因薬剤としてパクリタキセルが挙げられ,循環不全に陥っているためアナフィラキシーショックと考えられる.パクリタキセルの場合,初回と2回目に過敏症発症のリスクが高く1),製剤に含まれている添加剤であるポリオキシエチレンヒマシ油が発症に関与していると考えられる.患者の体内では,薬剤投与により免疫系の補体が活性化され,マスト細胞および好塩基球から化学伝達物質が放出,末梢血管の拡張と透過性が亢進し,循環不全からアナフィラキシーショックとなった2).急激な血管透過性の亢進は末梢気道の攣縮や浮腫,咽頭浮腫が生じ,このままでは生命を脅かす状況となる.

この事例にどう対応する?

 ただちに原因薬剤と考えられるパクリタキセルの投与を中止し,緊急用コールで応援要請する.A(airway:気道),B(breathing:呼吸),C(circulation:循環)の安定化を図るため対応する.①意識レベルを確認,②患者を仰臥位にする,③呼吸状態を確認し,必要時は気道確保と酸素投与,④大量輸液,アドレナリンの投与など,患者状態に応じてすみやかに対症療法を行う.また,患者への声掛けを行い,そばを離れない.

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事例

 初回セツキシマブ投与開始30分後に瘙痒感,喉の絞扼感,呼吸困難感が出現し,血圧低下が起こりました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 症状が出現した時間が初回投与開始30分後でセツキシマブ投与中であること,また,瘙痒感などのアレルギー様症状が出現していることから,セツキシマブによるインフュージョンリアクションが起こっていると考える.血圧低下,呼吸困難感などのアナフィラキシー様症状があるため,Grade 3のインフュージョンリアクションであると判断する.

この事例にどう対応する?

 発見者は,ただちにセツキシマブの投与を中止し,周囲にインフュージョンリアクションが起こっていることを知らせて,応援をよび,救急カートや酸素マスク,生体モニターの準備を依頼する.次に,バイタルサインの測定,全身状態の観察,患者の自覚症状の確認を行い,医師への報告を応援者に依頼する.この際,発見者は患者のそばを絶対に離れず,患者の観察を続ける.そして,患者や家族は突然の症状の出現や次々行われる処置を不安に思うため,声掛けをしながら対応する.

 患者の観察と並行して,セツキシマブを投与している点滴ルートを除去し,細胞外液(薬剤を含まない輸液)を満たした点滴ルートに交換する.医師が到着した際には,症状が出現した時間,セツキシマブの積算投与量,投与開始からの経過時間,症状の出現部位,患者の訴え,バイタルサイン,対応した内容を報告し,前記内容を記録に残す.医師の指示によりアドレナリン,副腎皮質ホルモン,抗ヒスタミン薬を投与する.必要時は酸素,気管支拡張薬,静脈内輸液,昇圧薬の投与を行う.

腫瘍崩壊症候群 宮本 拓
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事例

 R-CHOP療法(リツキシマブ,シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾロン)初回治療時に,投与開始8時間後の患者に尿量減少,不整脈,尿酸値とカリウム値の上昇,脱力感,悪心が出現しました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 この事例の場合,治療開始8時間後に症状が出現していることや疾患・血液データ・臨床症状から総合的に判断して腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)が出現していると考える.その根拠は,尿酸値とカリウム値の上昇が認められ,それに加えて不整脈が併発しておりClinical TLSという状態となっていると考えるからである.

この事例にどう対応する?

 まずは尿量減少が認められており,大量輸液を行うとともに利尿薬を用いて尿量を確保する.それに加えて尿酸値上昇に対しては尿酸分解酵素製剤の使用,カリウム値上昇に対しては血清カリウム値に応じた治療が必要となる.

悪心・嘔吐 坂本 路代
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事例

 AC療法を受けて自宅に帰った後,夕方に強い悪心を感じ,その後嘔吐しました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 AC療法(ドキソルビシン+シクロフォスファミド)は高度(催吐性)リスクのレジメンである.前投薬は第2世代5-HT3受容体拮抗薬やNK1受容体拮抗薬が使用されていると予測されるが,症状が発現した.このことから,突出性嘔吐症状を疑う.嘔吐で誤嚥してしまう可能性や,症状の遷延で食事摂取や飲水摂取が困難となれば脱水症状をひき起こすこともある.症状の重症度の見極めをすると同時に,作用機序の異なる制吐薬を使い,早急な症状緩和が必要である.

この事例にどう対応する?

 悪心が持続しているか,吐物による誤嚥や発熱の有無を確認し,受診の必要性について判断する.症状の発現で,不安な気持ちであることに共感しつつ,症状はずっと持続するものではなく,治療経過とともに改善していくことや,緩和する方法があることを伝える.症状が落ち着いてきているようであれば,経過観察をする.ドパミン受容体拮抗薬や抗不安薬の制吐薬が処方されているかどうか確認し,症状が再燃した場合は使用するように説明する.

 症状が持続している間は無理をして食べなくても構わないこと,口あたりがよく食べやすいと思うものを摂取することを伝える.食べることはむずかしいが水分摂取はできる場合は,経口補水液などの摂取を提案する.5-HT3受容体拮抗薬では,便秘になりやすい.便秘により悪心・嘔吐症状が遷延しないように排便コントロールの留意を説明する.症状やそのほかにも何か困ったことを相談対応できる窓口について情報をもち得ているか確認し,一人で対応しようと思わなくてよいことを伝え,安心感を与える.

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事例

 末梢血管からドキソルビシンを静注していたら,滴下が止まり,留置針刺入部の発赤と痛みがありました.逆血はありません.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 患者が刺入部の痛みを訴え,滴下が止まり,留置針刺入部の発赤と痛みがあり,刺入部に異常が認められる.静脈炎やフレア反応との鑑別が必要であるが,逆血がないことから,ドキソルビシンの血管外漏出が起こっていると考えられる.ドキソルビシンは起壊死性抗がん薬に分類され,少量の漏出でも重篤な壊死を起こす可能性がある.そのため,発生時の詳細な情報(漏出した薬剤の種類・濃度・量・部位の状態など)を把握する必要がある.症状としては発赤と疼痛であるが,今後悪化する可能性があり注意が必要である.

この事例にどう対応する?

 原因薬剤であるドキソルビシンの静脈投与をただちに中止,留置針はそのままにして,針から漏出液または血液を可能な限り数mL吸引後抜針する.漏出したドキソルビシンの漏出量と範囲を確認し,マーキングする.その後,漏出した患肢を拳上し,漏出部位の冷却を実施する.支持療法としては,副腎皮質ステロイドの投与,漏出後6時間以内であれば,毒性も考慮し,デクスラゾキサン(サビーン®)の投与も医師を中心に多職種で検討する.

腎障害 竹本 朋代
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事例

 シスプラチン(CDDP)を投与中に尿量が徐々に減り,ほとんど尿が出なくなりました.むくみが出現し,体がだるいと言っています.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 一時的な軽度の浮腫や倦怠感はシスプラチン(CDDP)の有害反応として比較的頻繁に出現するが,この事例でのポイントはCDDPの投与中から出現している尿量減少であり,CDDPによる急性腎障害(acute kidney injury:AKI)が疑われる.

 腎障害はCDDPの代表的な有害反応である.CDDPによる腎障害の病態は急性尿細管壊死であり1,2),腎機能は急激(数時間~数日)に低下する3,4).障害の進展により高窒素血症(老廃物の蓄積)とそれに伴う尿毒症症状(悪心,食欲不振,倦怠感,意識障害など),体液貯留(体重増加,浮腫など),高カリウム血症などの電解質異常,代謝性アシドーシスが出現し生命の危機に直面する.本事例では体液貯留と尿毒症症状が出現していると考えられる.

 一方,急性腎障害はさまざまな病態を背景として発症する5).CDDP以外に腎障害の原因がないかも合わせてアセスメントし,対処する必要がある(表1).

この事例にどう対応する?

 急性腎障害の進展が疑われるためすみやかな対応が求められる.CDDPによる急性腎障害では一般的な急性腎障害に準じて治療を行う1).腎障害の治療(表2)は,①原因に対する治療と,②回復するまでの全身管理からなる.治療の目標は高窒素血症,体液貯留,高カリウム血症による不整脈などから生じうる生命の危機を回避することである.治療として水・電解質代謝の管理と栄養管理を行うが,それらを行っても腎障害が遷延する場合は透析療法を行うことになる.

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事例

 急性骨髄性白血病の寛解導入療法でイダルビシン,シタラビンによる初回治療を開始後5日目に38.5℃の発熱がありました.好中球数は0/μLです.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 この事例は,血液疾患,抗がん薬投与により感染の原因となる病原体を排除する役割を担っている好中球が減少し,感染が生じていると考えられる.好中球数は0/μLであり,重症感染症を併発する可能性が高い.急性白血病は,骨髄中の造血前駆細胞が分化・成熟する過程で障害を起こし,造血機能が正常に働かないため,好中球が産生されていない.また,がん細胞は,分裂期の細胞が多く抗がん薬の影響を受けやすい.白血病の治療では好中球減少の程度が強く期間が遷延することが予測されるため,感染症が重篤化(敗血症やショック)する可能性がある.

この事例にどう対応する?

 症状の出現時,評価として医師の指示に基づき感染が疑われる部位(尿・血液・鼻腔・口腔・便など)の培養検査,呼吸器症状を伴う場合は,胸部X線検査をする.血液培養検査は,異なる部位から2セット(好気性培養,嫌気性培養各1本を1セット)以上が推奨されている.抗菌薬を開始する前に採取を行い,カテーテルが挿入されていれば,カテーテルから1セット,末梢から1セットを採血する.カテーテルが挿入されていないときは,末梢の異なる部位で行い,すみやかに抗菌薬を投与する.感染源の特定,病原菌の予測,症状出現時のリスクアセスメントを行う必要がある.血液検査データ(白血球・好中球・CRP)の推移も観察していく必要がある.

 また,身体所見として,バイタルサインの推移,全身状態,感染好発部位の感染徴候,ADL,セルフケア能力を観察する.患者の苦痛症状をモニタリングし,苦痛緩和に努める.感染予防に関するセルフケア行動がとれるかを適宜アセスメントしながら支援する.医師と患者の状態を共有し,解熱薬の使用や補液の追加を検討する.表1に発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)発症頻度20%以上の治療レジメンを示す.

貧血(赤血球減少) 辻 真梨亜
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事例

 シスプラチン,ゲムシタビンによる治療が3回終了したころから,労作時の息切れと疲労感,食欲不振が出現しました.ヘモグロビン(Hb)値は7.1 g/dLでした.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 シスプラチン,ゲムシタビンの治療に起因した貧血とその症状であると推測される.

 複数の殺細胞性抗がん薬による併用療法において,骨髄抑制は出現頻度の高い副作用の1つである.シスプラチン,ゲムシタビンの併用療法では,貧血の出現頻度は13.4~28%(CTCAE v5.0 Grade 3/4)とされている.シスプラチン,ゲムシタビンによる治療スケジュールは3週1サイクルの投与であり,この事例では3回の投与が終了している.よって,労作時の息切れと疲労感,食欲不振が出現したのは,治療が開始されてから9週間経過したころということになる.貧血は抗がん薬の投与後,数週間から数ヵ月にわたって出現する症状であるため,貧血が生じやすい時期と合致している.ヘモグロビン(Hb)値は7.1 g/dLであり,貧血の定義と合致する.また,労作時の息切れと疲労感,食欲不振は貧血に伴う症状と考えて矛盾しない.シスプラチンの副作用である腎障害によって貧血を起こすこともあるため,腎障害の有無についての確認は必要となる.

この事例にどう対応する?

 Hb 7.1 g/dLは赤血球輸血が適応される基準値であることから,赤血球輸血が検討される.労作時の息切れ,疲労感に対しては,十分な休息と安静が保持できるよう環境を整備する.通院での治療であれば,自宅での環境が整えられるよう家族を含めた説明が必要となる.食事は患者の嗜好に合わせながら,タンパク質や鉄分,ビタミンC,ビタミンB12を含む食品が摂取できるよう,食事内容の調整を行う.Hb値の低下においては,労作時の息切れ,疲労感,食欲不振のほかに,めまいやふらつき,動悸,頭痛などの症状が出現する場合があるため,それらの症状についてもモニタリングを行い,安全を確保した転倒防止対策を講ずる.

出血傾向(血小板減少) 大上 幸子
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事例

 患者は60代女性であり,卵巣がんstageⅣ期と診断され,TC療法(カルボプラチン,パクリタキセル)を受けている.4回目の治療後に鼠径部と上肢に点状出血斑があることに気づいた.また,歯磨きをすると,ときどき歯肉から出血することがある.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 この事例は,TC療法による血小板減少に伴う出血傾向の状態である.カルボプラチンとパクリタキセルそれぞれの用量制限毒性*(dose limiting toxicity:DLT)として骨髄抑制がある.患者はTC療法を3週ごとに4コース受けており,繰り返して治療を受けることにより骨髄抑制からの回復機能が低下し血小板減少が遅延したと思われる.そのため,点状出血斑や歯肉出血などの出血傾向が出現していると考えられる.

この事例にどう対応する?

 血液検査による血小板値やほかに出血傾向が認められていないか確認し,現在の血小板減少の程度(後出の【症状の評価】参照)や出血リスクの状態(後出の【モニタリングの方法と内容】参照)をアセスメントする.そして患者へ現在の出血傾向の原因と状態について説明し,出血予防の必要性と対処方法(後出の【患者指導】参照)について指導する.卵巣がんの場合,TC療法は3~6コース行われるため,治療を継続する場合さらに血小板減少が遅延する可能性があり,継続的な支援が必要である.

 血小板輸血が唯一の支持療法となるが,輸血による副作用などもあるため血小板減少の状態により検討となる.次コース以降,治療開始前の血小板数が7.5万/mm3以下の場合は治療の延期や抗がん薬の減量が必要となる.

倦怠感 新田 理恵
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事例

 BEP療法(ブレオマイシン,エトポシド,シスプラチン)開始5日目ごろから疲労感が強く,ベッドから起き上がれなくなり,洗面やトイレに行くのもむずかしくなってきました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 事例の患者(以下,患者)は,治療開始5日ごろより疲労感が強くなり,移動に支障をきたしている.患者の活動は,がん薬物療法後から変化していた.この活動の変化の原因は,倦怠感であると考える.その理由として,現在の患者の状態は,治療開始前の活動に合致しない,日常生活機能の妨げとなるほどの自覚症状が出現しているといえる.この状態は,がんに伴う倦怠感の特徴であり,患者の症状と合致する.倦怠感は,すべてのがん薬物療法薬で出現する可能性がある.患者は,3種類のがん薬物療法薬の投与を受けていた.患者が受けているBEP療法は,高度(催吐性)リスクの治療法1)である.そのため,悪心が出現し,倦怠感の要因になっている可能性が高い.BEP療法の治療場所は,入院が大半である.そして,BEP療法の点滴の投与は,複数日になる.さらにがん薬物療法薬の投与前後には,支持療法薬が投与される.そのため,患者は持続する点滴投与で活動範囲が制限されたり,治療前より排泄回数が増加したりすることがある.排泄回数の増加(とくに夜間)は,睡眠の質に影響する.睡眠の質の変化も倦怠感のリスク要因となる.以上のことから,倦怠感がこれらのさまざま要因で,出現している可能性が考えられる.

この事例にどう対応する?

 患者にトイレをがまんさせないために,できるだけ安楽にトイレに移動できるように支援する.声をかけ,起き上がりや歩行の介助を行う.体調によっては,移動に車いすを使用する.洗面は,体調が回復するまで,ベッドサイドで行うことも検討する.また,活動に対する支援と同時に,治療可能な原因を探し,苦痛の軽減をはかれるように努める.倦怠感は,がん薬物療法による副作用に影響するため,副作用のマネジメントが重要になる.患者には,倦怠感があるときのエネルギーを温存する方法について伝える.具体的には,人に任せる,ペースを整える,気晴らしをする,優先順位をつける,一度に取り組む活動は1つにするなどである.自分で倦怠感のパターンを把握し,倦怠感のマネジメントができるようにも支援する.

下痢 出口 直子
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事例

 イリノテカンの投与後6日目ごろから泥状~水様性の下痢が始まり,便に少量の血液が混じっていることもあります.腹痛と食欲不振が起こっています.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 今回の事例は,イリノテカン投与後6日目ごろから少量の血液が混入した下痢が出現しており,その原因として感染性によるものと,イリノテカンを被疑薬とする薬剤性によるものが考えられる.今回の事例に該当する急性下痢(持続期間2週間以内)の90%以上は感染症が原因である.非感染性の10%は薬剤,中毒,虚血などが原因であるが薬剤性がもっとも多い1).まず,急性下痢のうち頻度の高い感染性の下痢が疑われる状況がないか見極める.感染性下痢の鑑別として,摂食歴,周囲に同様な症状の人はいないか,旅行歴,ペットの飼育状況などによる感染の機会,発熱の有無を確認する.否定的であればイリノテカン投与を契機として出現している下痢であり,便に血液混入や腹痛がみられることから,薬剤性下痢としてイリノテカンの腸管粘膜障害によって生じる遅発性下痢(イリノテカン投与24時間以降)の可能性を検討する.薬剤性下痢を検討する場合,イリノテカン以外にも原因となる薬剤を使用していないか併せて確認する(表1).経口薬は自宅での内服管理の困難さから,下痢が出現しても下剤や経口抗がん薬の内服を続けていることもあり,下痢の悪化や遷延につながる可能性がある.

この事例にどう対応する?

 下痢の増悪は脱水から電解質異常,循環不全につながるなど重篤な状況が起こりうる.脱水の徴候(後出【モニタリングの方法と内容】参照)とともに検査データとして電解質,腎機能,必要に応じて血液ガス検査の値2)を確認し,緊急性の評価を行う.腹痛と食欲不振が生じていることから,経口摂取量も確認する.緊急性の評価を基に適切な補液による脱水と電解質異常の補正を行う.薬剤性下痢の場合,止痢薬を開始し下痢の状態や腹痛と食欲不振が改善するか評価する.また,エネルギーが消耗している状態が予測され,環境調整により安静に過ごせるよう配慮する.

便秘 山本 理恵
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事例

 パクリタキセル投与開始後2週間経過した頃から便が出にくくなり,腹部膨満感と食欲不振が出現してきました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 パクリタキセル投与開始後であるため,抗がん薬治療による有害事象とアセスメントしがちであるが,便秘は疾患そのものや加齢による影響,患者の普段の排便習慣や生活習慣,食生活,服薬状況など,さまざまな要因が影響していると考えられる.パクリタキセルの投与に加え,さまざまな要因によって大腸内に糞便やガスが貯留し,腹部膨満感,食欲不振などの随伴症状がひき起こされた状態と考えられる.さらにパクリタキセルは肝臓で代謝され胆汁中へ排泄される1)薬剤であるため,便秘により抗がん薬の排泄が遅延し有害事象が強く現れるおそれがある.

この事例にどう対応する?

 まずは患者の便秘の要因と便秘に対し下剤の使用が可能であるかをアセスメントする必要がある.疾患,転移の有無,病期,既往歴など,患者の病態について理解したうえで,患者の服薬状況,食事,運動,生活習慣などの情報収集を行う.また,普段の排便習慣とパクリタキセル投与後の排便状況(便の性状,量,回数など)の変化を確認する.パクリタキセル投与後に便が出にくくなったと患者は訴えているため,腸管蠕動運動の低下および腸管内に糞便が停滞し硬便となっているおそれがある.現在発現している便秘に対し,腸蠕動音を確認後,腸管蠕動運動を促す大腸刺激性下剤と便を軟化・増量させる浸透圧性下剤の使用が必要と考えられる.また,現在発現している症状への対応のみならず今後起こりうる便秘の予防も重要であるため,得られた情報を基に便秘の要因をアセスメントし,患者に必要な指導や薬剤調整を行う必要がある.

口内炎 蛭田 真未
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事例

 フルオロウラシルを投与後7日目ごろから口腔内の痛みと発赤が出現し,10日目には2 mm大の潰瘍ができていました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 フルオロウラシルは殺細胞性薬剤であり,代謝拮抗薬の中のフッ化ピリミジン系薬剤に分類され口腔粘膜炎の発症頻度が高い薬剤である.この事例では,フルオロウラシルによる口腔粘膜細胞への直接障害により7日目ごろから痛みや発赤といった口内炎が生じている.また,10日目は骨髄抑制時期であり免疫機能低下から易感染状態となり,7日目に生じた局所感染から潰瘍が出現したと考えられる.

この事例にどう対応する?

 まず,実際に患者がどのように含嗽や歯磨き(ブラッシング)などを行っているかセルフケア状態を確認する.また,潰瘍が生じているため,疼痛緩和が必要となる.潰瘍部にステロイド外用薬(デキサルチン®口腔用軟膏など)を使用し治療するため,実際に患者と一緒に軟膏などを使用し,使い方を説明する.次に,含嗽や歯磨きの方法やタイミングなど不足点の再指導を行う.口腔内に疼痛がある場合,キシロカイン®ハチアズレ®含嗽液を使用し1日3~4回含嗽を実施する.口腔内の状態やセルフケア状況を連日観察し,口内炎の程度を評価する.

食欲不振 山本 有佳子
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事例

 大量メトトレキサート療法を開始し,3日ごろから塩味が感じなくなった.何を食べても美味しくなく,食事が取れなくなったと話しています.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 がん薬物療法中に出現する食欲不振は,さまざまな要因が関連しており,食欲不振の要因を考えることが症状コントロールを行っていくうえで重要である.要因として原疾患に関連したものや抗がん薬による悪心,口腔粘膜障害などが考えられる.

 患者はがん薬物療法開始後に,塩味が感じにくくなっていることより,味覚障害が出現していると考えられる.味覚障害は,がん薬物療法開始後数日より発生することが多く,食欲不振の要因の1つとなる.食欲不振の持続は低栄養状態や免疫低下につながる可能性があるため,経口摂取量を維持できるかかわりが重要である.また,大量メトトレキサート(methotrexate:MTX)療法の副作用の1つに食欲不振がある.薬剤の直接的な要因や味覚障害が食欲不振につながっている可能性があるため,症状の要因を明確にし,解決に向けた支援が重要である.

この事例にどう対応する?

 食欲不振に対して,食事摂取量が治療開始前と比較してどの程度低下しているのかを観察する.また,入院により食事内容や食事時間が変化することで影響はないか,患者の生活習慣や食習慣,食への思いなど,入院前の情報を基に観察していく.

 味覚障害を訴える患者は,「何を食べても味がしない」,「塩からい」,「甘みがわからない」,「砂を噛んでいるみたい」と訴えることが多い.どのような味覚変化や食感の変化が起こっているのか,食べやすい食材や嗜好品など患者の要望を細かく聴くことが重要である.また,口腔粘膜障害や唾液分泌量の低下などで味覚の変化が起こるとされているため,口腔内の清潔保持や保湿を行っていく.

 食欲不振は味覚の変化だけでなく,胸焼けや消化不良など複数の症状と同時に起こることもあり,これらの症状との鑑別がむずかしいこともある.食への欲求が満たされていない患者の思いを聴き,摂取状況に応じて食事内容の変更や症状コントロール方法を検討していく.

B型肝炎ウイルス再燃 濵田 のぞみ
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事例

 RB療法を開始し,4コースが終了したときに黄疸に気づき採血を行った結果,総ビリルビン,肝酵素の値が著しく上昇していた.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 リツキシマブ+ベンダムスチン併用療法(RB療法)は,強い免疫抑制をもつがん薬物療法である.事例は治療開始12~16週後に発症した肝障害である.肝障害発症の要因に考えられるのは,薬剤性もしくはウイルスの活性化によるものである.患者は,治療開始前の肝機能検査でHBs抗体陽性・HBV DNA定量が1.3 LogIU/mL以下で,B型肝炎ウイルス(HBV)再燃のリスクを考慮し,月に1回HBV DNA定量モニタリングを行いながら悪性リンパ腫の治療に取り組んでいた.ウイルスの増殖と肝炎発症にいたる時間経過から,事例はHBVの再燃を疑う症状である.

 免疫抑制効果の強い治療を行った既往感染者のHBV再燃による肝炎は,劇症化の頻度が高く,予後不良(発症例の致死率10%)の報告がある1~5).HBV肝炎に移行する前にHBV再燃を診断し,すみやかな入院と治療開始が必要な状態である.

この事例にどう対応する?

 HBVの活動性と肝障害の重症度を評価するために,血液検査(肝機能検査・HBV-DNA定量検査)を行いHBV再燃の診断を行う(図1).確定診断後は,原疾患の治療に優先し,劇症化を回避するために抗ウイルス薬の投薬と安静保持の治療を開始する.原疾患より優先し治療が行われるため,その必要性を患者・家族が受け入れられるよう支援を行う.

脱毛 村上 富由子
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事例

 ドセタキセル初回投与開始後2週目ごろから頭部にじりじりするような違和感を感じ,徐々に頭髪が抜け始めました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 ドセタキセルの初回投与後2週間が経過しており,細胞の生まれ変わりが早い毛母細胞などが薬剤による影響を受け,発毛の阻害,毛周期の変化が発生している可能性がある.ドセタキセルによる脱毛発生率は70%以上(国内臨床試験77.5~93.9%)と高く,今後頭髪だけでなく眉毛や睫毛などの脱毛をひき起こす可能性が高い1).頭髪や眉毛,睫毛などはその人の外見を構成する大きな因子の1つであり,脱毛により自己の外見が短期間で大きく変化する.また,洗髪時に抜け落ちる毛量や着衣への落髪など,脱毛の経過を体験することで想像以上の衝撃を受ける2)との報告もあり,QOLに大きく影響を及ぼす有害事象である.そのため,脱毛により患者の社会生活や心理的な影響,脱毛に対する準備状況をアセスメントし対応していく.

この事例にどう対応する?

 初めに症状の観察を行い,患者の理解や準備状況の把握と症状体験を理解したうえで脱毛ケアの情報提供を行う必要がある.

症状の観察

 頭皮の違和感を表出している.脱毛がいちばんに考えられるが,そのほかに帯状疱疹や薬剤性の皮膚障害なども念頭に置き頭皮に発疹がないか,そのほか皮膚の所見がないかを観察する.頭髪の毛量や肩や衣類への頭髪の付着状況,眉毛や睫毛の状況を観察し,どの程度の脱毛が発生しているかを評価する.

患者の理解や準備状況の把握と症状体験への理解

 患者の理解状況や外見の変化に対する苦痛の程度やこだわり,脱毛への準備と対応状況を理解するために確認すべき点を以下に示す.

患者の理解状況

現在の病状に対し,この治療を選択する必要性や,ドセタキセルの治療によって発生する副作用の理解状況を確認する.

脱毛がいつ頃どのように発生するのか,いつまで持続するのか,脱毛の準備や発生時の対応などの理解状況を確認する.

外見の変化に対する苦痛の程度やこだわり

患者が抱く自分のイメージと変化した状況に対する受け止め方,苦痛の程度,変化した状況をどうしていきたいのかというこだわりなどを患者自身がどのように感じているのか把握する.

脱毛による治療への揺らぎや不安,今後の思いなどを傾聴する.こんな症状が出るなら治療はやりたくないと考えているのか,よくなるために脱毛が起こっても治療をがんばっていこうと考えているのかなどを把握する.

仕事や家族への説明,近所付き合いなど社会生活を営むうえで気がかりとなっていることについて確認する.

脱毛への準備と対応状況

脱毛に対しどのような準備がされているか,準備の必要性を感じているか,何を準備すればよいかわからないのか,どんなものから情報を収集しているのか,サポートが入るのかどうか,などを情報収集する.

脱毛時期をどのように過ごそうと考えているかを確認する.たとえば誰にも気づかれないようにケアをしていきたいのか,職場や家族にも伝え帽子のみで過ごそうと思っているのかなどを確かめる.

保清状況や脱毛した後のケア,抜け毛の処理のしかたなどを確認する.

脱毛状況の観察や帽子を選択し着用するなどすでに取り組んでいることを承認する.

脱毛ケアの情報提供

 今後脱毛は徐々に進行すること,眉毛や睫毛にも及ぶ可能性があることを補足説明する.また,頭皮への負荷を低減することや抜け毛による心理的な負担を減少する方法について一緒に検討する.具体的には,抜け毛管理のために短めにカットすることや頭皮が脆弱になったり感染を起こさないように洗髪を継続するなどの情報提供を行う.加えて,外見の変化やカバーするための方法を患者のニーズに合わせて具体的で実践可能な方法を説明する(アピアランスケアの手引きなどを活用する).

皮疹 藤堂 由紀
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事例

 非小細胞肺がんでゲフィチニブを開始して10日目ごろから顔面と頸部,背部にざ瘡様の発疹が出現していました.滲出液も出ています.

この事例のアセスメントと対処

この事例をどうアセスメントする?

 患者はEGFR (epidermal growth factor receptor)チロシンキナーゼ阻害薬であるゲフィチニブの開始により,顔面,頸部,背部を中心としたざ瘡様皮疹が発現している.ゲフィチニブはEGFR阻害薬であり,ざ瘡様皮疹は投与後1~2週間に発現し,発現頻度は64.9%と高頻度で起こる1).顔面など他者から見える部位のざ瘡様皮疹の発現は,気分の落ち込みや治療意欲の低下をひき起こす可能性がある.また,かゆみ,掻破による滲出液,刺激痛などにより日常生活に影響を及ぼし,スキンケアが不十分となる可能性がある.そのためスキンケア指導を含めたざ瘡様皮疹のコントロールが必要である.

この事例にどう対応する?

支持療法

 広範囲に及ぶ強い症状があるためミノサイクリンの内服を追加し,顔面,頸部の皮疹に対してmediumクラスのステロイド外用剤,背部はvery strongクラスのステロイド外用剤を開始する.瘙痒感に対して抗ヒスタミン薬の内服を検討する.

ケア

 外見の変化は患者にとって大きな心理的苦痛となるため,苦痛体験を傾聴,共感したうえで,対処方法を一緒に検討していきたいと伝える.

 ざ瘡様皮疹の悪化を回避させるためにスキンケアを継続していく必要性を説明する.そして,日々のスキンケア状況,保湿剤の使用状況を確認し,継続して行えていることやケアの工夫点を肯定し,今後も継続するように伝える.滲出液や刺激痛などにより洗浄を控えてしまうことがあるため,清潔を保持し,2次感染を予防する必要がある.熱いお湯は皮膚に刺激を与えるため,ぬるま湯が望ましいこと,洗浄剤を泡立てて泡で洗うことなど具体的な方法を提案する.また,処方されたステロイド外用剤の適切な使用を説明する.

爪囲炎 西川 慶子
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事例

 エルロチニブを内服中に爪周囲の発赤と腫脹があり,強い痛みの出現と同時に肉芽形成していることに気づいた.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 エルロチニブは上皮成長因子受容体(epidermal growth factor recepter:EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬であり,特徴的な副作用に爪囲炎が挙げられる.非小細胞肺がんでは8.8%で爪囲炎などの爪の障害が出現すると言われている1).エルロチニブ内服中の爪周囲の発赤,腫脹,疼痛,肉芽形成という症状の出現形態から,爪囲炎の出現を考える.

 爪囲炎は早期であれば発赤や腫脹を生じるが,事例では疼痛や肉芽形成を生じており,Grade 2~3の症状であることが考えられる.疼痛の出現により日常生活動作に支障が生じるとGrade 3となり,QOLの低下や治療継続の可否に影響するため,症状の評価を行い,重症度に応じたマネジメントが必要である.

この事例にどう対応する?

 手指・足趾の観察を行うとともに,疼痛による日常生活への影響について問診を行い,重症度の評価を行う.重症度に応じた支持療法について医師・薬剤師とともに検討する.爪囲炎のセルフマネジメントは,支持療法薬の適切な使用,清潔・保湿・刺激からの回避などスキンケアや日常生活の工夫などが必要である.すでに処方されている支持療法薬をどのような頻度で使用していたのか,スキンケアはどのように行っていたのかを尋ねる.また,疼痛によって仕事や家事,趣味などの日常生活動作に支障が生じていることが考えられるため,患者のつらさに共感しながら,生活の状況や困りごと,対処方法を聞き,現在の患者のセルフマネジメント能力のアセスメントを行う.

 疼痛や肉芽形成を生じているため,手足の観察方法や基本的なスキンケアの方法を見直すことに加えて,爪周囲の物理的刺激を軽減するためのケアが必要となる.生活の中で爪囲炎の悪化につながる因子はどのようなものがあるのかを患者と話し合い,テーピングや靴の選択方法など,局所の圧迫を和らげる方法について患者に説明を行う.セルフマネジメントの障壁になっている事柄を明らかにし,どのような方法であれば継続が可能であるかを患者とともに考える.症状の悪化やセルフマネジメントを行ううえでの困りごとに対応する窓口を伝え,定期的にフォローアップを行い,セルフマネジメントの実施状況を継続的に確認する.

手足症候群 梅田 知寿子
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事例

 カペシタビン+ビンクリスチン療法を開始して5週間目に足の裏に違和感と痛みがあり,見たところ皮膚表面が固くなって一部がひび割れています.さらに水疱もできています.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 治療開始5週間目は,手足症候群の発現時期にあり,出現している症状(足裏の違和感と痛み,皮膚表面のひび割れ,水疱)から,カペシタビンの有害事象の1つである,手足症候群と考えられる.疼痛を伴い,日常生活への影響も出現していると考え,有害事象共通用語規準(CTCAE v5.0)での評価は,Grade 3となる(表1).

この事例にどう対応する?

 全身を観察し,症状による日常生活への影響がどの程度あるか確認する.その際には,支持療法薬の使用状況(回数,使用方法)と日常生活行動(生活背景も含む)の確認を行う.手足症候群と鑑別が必要なのは,①手湿疹,②白癬,③乾癬である.

 この事例では,水疱の形成,足裏の違和感,疼痛,皮膚表面のひび割れという症状から,手足症候群が出現しており,スキンケア不足が考えられる.まずは,受診行動を支持する.日常生活の質を落とさずに,続けることが治療継続のポイントであること,症状が改善すれば,治療再開できる旨を伝え,抗がん薬の休薬をするほうがよいことを提案する.

 支持療法としては水疱形成しているため,休薬しスキンケアを徹底,ステロイド外用剤の使用を検討する.使用の際は,軟膏塗布量は1フィンガーチップユニット(1FTU:人差し指の先端から第1関節まで出した量が両手掌に塗布する量)で,掌で優しく押さえるように塗布することを確認する(図1).また,塗布回数の増加や,塗布のタイミングも検討する必要がある.さらに,靴下の使用,クッション性のある靴を選択するなど刺激の除去を提案する.

末梢神経障害(しびれ) 岡崎 早苗
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事例

 Bv+mFOLFOX6療法開始翌日,水に触れると指先にピリピリした感覚と冷たいお茶を飲んだときに喉に違和感を自覚し,手や足に力が入りにくくなり,6コース目には車の運転ができなくなりました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 切除不能転移・再発大腸がんの1次治療であるmFOLFOX6療法は,投与直後から手や足・口唇周囲の異常感覚,呼吸困難感や咽頭絞扼感を伴う寒冷刺激症状があり,オキサリプラチンによる急性の末梢神経障害であると考える.さらに,6コース目の「手足に力が入りにくく車の運転ができない」という症状は,治療回数を経て蓄積することで症状が蔓延する,持続性の慢性末梢神経障害であるととらえることができる.

この事例にどう対応する?

 看護師は,末梢神経障害の出現時期や症状などを十分に理解したうえで不安と混乱を招かないように患者へ説明を行うよう注意する.急性の末梢神経障害に対しては,洗面や手洗いなどは水ではなく温水を用いたり,冬場の外出時はマフラーやマスクを着用するなどの対策を患者へ伝える.慢性の末梢神経障害に対しては,車の運転は事故を招く危険性もあるため,安全な通院方法を患者とともに検討する.また,衣類などは圧迫感や締めつけ感を避け適宜手袋などで保温する,また,不快を感じない程度のマッサージを加えたり安全な靴を選んで転倒を予防するなど,家族の支援依頼も考慮しながら患者と一緒に対策方法を講じる.

高血圧 久保 知之
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事例

 ベバシズマブ投与開始後1週間目に軽度のめまいと頭痛を感じたため,血圧を測ったところ,収縮期血圧184 mmHg,拡張期血圧が100 mmHgであった.

この事例のアセスメントと対応

この事例にどうアセスメントする?

 ベバシズマブの影響で血圧が高値になっていることが考えられる.患者の血圧は収縮期血圧≧160 mmHg,拡張期血圧≧100 mmHgを超えており,CTCAE v5.0によるとGrade 3の高血圧と評価でき,内科的治療を要する状態である.ベバシズマブの副作用である高血圧の出現時期は投与初期から多く報告されており,患者はベバシズマブを投与開始して1週間目で症状が出現している.軽度のめまいや頭痛は,急速な血圧の上昇に伴い出現したものと考えられる.急速な血圧の上昇は高血圧クリーゼ*1や高血圧脳症*2のような急性症状をひき起こす危険性もある.まずは患者のベースラインの血圧と比較し,普段の状態よりもどの程度の血圧上昇を生じているか,確認が必要である.

この事例にどう対応する?

 医師の指示のもと,降圧薬の内服を開始し,血圧を正常な値にコントロールすることが重要である(図1).治療中の血圧を適正に管理するため,毎日の血圧測定値を記録し,経過を観察する.併せて,血圧の上昇に伴う患者の自覚症状も観察することが,異常の早期発見につながる.めまいや頭痛が改善しない場合には,急性症状も疑われるため,追加の検査が必要となる場合もある.

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事例

 41歳,女性.乳がん(TN type)術後補助療法中.

CEF療法を3回受けたころから生理がこなくなりました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 CEF療法はアルキル化薬であるシクロホスファミド,トポイソメラーゼ阻害薬であるエピルビシン,代謝拮抗薬であるフルオロウラシルの3剤を用いた多剤併用療法である.CEF療法で無月経になるリスクはAmerican Society of Clinical Oncology (ASCO)ガイドラインにおいて低リスク(<30%)とされているが,41歳という年齢から,すでに卵巣機能が低下していると考えられ,抗がん薬投与の影響を受け月経が停止していると考える.卵巣から分泌されるホルモン量が減少し,ホルモンバランスが崩れることにより,今後さまざまな症状が出現すると予測される.これらの症状をマネジメントしながらがん治療を続けられるよう支援が必要である.また,一般的な更年期(45~55歳くらい)といわれる年齢より若くして女性性の喪失を体験している可能性があるため,心理支援も必要と考える.

この事例にどう対応する?

 がん薬物療法開始前の月経周期と無月経の期間を患者に確認する.がん薬物療法による月経停止と考えられる場合,がん薬物療法で用いた薬剤による卵巣機能障害から月経停止が起こっていることをまず説明する.そして今後,卵巣機能障害による自律神経失調症状(ホットフラッシュ,発汗,めまい)や精神神経症状(不眠,不安,憂うつ)が発現する可能性があることを説明する.症状には個人差が大きく対処が困難な場合もあるが,1人で悩まず相談するよう伝える.長期的には泌尿器・生殖器の萎縮症状や脂質異常,骨粗鬆症の発現が予測されるため,生活習慣の見直しをすすめる.卵巣機能の低下は通常50歳前後で起こる.患者の予想より早く症状が出現し,がん治療と並行して対処をしなければならないことへの不安に配慮しながら,卵巣機能障害に対する思いの傾聴を行う.妊娠することも困難となるため,妊娠の希望はあるか確認する.月経停止の機序と今後起こりうる症状(自律神経失調症状)とその対処法を説明する.患者の月経停止に対する思いを聞き,心理支援を行う.

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事例

 非ホジキンリンパ腫に対してR-CHOP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)療法を6コース施行しました.今回,再発でR-CHOP療法を再開し,2回目の投与時に,動悸,労作時の息切れ,軽度の胸痛が出現しました.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 この事例では,ドキソルビシンによる心機能障害が起こっていると考えられる.がん薬物療法による心機能障害は,アントラサイクリン系抗がん薬の使用により発症することが知られている.R-CHOP療法で使用されるドキソルビシンは,アントラサイクリン系抗がん薬であり,累積投与量に関連して心不全が増加する.ドキソルビシンは,総投与量が400 mg/m2で3~5%,550 mg/m2で7~26%,700 mg/m2で18~48%の症例で心不全が発症するといわれている.R-CHOP療法で使用されるドキソルビシンの標準1回投与量は50 mg/m2で,この事例の場合,初発治療時からのドキソルビシンの累積投与量は400 mg/m2となる.動悸,労作時の息切れなどは心不全特有の症状でもあり,治療に伴う心機能障害が起こっていると考えられる.

この事例にどう対応する?

 アントラサイクリン系抗がん薬の心機能障害は不可逆的になることがあるため,ただちに治療を中止する.医師が状況を説明後,心機能検査を施行する.必要に応じて循環器専門医に紹介し,専門的な治療を行う.治療が中断されることや症状に対して患者が不安に感じていることが推測されるため,心理的支援を行う.

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事例

 ペメトレキセドナトリウム水和物を投与開始後1ヵ月ごろに,階段をあがったり,少し無理をして動くと息切れがするようになりました.乾性の咳もでています.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 「息切れ(呼吸困難)」,「乾性咳嗽」,「発熱」は間質性肺炎の主な症状である.ペメトレキセドナトリウム水和物には,間質性肺炎の副作用の発現が3.6%認められている.この事例の場合,治療開始後1ヵ月ごろからの労作時の息切れと乾性咳嗽を認めていることから,ペメトレキセドナトリウム水和物に伴う薬剤性の間質性肺炎が起きている可能性が考えられるが,病状進行の症状も同様であるため鑑別が必要である.

この事例にどう対応する?

 息切れ(呼吸困難)や咳嗽の程度を確認し,発熱や倦怠感などそのほかの症状の有無についても観察を行う.呼吸困難の程度が重症な場合や,チアノーゼや胸痛を伴うような場合には早急な対応が必要となるためすみやかに受診するように指示する.重篤でない場合においてもできるだけすみやかに(当日中)受診を促し,呼吸音の聴診や胸部X線検査や胸部CT検査などの画像診断,血液検査(血清,血液像,CRP,KL-6,SP-1A,SP-Dなど),動脈血ガスなどの検査を行い評価・診断へつなげ,必要に応じた症状緩和および治療を行っていく.

劇症1型糖尿病(高血糖) 廣田 麻衣
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事例

 ニボルマブ投与6回目(3ヵ月後)の投与後,治療前の血液検査で血糖が450 mg/dL, HbA1c 6.0%だったが,自覚症状はありませんでした.

この事例のアセスメントと対応

この事例をどうアセスメントする?

 血糖は450 mg/dLと高血糖を認めるが,HbA1cは6.0%と上昇しておらず自覚症状もない.HbA1cは過去1~2ヵ月の血糖値を反映するが,高血糖に比べHbA1cが上昇していないことから,短期間で急激に血糖値が上昇したと考えられる.これはニボルマブにより膵臓のβ細胞が破壊され,インスリンが絶対的に欠乏している状態と考えられ,1型糖尿病の発症が強く疑われる.今後血糖値はさらに急速に上昇し,ケトアシドーシスとなって致命的となる可能性があり,ただちに糖尿病専門医による専門的な介入が必要である.

この事例にどう対応する?

 担当医に報告し糖尿病の診断に必要な追加検査を行い,糖尿病専門医にコンサルトする.

 院内に免疫チェックポイント阻害薬による副作用対応マニュアルがあればそれに従い,ない場合はニボルマブ(オプジーボ®)の適正使用ガイドやがん免疫療法ガイドラインに則り,ただちに検査・治療を開始する.治療により血糖コントロールが改善するまでは免疫チェックポイント阻害薬の休薬を検討する1)

 患者には,ニボルマブによる糖尿病の発症が疑われるため必要な検査が追加されること,場合によっては入院が必要となることを説明する.早急に高血糖に対する治療が必要であることを説明し,患者の不安を軽減するようかかわる.

基本情報

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がん看護
25巻2号 (2020年2月)
電子版ISSN:2432-8723 印刷版ISSN:1342-0569 南江堂

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