連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・174
涙,涙,涙は甘いかしょっぱいか
柳田 邦男
pp.168-169
発行日 2021年2月10日
Published Date 2021/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201796
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雨上がりの草花の葉や樹木の葉を見ると,透明な水玉を表面に乗せている。しばらく見ていると,水玉が葉の傾きによって動き,葉先から滴になって,ポトリと落ちる。その落ちる瞬間を見つめていると,その透明感だけでも美しいのに,晴れ間から射してきた陽光に一瞬煌めき,自然という工房が作り出すコンマ何秒かでしかないそのもう1つの美の造形に,ちょっぴり感動したりする。
そういう葉っぱの滴が木か葉の涙だとしたなら,それは喜びの涙なのだろうか,それとも悲しみの涙なのだろうか。あるいは怒りや口惜しさの涙なのか。雨上がりの陽光に煌めくのは,喜びの涙なのだろうが,一般的には,涙というものは,深いものがあって,簡単に喜びとか悲しみとか単純に言い切ってしまうことのできない面がある。
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