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事例
大量メトトレキサート療法を開始し,3日ごろから塩味が感じなくなった.何を食べても美味しくなく,食事が取れなくなったと話しています.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
がん薬物療法中に出現する食欲不振は,さまざまな要因が関連しており,食欲不振の要因を考えることが症状コントロールを行っていくうえで重要である.要因として原疾患に関連したものや抗がん薬による悪心,口腔粘膜障害などが考えられる.
患者はがん薬物療法開始後に,塩味が感じにくくなっていることより,味覚障害が出現していると考えられる.味覚障害は,がん薬物療法開始後数日より発生することが多く,食欲不振の要因の1つとなる.食欲不振の持続は低栄養状態や免疫低下につながる可能性があるため,経口摂取量を維持できるかかわりが重要である.また,大量メトトレキサート(methotrexate:MTX)療法の副作用の1つに食欲不振がある.薬剤の直接的な要因や味覚障害が食欲不振につながっている可能性があるため,症状の要因を明確にし,解決に向けた支援が重要である.
この事例にどう対応する?
食欲不振に対して,食事摂取量が治療開始前と比較してどの程度低下しているのかを観察する.また,入院により食事内容や食事時間が変化することで影響はないか,患者の生活習慣や食習慣,食への思いなど,入院前の情報を基に観察していく.
味覚障害を訴える患者は,「何を食べても味がしない」,「塩からい」,「甘みがわからない」,「砂を噛んでいるみたい」と訴えることが多い.どのような味覚変化や食感の変化が起こっているのか,食べやすい食材や嗜好品など患者の要望を細かく聴くことが重要である.また,口腔粘膜障害や唾液分泌量の低下などで味覚の変化が起こるとされているため,口腔内の清潔保持や保湿を行っていく.
食欲不振は味覚の変化だけでなく,胸焼けや消化不良など複数の症状と同時に起こることもあり,これらの症状との鑑別がむずかしいこともある.食への欲求が満たされていない患者の思いを聴き,摂取状況に応じて食事内容の変更や症状コントロール方法を検討していく.
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