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事例
シスプラチン,ゲムシタビンによる治療が3回終了したころから,労作時の息切れと疲労感,食欲不振が出現しました.ヘモグロビン(Hb)値は7.1 g/dLでした.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
シスプラチン,ゲムシタビンの治療に起因した貧血とその症状であると推測される.
複数の殺細胞性抗がん薬による併用療法において,骨髄抑制は出現頻度の高い副作用の1つである.シスプラチン,ゲムシタビンの併用療法では,貧血の出現頻度は13.4~28%(CTCAE v5.0 Grade 3/4)とされている.シスプラチン,ゲムシタビンによる治療スケジュールは3週1サイクルの投与であり,この事例では3回の投与が終了している.よって,労作時の息切れと疲労感,食欲不振が出現したのは,治療が開始されてから9週間経過したころということになる.貧血は抗がん薬の投与後,数週間から数ヵ月にわたって出現する症状であるため,貧血が生じやすい時期と合致している.ヘモグロビン(Hb)値は7.1 g/dLであり,貧血の定義と合致する.また,労作時の息切れと疲労感,食欲不振は貧血に伴う症状と考えて矛盾しない.シスプラチンの副作用である腎障害によって貧血を起こすこともあるため,腎障害の有無についての確認は必要となる.
この事例にどう対応する?
Hb 7.1 g/dLは赤血球輸血が適応される基準値であることから,赤血球輸血が検討される.労作時の息切れ,疲労感に対しては,十分な休息と安静が保持できるよう環境を整備する.通院での治療であれば,自宅での環境が整えられるよう家族を含めた説明が必要となる.食事は患者の嗜好に合わせながら,タンパク質や鉄分,ビタミンC,ビタミンB12を含む食品が摂取できるよう,食事内容の調整を行う.Hb値の低下においては,労作時の息切れ,疲労感,食欲不振のほかに,めまいやふらつき,動悸,頭痛などの症状が出現する場合があるため,それらの症状についてもモニタリングを行い,安全を確保した転倒防止対策を講ずる.
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