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事例
41歳,女性.乳がん(TN type)術後補助療法中.
CEF療法を3回受けたころから生理がこなくなりました.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
CEF療法はアルキル化薬であるシクロホスファミド,トポイソメラーゼ阻害薬であるエピルビシン,代謝拮抗薬であるフルオロウラシルの3剤を用いた多剤併用療法である.CEF療法で無月経になるリスクはAmerican Society of Clinical Oncology (ASCO)ガイドラインにおいて低リスク(<30%)とされているが,41歳という年齢から,すでに卵巣機能が低下していると考えられ,抗がん薬投与の影響を受け月経が停止していると考える.卵巣から分泌されるホルモン量が減少し,ホルモンバランスが崩れることにより,今後さまざまな症状が出現すると予測される.これらの症状をマネジメントしながらがん治療を続けられるよう支援が必要である.また,一般的な更年期(45~55歳くらい)といわれる年齢より若くして女性性の喪失を体験している可能性があるため,心理支援も必要と考える.
この事例にどう対応する?
がん薬物療法開始前の月経周期と無月経の期間を患者に確認する.がん薬物療法による月経停止と考えられる場合,がん薬物療法で用いた薬剤による卵巣機能障害から月経停止が起こっていることをまず説明する.そして今後,卵巣機能障害による自律神経失調症状(ホットフラッシュ,発汗,めまい)や精神神経症状(不眠,不安,憂うつ)が発現する可能性があることを説明する.症状には個人差が大きく対処が困難な場合もあるが,1人で悩まず相談するよう伝える.長期的には泌尿器・生殖器の萎縮症状や脂質異常,骨粗鬆症の発現が予測されるため,生活習慣の見直しをすすめる.卵巣機能の低下は通常50歳前後で起こる.患者の予想より早く症状が出現し,がん治療と並行して対処をしなければならないことへの不安に配慮しながら,卵巣機能障害に対する思いの傾聴を行う.妊娠することも困難となるため,妊娠の希望はあるか確認する.月経停止の機序と今後起こりうる症状(自律神経失調症状)とその対処法を説明する.患者の月経停止に対する思いを聞き,心理支援を行う.
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