特集 がん薬物療法による有害反応への対応 ~こんな時どうしたらよいの?~
過敏症(アナフィラキシーショック)
岡本 恵
1
1徳島大学病院外来化学療法室/がん化学療法看護認定看護師
pp.99-102
発行日 2020年2月15日
Published Date 2020/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_99
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事例
パクリタキセル投与開始5分経過したところで血圧低下,意識低下が起こりました.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
この事例は,薬剤性の過敏症の可能性が高い.パクリタキセル投与5分後に循環器症状とそれに伴う意識レベルの低下が起こっている.原因薬剤としてパクリタキセルが挙げられ,循環不全に陥っているためアナフィラキシーショックと考えられる.パクリタキセルの場合,初回と2回目に過敏症発症のリスクが高く1),製剤に含まれている添加剤であるポリオキシエチレンヒマシ油が発症に関与していると考えられる.患者の体内では,薬剤投与により免疫系の補体が活性化され,マスト細胞および好塩基球から化学伝達物質が放出,末梢血管の拡張と透過性が亢進し,循環不全からアナフィラキシーショックとなった2).急激な血管透過性の亢進は末梢気道の攣縮や浮腫,咽頭浮腫が生じ,このままでは生命を脅かす状況となる.
この事例にどう対応する?
ただちに原因薬剤と考えられるパクリタキセルの投与を中止し,緊急用コールで応援要請する.A(airway:気道),B(breathing:呼吸),C(circulation:循環)の安定化を図るため対応する.①意識レベルを確認,②患者を仰臥位にする,③呼吸状態を確認し,必要時は気道確保と酸素投与,④大量輸液,アドレナリンの投与など,患者状態に応じてすみやかに対症療法を行う.また,患者への声掛けを行い,そばを離れない.
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