看護管理 31巻2号 (2021年2月)

特集 「面会制限」が患者の意思決定にもたらした倫理的課題 コロナ禍で患者・家族を支援した看護師の経験から

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は全国に広がり,病院や地域の医療体制にも大きな影響を及ぼしています。

特に「面会制限」がもたらした影響は大きく,最期の時間を過ごす場所や療養場所,治療法の選択などにおいて,さまざまな倫理的ジレンマや課題が生じました。

本特集では,COVID-19により顕在化した倫理的課題の中でも特に「意思決定支援」に焦点を当て,病院と地域(訪問看護)それぞれの経験を紹介することで,今後の在り方を考えるヒントを提示します。

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日本老年医学会は,2020年8月,『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期において高齢者が最善の医療およびケアを受けるための日本老年医学会からの提言—ACP実施のタイミングを考える』を公表した。COVID-19流行期においても,高齢者が可能な限り,自分の希望する最善の医療およびケアを受けることができる社会の実現を目指した倫理上の提言で,急性期病院においても1つのガイドラインとして参照すべき内容である。臨床倫理の専門家の立場で作成に携わった会田氏に,提言の主旨と概略について伺った。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による面会制限は,がん看護・ホスピス緩和ケアの臨床現場にも大きな影響を及ぼしている。今もなお現在進行形で続く面会制限による現場の課題について,この領域のスペシャリストであり,ホスピス緩和ケア病棟で看護管理者を務めた田村恵子氏に,臨床実践および看護管理の視点から話を伺った(本インタビューは2020年11月2日に収録を行った。その後COVID-19の対応については状況が刻々と変化していることや,日本の状況を大局的な視点から論じていただいたことから,必ずしも各地域の現状に適合しない部分があることを付記する)。

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新型コロナウイルスの感染拡大は,さまざまな変化をもたらした。病院における診療制限や面会制限が患者の療養の場の選択や受療行動に影響を与え,医療者もジレンマを抱える中で丁寧な共同意思決定やAdvanced Care Planning(ACP)が求められている。

本稿では新型コロナウイルス感染症が医療・介護の現場にもたらした変化と,今後迎えるであろう「リスク共生・リスク選択時代」における意思決定支援について考察するとともに,地域からの懸念を述べる。

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新型コロナウイルス感染症により,多くの病院で面会制限が行われている。在宅での療養を選択する患者や家族が増えたことから,訪問看護師である筆者は,「会えない」状況を踏まえた意思決定支援への変化や,病院看護師とのさらなる連携の必要性を感じた。しかし,コロナ禍における病院での入院患者への看護や意思決定支援の実態がつかめなかったことから,病院・在宅の看護師にインタビュー(座談会)とアンケートを実施し,面会制限が病院内や在宅で療養者,患者,家族にどのような影響を及ぼしているかを調査した。

本稿では調査の結果を共有し,病院の面会制限下における患者・家族への支援方法を考察する。

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COVID-19受け入れの概要

 聖マリアンナ医科大学病院(以下,当院:表)では,2020年2月より新型コロナウィルス感染症(以下,COVID-19)患者の受け入れを開始しています。救命救急センターでは当初,軽症者から重症者までを幅広く受け入れていましたが,現在は,人工呼吸器管理やECMO(体外式膜型人工肺)が必要となるCOVID-19重症者を15床と,非感染者の重症者7床の入院病床を運用しています。

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堺市立総合医療センターの概要

 堺市立総合医療センター(以下,当院)は,大阪府中南部の堺市にある急性期病院であり,併設する救命救急センターでは年間9400件の救急搬送を受け入れている。また,7床の感染症病床を持つ第一種感染症医療機関でもある(表)。

 2020年12月現在は,一般病棟を新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)専用病棟として運用しており,12月までの新規入院患者数は累計230名以上に及ぶ。その中には約30名のICUでの重症管理や,1歳未満の小児,透析患者の受け入れなど,重点医療機関としての役割を果たしている。

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当院の概要

 関西医科大学総合医療センター(以下,当院)は,大阪府北東部の守口市に位置し,北河内医療圏における基幹病院として急性期医療を担っている(表)。また,大学附属の病院にはまれな精神科病棟を有しており,救命救急センターに精神・身体合併症センターを併設している。

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ゆみのハートクリニックの概要とCOVID-19対応状況

 ゆみのハートクリニック(以下,当クリニック)は,東京都豊島区で高血圧をはじめとした生活習慣病や睡眠時無呼吸症候群,心疾患や呼吸器疾患などに対する外来診療と,通院が困難な患者への訪問診療を行っているクリニックである。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い,地域における役割を模索しながら日々の診療を行っている。発熱患者の診療において,外来では電話やオンライン診療を併用しながら,発熱外来の時間を設けて,定期受診患者との時間的隔離を行っている。また,訪問診療では,発熱の有無や体調を訪問前に電話で確認した上で,発熱患者に対しては感染防護具を着用して訪問するなどの対策を行っている。

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ウィル訪問看護ステーションの概要

 筆者が所属するウィル訪問看護ステーション江戸川(以下,当事業所)は東京都江戸川区を拠点とし,現在は同区内および隣接する江東区内の事業所と合わせて3チームある。各チームは10名強と定義的には大規模型であり,土日祝日関係なく定期訪問を行う365日営業である。比較的地域で受け皿の少ない小児(重症心身障害児や医療的ケア児)や精神障害を持つ方や神経難病の方などを中心に,「全ての人に家に帰る選択肢を提供する」という理念を掲げ運営している。

 また,地元で在宅ケアをしたいと考える看護師とともに「暖簾分け」というフランチャイズ事業を行っており,沖縄,福岡,岩手,埼玉で展開している。加えて,それら全チームをつなげるオンラインコミュニティを運営し,ここには希望があれば当グループ以外の他法人のステーションにも参加してもらっている。

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新国内科医院の概要とCOVID-19対応状況

 新国内科医院(以下,当院)は,神戸市垂水区で約30年間,地元のかかりつけとして外来診療および訪問診療を行っている。現在は強化型在宅療養支援診療所・在宅緩和ケア充実診療所として,がん,難病,認知症をはじめ,さまざまな疾患を持つ患者・家族の在宅療養支援を提供している。

 執筆時点(2020年11月9日時点)では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者への対応はないが,発熱や呼吸器症状のある患者については,迅速にPCR検査等の対応ができる地域の病院と連携している。緊急事態宣言が発出されていた期間の前後から,「面会制限」があることを理由に,看取りも含め在宅療養を希望する患者が多く見受けられている。

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手稲家庭医療クリニックの概要とCOVID-19対応状況

 手稲家庭医療クリニック(以下,当クリニック)は,札幌市の中心部から電車で10分ほどの手稲区に位置し訪問診療や訪問看護の機能を併せ持つ都市型の有床診療所である。当クリニックは,「ひとりひとりの生き方を尊重し地域の力をあわせ温かみのある医療とケアを提供する」ことを理念に掲げ,地域の緩和ケアの役割を担っている。年間の看取り件数は,例年に比べ,訪問診療や訪問看護共に増加傾向であり,特にコロナ渦による在宅医療ニーズの高まりを反映している(図)。

 利用者の中には,看取りの場として入院を希望される方も多く,ご家族と一緒に過ごせる環境の提供に力を入れている。

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訪問看護ステーションはーとの概要

 筆者の所属している訪問看護ステーションはーと(以下,当ステーション)は,東京都葛飾区金町を拠点とし,葛飾区と足立区のそれぞれの一部を活動地域にしています。訪問スタッフは,看護職員17名,リハビリセラピスト2名で,月の管理件数は150名ほどです。がん末期,神経難病,小児の利用者が多く,介護保険と医療保険の割合は4対6,全利用者の45%が特別管理加算対象者で,医療依存度の高いケースが多い事業所です。

 介護保険では看護体制強化加算Ⅰ,医療保険では機能強化型訪問看護管理療養費1を算定しています。東京都訪問看護教育ステーションとしての役割も担っています。居宅介護支援事業所,訪問介護事業所,児童発達支援・放課後等デイサービス,住宅型有料老人ホームであるホームホスピスを併設しています。

巻頭シリーズ 【石垣靖子氏 対話シリーズ】看護と倫理 尊厳を護るケアの担い手として・12

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私は「臨床倫理プロジェクト」を通じて,各施設・各地域の臨床倫理への取り組みを支援してきました。その取り組みの多くを看護管理者たちが牽引しています。

今回からは,看護部長経験者である田渕典子氏,高橋弘枝氏との鼎談を通じて,倫理的な組織・地域をつくることを目指す「看護部長の哲学」を紐解きます。本号では特別編として新型コロナウイルス感染症への対応についてお話しいただきます。(石垣靖子)

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熊本県立大学大学院アドミニストレーション研究科看護分野の紹介

 熊本県立大学(以下,本学)アドミニストレーション研究科(以下,本研究科)は,アドミニストレーション専攻の1専攻,博士前期課程・博士後期課程の2課程を設置しています。博士前期課程は「公共・福祉」「ビジネス」「情報」「看護」の4つの分野,後期課程では,「公共・福祉」「ビジネス」「情報」の3つの分野になり,看護分野は「公共・福祉分野」に所属します。

 さて,読者の皆さんの中には,「アドミニストレーション研究科とは?」「アドミニストレーション研究科で何を学ぶ?」などの疑問を持たれた方がいるのではないでしょうか。アドミニストレーションの和訳は「総合管理」です。本学では,総合管理学を「社会学,行政学,社会福祉学,経営学,情報学などを統合・体系化し,社会の諸問題を総合的に捉え,多角的かつ総合的に解決する」とし,多様な学問の知識や技術を用いて総合的にマネジメントできる人材育成を目指しています。

連載 グローバル時代の医療英会話Lesson 外来や病棟で出会う外国人をサポートするために・1【新連載】

May I help you? ウイリアムソン 彰子
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連載のはじめに

 本連載は外国人の患者や家族が急増している病院に勤務する看護師の皆さんに向けて,臨床現場ですぐに使える医療英会話をレッスン形式でお伝えするものです。毎回,外来や病棟をイメージした具体的なエピソードと会話例,キーワードとなる単語と練習問題で構成します。

 本連載の開始にあたり,医療分野がグローバル化への対応を求められている状況について共有します。日本政府観光局がまとめた訪日外客数の推移を見ると,2010年の外国人旅行者は約860万人でしたが,2019年には3100万人を超え,この10年間で約3.7倍に増えました。

 現在,COVID-19 の影響を受け外国人旅行者は激減している状況です。しかし,法務省の統計資料によれば,永住者,労働者,留学生など約293万人が在留外国人として日本で生活しています。これは,日本の総人口の2.3%に該当します。

 また,世界的に医療ツーリズム(医療を受けることを目的に他国へ渡航すること)が進む中で,日本で医療を受けたいと考える外国人の需要は年々高まり,2020年には年間43万人となることが見込まれていました。アフターコロナには,安心して日本に渡航していただける医療受け入れ体制を今から準備する必要があります。

 今後は国境を越えた遠隔医療も拡大していくことが想定されます。新たな時代にグローバルに活躍ができる看護師の育成を推進しましょう。

連載 新人看護師とプリセプターの視点から考えるよりよい新人看護師教育 誰もが働きやすい職場を目指すために・1【新連載】

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連載にあたり

 今回から連載を担当いたします,岐阜大学医学教育開発研究センターの川上ちひろです。

 私が所属するセンターは,卒前・卒後の医療系学生および医療者への教育方法を構築し,広める役割を担う医学教育の拠点です。看護師・保健師である私は,看護学生や臨床看護師の学習を支援する教職員や臨床現場の教育担当者の皆さんの教育力向上をサポートしています。

連載 ワークブック形式で学ぶ! ファシリテーションのための企画とプログラムデザイン・1【新連載】

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 チームで難しい案件に立ち向かったり,単純な正解のないデリケートな問題に直面したりするような場面は,看護の現場では日常的かもしれません。

 そんな時こそ,そこに関わる1人ひとりが自分で考えると同時に,意見を出し合い,聴き合い,創造的な話し合いを進めていく必要があります。また,常に学習を重ね,研鑽を求められる看護の世界において,1人ひとりが積極的に自分事として学ぶための研修の場をつくっていくことも重要です。

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コーチングとは,「対話によって相手の自己実現や目標達成を手助けする」ことで,身に付ければ看護管理者も,さまざまな場面で活用できます。

本連載では,組織やマネジメント,倫理,キャリアなど看護管理者の悩みを取り上げ,アドラー心理学のエッセンスを取り入れながら,現場で活きるコーチングの実践をリアルに伝えていきます。

第14回は,物事を先延ばしにしてしまうという相談から,直近のメリット・デメリットと未来のメリット・デメリットを時間軸で考えるコーチングや,スタッフへのホリスティックなアプローチの必要性について考察します。

連載 ラーニング・エイド 大学院ドタバタ留学記 in NY・17

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 受講するほぼ全ての授業にグループワークがあるが,正直に言うと私はグループワークが苦手だった。時間ぴったりにミーティングに来ているのは自分だけ,課題を分担したはずなのに期限にやってきていないなど,どれも「グループワークあるある」だろう。次第に,やってこない人には「ちゃんとしていない人」というレッテルが貼られ,信頼関係は崩壊していくというのも残念ながらよくあることだ。

 “norm”という言葉を紹介したい。規範(判断・評価・行為などの基準となるべき原則)を意味し,私たちが何かを決断したり,行動する際に共通認識として持っておく基準である。社会規範,組織規範,とさまざまな規範があるが,考えてみるとその規範はそもそもどこから来たのか不明な場合が多い。手紙の宛名の「行」を消して「御中」と書き直す,結婚式のご祝儀の包み方など,「マナー」という言葉に包まれた「決まり事」は山のようにある。しかし,それは社会が決めた「決まり事」であり,私たちはあえて問い直そうとはせず,あたりまえの慣習として生活様式の一部となっているだろう。

連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・174

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 雨上がりの草花の葉や樹木の葉を見ると,透明な水玉を表面に乗せている。しばらく見ていると,水玉が葉の傾きによって動き,葉先から滴になって,ポトリと落ちる。その落ちる瞬間を見つめていると,その透明感だけでも美しいのに,晴れ間から射してきた陽光に一瞬煌めき,自然という工房が作り出すコンマ何秒かでしかないそのもう1つの美の造形に,ちょっぴり感動したりする。

 そういう葉っぱの滴が木か葉の涙だとしたなら,それは喜びの涙なのだろうか,それとも悲しみの涙なのだろうか。あるいは怒りや口惜しさの涙なのか。雨上がりの陽光に煌めくのは,喜びの涙なのだろうが,一般的には,涙というものは,深いものがあって,簡単に喜びとか悲しみとか単純に言い切ってしまうことのできない面がある。

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知識と実践の間を埋める素晴らしい1冊

 新人看護師だった30数年前,私は実家に帰る度に,現場で体験したことを両親に話した。恐らく,目をキラキラと輝かせながら語っていたと思う。「看護婦さんがね……」と,先輩看護師のことを話すたびに,「おまえも看護婦だろう」と両親は笑いながら聞いていた。当時は学生気分が抜けないから,先輩のことを「看護婦さん」と言ってしまうのだろうと思っていたが,この本を読んで気づいた。Thinking like a nurse:看護師のように考える—自分とは違う,看護師らしいものの考え方,そして,それに基づいて実践をする先輩に対する尊敬と感動が,「看護婦さんがね」という言葉として現れたのだと思う。

 本書の著者らは,聖路加国際大学修士課程で,看護教育学上級実践コースを開設し,Clinical Nurse Educator(CNE)を育成している。CNEコースは,「未来の看護教育者を育成する」というコンセプトのもとに創設されたコースである。臨床に軸足を置き,学生や臨床看護師の教育を行うCNEの活躍を目の当たりにしたとき,看護職の教育の場に新たな時代が到来したことを感じた。古い時代の看護教育と,新たな時代の看護教育の違いは何なのか……。その答えがこの本の中にあった。

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今月の新刊紹介

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次号予告・編集後記 小齋 石塚

基本情報

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看護管理
31巻2号 (2021年2月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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