特集 がん薬物療法による有害反応への対応 ~こんな時どうしたらよいの?~
不整脈・心不全(心機能障害)
笹本 奈美
1
1川崎医科大学総合医療センター/がん化学療法看護認定看護師
pp.192-195
発行日 2020年2月15日
Published Date 2020/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_192
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
事例
非ホジキンリンパ腫に対してR-CHOP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)療法を6コース施行しました.今回,再発でR-CHOP療法を再開し,2回目の投与時に,動悸,労作時の息切れ,軽度の胸痛が出現しました.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
この事例では,ドキソルビシンによる心機能障害が起こっていると考えられる.がん薬物療法による心機能障害は,アントラサイクリン系抗がん薬の使用により発症することが知られている.R-CHOP療法で使用されるドキソルビシンは,アントラサイクリン系抗がん薬であり,累積投与量に関連して心不全が増加する.ドキソルビシンは,総投与量が400 mg/m2で3~5%,550 mg/m2で7~26%,700 mg/m2で18~48%の症例で心不全が発症するといわれている.R-CHOP療法で使用されるドキソルビシンの標準1回投与量は50 mg/m2で,この事例の場合,初発治療時からのドキソルビシンの累積投与量は400 mg/m2となる.動悸,労作時の息切れなどは心不全特有の症状でもあり,治療に伴う心機能障害が起こっていると考えられる.
この事例にどう対応する?
アントラサイクリン系抗がん薬の心機能障害は不可逆的になることがあるため,ただちに治療を中止する.医師が状況を説明後,心機能検査を施行する.必要に応じて循環器専門医に紹介し,専門的な治療を行う.治療が中断されることや症状に対して患者が不安に感じていることが推測されるため,心理的支援を行う.
© Nankodo Co., Ltd., 2020