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事例
パクリタキセル投与開始後2週間経過した頃から便が出にくくなり,腹部膨満感と食欲不振が出現してきました.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
パクリタキセル投与開始後であるため,抗がん薬治療による有害事象とアセスメントしがちであるが,便秘は疾患そのものや加齢による影響,患者の普段の排便習慣や生活習慣,食生活,服薬状況など,さまざまな要因が影響していると考えられる.パクリタキセルの投与に加え,さまざまな要因によって大腸内に糞便やガスが貯留し,腹部膨満感,食欲不振などの随伴症状がひき起こされた状態と考えられる.さらにパクリタキセルは肝臓で代謝され胆汁中へ排泄される1)薬剤であるため,便秘により抗がん薬の排泄が遅延し有害事象が強く現れるおそれがある.
この事例にどう対応する?
まずは患者の便秘の要因と便秘に対し下剤の使用が可能であるかをアセスメントする必要がある.疾患,転移の有無,病期,既往歴など,患者の病態について理解したうえで,患者の服薬状況,食事,運動,生活習慣などの情報収集を行う.また,普段の排便習慣とパクリタキセル投与後の排便状況(便の性状,量,回数など)の変化を確認する.パクリタキセル投与後に便が出にくくなったと患者は訴えているため,腸管蠕動運動の低下および腸管内に糞便が停滞し硬便となっているおそれがある.現在発現している便秘に対し,腸蠕動音を確認後,腸管蠕動運動を促す大腸刺激性下剤と便を軟化・増量させる浸透圧性下剤の使用が必要と考えられる.また,現在発現している症状への対応のみならず今後起こりうる便秘の予防も重要であるため,得られた情報を基に便秘の要因をアセスメントし,患者に必要な指導や薬剤調整を行う必要がある.
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