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事例
BEP療法(ブレオマイシン,エトポシド,シスプラチン)開始5日目ごろから疲労感が強く,ベッドから起き上がれなくなり,洗面やトイレに行くのもむずかしくなってきました.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
事例の患者(以下,患者)は,治療開始5日ごろより疲労感が強くなり,移動に支障をきたしている.患者の活動は,がん薬物療法後から変化していた.この活動の変化の原因は,倦怠感であると考える.その理由として,現在の患者の状態は,治療開始前の活動に合致しない,日常生活機能の妨げとなるほどの自覚症状が出現しているといえる.この状態は,がんに伴う倦怠感の特徴であり,患者の症状と合致する.倦怠感は,すべてのがん薬物療法薬で出現する可能性がある.患者は,3種類のがん薬物療法薬の投与を受けていた.患者が受けているBEP療法は,高度(催吐性)リスクの治療法1)である.そのため,悪心が出現し,倦怠感の要因になっている可能性が高い.BEP療法の治療場所は,入院が大半である.そして,BEP療法の点滴の投与は,複数日になる.さらにがん薬物療法薬の投与前後には,支持療法薬が投与される.そのため,患者は持続する点滴投与で活動範囲が制限されたり,治療前より排泄回数が増加したりすることがある.排泄回数の増加(とくに夜間)は,睡眠の質に影響する.睡眠の質の変化も倦怠感のリスク要因となる.以上のことから,倦怠感がこれらのさまざま要因で,出現している可能性が考えられる.
この事例にどう対応する?
患者にトイレをがまんさせないために,できるだけ安楽にトイレに移動できるように支援する.声をかけ,起き上がりや歩行の介助を行う.体調によっては,移動に車いすを使用する.洗面は,体調が回復するまで,ベッドサイドで行うことも検討する.また,活動に対する支援と同時に,治療可能な原因を探し,苦痛の軽減をはかれるように努める.倦怠感は,がん薬物療法による副作用に影響するため,副作用のマネジメントが重要になる.患者には,倦怠感があるときのエネルギーを温存する方法について伝える.具体的には,人に任せる,ペースを整える,気晴らしをする,優先順位をつける,一度に取り組む活動は1つにするなどである.自分で倦怠感のパターンを把握し,倦怠感のマネジメントができるようにも支援する.
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