総合診療 25巻4号 (2015年4月)

特集 関節が痛いんです!─コモンからレアものまでの診断と治療

今月のQuestion & Keyword Index
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より早く,より的確に内容をとらえるために,QuestionとKeywordによるIndexをご利用ください.それぞれ各論文の要点を示す質問とキーワードで構成されています.

Question

Q1 「関節が痛い!」と受診した患者さん.「関節炎」の鑑別は? 318

Q2 急性発症の関節炎を診たときに注意することは? 322

Q3 急性単関節炎で注意することは? 326

Q4 感染性と結晶誘発性の関節炎を診断するポイントは? 330

Q5 関節痛+RF陽性なら,関節リウマチと診断できるでしょうか? 334

ONE MORE GM
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Q1 前日からの発熱と下腿発赤・疼痛で来院した高齢女性.発赤が足関節の上に及んでおり,結晶性あるいは感染性の関節炎,蜂窩織炎を考えるが,関節穿刺してよいものか考えあぐねています.

A1 まず発赤と腫脹の範囲と中心部,圧痛部位,その最強点がどこかを診察し,関節裂隙との位置関係をみます.発赤や腫脹,圧痛の中心部や最強点が関節裂隙からずれていたり,裂隙からある程度離れた部位でも強い圧痛があれば,皮膚に炎症がある可能性が高くなります.また,関節を他動的に動かした際の疼痛は関節炎では強く,蜂窩織炎では比較的弱いです.その他,感染のentryとなる外傷や足白癬についてもチェックします.結晶性であれば比較的元気なことが多いですし,ピロリン酸カルシウム沈着による関節炎(偽痛風)であれば,膝,手関節,骨盤の単純X線写真で軟骨石灰化,痛風であれば過去の発作歴や高尿酸血症の既往,尿酸値の推移なども参考にし,これらの所見を総合して判断しています.判断がつきかねるときは,上級医,整形外科医,リウマチ科医へのコンサルトも考慮するとよいでしょう.

【関節痛・関節炎へのアプローチ】

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関節内 vs 関節外?

 「関節が痛いんです!」.関節痛といっても関節そのものに問題があるほか,関節周囲[靱帯・腱・滑液包(G1)など]および関節外(皮膚や筋肉・骨など),さらに他臓器あるいは全身的な要因など,さまざまな原因があるため,関節のことだけを考えていては見当違いになってしまう恐れがある(図1).

▪疼痛の部位

 まず「どの部位か?」を考えるが,それには何より「患者さんに痛みの部位を指さしてもらう」ことであり,そのうえで関節内あるいはそれ以外のどちらに原因があるかを考えるのが最初のステップとなる.

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 「関節が痛い」という主訴で来院する患者は,救急外来・一般外来を問わず多い.本稿では,発症からの時間経過に注目し,特に見逃したくないものに焦点を当てて解説したい.

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Case

患者:82歳,女性.

現病歴:来院当日の昼頃より左膝関節に痛みが生じ,38℃台の発熱を伴うようになり,夜間の救急外来を受診した.左膝に発赤・腫脹・熱感・圧痛を認め,感染性関節炎の疑いとしてコンサルトされた.単純X線写真で膝関節裂隙に石灰化を認め,関節穿刺を行いグラム染色を施行した.多核白血球に貪食されている結晶を多数認め,菌体を認めなかったため結晶誘発性関節炎として鎮痛薬を処方し,翌日の外来フォローとした.

 救急外来や診療所で関節液の結晶分析がすぐに行えないときは,グラム染色が有用です.本症例のように白血球に貪食されている結晶(図1)がみられれば結晶誘発性関節炎です.まれに結晶誘発性関節炎に感染を合併するので,結晶がみつかっても菌体がないか,しっかりと確認しましょう.

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 関節痛・関節炎のアプローチでは,関節痛と関節炎を鑑別することが重要である(宇都宮論文を参照).関節炎の推測がついたら,急性か慢性か,単関節性か多関節性かを区別し(本橋論文・夜久論文を参照),その他の身体所見や検査から診断へと導くことになる.本稿では関節炎をきたす主な疾患の代表的特徴を理解していただくことを目的とする.

関節痛に対する検査 野口 善令
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関節痛診断のステップ

 関節痛の診断は以下のフレームで行う(図1).

 Step 1「関節痛vs関節外」を判断する.

 Step 2「炎症性(関節炎)vs非炎症性(関節痛)」を判断する.

 Step 3「関節炎の分布,数」を判定する(分布と数は疾患の特徴を表す).

 Step 4「急性vs慢性,単関節vs多関節」でカテゴリーに分類する(カテゴリーによって鑑別診断が異なる).

 Step 5「鑑別診断のそれらしさ」を判断する.

【関節痛で疑うコモンな疾患】

変形性関節症(OA) 田口 雄一郎
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Case

患者:70歳,男性.

主訴と現病歴:5年前頃より左第3指PIP(近位指節間)関節の変形と疼痛を自覚していた.徐々に両側各DIP(遠位指節間)関節の変形と左第3指PIP関節の関節痛が増悪してきたために受診.関節痛は安静により改善し,運動時に増悪する.

身体所見:両側各DIP関節の軽度変形を認め,また,左第3指PIP関節に骨性の腫大を認めるが,明らかな滑膜増殖は認めない.血清学的にはRFおよび抗CCP抗体は陰性で,CRP・ESRなどの炎症反応は陰性であった.

単純X線所見:両側各DIP関節および左第3・第5指PIP関節に関節裂隙の狭小化,関節面の石灰化,骨棘形成を認めた(図1).関節リウマチ(RA)を示唆する骨びらんは認めず,また,尋常性乾癬などを示唆する皮疹は認めなかった.

診断と経過:以上の身体所見および検査所見より,変形性関節症(OA : osteoarthritis)と診断し(除外するべきRAおよび乾癬性関節炎は否定的であった),局所の安静などの生活指導に加え,疼痛時のNSAIDs投与にて日常生活には大きな障害なく,経過中に関節炎や骨びらんの発症は認めていない.

感染性 西口 翔
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Case

変形性股関節症術前に発熱を呈した1例

患者:61歳,女性.

主訴:右股関節が痛い.

現病歴:半年前から右股関節が痛くなり,杖歩行となった.整形外科にて右変形性股関節炎と診断され,人工関節手術が検討されていた.3週間前より疼痛増悪して動けなくなり,38℃の発熱を認めるようになった.右股関節に圧痛と熱感あり,当科入院となった.

検査結果と経過:血液検査はWBC 21,600/μl, CRP 3.3mg/dl, HbA1c 6.7%であった.腹部造影CTで右股関節周囲に液体貯留を認めたためCTガイド下穿刺施行し,後日,Campylobacterが検出された.化膿性股関節炎と診断し,抗菌薬点滴治療と整形外科にて外科的ドレナージ施行され右股関節痛は軽快した.

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Case

患者:86歳,男性.

現病歴:腎硬化症による慢性腎臓病(血清Cre 3.0mg/dl)で外来通院中の患者が,来院2日前からの悪寒戦慄,38.9℃の発熱で来院した.血圧116/61mmHg,心拍数71回/分,SpO2 94%(room air),呼吸数16回/分.右季肋部に圧痛を認めた.

治療と経過:胆囊炎としてアンピシリン/スルバクタムで治療を開始された.治療開始の翌日には36.7℃に解熱し,全身状態は改善し,食事も再開することができた.しかし,入院6日目の夜から39.2℃の発熱が出現した.血圧 140/70mmHg,心拍数66回/分,SpO2 99%,呼吸数18回/分,診察所見にて来院時には見られなかった右膝の熱感と腫脹,発赤,疼痛,可動域制限を認めた.胆囊炎後に発症した右関節炎から偽通風を強く疑ったが,見落としてはいけない疾患である化膿性関節炎の除外のためにすぐに関節穿刺を施行した.関節液の白血球17,920個/μl,グラム染色では細菌を認めず,ピロリン酸の結晶を認めた.後の関節液の細菌培養検査でも陰性であった.

関節リウマチ 高杉 浩司
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Case

患者:44歳,女性.

現病歴:4カ月前から,右膝や両手首の痛みが出現した.湿布を貼っていたが症状は改善せず,徐々に痛い関節が増えていった.朝のこわばりが1時間以上続いていた.近医で処方されたセレコキシブ(セレコックス)を1日200mg内服したが,関節症状が改善しないため当院を受診した.

家族歴:叔父・叔母が関節リウマチ.喫煙は1日40本×17年間.

身体所見:両肘関節,両手関節,両示指から小指のMP関節・PIP関節,両膝関節,両足関節に発赤,腫脹,熱感,圧痛,可動域制限を認める(図1).

検査所見:抗CCP抗体177.1μ/ml,リウマチ因子(rheumatoid factor : RF)111IU/ml,CRP 4.95mg/dl,赤血球沈降速度62mm/1時間.単純X線写真では骨びらんや変形はみられなかった.

診断・経過:関節リウマチと診断し,メトトレキサート6mg/週,プレドニゾロン20mg隔日投与にて治療を開始した.

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Case

患者:85歳,男性.

主訴:痛くて動けない,両手足がむくむ.

現病歴:普段は畑仕事など活発に行う.7日前起床時より急に両肩・背中・腰の痛みで動きづらくなり,畑に行けず自宅で過ごすようになった.同時期より両手,両足のむくみが出現した.食欲・活気も徐々になくなり,心配した家族に連れられ来院した.発熱は認めなかった.両肩から腰部にかけての動作時の痛みのため,臥位からの起居動作は不良で,両手挙上困難(図1a),両肩関節包の圧痛を認めた.また,両側手関節・足関節以下末梢の浮腫を認めた.

検査結果と経過:CRP 3.0mg/dl,ESR 82mm/1時間以外には異常所見は認めなかった.PMR/RS3PEと診断し,プレドニゾロン15mg/日を開始した.1週間後,患者は笑顔で再診し,ともにバンザイできた(図1b).

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Case

患者:生来健康の52歳,女性.あちこちが痛い.

現病歴:約1年前より頸部〜両肩の痛みがあり,我慢しながら仕事は継続していた.徐々に両肩の痛みが強くなり,1カ月前から膝の痛みも出現,「リウマチではないか」と心配で外来受診した.

身体所見:両肩・膝・手指の関節には腫脹,熱感.可動域制限は認めず,軽度の圧痛を認めるのみであった.感覚異常などの神経学的異常は認めなかった.

経過および検査:関節症状および周辺の症状について再度詳しく病歴聴取した.事務職で,夫,息子と3人暮らし.半年前から職場の人事異動,息子の就職など環境の変化で眠れないことも多くなった.1年前に閉経.半年前から発熱はないが,からだのほてりを自覚していた.採血ではCRP,血沈,リウマチ因子,TSH,FT4のいずれも異常はみられず,肩・膝関節の単純X線写真でも関節に異常は認めなかった.更年期に伴う関節症と診断し,ホルモン治療を開始した.

【関節痛で疑う比較的レアな疾患】

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Case

患者:25歳,女性.

主訴:発熱,関節痛.

現病歴:3週間前に,誘因なく37℃台の発熱と右膝の疼痛が出現した.市販薬服用でも改善がないため来院し,白血球2,000/μlとCRP 0.2mg/dlからウイルス感染症と診断された.NSAIDsを服用していたが,薬効が切れると37℃〜38℃台の発熱がみられることが続いた.1週間後には右膝の疼痛に加えて右膝腫脹による歩行困難もみられ,左手首の腫脹・疼痛もみられるようになった.また,同時期より顔面の紅潮を自覚したため再診し,多関節炎,顔面紅斑,白血球減少から,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)が疑われた.

検査所見:白血球1,800/μl,赤沈30mm/1時間,CRP 1.2mg/dl,抗核抗体160倍,C3 68mg/dl(基準値86〜160),C4 12mg/dl(17〜45),CH50 21.3U/ml(24.7〜39.5),ヒトパルボウイルスB19 IgM抗体陰性.

経過:抗核抗体陽性,低補体血症もあることからSLEを最も疑い,膠原病科へ紹介した.同科で追加の検査が予定された.

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Case

患者:57歳,女性.

主訴:両手首が痛い.

現病歴:1週前から両手関節の痛みが出現.近医を受診し蜂巣炎の診断のもと,内服抗菌薬の投与を受けていた.その後も疼痛が持続するため受診.1年前にも同様の症状があり,関節リウマチの診断で整形外科に通院歴あり.お話を聞くと,それ以前にも皮膚科に掌蹠膿疱症での通院歴があった.診察上,両手関節背側に熱感と圧痛を伴う腫脹を認めた.また胸鎖関節にも同様の所見を認めており,頰部に痤瘡,手掌に掌蹠膿疱の痕跡と思われる鱗屑と発赤を認めた(図1).

検査結果と経過:CRP 9.7mg/dl, ESR 102mm/時であったが,抗核抗体・リウマチ因子とも陰性であった.胸部単純X線写真で胸鎖関節に骨硬化像を認めており,SAPHO症候群と診断した.NSAIDsの投与を行い,自覚症状は改善した.

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Case

患者:64歳,男性.

主訴:多関節痛.

現病歴:高血圧症,脂質異常のため近医通院中の患者.約半年前より両肩・手の関節痛あり,近医よりリウマチ疑いとして紹介された.肩・手・膝関節に腫脹と圧痛,他動痛を伴う対称性多関節炎を認めた.起床時にこわばる感じもあり,30分程度で軽快するという.熱はない.

検査・診断:WBC 7,500/μl,CRP 1.2mg/dl,ESR 22mm/時,RF陰性,抗CCP抗体 陰性,抗核抗体<40倍.尿中Bence-Jones蛋白陽性.関節X線写真では有意所見を認めなかった.右膝関節滑膜,十二指腸よりランダム生検を施行したところ,アミロイド蛋白の沈着を認め,多発性骨髄腫および多発性骨髄腫関連アミロイドーシスに伴う関節症との診断に至った.

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Case

患者:6歳,男児.

現病歴:これまでの成長発達に問題はなかった.前夜の就寝まではいつもと変わりはなかったが,翌日起床時から「右の膝が痛い」と言って,右足に体重をかけないような歩き方をしていた.元気はあるが,母親が心配したため来院した.先行する感冒様症状や外傷歴はない.

検査結果と経過:発熱はなく,右膝関節に異常は認めなかったが,右股関節前方からの圧迫で疼痛があり,股関節可動域制限を伴っていた.両股関節正面X線写真で異常はなく,単純性股関節炎を第一に考えた.他の疾患と鑑別を行う目的で血液検査(血算,赤沈,CRP)を行い,自宅安静での経過観察を指示した.採血検査に異常はなく,1週間後の再診時には痛みは消失し,元気に母親と歩いて来院する姿が見られた.

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Case

患者:67歳,男性.

主訴:両足関節腫脹・疼痛.

現病歴:2箱/日×45年の喫煙歴があり,55歳時より糖尿病の治療を受けていた.2カ月前より両足関節の腫脹と疼痛を自覚し,半年間で5kgの体重減少も認めた.関節リウマチが疑われ紹介受診.胸部理学所見に異常なし.両側足関節に腫脹,疼痛あり,ばち指を認めた.

検査結果と経過:胸部単純X線写真にて右肺門部に約3cmの腫瘤影を指摘され,精査入院となった.足関節単純X線写真で,脛骨骨端部の骨膜新生像が認められた.肺腺癌の診断で外科的治療が施行された.手術後,速やかに両足関節の腫脹,疼痛,単純X線所見は改善した.抗CCP抗体は陰性であった.

大腿骨頭壊死 清田 雅智
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Case

右臀部痛を訴えた症例

患者:30歳,女性.

家族歴:特になし.

現病歴:アルコール多飲の既往がある女性.急に右臀部の痛みが出現したために,整形外科を受診.単純X線写真では明らかな骨折はないため,鎮痛薬処方をされた.鎮痛薬で改善がなく,激痛が続くために紹介受診.身体所見上,Patrick testが陽性で,股関節炎が疑われて入院.

検査結果と経過:WBC 4,600/μl,CRP 0.04mg/dl,股関節単純X線写真異常なし.股関節MRIで,大腿骨頭壊死[avascular necrosis(AVN)of the hip]が確定.骨移植術を行う方針で転院した.

【関節痛で疑うレアな疾患】

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Case

患者:80代,女性.

現病歴:1カ月前より左耳介の腫脹・疼痛と発熱を認め,10日前より右耳介腫脹,右眼痛,右視力低下が出現したため,精査加療目的に紹介入院となった.初診時,右眼の球結膜充血と圧痛あり,両耳輪部と外耳道の腫脹・発赤・圧痛を認め(図1),左母指IP関節と左膝関節に関節炎を認めた.喘鳴や呼吸困難感などの気道症状は認めなかった.

検査結果と経過:血液検査ではCRP 5.8mg/dl,ESR 136mm/時と炎症反応の上昇を認めた.眼科診察にて両側の強膜ぶどう膜炎を認め,耳介生検で軟骨や血管周囲の炎症細胞浸潤や変性所見を認めた.以上より,再発性多発軟骨炎と診断し,ステロイド投与(プレドニゾロン1mg/kg/日)を開始したところ,速やかに症状は改善した.

Whipple病 綿貫 聡
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Case

患者:50歳,女性.

現病歴:3年前から食欲低下とともに,多い時は1日4〜5回程度の不消化便が出現,徐々に体重が減少し,1年間で10kgほどの体重減少を認めた.膝,手関節を中心とした移動性の関節炎も認められ,精査目的に紹介となった.

検査結果と経過:血液検査では軽度の白血球増加と貧血を認め,CTでは腸間膜リンパ節の腫大を認めた.精査目的に入院となり,上部・下部消化管内視鏡検査では異常所見を認めず,小腸内視鏡を施行したところ,十二指腸から上部小腸にかけて白色絨毛の散在を認め,同部位から生検を行ったところ,脂肪が抜け落ちたような空隙状のスペース形成とともに,大型マクロファージの集簇を認めた.Whipple病を疑って追加染色を施行したところ,PAS染色陽性の顆粒状物質を認めた.腸管の病理標本についてTropheryma whippleiのPCR検査を提出したところ,陽性の結果が得られ,Whipple病と診断した.

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 関節痛を訴える患者さんは多い.とはいっても,「関節」が痛いという患者さんのなかには,関節外の病変のこともある.関節の周囲組織の病変だ.腱,筋,滑液包,神経,骨などである.また,関節痛でも炎症の所見がなければ「関節炎」とはいえない.腫脹や圧痛があるかどうかを診る必要があるのでフィジカルは必須となる.更年期症候群による関節痛は関節炎ではない.一方で,脊椎「関節症」は関節炎を来す.

 関節炎患者を診るときに,重要なのは,その原因診断である.原因によっては緊急度・重篤度が高い.化膿性関節炎は敗血症性ショックで死に至ることもある緊急性の高い疾患である.心内膜炎による関節炎では,重篤度が高い.まず,感染症から除外することが重要といえる.このように原因診断には「考える順序」が必要であり,筆者は下表の順で,「カ」行による鑑別を考慮する.

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病歴

患者:前立腺肥大症の既往のある86歳男性.

主訴:尿閉.

現病歴:約30年前から頻尿・排尿困難があり前立腺肥大症と診断され,他院で内服加療を受けていた.2カ月前から排尿回数が増加し,1カ月前から口渇・多飲が出現し,当科紹介となった.

既往歴:前立腺肥大症.

内服歴:シロドシン4mg 2錠分2朝夕食後.

嗜好歴:喫煙は20〜60歳まで20本/日,飲酒なし.

高齢者エマージェンシー—プライマリ・ケア医のためのスキルアップ大作戦・4

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はじめに

 皆さん,こんにちは.今明秀先生は劇的救急で有名ですが,私は脱力系家庭医(笑).東京生まれで最初は病院の内科で10年程勤務,途中で「プライマリ・ケアってすごく面白いな」と思い,10年目で診療所の所長になって,それ以降は家庭医の仕事をずっと続けています.教育に興味があり,また最近はプライマリ・ケア領域の研究を進めています.また『総合診療』(旧『JIM』)誌の編集委員を10年近く務めています.でも基本は診療所で訪問診療もして,時にサンタクロースにもなったりする,普通の家庭医です.

みるトレ

Case 87 忽那 賢志
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Case 87

患者:20代,男性.

主訴:発熱,皮疹.

現病歴:3週間前から体幹,四肢に皮疹が出現していたが瘙痒感はなく,無症状であったため放置していたという.数日前から発熱,咽頭痛,筋肉痛が出現したため救急外来を受診した.皮疹が出現する2カ月前からしばらくの間,ペニスの亀頭に疼痛を伴わない潰瘍ができていたという.

既往歴:急性B型肝炎(3年前).

性交渉歴:男性同性愛者であり,3カ月前に見知らぬ男性と性交渉があったという.

身体所見:血圧114/76mmHg,脈拍108回/分,体温39.1℃,呼吸数17回/分.

咽頭発赤あり.頸部・腋窩・鼠径リンパ節腫脹あり.体幹を中心に手掌・足底にも散在する数ミリ大の暗赤色の紅斑を認める(図1).

憧れのジェネラリストが語る「努力はこうして実を結ぶ!」・4

Rappaportと共に 成田 雅
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 自分は本連載の対象にはならないと思い再考を繰り返しました.呻吟の末,何かを努力している(継続している)ことがあるとすれば,ある診察器具の使用かもしれないと気付きました.

 現在私が使用している聴診器は,“Rappaport”(正確にはRappaport-Sprague)です.黒い剝き出しのゴム管が2本,それぞれのイヤーピースにつながっている古風なものです(写真).付属部品を交換しつつ,チェストピース(実際に皮膚に当てる部分)が故障すれば買い替え,Hewlett-Packard社製,Phillip社製を経て,3代目になりました.大小の膜,ベルを好みに応じて使い分けることができます.ベルは小児用に付け替えると,小柄で痩せた高齢者の聴診に適しています.

Dr.徳田と学ぶ 病歴と診察によるエビデンス内科診断・8

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徳田:皆さん,こんにちは.この連載では,臨床疫学を用いた診断プロセスを学んでいきます.症例に基づきながら,レジデントの皆さんとの対話形式で進めていきます.

 今回は咽頭痛を主訴とする患者の症例です.咽頭痛は頻度の高い症状で,60〜80%はウイルス性の上気道炎ですが,時々,細菌感染症の場合もあります.以前は,A群連鎖球菌感染で急性リウマチ熱を合併するケースが多く,そのためにCentorスコア1)などの臨床予測モデルによる「A群連鎖球菌感染」の臨床診断が重要視されていました(図1).

 ただし,最近の日本では急性リウマチ熱はほとんどみられなくなり,一方,C,B,G,F群(この順で頻度が高い)の連鎖球菌感染による咽頭炎や嫌気性菌の混合感染が,化膿性合併症を引き起こすものとして重視されてきています(表1).これらはキラー咽頭痛(killer sore throats)とも呼ばれています.

 ということで,最近では,細菌性咽頭炎に対して抗菌薬を投与する意義は,化膿性合併症を予防するということも含まれてきています.では,今回のケースの病歴と身体所見をみてみましょう.病歴と診察に加えて,臨床予測スコアの診断の正確度も検討していきます.

Dr.山中のダイナマイト・レクチャー・6

問題10 山中 克郎 , 寺西 智史
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問題10 以下の患者に必要な処置は何か.

 22歳女性.昼食後に全身の蕁麻疹と息苦しさが出現し来院した.体温36.5℃,血圧82/36mmHg,心拍数102回/分,呼吸数27回/分.アナフィラキシーが考えられる.

血液内科学が得意科目になるシリーズ・13

DIC! 萩原 將太郎
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 播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation : DIC).恐らく誰もが経験する危機的状況です.決して見逃すことなく,早期に適切かつ迅速な対応を行うことが必要です.

 今回は,代表的なDICの症例を通して一緒に考えてみましょう.

シネマ解題 映画は楽しい考える糧[94]

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記憶,現実,自己同一性に関する物語

 『ザ・フライ』,『クラッシュ』,『イースタン・プロミス』などで有名なクローネンバーグ監督の作品.その名前だけで無条件に作品を観るというファンがいる,数少ない監督のひとりです.作品は現代ロンドンが舞台.統合失調症のために治療を受けていた中年男性が精神病院から退院し,社会復帰のための中間施設に移ってきました.彼はいつも何かを手帳に書き込み,自閉的で独語を続けています.映画は現在の彼,精神病院時代の彼,そして彼の記憶する過去を映し出していきます.

 主人公は今,間違いなく現在のロンドンにいます.いつも煙草を吸い,砂糖をたくさん入れてコーヒーを飲みます.精神病院時代の描写もおそらく本当のことなのでしょう.仲間の患者が血だらけになって暴れていました.主人公は鋭いガラスの破片を手にしますが,自傷他害行為は行いませんでした.他方,彼の少年時代の記憶は鮮明なのですが,鑑賞者は最後に彼の記憶が実際の過去と異なることに気付かされます.ちなみに記憶の中では,母親が幼い彼を「スパイダー」と呼んでいました.

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◆高齢者において体重減少や食欲不振は予後を変える可能性がある.「高齢」を理由にするのではなく鑑別を考え,体重減少・食欲不振の原因を追及する必要がある.

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参加者募集後2時間で満員御礼

 「教科書の著者やテレビに出てくるような先生から直接実践的な指導を受けてみたい」─そんな研修医・医学生の想いに応えるべく,総合診療勉強会「大阪どまんなか」を創設した.

 毎回,教育熱心と噂の先生をお呼びし参加型の講演形式にて開催しており,これまでに3回行っている.第1回は若手の先生をお呼びしてTBL形式にて2014年9月に行った.第2回では若手の先生から大ベテランの先生までお呼びしてワークショップ形式にて2014年12月に行った(表1,図1・2).第2回の参加希望があまりに殺到し用意していた110席がわずか20分で満席となったため,急遽,第2.5回ということで後日,第2回に参加できなかった方に対して参加できるようにしたものの,それも約2時間にて定員に達するほどの盛況ぶりとなっている.

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基本情報

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総合診療
25巻4号 (2015年4月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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