臨床眼科 65巻5号 (2011年5月)

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要約 目的:ドライアイ患者に投与したピロカルピン内服の短期効果の報告。対象と方法:口腔乾燥症状を伴うドライアイまたはその疑いがある15例30眼を対象とした。男性2例,女性13例で,平均年齢は61.8±12.0歳である。5mgピロカルピンを1日2回経口投与し,1時間後,4週間後,8週間後に自覚的と他覚的な効果を判定した。結果:口腔乾燥症状と涙膜破壊時間は投与1時間後から有意に改善した。眼の自覚症状と角結膜染色所見は4週間後から有意に改善した。Schirmer試験の結果は改善しなかった。結論:ピロカルピンの内服は,口腔乾燥症状があるドライアイの治療として,有効な選択肢になる。

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要約 目的:遠視性不同視弱視の予後因子の検討。対象と方法:2007年までの11年間に受診し,初診時10歳未満の82例を対象とした。最終視力1.0以上を良好,1.0未満を不良とし,両群の初診時視力,治療開始時期,遠視と不同視の程度を検討した。結果:最終視力は63名(77%)が良好,19名(23%)が不良であった。初診時年齢は両群の間に差はなかった。初診時の患眼矯正視力の平均はlogMAR換算で良好群0.62,不良群0.83で有意差があった(p<0.01)。調節麻痺後の屈折は,良好群+5.2±1.6D,不良群+6.2±1.5Dで有意差があり(p<0.03),不同視の程度はそれぞれ3.2±1.4Dと4.1±1.5Dで有意差があった(p<0.02)。結論:遠視性不同視弱視の視力予後には,治療開始時期は関係せず,初診時視力,遠視と不同視の程度が関係する。

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要約 目的:眼底カメラを用いてトーリック眼内レンズ挿入術における基準点マーキングを行い,その有用性を検討した。対象と方法:28眼に対して,任意の位置に基準点マーキング後,眼底カメラで前眼部を撮影した。眼底カメラの観察光は小さな白色輪状に角膜中央に写る。前眼部写真に写った基準点と観察光から角度を測定した。同じ基準点を,角膜形状測定装置を用い角度を測定し,両者を比較した。結果:両者の角度が一致したのが11眼,すべて3°差以内であった。Mann-Whitney U検定で両者に有意差はなかった。結論:眼底カメラを利用すれば,角膜形状測定装置がない施設でもほぼ同等の正確さで基準点マーキングを行うことが可能である。

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要約 目的:過去6年間に経験した細菌性角膜炎の報告。対象と方法:2009年までの6年間に高知市の町田病院で入院加療した35例を検索した。結果:すべて片眼性で,男性22例,女性13例であり,24例(68%)が65歳以上であった。外傷や水疱性角膜炎などの既往が21例(60%)にあった。起炎菌は20例で同定され,グラム陽性球菌6例,グラム陰性桿菌13例,グラム陰性球菌1例であった。グラム陰性桿菌による角膜炎は,治療後に角膜浮腫が悪化し,角膜上皮欠損が遷延化する傾向があった。結論:高齢者でもグラム陰性桿菌による角膜炎が問題である。

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要約 目的:光干渉断層計(optical coherence tomograph:以下,OCT)が流涙症の治療経過の定量的評価に有用であることを示すこと。対象:涙小管閉塞症16例,男性5例,女性11例,年齢は62~80歳(平均72歳)であった。方法:OCTに前眼部観察用アタッチメントを装着し,涙管チューブ挿入術前後における下方涙液メニスカスの断層撮影を行い,その断面積(XSA)を測定することで治療効果の定量的評価を行った。結果:全症例のXSA平均値は,術前106μm2から術後1週間目で30μm2に減少した(p=0.0007)。その後は1か月目,2か月目ともに有意な変化はなく,チューブ抜去後(術後3か月目の測定点)は62μm2に上昇した(p=0.0828)。結論:OCTは流涙症の定量的評価に有用であった。

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要約 目的:壊死性強膜炎に対して大腿筋膜の自家移植が奏効した3例の報告。症例:それぞれ57歳男性,66歳男性,79歳女性で,いずれも片眼性であった。1例目は翼状片手術後,2例目は球結膜の腫瘤摘出後,3例目は緑膿菌感染を伴う壊死性強膜炎が発症した。いずれも壊死した強膜部位を切除し,大腿筋膜を移植した。移植した筋膜の生着は良好で,壊死性強膜炎の再発はなかった。結論:壊死性強膜炎に対する壊死部の切除と自己大腿筋膜の移植は,拒絶反応がなく,免疫抑制薬の投与を必要とせず,有効であった。

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要約 目的:当院での電子カルテ導入に伴う電子化の一部をEnd user computingで行った報告。対象と方法:下記の3点を行った。①画像ファイリング装置交換に伴ったデータ移行。②未熟児眼底カメラRetCamの電子カルテへの接続。③散瞳カメラ画像のパノラマ作成ソフトの作成。結果:サーバ内の全画像を解析して検査種別を分別し,付帯情報はXMLファイルから取得した。ゲートウェイPCを介して接続された。Canon眼底カメラでパノラマが作成可能となった。結論:本報告で行った電子化は本来的にはorganizational computingで行われるべき種類のものであろう。

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要約 目的:ポータブル電動トレパンで摘出した強角膜片を用いた角膜移植のドナー持込菌曝露の現状と術後経過の報告。対象と方法:2007年8月~2010年5月の期間に角膜移植を行った46眼のドナー強角膜片,保存液の細菌培養,レシピエント臨床経過を調べた。結果:ドナー強角膜片は10.9%,保存液は6.5%で培養陽性で,検出菌はいずれもStaphylococcus aureus-MRSAを含むグラム陽性球菌であった。ドナーからの持込感染はなかった。持込菌の有無でレシピエント術後予後の差はなかった。結論:ドナー持込感染はなかったが,強角膜片細菌培養陽性であれば眼内炎のリスクが上がるとされているため,今後も十分な注意を要する。グラム陽性球菌については保存液や洗浄液の見直しが必要である。

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要約 目的:白内障手術前の患者の結膜囊内に常在する細菌叢と薬剤感受性の報告。対象と方法:明らかな外眼部感染症がない術前患者219例324眼を検索した。女性207眼,男性117眼で,年齢は53~92歳(平均74歳)であった。下眼瞼結膜の擦過物を培養した。結果:77眼(23.8%)から菌が検出され,総株数は84株であった。グラム陽性球菌が40株(47.6%),グラム陰性桿菌が34株(40.5%)であった。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が31株(36.9%)で検出され,その多くは通常の抗菌薬に高い感受性があった。結論:白内障手術では,術前に結膜囊内の細菌叢を検索し,その結果を個々の症例に応用することが望ましい。

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要約 目的:白内障手術練習用の軽度の角膜混濁模擬眼を作製すること。対象と方法:飲料用のストローを2~3mm程度に短く切り,豚眼の角膜に載せて,その中空を灌流液で満たした。次に,ジアテルミー電極の先端を水中に入れ,角膜に直接触れないように凝固し混濁を作製した。このモデル眼を白内障手術の練習に使用した。結果:短時間で角膜上層に程度の軽い混濁を作製することができた。前房中の視認性は多少悪いが,角膜混濁の範囲が広くても特殊な照明を使用せず,前房内の手術操作を行うことができた。結論:本法により半透明の角膜混濁を豚眼で作製することが可能で,白内障手術の練習に有用なモデル眼の1つになると考えた。

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要約 目的:トラボプロストの点眼で上眼瞼が陥凹した症例の報告。症例:59歳男性が右眼の羞明で受診した。7年前に右眼に高眼圧があったが視野異常はなく,無治療であった。矯正視力は左右とも1.5で,眼圧は右36mmHg,左18mmHgであった。右眼の原発閉塞隅角症と診断し,トラボプロスト点眼で眼圧は正常化した。15か月後に色素沈着を伴う右眼瞼陥凹が生じた。タフルプロスト点眼に切替え,2か月後に眼瞼陥凹は軽快した。眼圧は正常範囲に維持されている。結論:プロスタグランジン製剤の点眼で眼瞼陥凹が生じたときには,他のプロスタグランジン製剤へ変更することで眼瞼陥凹が改善し,眼圧が維持されることがある。

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要約 目的:低照射エネルギー光線力学療法(PDT)で加療した中心性漿液性脈絡網膜症3症例の報告。症例:症例はいずれも男性で,年齢は39,46,67歳で,いずれも片眼性であった。患眼の矯正視力はそれぞれ0.6,0.4,0.6であった。蛍光眼底造影で2例に色素漏出点があった。低照射エネルギーPDTを行い,漿液性網膜剝離と変視症はすみやかに消失した。最終視力はそれぞれ1.0,0.8,0.8であった。治療による格別な合併症はなかった。結論:中心性漿液性脈絡網膜症に対し,低照射エネルギーPDTは有効であり,短期的には安全な治療法である。

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要約 目的:低複色素漏出点があり,遷延化した中心性漿液性脈絡網膜症に光線力学療法を行った2症例の報告。症例:1例は63歳男性で,2年前に1か所の漏出点に光凝固を受けて治癒し,再発で受診した。矯正視力は0.3で,2個の新しい漏出点があった。他の1例は59歳男性で,3年前から変視症があった。矯正視力は0.1で,鮮明な漏出点とびまん性が各1個と2か所の網膜色素上皮剝離があった。両症例に照射エネルギー量を半分にした光線力学療法を行った。漿液性網膜剝離は消失し,視力はそれぞれ0.6と0.5に改善した。結論:照射エネルギー量を半分にした光線力学療法は,再発性または遷延化した中心性漿液性脈絡網膜症に奏効することがある。

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要約 背景:高出力で短照射時間で複数のショットを行う光凝固法としてpattern scan laser(PASCAL®)が最近使用可能になった。目的:両眼に糖尿病網膜症がある患者の一眼に通常の光凝固,他眼にPASCAL®による光凝固を行った成績の報告。症例:糖尿病網膜症があり,光凝固が必要と判断された10例20眼を対象とした。一眼には従来法であるシングルショット,200μm,200mW,0.2秒,3分割の汎網膜光凝固を行い,他眼には200μm,400mW,0.02秒,2分割のパターン照射を行った。24週までの経過を追い,蛍光眼底造影で光凝固の効果を判定した。結果:施術時間はパターン照射が有意に短く,視力,中心窩網膜厚,疼痛の自覚,汎網膜光凝固の効果は同等であった。結論:PASCAL®による汎網膜光凝固では施術時間と回数が少なく,従来の方法と同等な効果が得られた。

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要約 目的:術前に裂創が不明であった眼球破裂11眼の報告。対象と方法:過去5年間に治療した眼球破裂眼のうち,術前に裂創が不明であった11例11眼を診療録の記録により検索した。結果:男性4例,女性7眼で,年齢は58~95歳(平均79歳)であった。受傷原因はすべて鈍性外傷で,手術により全例に1個の眼球破裂創があった。裂創の中心は,9眼では上方にあり,他の2眼でも裂創の一部は上方に含まれていた。結論:術前に裂創が不明な眼球破裂眼では,裂創が必ず存在し,その中央部または一部が上方に位置する。このような症例では,手術の開始時に上方結膜下の裂創を確認することが有用である。

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要約 目的:頸動脈海綿静脈洞瘻の症例に巨大網膜色素上皮裂孔と網膜剝離が生じた報告。症例:72歳女性が1か月目前からの右眼視力低下で網膜剝離が発見され,紹介され受診した。糖尿病と高血圧があり,7か月前に右眼に白内障手術を受けた。所見:矯正視力は右0.3,左0.6で,右眼の耳側に4×6乳頭径大の網膜色素裂孔とこれに一致する網膜剝離があった。網膜裂孔はなかった。頭部コンピュータ断層撮影で右側の上眼静脈が拡張し,頸動脈海綿静脈洞瘻と診断された。脳外科で経動脈的塞栓術が行われ,網膜剝離は消失し,網膜色素上皮裂孔は残った。結論:本症例では,頸動脈海綿静脈洞瘻で上眼静脈圧が上昇して脈絡膜が膨化し,網膜色素上皮が機械的に伸展されて裂孔が生じ,滲出性網膜剝離になった可能性がある。

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要約 目的:デジタルカラー眼底写真に含まれる青成分の画像解析で,網膜内層の菲薄化が検出された陳旧性腎性網膜症の報告。症例:23歳男性が両眼の視力障害で受診した。矯正視力は左右とも0.1であった。網膜浮腫と軟性白斑が多発していた。内科で高血圧と腎不全と診断され,透析が開始された。経過:全身所見の改善に伴い眼底病変は消失し,9年後の視力は左右とも1.2以上に改善した。改善後のデジタルカラー眼底写真から作成した青モノクロ画像で,中心窩付近に散在する低輝度斑があり,光干渉断層計でこれに相当する部位に網膜内層の菲薄化があった。結論:デジタルカラー眼底写真の青成分の画像解析で,過去の網膜虚血による網膜内層の菲薄化が検出できた。

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要約 目的:悪性腫瘍の治療中にサイトメガロウイルス網膜炎が発症した症例の報告。症例:80歳男性が右眼の視力低下で受診した。6年前に前立腺癌と診断され,ステロイドと抗癌薬の投与を受けていた。所見:矯正視力は右0.8,左0.7で,網膜出血と滲出斑が両眼の中間周辺部にあった。前房水からサイトメガロウイルスが検出され,サイトメガロウイルス網膜炎と診断した。ガンシクロビル硝子体内投与などで寛解した。4か月後に左眼に網膜剝離が生じ,シリコーンオイルを併用した輪状締結で網膜は復位した。発症から22か月後の現在,右0.8,左0.3の視力を維持している。結論:抗癌治療中で免疫低下状態にある高齢者での視力低下では,サイトメガロウイルス網膜炎の可能性がある。

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要約 目的:外傷性前房出血に対するアトロピン点眼後に外斜視が発症した症例の報告。症例:5歳女児が竹とんぼで右眼に受傷し,その翌日に受診した。裸眼視力は右1.0,左0.9で,眼位は正位であった。右眼に瞳孔下縁までの前房出血の貯留があり,中間透光体と眼底には異常がなかった。入院のうえ,1%アトロピンを1日2回,ベタメタゾンを1日4回点眼した。1週間後に前房出血はほとんど消失し,退院した。退院時の視力は右1.2,左1.5であった。退院の翌日に母親が右眼の外斜視を発見した。以後,外斜視と複視が生じ,近見35△,遠見30△の右眼外斜視で,固視交代が可能,眼球運動と輻湊には異常がなかった。改善がなく,5か月後に手術を必要とした。結論:乳幼児ではアトロピン点眼による片眼の不完全遮蔽で斜視が生じる危険がある。

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要約 目的:ヌンチャク型シリコーンチューブ(NST)とその付属ブジーを一体化したプローブを使った涙小管閉塞治療の報告。対象と方法:鼻涙管閉塞がない涙小管閉塞患者17例20側を対象とした。シリコーンプローブで閉塞部の穿破のあとNSTを挿入し,約2か月後に抜去した。一部に涙小管トレパンまたは金属ブジーを併用した。結果:19側(95%)でNSTを挿入できた。涙小管トレパンを5側,金属ブジーを2側に使用した。NSTの抜去後平均6か月の観察で17側では通水良好であり,再閉塞が2側に生じた。うち1側ではシリコーンプローブで再度穿破を行い,通水良好になった。結論:今回の方法で,涙小管閉塞に対し低侵襲で高い成功率が得られた。

専門別研究会

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 今回のオキュラーサーフェス研究会は,「QOL」と,「知っていると役立つ他科疾患」の2つをドライアイ,アレルギー両研究会共通の講演テーマとし,加えてアワード受賞記念講演と,ハーバード大学のDavid A. Sullivan教授を迎えての招待講演が行われた。

連載 今月の話題

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 後房型有水晶体眼内レンズはLASIK(laser in situ keratomileusis)に比較して高い安全性・有効性をもつのみならず,術後視機能に有利であることが知られている。本レンズの症例選択を考えるうえで,年齢は21~45歳,前房深度は2.8mm以上,術前屈折度数-6.0D以上の高度近視が適応となり,LASIKで問題となる角膜厚の制限を受けない。トーリックレンズなどの新たなプラットフォームやデバイスが開発されており,今後さらなる安全性や予測精度の向上が期待される。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・17

ICAM-1 志村 雅彦
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 ICAM-1(intercellular adhesion molecule-1:アイカムと発音されることが多い)は,主に免疫系の細胞間相互作用を司る細胞接着分子の1つである。細胞接着分子とはその名のとおり,同種あるいは異種の細胞間を接着する分子であるが,眼科分野では角膜上皮損傷治癒に臨床応用されているフィブロネクチンのほうがなじみ深いであろう。本稿で述べるICAM-1は,局所の炎症における白血球の組織への浸潤に深くかかわる接着分子であり,眼科領域において着目されるようになったのは,網膜血管における白血球の動態1)や網膜硝子体疾患の病態2)に関与することが判明してきたからである。

連載 つけよう! 神経眼科力・14

OCTの神経眼科への応用 中馬 秀樹
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何といっても大きな視覚効果

 光干渉断層計(optical coherence tomograph:OCT)の神経眼科への応用で思いつくことは,まず,うっ血乳頭の経過観察である。通常は眼科医による検眼鏡的観察や眼底写真での経過観察になる。しかし,主役である患者さんは,眼底写真で説明されてもいまひとつわからないのではないだろうか。ところが,3D-OCTを用いることにより,より視覚的にわかりやすくなる(図1)。眼科医だけでなく,脳外科医,患者さんとも治療効果が共有できる意義は大きい。

連載 『眼科新書』現代語訳

その2 清水 弘一
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『眼科新書』の構成

 『眼科新書』全6巻は,「附録」を含め,どれも同じ大きさの黄表紙の本で,縦253mm,横179mmの大きさである。現在のB5判(257mm×182mm)にほぼ相当する。白い木綿糸で4か所が連続して綴じられている。

 異様なのがページの付け方である。通し番号ではなく,6冊すべてで「目録」(目次)のページ付けのあと,本文が再び一で始まっている。巻之一ではこれがもっと複雑で,序,眼球略説,眼球略図,凡例,総目(総目録),(第一巻の)目録,それに本文と,そのどれものページが一から始まる。これを出版する側からみると,原稿がすべて揃っていなくても,どの部分からでも版木の製作が始められたことになる。

今月の表紙

CRVO+BRAO 竹内 勝子 , 坂本 泰二
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 症例は41歳,男性。2日前からの右眼の視力低下を主訴に来院した。初診時の右眼視力は(0.07)で,前眼部・中間透光体に異常はなかった。右眼底は,網膜中心静脈が拡張・蛇行していた。網膜中心動脈には狭細化と直線化が観察された。黄斑部の下方には,中心窩を含んだ網膜の白濁がみられた。なお,全身的には,検診で高血圧を指摘されていた。

 蛍光眼底造影では,網膜中心動静脈の充盈遅延がみられ,毛様網膜動脈は閉塞し,その還流領域の動静脈に著しい充盈遅延がみられた。網膜中心静脈は蛇行と拡張,充盈遅延がみられ,毛細血管は拡張し,視神経乳頭からの蛍光漏出もあった。網膜中心静脈閉塞症(CRVO)と網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)の併発した症例だが,内科では高血圧以外には異常ないとのことだった。

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 本書は京都大学眼科教授・𠮷村長久氏,前同大学准教授,現兵庫県立尼崎病院眼科部長・喜多美穂里氏編集による網膜硝子体疾患,31症例のケーススタディである。執筆者はすべて,京都大学眼科の教室員および同門会員である。項目は日常よく遭遇する網膜硝子体疾患,眼底・硝子体所見や主訴からなり,典型的な症例を挙げ,主訴,初診時所見,全身および眼科的検査所見,治療と管理という診療経過順に記載されている。合間に囲み記事として,まず症例のポイントの要約や,そこから考えられる鑑別診断,検査結果からの疾患の理解がまとめられている。次いでポイントとして検査結果の読み方,注目すべき点,関連疾患との鑑別の要点などがまとめられ,さらにメモとして確認事項や現在の論点,最新知識が取り上げられている。最後にはこの疾患を勉強するうえでキーとなる文献を,その貢献内容とともに網羅してある。

 本書の特徴は,各症例が初診時から結末まで,担当医の思考過程に沿って経時的によく整理されていることである。まさに紙上の症例検討会であり,眼底所見や画像所見をどのように表現したら良いか,どう読んだら良いか,その結果をどう解釈していくのかという判断の模範が示されている。なにより特筆すべきは,最新の光干渉断層計(OCT)や造影などの画像所見と肉眼的眼底所見が美しい写真とともに経時的によく対比されている点であり,読み進めていくうちにまるで学生時代のCPC(clinico-pathological conference)を受けているような錯覚に陥った。もちろんそれはOCTの進化のおかげであるが,CPCでは最終末の病理組織所見が主体であるのに対し,OCTでは疾患の経時的な,ある意味光学的顕微鏡所見にも匹敵する構造的変化を把握でき,組織標本を超える情報力を提供している。これは網膜硝子体という透光組織で初めて可能なものであり,本書はその特色を最大限に利用して疾患病態を解説した新しいタイプの眼科教科書といえる。

やさしい目で きびしい目で・137

なにも捨てない女 五藤 智子
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 まだ医学部の学生だった頃,私は夏休みを利用していろいろな病院へ見学に行ったものです。その中のある病院の朝礼に参加した時,たまたま挨拶にみえられた理事長が私に声をかけて下さいました。「君は女医になるのか,苦労するぞ。男の3倍は努力しなければならない。がんばりなさい」こう言われました。

 ほどなく研修医となり,すばらしい仲間や上司に出会い,厳しい中にも頼りがいのある先生方や看護師,技師の方々に囲まれ,医師として成長していくことに大きな期待や憧れを持つようになりました。今振り返っても自分の医師としての原点はあの場所,あの時間にあると信じています。でも好きな人ができ,結婚をし,子供を産むことになりました。たいてい仕事場ではやっと信用してもらえるようになった頃,女性は選択を迫られます。仕事を続けるか,家庭に入るか……,今でこそ女性が働きやすい環境作りが声高く叫ばれていますが,当時は,いえ実は今でも女性が子供を育て,家庭を守りながら働き続けることは簡単なことではありません。

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要約 目的:眼科への電子診療録(カルテ)システムの導入以後の状況の報告。対象と方法:電子カルテシステムが2008年3月に佐賀大学医学部附属病院眼科で稼動を開始し,以後1年間の登録症例4,700例を対象とした。稼動開始直後から新患での紙カルテの不要化と,5か月後からの情報量が少ない再診症例での紙カルテのスキャンの2点を特に検索した。結果:稼動開始から6か月後には14.9%,12か月後には40.0%で紙カルテが不要になった。紙カルテの不要化で,患者の診察待機時間は8.8分短縮した。情報量が少ない再診例での紙カルテのスキャンによる運用による紙カルテ不要化の達成には限界があった。結論:眼科への電子カルテの導入による紙カルテ不要化の達成率は,月あたり3.3%であり,紙カルテの完全な不要化には長時間を要すると考えられる。

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要約 目的:網膜と網膜色素上皮に生じた過誤腫4症例の報告。症例:3例は生後17か月未満の乳児,1例は42歳の女性である。主訴は乳児では斜視,成人例では視力低下で,すべて片眼性であった。所見:白色の隆起性病変が,乳児3例では黄斑部,成人例では傍乳頭部にあった。フルオレセイン蛍光造影で腫瘍内に漏出がある血管がみられ,インドシアニングリーン蛍光造影では低蛍光を示した。スペクトラルドメイン光干渉断層計で網膜内層に高反射,網膜外層に腫瘤があった。2例で網膜上膜に対し硝子体手術を行い,所見が改善した。結論:網膜と網膜色素上皮に生じた過誤腫の診断では,インドシアニングリーン蛍光造影とスペクトラルドメイン光干渉断層検査が有用であり,合併した網膜上膜には硝子体手術が有用であった。

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欧文目次

べらどんな なぜ?
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 自然科学ではhow?「どのように」ということは問題にされても,why?「なぜこうなるのか」はほとんど議論されない。医学でも同様である。

 痛風の急性発作は足の母指関節に好発する。ところが内科や整形外科の教科書ではその理由については教えてくれない。それが手元にある大きな英英辞書では鮮やかに説明されている。

べらどんな 放射能
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 「20世紀は放射能の時代」とも言えよう。ノーベル物理学賞が1901年の第1回にはレントゲン,1903年にはキュリー夫妻とベクレルに贈られた事実がこれを端的に示している。

 ベクレル(A. H. Becquerel,1852-1908)は,黒い紙に包んだウランが印画紙を感光させることを1896年に発見した。これが放射能の概念に発展した。

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 パソコンのプリンタには,普通は3色が使われます。もちろんこれに黒が加わり,高級機ではこれ以外の色が入ることもあります。そのどれにも入っているのがマゼンタです。

 マゼンタが具体的にどのような色なのかが気になります。英和辞典でmagentaを引くと「赤紫色」とか「深紅色」とあり,英英辞典ではdeep purplish redです。

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あとがき 坂本 泰二
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 何という3月であったことでしょうか。例年であれば鹿児島の3月は確かな春の訪れを感じ始める1年中で最も楽しい月です。しかし,3月11日に発生した東日本大震災および福島第一原発事故により,環境は一変してしまいました。これを書いている4月現在,東北地方の復興のめどは立たず,福島第一原発の状況も安定していません。2011年3月は,わが国の歴史に残る月になるでしょう。その中で,被災地で診療に携わっておられる医師たち,原子力発電所事故復旧のためにわが身を犠牲にしておられる現場の方たちには頭が下がります。しかし,我々がなすべきことは,軽挙妄動せずに日常の仕事をしっかりと遂行することです。眼科医は,本来の仕事である診療・研究に,今まで以上に真摯に取り組むことが求められています。

 さて,今月の話題は「有水晶体眼内レンズの現状と展望」です。一昨年,銀座眼科で発生したLASIKにおける集団感染は,屈折矯正手術は眼科の一部門に留まらず,すでに社会に大きな影響を及ぼす存在になっていることを知らしめました。眼科医は,屈折矯正治療に関する最新かつ正確な知識を持つことが要求されています。

基本情報

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臨床眼科
65巻5号 (2011年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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