特集 がん薬物療法による有害反応への対応 ~こんな時どうしたらよいの?~
劇症1型糖尿病(高血糖)
廣田 麻衣
1
1京都大学医学部附属病院看護部/がん化学療法看護認定看護師
pp.200-203
発行日 2020年2月15日
Published Date 2020/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_200
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事例
ニボルマブ投与6回目(3ヵ月後)の投与後,治療前の血液検査で血糖が450 mg/dL, HbA1c 6.0%だったが,自覚症状はありませんでした.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
血糖は450 mg/dLと高血糖を認めるが,HbA1cは6.0%と上昇しておらず自覚症状もない.HbA1cは過去1~2ヵ月の血糖値を反映するが,高血糖に比べHbA1cが上昇していないことから,短期間で急激に血糖値が上昇したと考えられる.これはニボルマブにより膵臓のβ細胞が破壊され,インスリンが絶対的に欠乏している状態と考えられ,1型糖尿病の発症が強く疑われる.今後血糖値はさらに急速に上昇し,ケトアシドーシスとなって致命的となる可能性があり,ただちに糖尿病専門医による専門的な介入が必要である.
この事例にどう対応する?
担当医に報告し糖尿病の診断に必要な追加検査を行い,糖尿病専門医にコンサルトする.
院内に免疫チェックポイント阻害薬による副作用対応マニュアルがあればそれに従い,ない場合はニボルマブ(オプジーボ®)の適正使用ガイドやがん免疫療法ガイドラインに則り,ただちに検査・治療を開始する.治療により血糖コントロールが改善するまでは免疫チェックポイント阻害薬の休薬を検討する1).
患者には,ニボルマブによる糖尿病の発症が疑われるため必要な検査が追加されること,場合によっては入院が必要となることを説明する.早急に高血糖に対する治療が必要であることを説明し,患者の不安を軽減するようかかわる.
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