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事例
急性骨髄性白血病の寛解導入療法でイダルビシン,シタラビンによる初回治療を開始後5日目に38.5℃の発熱がありました.好中球数は0/μLです.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
この事例は,血液疾患,抗がん薬投与により感染の原因となる病原体を排除する役割を担っている好中球が減少し,感染が生じていると考えられる.好中球数は0/μLであり,重症感染症を併発する可能性が高い.急性白血病は,骨髄中の造血前駆細胞が分化・成熟する過程で障害を起こし,造血機能が正常に働かないため,好中球が産生されていない.また,がん細胞は,分裂期の細胞が多く抗がん薬の影響を受けやすい.白血病の治療では好中球減少の程度が強く期間が遷延することが予測されるため,感染症が重篤化(敗血症やショック)する可能性がある.
この事例にどう対応する?
症状の出現時,評価として医師の指示に基づき感染が疑われる部位(尿・血液・鼻腔・口腔・便など)の培養検査,呼吸器症状を伴う場合は,胸部X線検査をする.血液培養検査は,異なる部位から2セット(好気性培養,嫌気性培養各1本を1セット)以上が推奨されている.抗菌薬を開始する前に採取を行い,カテーテルが挿入されていれば,カテーテルから1セット,末梢から1セットを採血する.カテーテルが挿入されていないときは,末梢の異なる部位で行い,すみやかに抗菌薬を投与する.感染源の特定,病原菌の予測,症状出現時のリスクアセスメントを行う必要がある.血液検査データ(白血球・好中球・CRP)の推移も観察していく必要がある.
また,身体所見として,バイタルサインの推移,全身状態,感染好発部位の感染徴候,ADL,セルフケア能力を観察する.患者の苦痛症状をモニタリングし,苦痛緩和に努める.感染予防に関するセルフケア行動がとれるかを適宜アセスメントしながら支援する.医師と患者の状態を共有し,解熱薬の使用や補液の追加を検討する.表1に発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)発症頻度20%以上の治療レジメンを示す.
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