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事例
AC療法を受けて自宅に帰った後,夕方に強い悪心を感じ,その後嘔吐しました.
この事例のアセスメントと対応
この事例をどうアセスメントする?
AC療法(ドキソルビシン+シクロフォスファミド)は高度(催吐性)リスクのレジメンである.前投薬は第2世代5-HT3受容体拮抗薬やNK1受容体拮抗薬が使用されていると予測されるが,症状が発現した.このことから,突出性嘔吐症状を疑う.嘔吐で誤嚥してしまう可能性や,症状の遷延で食事摂取や飲水摂取が困難となれば脱水症状をひき起こすこともある.症状の重症度の見極めをすると同時に,作用機序の異なる制吐薬を使い,早急な症状緩和が必要である.
この事例にどう対応する?
悪心が持続しているか,吐物による誤嚥や発熱の有無を確認し,受診の必要性について判断する.症状の発現で,不安な気持ちであることに共感しつつ,症状はずっと持続するものではなく,治療経過とともに改善していくことや,緩和する方法があることを伝える.症状が落ち着いてきているようであれば,経過観察をする.ドパミン受容体拮抗薬や抗不安薬の制吐薬が処方されているかどうか確認し,症状が再燃した場合は使用するように説明する.
症状が持続している間は無理をして食べなくても構わないこと,口あたりがよく食べやすいと思うものを摂取することを伝える.食べることはむずかしいが水分摂取はできる場合は,経口補水液などの摂取を提案する.5-HT3受容体拮抗薬では,便秘になりやすい.便秘により悪心・嘔吐症状が遷延しないように排便コントロールの留意を説明する.症状やそのほかにも何か困ったことを相談対応できる窓口について情報をもち得ているか確認し,一人で対応しようと思わなくてよいことを伝え,安心感を与える.
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