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事例
ドセタキセル初回投与開始後2週目ごろから頭部にじりじりするような違和感を感じ,徐々に頭髪が抜け始めました.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
ドセタキセルの初回投与後2週間が経過しており,細胞の生まれ変わりが早い毛母細胞などが薬剤による影響を受け,発毛の阻害,毛周期の変化が発生している可能性がある.ドセタキセルによる脱毛発生率は70%以上(国内臨床試験77.5~93.9%)と高く,今後頭髪だけでなく眉毛や睫毛などの脱毛をひき起こす可能性が高い1).頭髪や眉毛,睫毛などはその人の外見を構成する大きな因子の1つであり,脱毛により自己の外見が短期間で大きく変化する.また,洗髪時に抜け落ちる毛量や着衣への落髪など,脱毛の経過を体験することで想像以上の衝撃を受ける2)との報告もあり,QOLに大きく影響を及ぼす有害事象である.そのため,脱毛により患者の社会生活や心理的な影響,脱毛に対する準備状況をアセスメントし対応していく.
この事例にどう対応する?
初めに症状の観察を行い,患者の理解や準備状況の把握と症状体験を理解したうえで脱毛ケアの情報提供を行う必要がある.
症状の観察
頭皮の違和感を表出している.脱毛がいちばんに考えられるが,そのほかに帯状疱疹や薬剤性の皮膚障害なども念頭に置き頭皮に発疹がないか,そのほか皮膚の所見がないかを観察する.頭髪の毛量や肩や衣類への頭髪の付着状況,眉毛や睫毛の状況を観察し,どの程度の脱毛が発生しているかを評価する.
患者の理解や準備状況の把握と症状体験への理解
患者の理解状況や外見の変化に対する苦痛の程度やこだわり,脱毛への準備と対応状況を理解するために確認すべき点を以下に示す.
患者の理解状況
現在の病状に対し,この治療を選択する必要性や,ドセタキセルの治療によって発生する副作用の理解状況を確認する. 脱毛がいつ頃どのように発生するのか,いつまで持続するのか,脱毛の準備や発生時の対応などの理解状況を確認する.
外見の変化に対する苦痛の程度やこだわり
患者が抱く自分のイメージと変化した状況に対する受け止め方,苦痛の程度,変化した状況をどうしていきたいのかというこだわりなどを患者自身がどのように感じているのか把握する. 脱毛による治療への揺らぎや不安,今後の思いなどを傾聴する.こんな症状が出るなら治療はやりたくないと考えているのか,よくなるために脱毛が起こっても治療をがんばっていこうと考えているのかなどを把握する. 仕事や家族への説明,近所付き合いなど社会生活を営むうえで気がかりとなっていることについて確認する.
脱毛への準備と対応状況
脱毛に対しどのような準備がされているか,準備の必要性を感じているか,何を準備すればよいかわからないのか,どんなものから情報を収集しているのか,サポートが入るのかどうか,などを情報収集する. 脱毛時期をどのように過ごそうと考えているかを確認する.たとえば誰にも気づかれないようにケアをしていきたいのか,職場や家族にも伝え帽子のみで過ごそうと思っているのかなどを確かめる. 保清状況や脱毛した後のケア,抜け毛の処理のしかたなどを確認する. 脱毛状況の観察や帽子を選択し着用するなどすでに取り組んでいることを承認する.
脱毛ケアの情報提供
今後脱毛は徐々に進行すること,眉毛や睫毛にも及ぶ可能性があることを補足説明する.また,頭皮への負荷を低減することや抜け毛による心理的な負担を減少する方法について一緒に検討する.具体的には,抜け毛管理のために短めにカットすることや頭皮が脆弱になったり感染を起こさないように洗髪を継続するなどの情報提供を行う.加えて,外見の変化やカバーするための方法を患者のニーズに合わせて具体的で実践可能な方法を説明する(アピアランスケアの手引きなどを活用する).
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