特集 がん薬物療法による有害反応への対応 ~こんな時どうしたらよいの?~
出血傾向(血小板減少)
大上 幸子
1
1香川大学医学部附属病院看護部/がん化学療法看護認定看護師
pp.137-139
発行日 2020年2月15日
Published Date 2020/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_137
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事例
患者は60代女性であり,卵巣がんstageⅣ期と診断され,TC療法(カルボプラチン,パクリタキセル)を受けている.4回目の治療後に鼠径部と上肢に点状出血斑があることに気づいた.また,歯磨きをすると,ときどき歯肉から出血することがある.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
この事例は,TC療法による血小板減少に伴う出血傾向の状態である.カルボプラチンとパクリタキセルそれぞれの用量制限毒性*(dose limiting toxicity:DLT)として骨髄抑制がある.患者はTC療法を3週ごとに4コース受けており,繰り返して治療を受けることにより骨髄抑制からの回復機能が低下し血小板減少が遅延したと思われる.そのため,点状出血斑や歯肉出血などの出血傾向が出現していると考えられる.
この事例にどう対応する?
血液検査による血小板値やほかに出血傾向が認められていないか確認し,現在の血小板減少の程度(後出の【症状の評価】参照)や出血リスクの状態(後出の【モニタリングの方法と内容】参照)をアセスメントする.そして患者へ現在の出血傾向の原因と状態について説明し,出血予防の必要性と対処方法(後出の【患者指導】参照)について指導する.卵巣がんの場合,TC療法は3~6コース行われるため,治療を継続する場合さらに血小板減少が遅延する可能性があり,継続的な支援が必要である.
血小板輸血が唯一の支持療法となるが,輸血による副作用などもあるため血小板減少の状態により検討となる.次コース以降,治療開始前の血小板数が7.5万/mm3以下の場合は治療の延期や抗がん薬の減量が必要となる.
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