総合診療 27巻9号 (2017年9月)

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい

宮崎 仁
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人は、なぜ医療機関を受診するのだろうか?

それは、「不安」を払拭するためである。

プライマリ・ケアで遭遇するコモンな身体愁訴である動悸やめまい、頭痛の背後にも、患者の不安が渦巻いていることに、多くの臨床医は気がついていない。

本特集では、日常診療の現場では、実は「うつ」よりも頻度が高く、うつと併存することが非常に多い「不安」にスポットを当てる。

「不安症/不安障害」を同定できる質問を身につけて、きちんと評価できるようになろう。

診療のさまざまなシーンで遭遇する不安と、その対処法についても知っておきたい。

さらに、ベンゾジアゼピン系薬に頼らない治療とマネジメントについて考えたい。

「不安」を制するものは、プライマリ・ケア診療を制する!

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本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

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Case

患者:46歳、女性。銀行の総合職。

現病歴:1年前に、職場での部署が変わり、ストレスが増す。2カ月前から電車通勤時に「呼吸困難」「動悸」「めまい」「頭痛」「発汗」を発作的に生じるようになり、「閉所恐怖」を感じて電車を途中で降りることがたびたび起こった。会社医務室の内科医に相談した結果、心電図および胸部単純X線検査に異常所見なく、精神科に治療依頼された。

診断:「パニック症/パニック障害」と「広場恐怖症」 G1 に該当する典型的な症状を示していた。予期不安が強く、いらついた様子で、ほてり感や発汗なども続いていた。また、気持ちを落ち着かせるために、仕事中にもコーヒーやドリンク剤を1時間に3〜4杯飲んでいた。これらから、「更年期障害」「甲状腺機能亢進」、また「カフェイン中毒」の疑いももたれた。

 そこで、内科での再検査と婦人科にも依頼し、併せてカフェイン減量を指導した。パニック発作に対しては、呼吸法(p.1190)と自律訓練を指導し、予期不安が著しい場合にベンゾジアゼピン系薬(p.1182)の頓服を指示したが、服用はほとんどなかった。

 診断的には仕事上のストレスによる不安症が中心的な病態だが、更年期症状やカフェイン摂取などがパニック症状にかなり影響していると思われたケースである。パニック症は、総合的に心身の状況を診る必要がある場合が多い(p.1202・1206)。

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Case

患者:58歳、女性。生来健康。

現病歴:2週間前、なんとなく「倦怠感」を感じたため夕方に測った体温が37.5℃であった。その後、体温を毎日測定したところ37℃前半の発熱が続いているが、倦怠感は消失している。それ以外の症状はない。すでに複数の医療機関で血液検査やX線検査、超音波検査を受け、異常はないと言われている。

 診察室で何度も「ため息」をつくことから心理・社会的要因を確認したところ、義母の介護に疲弊していることが判明した。また、知人が原因不明の食欲低下と微熱が続き、最終的に悪性リンパ腫と判明していたこともわかった。

 詳細な病歴聴取と身体診察を行ったのち、重篤な病気による徴候とは思えないことを説明した。また、食後や運動後・入浴後を避けて体温測定するように指導したところ、“微熱”は消失したため終診とした。

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Case

健康診断を契機に多彩な症状を呈した一例

患者:56歳、女性。主婦。

既往歴・家族歴:特記すべきことなし。

現病歴:3カ月ほど前に、健康診断で初めて「不整脈」を指摘された。それまでは無症状であったが、それ以降は頻回に「動悸」を自覚するようになり、「発汗」「手の震え」「口の渇き」「不眠」「食欲不振」などの症状も出現するようになった。もともと心配性で、ちょっと気になることがあると、それが頭の中でぐるぐるして眠れなくなるのが常であり、最近では娘の結婚に伴う心配事が多かった。

 胸部X線写真、心電図・Holter心電図、甲状腺機能および血中/尿中カテコールアミンを含む血液/尿検査で異常は認められなかった。問診では、全般性不安と軽度のうつ傾向が認められたが、双極性障害や精神病性障害は否定的で、「全般不安症/全般性不安障害」と診断した。抗うつ薬(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の投与を開始したところ、症状は徐々に改善し、日常生活に支障はなくなった。

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Case

日常型の心的外傷を有する一例

患者:23歳、女性。発達に特記事項なし。小学校から大学まで、交友関係は平穏であった。

現病歴:大学卒業後に、就職し働いていた。仕事中に泣いていることがあり、同僚が心配して受診を勧めた。診察中に本人から自発的には語られなかったが、医師から「昔あった嫌な記憶がフッと湧き出して、つらくなることはないか」と問うたところ、「入社当時に部長から大声で怒られたことを、突然思い出しちゃう。忘れようとしてもできなくてつらくて、夢にも出てきてうなされる」と話した。「そのようなつらいことがあれば、苦しくなるのも無理はないだろう。そのなかで頑張っているし、よく話してくれた」とねぎらい、四物湯と桂枝加竜骨牡蛎湯を2包/日ずつ処方した。4週間後には改善しており、表情にも優雅さが戻ってきた。

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Case

患者:38歳、男性。会社員。

現病歴:「動悸」「めまい感」「中途覚醒」、また「足がしびれてふらつくような気がする」と初診。2週間前の日中、「動悸」と「呼吸困難」が起こり、救急外来を受診したが、数々の検査後、器質的な異常は指摘されず、「パニック症/パニック障害」と診断されていた。問診上、身体症状が前景に出ていて、表情は一見元気そうだが、軽度の「抑うつ気分」も認められた。今まで精神科受診歴はない。

 「軽症うつ病エピソード+パニック症」と診断し、本人に病気の説明をしたところ「電車に乗るのが不安で、いつも動悸がする。また以前のような発作が起こるのではないかと不安です」と訴えた。仕事の悩みには共感もできて、見るからに真面目そうな、パーソナリティの問題も発達障害などのコミュニケーションの問題もなさそうなこの人なら、プライマリ・ケア医でも精神療法ができそうかと思われたが……。

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患者:71歳 女性。

高血圧・糖尿病・脂質異常症で通院中。

現病歴:週刊誌の新聞広告に、今飲んでいるコレステロール降下薬について「飲んではいけない」「筋肉が溶けてしまう」と書いてあるのを見た。その日からその薬を飲むのが大変怖くなり、服薬をやめてしまった。

 定期受診時、薬を飲んでいないこと、また週刊誌の記事は本当なのかを知りたいと訴えた。主治医から、薬をやめた場合の心筋梗塞を発症するリスクについて聞かされると、今度は「飲まないと、心筋梗塞になって死んでしまうのでは?」という新たな不安で頭の中がいっぱいになってしまった。

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 「全般不安症/全般性不安障害」について、精神科医の立場からコメントさせていただきます。

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Case

“クレーマー”かと思ったら……

患者:19歳、男性。浪人生。

現病歴:感冒症状を主訴として、一般内科の開業医を受診した。

 待合室で診察の順番を待っている最中に、受付の事務職員に対して「自分の順番が来たはずなのに、あとから来た別の人が先に呼ばれた」とひどく怒っている。院長はその患者を診察室に呼び入れて、不快な気分にさせたことを丁寧に謝罪してから、「当院は予約制なので、あとから来院した予約枠の患者さんを先に診る場合がある」という事情を説明した。すると、患者はとても恥ずかしそうに「数を数えずにはいられないのです。待合室でも、ずっと待っている患者の数を何度も数えていて、次は僕の番だと思ったものですから……」と言った。

 改めて問診してみると、2年ほど前から、縁起の悪い4や9の数字が恐ろしくなり、目の前にあるものを何でも数えてしまうようになったということだった。「数えることがばかばかしくなってやめようと思うのですが、数えることをやめるとすごく不安になって、またすぐに数えてしまうのです……」と言って深いため息をついた。

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 「強迫症/強迫性障害」の診療について、プライマリ・ケア医のみなさんのヒントになることを追記させていだきます。

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Case

てっきり「過換気症候群」かと……

患者:35歳、女性。会社員。

現病歴:外来受付から「患者さんが苦しがっている」と連絡があった。駆けつけると、スーツを着こなした“バリバリのキャリアウーマン風”の女性が、頻呼吸で1回換気量は過大、発汗著明、Trousseau徴候(助産師手位)で長椅子にもたれていた。手足のしびれも訴えている。救急外来に移送し、過換気や呼吸性アルカローシス症状の寛解を待った。しばらくすると症状は消退してきたが、右手のしびれが治らない。その他に明らかな神経学的異常はなかった。

 話をうかがうと、過換気をきたしたのは初めてであることと、来院前にひどい頭痛がした(そのために受診した)ことがわかった。緊急MRI検査を実施したところ、「小脳梗塞(急性期)」だった。

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 「パニック症/パニック障害」の診療について、プライマリ・ケア医のみなさんのヒントになることを追記させていただきます。

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Case

患者:42歳、女性。会社員。

現病歴:「動悸がして、胸が苦しくなる」と来院。「最近、電車に乗ると息苦しくなって、会社に行くのがつらい。胃の調子も悪くて、体重も減った」とのこと。内科的な診察および各種検査に異常はなかった。

 少し詳しく聴いてみると、「半年前に課長から、皆の前でひどく叱責されて以来、調子が悪い。以来、課長を見ると具合が悪くなるため、なるべく課長と顔を合わせないようにしてきた。課長を見るたびに、あの時のことが思い出され、落ち込んでしまう。夜も悪夢で飛び起きるようになり、何をしても楽しくなくなっている」とのことだった。

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 トラウマ(心的外傷)とPTSD(心的外傷後ストレス障害)の理解と診療について追記いたします。

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患者:母親(花子さん)・30歳、男児(愛称はるくん)・1歳6カ月・第一子。

現病歴:母親が「感冒」を主訴として、かかりつけの診療所を男児同伴で受診。男児が待合室で走り回っているので、事務員が親身に声かけをし落ち着いたところ、「私の育て方が間違っているのでしょうか? 乳幼児健診で発達に問題があるかもしれないと言われたんです」と話し始めたため、診療時に話を聞くことになった。

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◦1人でしない、1人にしない

 相談を受ける側にも余裕が必要ですが、シーン❺(p.1214)で、まず相談してくれたお母さんの訴えに真摯に耳を傾け、共感するところから入っているのはいいですね。こころの健康のためには、助けを求め相談しつつ解決していく力が一番大切なことです。この力を身につけるには「相談してよかった」という体験を重ねてもらうことが大切で、また相談を受ける側には「できることは助ける。できないことは相談する」ということが必要です。医師の姿は親に、親の姿は子どもにも伝わります。

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Case

ホスピスに入院した女性患者とその家族

患者:Oさん。60代後半、女性。1人暮らし。

家族:兄1人のみ。

現病歴:進行した大腸がんのため、ホスピスに入院中。癌性疼痛あり。

 Oさんは、聡明な患者だ。1人暮らしで、自宅では過ごせなくなり、私が勤めるホスピスに入院して暮らしていた。初めての診察から、2カ月が経とうとしていた。毎日のように30分近く話し込む診察は、Oさんの人柄もあって、私には1日の楽しみになっていた。毎朝、挨拶と状態確認のために診察し、1日の終わり、夕方にもう一度じっくり話をするために病室へ足を運んでいた。

 最近は腹痛があり、医療用麻薬の服用を勧めていたが、Oさんは「これはいつものことなのよ、大丈夫。しばらくすれば自然と消えていくのよ。先生、少しだけ待って……」と治療を拒んでいた。「私、まだ麻薬を使うには早いと思うの。あれは最後に使う薬なんでしょ。今使ってしまっては、将来本当に苦しくなった時に困るじゃないの。それが不安なの」と。

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 死が現実に間近になりつつある患者さんやご家族の不安に対応するうえで、医療者が意識しておきたいことを追記させていただきます。

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Case

ありふれた「かぜ診療」でも不安と恐れから逃れられない医師

 ここは街場の診療所である。5日前に咳と発熱のために受診した患者が、本日再診となった。患者は「すぐによくなる薬を出してくれと頼んだのに、ぜんぜん効かない。会社は絶対に休めないので、早く治してほしい」と、院長である医師(55歳・男性、卒後30年目の内科医)に訴えた。医師の頭の中では、「患者を怒らせてしまった」「温厚そうに見えたが、怒るとヤクザみたいな感じで迫ってきて怖いな」「本当はかぜではなく、重大な病気が隠れているのを見逃しているのかも」「かぜには抗菌薬は不要だけど、心配だから強力なキノロンを処方しておくか」「でも不要な抗菌薬のために、ひどい副作用が発生したら訴訟で負けるぞ」「解熱薬や鎮咳薬をてんこ盛りにして、症状を消してしまえば、文句はないだろう」といった、さまざまな思いが去来している。

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Case

患者:82歳、女性。

既往歴:特になし。高血圧・脂質異常症にて近医通院中。

現病歴:2週間前から「頭がクラクラする」「目の奥が痛む」という症状が出現したため、脳外科および眼科を受診した。MRI検査・眼底検査を含む簡易検査が実施されたが異常なく、「心配ない」と言われたが、症状が続くので不安になって、家族と一緒に総合診療科を受診した。

 1カ月前頃から食欲が少し低下してきており、体重が2kg減っている。身体所見に異常はなく、一般血液検査・胸部X線検査にも異常はなかった。

 1週間後に再診してもらったが、症状は続いていた。「何か疾患が潜んでいるのだろうか?」「これからどう対処していけばよいのだろう?」と担当医は思い悩み、だんだんと不安になってきた。

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Case

患者:42歳、女性。

主訴:1カ月前から両手の関節が痛む。

現病歴:あなたは病院の総合診療医として患者を診察し、「関節リウマチ」や「膠原病」関連の疾患を中心に鑑別するため、各種検査を予定し、丁寧な臨床所見の評価を行った。その結果、赤血球沈降速度が18mm/時とやや亢進気味であるほかは、特記すべき異常所見を認めなかった。

 あなたは患者に「今回いろいろ検査をしましたが、重大な病気が潜在する可能性はなさそうです」と説明した。しかし、患者は「でも、まだ痛みが引きません。本当に、私は大丈夫なのでしょうか?」とあなたに訴えた。あなたは返答に困ったが、「身体的な病気はありませんから安心してください」と患者に伝えた。

Editorial

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 「診療所実習をこれから始める研修医の先生に、いきなり質問して恐縮だけど、うちみたいな内科診療所の外来で、一番多い健康問題は何でしょう?」

「かぜですか?」

緊急掲載

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 厚生労働省から「専門医の在り方に関する検討会」の最終報告書が発表され、「総合診療専門医」の養成が打ち出されたのが、今から4年前の2013年。翌2014年より、日本専門医機構の「総合診療専門医に関する委員会」で制度設計に向けた議論をスタートし、2015年8月に「プログラム整備基準」が発表された。しかし2016年春に、専門医制度全体の実施が1年延期されたことにより、再度整備基準の見直しの作業が進められてきた。

 そして、ようやく本年7月7日に改訂整備基準が発表となり、2018年春から「総合診療専門研修」を開始する目処がついた。本稿では、この1年の議論で何が変わったかを踏まえ、「総合診療専門研修プログラム」の概要をお伝えしたい。

What's your diagnosis?[177]

“D”の意志 高岸 勝繁
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病歴

患者:54歳、男性。

主訴:体重減少と筋力低下。

現病歴:受診3カ月前よりC型肝炎に対してヴィキラックス®(オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル)が開始された。1.5カ月前、旅行中に朝から全身筋肉痛と倦怠感を自覚。その後症状は持続したが、なんとか活動はできていた。1カ月前に友人より痩せていることを指摘され、その際体重を測ると、旅行前後の2週間で6kgの体重減少を認めていた。本人も大腿部の筋萎縮と筋力低下を自覚し、かかりつけ医を受診したところ、血清IgG低値(189mg/dL)、左上肺野の空洞性病変を指摘され、薬剤による免疫不全と日和見感染症が疑われ、抗菌薬(セフトリアキソン)と免疫グロブリン注射を施行された。喀痰抗酸菌検査、HIV検査、ヒトパルボウイルスB19などは陰性であり、薬剤中止後2週間程度でIgG値は改善を認め、肺病変も安定していたため退院。しかしながらその後も倦怠感や下肢脱力感は改善せず、当院を受診された。

既往歴:C型肝炎。

薬剤歴:受診3カ月前からヴィキラックス®(オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル)。

オール沖縄!カンファレンス・9

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CASE

患者:35歳、男性。

主訴:左頸部痛。

既往歴:小学生の頃、てんかん発作があったとのことだが、詳細は不明。追突事故のため頸椎捻挫(1年前)。

家族歴:特記事項なし。

生活歴:食肉業。

嗜好歴:飲酒;機会飲酒、喫煙;15本/日×15年間。

現病歴:前日起床時に左頸部痛があり、寝違えたと思い自宅で安静していた。来院当日の起床時に症状増悪、嚥下時痛も出現したため、救急受診となった。

I LOVE Urinalysis|シンプルだけどディープな尿検査の世界・6

「尿の濃さ」を濃厚にみる 上田 剛士
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Case

患者:77歳、女性。

現病歴:原因不明の発熱の精査目的で腎機能が正常なことを確認したうえで、造影CTを施行した。経口摂取は良好で脱水所見はないと考えていたが、その後の尿検査で、尿比重(屈折率法)は1.022であった。

        尿定性

比重      1.022

pH       6.0

蛋白      1+

糖       -

ケトン体    -

潜血      ±

ウロビリノゲン 正常

ビリルビン   -

白血球     +

亜硝酸塩    -

診察で使える!|急性期Point-of-Care超音波ベーシックス・6

腹腔内出血を疑った時 亀田 徹
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はじめに

内因性疾患に対してもFASTの手法を利用しよう!

 腹腔内出血は時に致命的になるので、すばやく的確な診断が必要です。外傷初期診療の現場では、標準的手法としてfocused assessment with sonography for trauma(FAST)が確立され、心囊液貯留(心タンポナーデ)、血胸、そして腹腔内出血の評価が行われます。FASTのコンセプトは『外傷初期診療ガイドライン(改訂第5版)』で詳細に述べられていますので、そちらをご参照ください1)。FASTの手法は、内因性腹腔内出血の早期検出にも役立ちます。

 内因性腹腔内出血の原因は、婦人科領域、肝、脾、血管疾患、凝固系異常など多岐に渡ります2)。腹腔内出血は通常突然発症で持続性の腹痛を呈し、時にショックに至ります。当初は腹痛のみで後にショックが顕在化することがあるので、初期評価で腹腔内出血の検出に努めるべきです。病歴と身体所見で腹腔内出血の可能性が少しでもあれば、引き続き診察室でPoint-of-Care超音波を行いましょう。

*本論文中、[▶動画]マークにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年8月31日まで)。

みるトレ Special・9

「5P」に注目すべしッ! 忽那 賢志
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CASE 9

患者:30歳代、男性。会社員。

主訴:発熱、咽頭痛、下痢、皮疹。

現病歴:1週間前から、発熱と咽頭痛、下痢が出現した。近医を受診すると、解熱薬と抗菌薬(経口第三世代セファロスポリン)が処方された。その後も症状は改善せず、皮疹も昨日より広がり全身に出現してきたため、当院を受診した。

既往歴:急性B型肝炎、アメーバ肝膿瘍。

アレルギー:なし。

身体所見:体温38.7℃、血圧127/78mmHg、脈拍数115回/分、呼吸数20回/分。

咽頭;軟口蓋・口蓋垂を中心に、多数のびらんを認める(図1)。

後頸部・腋窩リンパ節腫脹あり。体幹・四肢に散在する紅斑あり(図2)。

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CASE 1

指導医の立場:Hの場合

 Hは卒後6年目の医師である。初期研修を東京の大病院(750床)で終えた。家庭医療の専門医をめざし、3年間の後期研修は田舎にあるこのS病院(200床)で行った。

 昨日、院長から呼び出され、大学病院から当院に1カ月ずつ実習に来る医学部5〜6年生の教育担当責任者になるように言われた。

西伊豆発!画像読影道場|これくらい読めてもいいんでナイカイ?・9

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 前回は、股関節のX線の読み方として、「骨折」を扱いました。股関節のX線から読みとれる病変は、他にも多くあります。今回は、「変形性股関節症」「関節リウマチ」「股関節液の貯留」「大腿骨頭壊死」「骨粗鬆症」のX線読影における目のつけどころを伝授します。たったこれだけの知識で、こんなにいろいろなことがわかるのか!と、目から鱗が落ちるはずです。

苦手克服|野獣のリアル勉強法・9

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 私は、ようやく医師10年目を迎えた救急医です。千葉県の一般病院で初期研修、感染症科で後期研修を受けつつ、「不明熱」「救急」「集中治療」を学習する機会に恵まれました。その後、救急・総合診療医として、徳洲会鎌ヶ谷総合病院および現病院で「救急システム」の立ち上げを行いました。

 決して有名病院や有名医師がいる環境ではなかったのですが、基礎に立ち返る地道な学習(問診、身体診察、画像および各種検査の解釈)を行い、外部勉強会にて学習することを繰り返して、診断推論を強化し「救急総合診療」のスキルを身につけてきました。

 本稿では、市中の一般病院でも十分に通用する学習方法を書いていきたいと思います。

国試にたずねよ・9

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 「メンタルヘルス」に問題を抱える研修医は多い。1〜2カ月ごとにローテーションをする研修医は、そのつど環境が異なる職場で新たな人間関係を築くことが困難なこともあるだろう。学生時代とは比較にならないほど責任も大きくなる。あまり頑張りすぎることなく、研修に取り組んでほしい。

 オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラー(Alfred Adler、1870〜1937)は、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と言っている。アドラー心理学をわかりやすく解説した『嫌われる勇気』1)はお勧めの1冊だ。

 研修医同志で手技(気管内挿管や中心静脈カテーテル留置)をどれだけやったかを競い合うこともあるようだが、

「人生は他人との競争ではない。健全な劣等感は、他者との比較のなかで生まれるのではなく、理想の自分との比較から生まれる」

というアドラーの教えを思い出そう(傍点筆者)。

 過去にどんなことがあったか、未来がどうであるかは考えるべきではない。

「われわれは『いま、ここ』にしか生きることができない。『いま、ここ』に強烈なスポットライトを当てよ」

という言葉は、私たちを励ましてくれる(傍点筆者)。

総合診療専門医(仮)セルフトレーニング問題・6

「食事が摂れない94歳、男性」 金子 惇
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セッティング

あなたは大都市郊外の無床の強化型在宅支援診療所で3人体制で診療をし、月に40人ほどの患者に定期訪問診療を行っている(夜間・休日も交代制で24時間対応)。

55歳からの家庭医療|明日から地域で働く技術とエビデンス・9

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 今回は、家庭医療診療所における「チームワーク」について考えてみます。“地域包括ケア時代”の家庭医療診療所では、自施設以外の地域のさまざまな職種の人たちと統合ケアを行うことが必要で、「専門職連携実践=IPW/C(interprofessional work/collaboration)」が求められます。施設内/施設外におけるチームに分けて考えてみましょう。まず、「施設内」におけるIPW/Cについて考えることから始めます。

#総合診療

#今月の特集関連本❶

#今月の特集関連本❷

#今月の特集関連本❸

#今月の特集関連本❹

#今月の特集関連本❺

#今月の特集関連本❻

#今月の特集関連本❼

#今月の特集関連本❽

#今月の特集関連本

#医学書院の新刊

#編集室に届いた執筆者関連本

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 上田剛士先生(洛和会 丸田町病院 救急・総合診療科。本誌p.1245)は数多くの文献から重要なメッセージを抽出し、わかりやすい表やグラフにして説明してくれる。評者と同様、『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』(医学書院、2014)を座右の参考書としている臨床医は多いであろう。これは臨床上の問題点に遭遇した時、そのエビデンスを調べる際に非常に重宝している。

 本書は、薬の副作用に関する本である。高齢者は、たくさんの薬を飲んでいる。私たちは気がついていないのだが、薬の副作用により患者を苦しめていることは多い。「100人の患者を診療すれば10人に薬物有害反応が出現する」(序より)、「高齢者の入院の1/6は薬物副作用によるもので、75歳以上では入院の1/3に及ぶ」(p.5より)という事実は決して看過すべからざることである。「Beers基準」や「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」は存在するが、高齢者への適切な処方への応用は不十分だ。

#今月の連載関連本

#今月の連載関連本

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 近年、改めて「診断学」への関心が高まっている。解説書の多くは臨床疫学やEBMを背景に合理的推論を推奨しているが、著名な臨床教育家の手によるパール集の人気も高い。

 本書の基となったのは本誌(旧『JIM』)の特集である。数ある“実践的”診断学書のなかでも、“見逃し”に焦点を当てている点に特に注目したい。本書の各項は、「見逃してはならない疾患のリスト」に始まり、各疾患の「除外ポイント」へと続く。なかでもユニークなのは、「見逃すとどの程度危険か?」の一項である。診察を始める前にこの項に目を通すことによって、読者のみなさんは身が引き締まる思いをされるに違いない。指導医としては、各診察室に本書を1冊ずつ常備し、研修医が患者の診療を終了する前に、症状ごとに記載されているこの項に必ず目を通すことをルールとするのも一案であろう。

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 2015年、1991年に創刊した弊誌は、下記の「編集方針」を掲げて、『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。以来、この2年間のうちにも高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされます。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、リニューアルいたしました。本誌は、今後も既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

2017年1月  『総合診療』編集委員会

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基本情報

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総合診療
27巻9号 (2017年9月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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