臨床眼科 67巻7号 (2013年7月)

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要約 目的:ビマトプロストによる単回点眼が正常眼での乳頭血流に及ぼす影響の報告。対象と方法:男性4名と女性4名の正常篤志者8名を対象とした。年齢は24~44歳,平均34歳で,屈折は0~-7D,平均-3.25Dであった。片眼に0.03%ビマトプロスト,僚眼に生理食塩水を点眼し,270分後までの乳頭血流量をレーザースペックル法で測定した。血流量測定は,乳頭を上方,下方,鼻側,耳側と4分割して行った。結果は二重盲検法で解析した。結果:乳頭血流量は,点眼から90分後に乳頭耳側で増加し,これ以後と他の象限では有意な変化はなかった。眼圧は点眼から180分後と270分後に有意に低下し,僚眼では変化がなかった。眼灌流圧は,点眼から180分後と270分後に有意に増加した。結論:ビマトプロストの点眼で,乳頭血流が増加する可能性がある。

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要約 目的:水疱性角膜症(BK)に対する角膜クロスリンキング(CXL)の,角膜浮腫と疼痛に対する効果の報告。対象と方法:対象は,BKに対しCXLを行った7例7眼(平均年齢73.0±17.5歳)。BKの原因疾患は,続発緑内障3例,レーザー虹彩切開後2例,白内障術後1例,レーザー虹彩切開後の白内障術後が1例であった。術前,術後1週,1か月の視力,眼圧,角膜厚,疼痛の強さと頻度について検討した。結果:視力と眼圧は,術前後で有意な変化がなかった。中心角膜厚は,術前731.3±100.1μm,術後1週650.4±76.3μm,1か月649.0±97.0μmと,有意に減少した(p<0.05)。疼痛の強さと頻度は,術前に比べ術後は改善していた。結論:CXLは,BKの角膜浮腫と疼痛の軽減に有効である。

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要約 目的:倒像鏡の光源とスマートフォンのカメラ機能を使って眼底撮影を試みた。方法と対象:自転車用ホルダーに,単眼倒像鏡とスマートフォンを同軸になるように装着し,倒像検眼用の+20Dまたは+28Dのレンズを用いた。対象として,ラット,ヒト成人と未熟児の各1例を対象とし,眼底の静止画と動画を撮影した。結果:乳頭と網膜血管などが識別できる程度の眼底の静止画像と動画が記録できた。結論:倒像鏡を光源とし,スマートフォンのカメラ機能を使って,眼底の静止画と動画が記録できた。網膜への光障害の危険が小さく,安価で簡便である。画質には改善の余地がある。

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要約 目的:眼窩内神経鞘腫で生じた外斜視に上下直筋全幅移動術と外直筋後転術が奏効した症例の報告。症例:49歳男性が右眼の外斜視と複視で受診した。10年前に右眼の眼窩内腫瘍を指摘されたが放置していた。眼球突出が悪化し,6か月前に脳神経外科で眼窩腫瘍摘出術を受けた。診断は神経鞘腫であった。所見:矯正視力は右0.5,左1.5で,眼球突出はなく,右眼に高度の内転障害と110Δの外斜視があった。牽引試験では抵抗はなかった。右眼の上下直筋全幅移動術と外直筋後転術を行い,斜視角は10Δになり,第1眼位での複視は消失した。結論:眼窩内神経鞘腫への術後に生じた外斜視に,上下直筋全幅移動術と外直筋後転術が奏効した。

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要約 目的:眼球破裂で入院後,嘔吐により水晶体眼外脱出を生じ病態が悪化した症例の報告。症例:73歳女性。野球ボールが右眼に当たり,眼瞼周囲の腫脹と視力低下を認め受診した。眼窩CTで水晶体眼内落下を認め,右眼眼球破裂の診断で緊急手術を予定したが,止血目的にトラネキサム酸点滴開始後に悪心と嘔吐が生じ,眼痛が増悪したために手術を中止した。翌日のCT検査で水晶体の眼外脱出を認め,第3病日全身麻酔下に一期的硝子体手術を行った。その後2回の追加手術を行い,シリコーンオイル下で網膜は復位している。結論:眼球破裂では,眼窩内圧上昇により眼球内容脱出が生じやすく,全身麻酔下手術で眼窩内圧上昇を予防することが望ましい。

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要約 目的:深部強調画像光干渉断層計(EDI-OCT)と眼底自発蛍光が慢性中心性漿液性脈絡網膜症(慢性CSC)の診断に有用だった2症例の報告。症例:症例1は38歳男性。2年前から右視力低下で2箇所の病院を受診するも診断がつかず,半年前からの歪視で受診。蛍光眼底造影で色素上皮萎縮,インドシアニングリーン造影検査で黄斑部に脈絡膜血管透過性亢進,眼底自発蛍光で低蛍光の萎縮巣があった。症例2は75歳男性。5年前から右視力低下で加齢黄斑変性として経過観察されていた。蛍光眼底造影で両眼に色素上皮萎縮,脈絡膜血管の蛇行と拡張,自発蛍光で低蛍光斑があった。両症例にOCTで脈絡膜肥厚を認めた。結論:EDI-OCTと眼底自発蛍光が慢性CSCの診断に有用であった。

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要約 目的:網膜中心静脈閉塞症の黄斑浮腫(CRVO-ME)に対するベバシズマブ硝子体注射(IVB)の治療成績の報告。対象と方法:対象は2008~2011年に初回IVBを行ったCVO-ME 14例14眼で男性6眼,女性8眼,平均年齢68.9歳。12か月後の視力,中心窩網膜厚(CRT),投与回数に関与する因子を検討した。結果:平均視力は改善(p<0.05),平均CRTは減少(p<0.01),平均投与回数は3.0回で,4回以上の群は高齢で,側副血行路(RCC)の出現頻度が高かった(p<0.05)。結論:CVO-MEに対するIVBは1年後の視力改善に有効で,高齢とRCC出現はIVB回数を増加させる因子である。

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要約 背景:網膜血管ループ形成症は先天性であり,偶然に発見されることが多い。時に脳動脈奇形が併発する。目的:脳動脈奇形に併発した両眼性の網膜血管ループ形成症の症例の報告。症例:54歳女性が数日前からの両眼の飛蚊症で紹介受診した。慢性腎臓病の既往があった。所見:矯正視力は右1.0,左0.7で,左眼に硝子体剝離,両眼に網膜動脈のループ形成があった。蛍光眼底造影で無灌流領域または動静脈瘻はなかった。頭部のMRAで脳動脈の末端にループ形成があった。結論:本症例は網膜血管ループ形成症を契機として脳動脈にループ形成が発見された稀有な例と考えられる。

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要約 背景:プロスタグランジン製剤である0.005%ラタノプロスト点眼液には0.02%,0.0015%タフルプロストには0.0015%のべンザルコニウムが含まれている。目的:タフルプロスト点眼が角膜上皮に及ぼす影響の報告。対象と方法:ラタノプロスト点眼中に点状表層角膜症が生じた原発開放隅角緑内障11例11眼を対象とした。男性5例,女性6例で,平均年齢は67歳である。タフルプロスト点眼に切り替え,8週後の状態を検索した。結果:平均眼圧には切り替え前後で有意差がなかった。角膜のarea density分類は,切り替え前に比べ9例が改善し,2例が不変であった。角膜全体と中央部の点状表層角膜症のスコア値は有意に改善した。結論:ラタノプロスト点眼中に生じた点状表層角膜症は,11例中9例でタフルプロスト点眼に切り替えた8週後に改善した。

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要約 目的:マイトマイシンC併用線維柱帯切除術後の濾過胞炎に対し遊離結膜弁移植を行ったので報告する。症例1:50歳,女性。主訴:左眼痛。経過:房水漏出,濾過胞炎(Stage 2)に対し,第10病日に左眼病巣部を切除し,僚眼からの遊離結膜弁移植を施行した。術後12か月で左眼圧8mmHgであった。症例2:64歳,男性。主訴:左眼痛,流涙。経過:房水漏出,濾過胞炎(Stage 1)に対し,第7病日に左眼病巣部を切除し,僚眼からの遊離結膜弁移植を施行した。術後12か月で左眼圧16mmHgであった。結論:濾過胞炎,房水漏出に対し,炎症コントロール後に行う僚眼からの遊離結膜弁移植は有用であった。

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要約 目的:全層角膜移植を受けた眼に生じた眼外傷4例の報告。症例:4症例4眼の内訳は,男性1例,女性3眼で,年齢は52~81歳,平均71歳である。結果:全例に全層角膜移植の既往があり,鈍性外傷が受傷原因で,転倒による自傷が多かった。全例に角膜移植時の術創の離開があった。受傷後の視力は光覚弁2例,手動弁2例で,最終視力は光覚なし,光覚弁,0.03,0.4が各1例であった。非受傷眼の視力は,0.1が2眼,0.4と0.8が各1眼であった。結論:全層角膜移植を受けた患者は,低視力や視野障害が多く,眼球強度が脆弱化していることがあるので注意が望まれる。

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要約 目的:流行性耳下腺炎を伴わないムンプスウイルスの関与が疑われた劇症角膜内皮炎の症例の報告。症例:63歳男性。8日前に39℃の発熱があり,その翌日から左眼霧視を自覚した。初診時左=(40cm指数弁),左眼毛様充血,角膜全体の著明な上皮浮腫,実質浮腫,Descemet膜皺襞を認めた。ムンプスウイルス抗体価の検索で,IgMが検出された。ステロイド局所投与で加療し,角膜は瘢痕を残すことなく速やかに透明化した。初診3か月後左=(1.2),角膜内皮細胞密度は426/mm2と著しく減少した。結論:原因不明のびまん性角膜内皮炎では,耳下腺腫脹がなくてもムンプスウイルスの関与の可能性がある。

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要約 目的:タクロリムスが奏効した難治性Mooren潰瘍の症例報告。症例:65歳男性。左眼痛で近医を受診し,周辺部角膜潰瘍と診断され,4か月後に紹介受診した。所見:結膜充血,輪部浮腫,周辺部下掘れ潰瘍を認めた。結膜切除術と角膜上皮形成術を施行し,術後,ベタメタゾン点眼,シクロスポリン点眼,プレドニゾロン内服を行うも病勢は抑えきれず,自家作製タクロリムス眼軟膏を追加し,増悪傾向が抑えられた。タクロリムス眼軟膏のコンプライアンスが悪く,角膜菲薄化,浸潤が増強したため,初回手術から2年後,結膜切除術と角膜上皮形成術を施行した。以後,タクロリムス点眼の併用で鎮静化している。結論:難治性のMooren潰瘍には,手術と薬剤治療の併用が必要で,タクロリムスはその選択肢の1つとなる。

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要約 目的:眼窩リンパ増殖性疾患のMRI所見の報告。対象:過去12年間にさいたま赤十字病院で病理学的に眼窩リンパ増殖性疾患と診断された85例を対象とした。悪性リンパ腫,反応性リンパ過形成,特発性眼窩炎症,IgG4関連疾患を本症と定義した。結果:男性46例,女性39例で,年齢は25~92歳,平均62歳であった。内訳は悪性リンパ腫48例,反応性リンパ過形成22例,特発性眼窩炎症6例,IgG4関連疾患9例で,片側性59例,両側性26例であった。両側性は特発性眼窩炎症とIgG4関連疾患に多かった。37例(44%)では眼窩内の耳上側に発症した。眼球変形はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫4例に認めた。外眼筋肥大が18例にあり,悪性リンパ腫11例とIgG4関連疾患4例を含んでいた。結論:MRI検査は,両側発症の有無,眼窩内の部位,眼球変形の有無,外眼筋肥大などに関する情報を提供し,眼窩リンパ増殖性疾患の診断に有用である。

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要約 目的:眼原発悪性リンパ腫の自験例の統計報告。対象と方法:過去38か月間に横浜市立大学附属病院眼科を受診し,診断的硝子体手術で眼原発悪性リンパ腫と診断された6例を対象とした。結果:男性2例3眼,女性4例6眼で,3例が片眼性,3例が両眼性であった。年齢は62~82歳,平均73歳であり,8~72か月の経過を追った。全例に濃厚な硝子体混濁または眼底に黄白色病巣があった。IL-10対IL-6比は1.3~76.7の範囲にあり,全例が1.0以上であった。硝子体細胞診では全例がⅢb以下であった。経過中に3例に中枢神経系に病変が生じ,全例が死亡した。メトトレキサートの硝子体注射をした1例と無治療の2例には,中枢神経系に発症していない。結論:眼原発悪性リンパ腫では,中枢神経系の発症が生命予後を不良化する。IL-10対IL-6比から中枢神経系の発症の有無または予測はできなかった。

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要約 目的:当院のインシデント・アクシデントレポートを用いて眼科領域の傾向を分析し,今後の課題を明確にする。対象と方法:2007年4月から5年間における,当院眼科に関連するインシデント・アクシデントレポートについて分析した。結果:総報告件数は926件で,職種別報告件数は,看護師が790件(87%),行為別報告件数は,与薬362件(40%)が最も多かった。左右眼に関する報告は42件(4.6%)だった。結論:左右眼の間違えが眼科での特徴である。今回の報告では,看護師間と医師・看護師間での報告が多数を占めた。

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要約 目的:開放性眼外傷の自験例の報告。対象:過去3年間に当科で加療した眼外傷36例36眼を対象とし,診療録の記述を解析した。結果:36例の年齢は0~91歳,平均48歳であった。眼球破裂16眼(45%),裂傷12眼(33%),眼内異物7眼(19%),二重穿孔1眼(3%)で,平均年齢はそれぞれ58歳,30歳,53歳,50歳であった。受傷部位として,眼球破裂では強膜と強角膜が,裂傷と眼内異物では角膜が多かった。視力の転帰は眼球破裂と裂傷で不良例が多く,眼内異物と二重穿孔では良好例が多かった。結論:開放性眼外傷では,若年者に裂傷が多かった。視力転帰は眼内異物と二重穿孔例で比較的良好であった。

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要約 目的:急性散在性脳脊髄炎後に視神経炎を呈した4歳児の症例報告。症例:4歳女児が左眼の視力低下で受診した。4か月前に急性散在性脳脊髄炎に罹患していた。所見と経過:視力は右1.0,左0.1であった。視神経乳頭の腫脹はなかった。MRIで左視神経に脱髄性病変を認めた。左視神経炎と診断し,ステロイドパルス療法を施行し,視力は左1.0に改善した。結論:急性散在性脳脊髄炎後に視神経炎を呈した症例であり,小児多発性硬化症への移行の可能性を考慮して長期の経過観察が必要と考えられた。

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要約 目的:頭蓋内悪性リンパ腫に両側の乳頭浮腫が併発した症例の報告。症例:63歳男性が12日前からの霧視で受診した。1年前に前立腺癌に対して前立腺全摘出を受けていた。10日前にMRI検査で前頭葉に1cm大の腫瘤が発見された。所見:矯正視力は左右とも0.2で,両眼に乳頭の発赤と浮腫があった。前房に炎症所見はなく,脳脊髄液の圧亢進はなかった。診断的治療としてステロイドパルス療法を行い,4日後には視力が右0.3,左0.6に改善し,1か月後には右0.4,左1.0になった。腫瘤が増大し,3か月後に腫瘤を亜全摘した。びまん性B細胞リンパ腫の診断が確定した。結論:本症例では眼内悪性リンパ腫の可能性が大きいが,乳頭浮腫型の原田病を鑑別する必要がある。

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要約 目的:栗のイガによる受傷の真菌性角膜潰瘍が発症した症例の報告。症例:72歳男性が栗拾いに行き,左眼角膜に栗のイガが刺入した。近医でイガの摘出を受け,症状が改善した。3か月後に左眼視力が低下し,その2週後に受診した。所見:矯正視力は右1.0,左0.6で,左眼角膜に浮腫と混濁,前房に炎症の所見,虹彩にルベオーシスがあった。前房水のPCR検査でAspergillus属が検出され,アムホテリシンBを全身投与した。2週後に角膜潰瘍は上皮化し,炎症所見は消失した。以後10か月後の現在まで再発はない。結論:角膜に異物が刺入したのち,遅発性角膜潰瘍が発症することがある。診断にはPCR検査が有効であった。

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要約 目的:ぶどう膜炎の後,同眼に眼筋型の重症筋無力症(MG)を合併した症例の報告。症例:78歳女性が急激な左眼瞼下垂で受診した。発症の3年前に同眼に眼圧上昇を伴うぶどう膜炎の既往があり,治療のためにチモロールマレイン酸塩点眼液の使用歴があった。所見:テンシロンテストと抗アセチルコリン受容体結合抗体(抗AChR結合抗体)が陽性であり,眼筋型MGと診断された。パルス療法で眼瞼下垂は改善したが,抗AChR結合抗体値は上昇が続き,ぶどう膜炎は再燃を繰り返した。結論:自己免疫疾患であるMGは他疾患との合併が多く,ぶどう膜炎を併発することがある。眼圧治療の目的で使用されるチモロールマレイン酸塩点眼液は,MG発症と重症化の誘因となることがあり,注意を要する。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

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 オキュラーサーフェス研究会はこれまで通りドライアイ研究会と日本眼科アレルギー研究会の合同企画で開催された。これまで専門別研究会として開催されていたときの講演時間は3時間であったが,今回から1時間30分に短縮されたため,タイトなスケジュールとなった。その時間で,シンポジウム,ドライアイリサーチアワードと日本眼科アレルギー研究会優秀賞の受賞講演,インターネットを使ったアメリカからの特別講演と盛りだくさんな内容が行われた。ここではアレルギー関連の内容について報告する。

連載 今月の話題

27G硝子体手術 白木 暢彦 , 大島 佑介
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 近年,経結膜的に行う23ゲージ(gauge:G)や25G小切開硝子体手術が,種々の手術機器の開発と手術手技の進歩によって急速に普及し,黄斑疾患から難治性症例まで幅広い網膜硝子体疾患に適応できるようになった。しかし,現在の23Gや25G手術では自己閉鎖創の作製にはテクニックを要しながらも,すべての症例で創口の自己閉鎖を得ることができない。一方,新たに開発された27Gの硝子体手術システムは,自己閉鎖性の高い創口を簡単に作製できるうえ,最近の高速カッターの改良と高性能な硝子体手術装置の開発によって硝子体切除効率が向上し,一般臨床に導入できるレベルに達した。本稿では,27G硝子体手術について概説する。

連載 何が見える? 何がわかる? OCT・第7回

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Point

◎異常血管網の部分は網膜色素上皮がなだらかに隆起し,double layer signを認めることが多い。

◎ポリープ状病巣の部分では網膜色素上皮は急峻に隆起し,網膜色素上皮剝離を伴っているとtomographic notch signを示すことが多い。

◎ポリープ状病巣がフィブリンを伴っていると,ポリープ状病巣上の網膜色素上皮が確認しにくくなることが多い。

◎黄斑浮腫はtype 2脈絡膜新生血管では特徴的な所見であるが,ポリープ状病巣では伴わないことが多い。

連載 基礎からわかる甲状腺眼症の臨床

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はじめに

 誤解を恐れず「甲状腺眼症って何ですか?」という問いに答えれば,それは「眼窩眼瞼組織に対する自己制限的自己免疫疾患」となります。ひらたくいえば,放っておいても勝手に落ち着く眼窩の炎症性疾患,でしょうか。だったら治療しなくてもよいのでは? いえいえ,そこまで単純でないのが甲状腺眼症というものです。患者さんの訴えに耳を傾け治療を施そうとするとき,眼科医は何をどうすればよいのか。

 甲状腺眼症の内科的治療編,始めます!

連載 つけよう! 神経眼科力・40

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はじめに

 神経眼科学といえば,以前は疾患の診断中心の分野であった。現在でも私たち神経眼科医にとって,さまざまな徴候から画像検査や自己抗体検査,遺伝子検査などを駆使して診断をつけるのが重要な仕事であることには間違いない。しかし,患者側にとっては単に診断がついただけで満足できるわけではない。治療によって患者の悩む原因が解消されて,はじめて満足できる。

 神経眼科疾患に悩む患者のなかでは,頻度としては視神経疾患に罹る患者より眼位・眼球運動障害の患者,すなわち複視や異常頭位に悩む患者のほうが圧倒的に多い。そのなかでも最も多い眼運動神経麻痺では,薬物治療や経過観察のみでも80%以上の患者は平均3か月で回復する1,2)。しかし,回復しない20%弱の患者はプリズム眼鏡装用あるいは外眼筋手術を行わなければ,満足できる結果とはならない。ただし,プリズム眼鏡は装用するには限界があり,またどの視線方向でも同一度数のプリズムしか入らない欠点がある。さらに眼運動神経麻痺以外にも甲状腺眼症,重症筋無力症,側方注視麻痺,垂直注視麻痺,慢性進行性外眼筋麻痺,外眼筋線維症などでは,薬物治療後あるいは当初から手術が選択される(図1)。さらに先天眼振,後天眼振では事実上外眼筋手術しか治療法がない。

 本稿では,どのような疾患にどのような手術が適応となるのか,どの時期に手術を行えばよいのか,どの程度の複視消失率があるのかなどを兵庫医科大学病院眼科(以下,当科)の自験例での結果をもとに解説する。

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緒 言

 モルガニ白内障(Morgagnian cataract)とは過熟白内障の皮質が液化し,茶褐色の核が水晶体下方に沈下している状態である1)。なかには水晶体囊が自然破囊を起こし水晶体物質が前房に漏出し,それらが線維柱帯に沈着して眼圧が上昇することは古くから知られていた2)。その後そのような病態を水晶体融解緑内障(phacolytic glaucoma)と呼ぶようになった3)。わが国においても同様の報告はあるが,多くはない4)。今回筆者らは定時手術を予定していたモルガニ白内障の患者が,急に眼痛を伴う水晶体融解緑内障を続発したため,臨時の白内障手術に切り替えた症例を経験したので報告する。

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 症例は72歳,男性。3週間前より左眼視力低下を自覚し来院した。

 IOLは硝子体内下方に落下するも,ループが瞳孔より前房内へ脱出し虹彩にトラップされていた。その先端が角膜内皮と接触し角膜浮腫,混濁を起こしている状態であった。来院時の左眼視力は0.07(0.3×+7.5D),角膜内皮細胞CD値は852個/mm2であった。

やさしい目で きびしい目で・163

不安 勝呂 慶子
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 問診票の「黒い物が目の前に見える」という項目に印をつけた50歳代男性。診察室に招き入れ,挨拶をしてもにこりともせずに怒ったような表情で黙って座る。質問に対しては最小限の応答。発症は2日前,他院に行った様子はない。何があったのか,診療所のスタッフは院長とは違って言葉遣いは丁寧,応対も良いはずなのに。少々余計なことを考えながら,それでも淡々と手順に従って検査を進める。結果は後部硝子体膜剝離。病名を告げ,加齢に伴う変化であり,網膜裂孔がないので治療の必要はないことを説明する。「この黒い物は消えてなくなることはありません。けれども,徐々に気にならなくなります。人は注意していないと目の前にあるものですら気がつかないことがあります。この能力をうまく利用して,気にしない努力をしましょう。つまり,脳で脳をコントロールすることです。そうすると,さらに良いことに次に何か変化が出たときにも気がつきやすくなります。その時には今回のように早めに眼科を受診してください」肩の力が抜けた。患者さんの表情が徐々に緩む。ほーっと息をついて「安心しました。ありがとうございました」穏やかな表情に変わる。

 母親が不安げな表情で現れる。小学校3年生の元気な女の子。目の間に緑や黒の光が見えると言っている。眼球内に異常なく視力も良好。母娘関係は良好,娘に屈託はない。MRI検査を迷いながら,もう少し様子を見ることにする。しばらくして今度は紫や緑の変な形の物に変わったと言う。本人は無邪気に一生懸命に説明をする。MRI検査を依頼したところ,交通性水頭症と診断される。

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要約 目的:糖尿病網膜症が夜間安静時心拍と睡眠時心拍に及ぼす影響の報告。対象と方法:手術のために入院した219例を対象とした。男性126例,女性93例で,全員に2型糖尿病があった。糖尿病網膜症は68例が非増殖型,151例が増殖型で,平均年齢は前者が66歳,後者が60歳である。高血圧は前者の56%,後者の67%にあった。パルスオキシメータで夜間安静時と睡眠時の心拍数を測定した。結果:夜間安静時と睡眠時の心拍数は,ともに増殖糖尿病網膜症で高値であった。低年齢と睡眠時心拍数が高値であることが,その関連因子であった。結論:夜間安静時と睡眠時の心拍数が高い糖尿病患者は,増殖糖尿病網膜症に進行する可能性がある。

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要約 目的:緑内障患者の白内障手術前後でのGoldmann視野の変化の報告。対象と方法:対象は緑内障と診断され,白内障手術前後でGoldmann視野検査が施行可能であった症例のうち術後の矯正視力が0.6以上であった39例62眼である。結果:術前後の視野は,湖崎分類による病期で11眼(18%)が改善,49眼(79%)が不変,2眼(3%)が悪化であった。術前矯正視力が0.8以上,術前湖崎分類がⅡ期までのもので,術後の視野の改善率が高かった。術後に改善する視野所見として,中心感度の上昇,Mariotte盲点拡大の改善,傍中心暗点の改善が多かった。結論:白内障の術後に,視野が改善する例があり,その多くが中心30°における変化であった。

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要約 目的:トーリック眼内レンズ(IOL)の軸回転について画像解析ソフトを用いて検討した。対象と方法:当院にてトーリックIOLを挿入した38眼を対象とした。術翌日と術1年後に散瞳下前眼部写真を撮影し,トーリックIOLの乱視軸の状態を解析した。結果:乱視軸マークが2点以上確認できたものは31眼(82%),2点未満だったのは7眼(18%)で,原因は散瞳不良と前囊混濁であった。2点以上軸マークが確認できた31例のうち軸回転が3度未満であったものが19眼(61%),3°以上であったものが12眼(39%)であった。前囊切開がIOL光学部を全周被覆している症例で軸回転が有意に少なかった。結論:トーリックIOLの機能を長期に維持するためには,前囊切開の全周被覆が必要と思われた。

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要約 目的:ドライアイに伴う点状表層角膜症にレバミピド懸濁点眼液が及ぼす効果の報告。対象と方法:2012年2~4月までの期間に受診した点状表層角膜症のあるドライアイ70例127眼を対象とし,2%レバミピド懸濁点眼液を点眼した。男性13例,女性55例である。点状表層角膜症の程度はAD(area-density)分類で判定した。点眼は平均26.2日間行った。結果:治療前に比べADスコアは有意に改善した(p<0.0001)。症例の73%でADスコアが1ポイント以上改善した。症例の背景については,アレルギー性結膜炎,コンタクトレンズ装用眼,レーシック既往眼にも効果があった。点状表層角膜症の改善効果は,ヒアルロン酸ナトリウム点眼液の併用で増強した。結論:レバミピド懸濁点眼液は点状表層角膜症に有効である。

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 この本は,聖路加国際病院出身の50名の医師たちが書いた本ですが,誰のために書かれたのでしょうか? さっと全体に目を通せば,これからキャリアを築いていく研修医・専門研修医や医学生が読むのに最適な本であることがわかります。すなわち,若手医師の最大の関心事である進路の選択やキャリア形成を経験した先輩の文章が掲載されていて,ロールモデルや後輩へのアドバイスを見出すことができるからです。

 さらに読み進めると,聖路加国際病院でさらなる研修を続けた医師,あえて国内の病院へ異動して研鑽を続けた医師,リサーチのための留学や海外での臨床研修やフェローシップの機会を得た医師,あるいは他の病院で研修後(海外も含めて)スタッフとして迎えられた医師など,その多様さに驚くと同時に,「みんなちがってみんないい」(金子みすゞの詩より)というフレーズを思い起こします。

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欧文目次

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 第17回JRPS研究助成は,JRPS学術理事の厳正な審査の結果,以下の2件に決定致しました。

第31回眼科写真展 作品募集
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 第67回日本臨床眼科学会(パシィコ横浜)会期中の2013年10月31日(木)~11月3日(日)に開催される「第31回眼科写真展(日本眼科写真協会発足30周年記念写真展)」の作品を募集します。

べらどんな 失明の予告
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 ずっと前に診たことがある患者の母親から手紙をもらった。5歳の娘さんが網膜色素変性と診断され,日赤病院で「小学3年になるまでに失明する」と告げられた。いくつもの眼科を受診したあげく,わざわざ西日本の遠くから箱根を越え,その子を連れて来られた。

 こちらにはまったく記憶がないが,もらった手紙には次のように書いてあった。予診をした受持医が「いつごろ失明するでしょうか」と質問した。「まず30年は大丈夫。70歳でどうなるかは分からないが」と私が返事したそうである。

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 財団法人 高齢者眼疾患研究財団は,1993年11月に設立しました。

 この研究助成は,「悪性糖尿病網膜症等高齢者の視力障害をきたす疾患の予防及び治療に関する調査研究」を対象に,高齢化社会において高齢者の視力障害をきたす疾患に関する研究を行い,国民の健康の増進及び眼科学の進歩に寄与することを目的としております。

べらどんな 単眼の巨人族
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 単眼症cyclopiaは頻度がごく稀な先天異常であるが,古代ギリシャにはその巨人族がいた。

 単眼の巨人族には二つの系統がある。一説によると,「混沌」Chaosの娘が「地」Gaeaで,その兄が「天」Uranosであった。その兄妹には3人の息子がいて,腕の良い鍛冶屋であった。

べらどんな レッスンプロ
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 鰻は謎の多い魚である。

 「海のどこで産卵するか」が100年前の大きな問題であった。鰻は成熟すると川を下って海にでる。南方に向かうらしいが,その目的地はずっと不明であった。

ことば・ことば・ことば 彗星
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 放射性物質の代表である元素ウラン(uranium:U)は1789年に発見されました。もちろん当時はこれに放射能のあることは知られていません。利用価値もあまりなく,カットグラスに混ぜると綺麗な淡い青色になることぐらいでした。モーツァルトが活躍していた時代で,有名なクラリネット五重奏(K581)をこの年に作曲しています。

 英語読みだとウラニウムです。その8年前に発見された天王星のUranusにちなんで命名されました。発見者はWilliam Herschel(1738-1822)で,本来は音楽家だったのに天文学者になったという変わった経歴の人です。活動も精力的で,一生の間に星雲を2,500,二重星を800も発見しました。

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あとがき 下村 嘉一
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 今年のゴールデンウィーク(GW)は平日の3日間を中央に入れて前後に分かれていましたが,みなさんはどのように過ごされましたか。なぜこのようなことを質問したかというと,本稿を書いているのがGWの最中だからです。5月5日から開催された米国シアトルでのARVOに参加された方もおられると思いますが,私は留守番をしていました。

 さて,「臨床眼科」2013年7月号をお送りします。本号は第66回日本臨床眼科学会講演集の5回目の掲載となります。原著論文と投稿論文の掲載本数は各々21本と5本(「眼科図譜」含む)で,ボリュームのある1冊です。「今月の話題」では白木先生,大島先生に「27G硝子体手術」を執筆して頂きました。近年,経結膜的に行う23Gや25G小切開硝子体手術が急速に普及して,多くの網膜硝子体疾患に適応できるようになりました。手前みそですが,分野は異なりますが,私も角膜トリプル手術時に経結膜的に25Gを使ってcore vitrectomyを施行し,安全確実にIOLを囊内に固定する手術方法を確立しました。23Gや25Gではすべての症例で創口の自己閉鎖を得ることができませんが,27Gシステムではそれらの不確実な自己閉鎖性を高め,価値は非常に高いと考えます。

基本情報

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臨床眼科
67巻7号 (2013年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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