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事例
シスプラチン(CDDP)を投与中に尿量が徐々に減り,ほとんど尿が出なくなりました.むくみが出現し,体がだるいと言っています.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
一時的な軽度の浮腫や倦怠感はシスプラチン(CDDP)の有害反応として比較的頻繁に出現するが,この事例でのポイントはCDDPの投与中から出現している尿量減少であり,CDDPによる急性腎障害(acute kidney injury:AKI)が疑われる.
腎障害はCDDPの代表的な有害反応である.CDDPによる腎障害の病態は急性尿細管壊死であり1,2),腎機能は急激(数時間~数日)に低下する3,4).障害の進展により高窒素血症(老廃物の蓄積)とそれに伴う尿毒症症状(悪心,食欲不振,倦怠感,意識障害など),体液貯留(体重増加,浮腫など),高カリウム血症などの電解質異常,代謝性アシドーシスが出現し生命の危機に直面する.本事例では体液貯留と尿毒症症状が出現していると考えられる.
一方,急性腎障害はさまざまな病態を背景として発症する5).CDDP以外に腎障害の原因がないかも合わせてアセスメントし,対処する必要がある(表1).
この事例にどう対応する?
急性腎障害の進展が疑われるためすみやかな対応が求められる.CDDPによる急性腎障害では一般的な急性腎障害に準じて治療を行う1).腎障害の治療(表2)は,①原因に対する治療と,②回復するまでの全身管理からなる.治療の目標は高窒素血症,体液貯留,高カリウム血症による不整脈などから生じうる生命の危機を回避することである.治療として水・電解質代謝の管理と栄養管理を行うが,それらを行っても腎障害が遷延する場合は透析療法を行うことになる.
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