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事例
エルロチニブを内服中に爪周囲の発赤と腫脹があり,強い痛みの出現と同時に肉芽形成していることに気づいた.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
エルロチニブは上皮成長因子受容体(epidermal growth factor recepter:EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬であり,特徴的な副作用に爪囲炎が挙げられる.非小細胞肺がんでは8.8%で爪囲炎などの爪の障害が出現すると言われている1).エルロチニブ内服中の爪周囲の発赤,腫脹,疼痛,肉芽形成という症状の出現形態から,爪囲炎の出現を考える.
爪囲炎は早期であれば発赤や腫脹を生じるが,事例では疼痛や肉芽形成を生じており,Grade 2~3の症状であることが考えられる.疼痛の出現により日常生活動作に支障が生じるとGrade 3となり,QOLの低下や治療継続の可否に影響するため,症状の評価を行い,重症度に応じたマネジメントが必要である.
この事例にどう対応する?
手指・足趾の観察を行うとともに,疼痛による日常生活への影響について問診を行い,重症度の評価を行う.重症度に応じた支持療法について医師・薬剤師とともに検討する.爪囲炎のセルフマネジメントは,支持療法薬の適切な使用,清潔・保湿・刺激からの回避などスキンケアや日常生活の工夫などが必要である.すでに処方されている支持療法薬をどのような頻度で使用していたのか,スキンケアはどのように行っていたのかを尋ねる.また,疼痛によって仕事や家事,趣味などの日常生活動作に支障が生じていることが考えられるため,患者のつらさに共感しながら,生活の状況や困りごと,対処方法を聞き,現在の患者のセルフマネジメント能力のアセスメントを行う.
疼痛や肉芽形成を生じているため,手足の観察方法や基本的なスキンケアの方法を見直すことに加えて,爪周囲の物理的刺激を軽減するためのケアが必要となる.生活の中で爪囲炎の悪化につながる因子はどのようなものがあるのかを患者と話し合い,テーピングや靴の選択方法など,局所の圧迫を和らげる方法について患者に説明を行う.セルフマネジメントの障壁になっている事柄を明らかにし,どのような方法であれば継続が可能であるかを患者とともに考える.症状の悪化やセルフマネジメントを行ううえでの困りごとに対応する窓口を伝え,定期的にフォローアップを行い,セルフマネジメントの実施状況を継続的に確認する.
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