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がん薬物療法は日進月歩で変容しており,今まで治療効果が望めなかったがん種や進行がん患者にも適応が拡大してきています.1940年代からある殺細胞性抗がん薬,2000年に登場した分子標的治療薬,がん免疫の解明によって創薬された免疫チェックポイント阻害薬など,これまでに多くの治療薬が開発されてきました.このことによって多くのがん患者が恩恵を受けられるようになった一方で,取り扱い方法の複雑さやつらい有害反応(副作用症状)の出現という問題点があります.とくに,有害反応は治療を遅延させたり,治療を断念することになったり,治療がきっかけで他の疾患を併発したり,症状によって日常性が大きく変化するなどの問題を起こすことがあります.副作用症状は予防と早期発見,適切な対応が重要で,がん薬物療法を受ける患者を支援する看護師の重要な役割であるといえます.
がん薬物療法を治療計画どおりに,安全で安心して受けられるようにするには,適切な薬剤投与管理と副作用症状マネジメントが重要です.とくに,がん薬物療法による有害反応への対応は,薬剤を十分に理解し,症状を早期に発見することが必要です.そこで,本特集では,がん薬物療法によってひき起こされる副作用症状に対して,知識をもってケアにあたれるようにがん薬物療法の現場で活躍中の執筆陣に解説していただくことにしました.
症状マネジメントをテーマにした書籍や雑誌の記事は今までも多く出版されていますが,本書では項目の冒頭にある事例へのケアを「読者と一緒に考えていこう!」というイメージから解説を展開するといった,新しいスタイル(構成)を考えました.皆さんが現場でよく出会う事例をあげていますので,状況判断,症状のとらえかた,対応方法を考えていくときに,どのように考えればよいのかのヒントになればと期待しています.さらに,それぞれの症状の定義や患者への具体的な指導内容なども入れていますので,ぜひ活用していただければと思います.
本特集が,がん薬物療法看護の現場で奮闘中の看護師の方々のケアへの迷いを解消し,患者の安全な治療の遂行と生活上の安楽に役立つものとなれば幸いです.
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