臨床眼科 65巻4号 (2011年4月)

特集 第64回日本臨床眼科学会講演集(2)

原著

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要約 目的:眼窩内下壁から涙囊経由で摘出した眼窩筋円錐内腫瘍の症例の報告。症例:61歳女性が右眼視力低下で紹介され受診した。3年前から右眼窩腫瘍を指摘されていた。所見:矯正視力は右0.4,左1.5であり,眼窩内下方からの視神経圧迫によると思われる視野異常があった。右眼に上転と内転障害があった。磁気共鳴画像検査(MRI)で右眼窩筋円錐内に前後径26mm,左右径22mm,上下径21mmの腫瘤があり,海綿状血管腫が疑われた。腫瘍摘出は,眼窩内下壁経由で涙囊を切断し,摘出後に縫合する方法で行った。術後の視野と眼球運動は改善し,視力は0.5になり,両眼単一視野は50°まで拡大した。流涙はなく,1年後の涙道内視鏡で狭窄や閉塞はなかった。結論:眼窩内の筋円錐内腫瘍を涙囊経由で摘出することで,術野が確保され,導涙機能が維持できた。

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要約 目的:硝子体手術後に生じた角膜上皮障害の報告。対象と方法:過去35か月間に硝子体手術を行った952眼の診療録を検索し,術後の角膜上皮障害に関与する因子を解析した。結果:術中に角膜擦過が生じた170眼を除くと,8.8%の症例に術後の角膜上皮障害が生じた。角膜上皮障害の頻度は糖尿病群で10.9%,非糖尿病群で6.7%であり,両者間に有意差があった(p=0.0432,Fisher検定)。多変量解析の結果,角膜上皮障害の発生には糖尿病の有無と長時間の手術が関係していた。結論:糖尿病の存在と長期間の手術が,硝子体手術後の角膜上皮障害の発症に関係している。

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要約 目的:抜去した涙管チューブの菌検査の結果の報告。対象と方法:下鼻道法による涙囊鼻腔吻合術を行い,ヌンチャク型シリコーンチューブ(NST)を挿入した284例を対象とした。200例ではNSTの盲端を涙点側から抜去し(第1群),45例では盲端を下鼻道経由で抜去(第2群),39例では先端を切断したNSTを下鼻道から抜去した(第3群)。抜去したNSTの擦過物を培養し菌を検索した。結果:各群で40~73%の頻度で菌が検出された。第1群と第3群ではチューブ留置が2か月以上になると有意に増加した。耐性菌は第3群で多く,2か月以上で有意に増加した。結論:NSTの留置期間は2か月以内が望ましく,抜去はチューブの盲端を下鼻道から行うのがよい。

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要約 目的:眼窩底骨折に対する上顎洞バルーン挿入術の合併症の報告。対象と方法:過去2年間に眼窩底骨折に対し,眼窩下縁の皮膚切開による骨折整復と上顎洞バルーン挿入術を受けた149例の診療録を検索した。年齢は15歳以上に限定した。バルーンは生理食塩水で拡張し,約2週間留置したのちに抜去した。結果:バルーンによる合併症は5例(3.3%)に生じた。バルーン抜去前の合併症は,バルーン破裂が2例,高眼圧が2例で,抜去後の合併症として上顎炎が1例に生じた。結論:眼窩底骨折に対する骨折整復と上顎洞バルーン挿入術は,術後早期に異常がなければ視機能に障害がなく,安全で有効である。

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要約 目的:抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の投与前後に網膜血流量をレーザースペックル流量計で測定した報告。対象と方法:網膜静脈分枝閉塞症3眼,加齢黄斑変性3眼,中心性漿液性脈絡網膜症2眼の計8眼を対象とした。男性7例,女性1例で,平均年齢は69歳である。5例にはベバシズマブ1.25mg,3例にはラニビズマブ0.5mを硝子体内に投与し,投与前,投与1週間後と1か月後にレーザースペックル流量計で,病変がない部位の網膜動静脈と組織血流量を測定した。結果:網膜の動脈,静脈,組織血流は,抗VEGF薬の硝子体内投与前後で有意な変化がなかった。結論:抗VEGF薬の硝子体内投与は,正常な眼底の血流量に影響しない可能性がある。

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要約 目的:経口投与によるアスタキサンチンが房水の過酸化物に及ぼす影響の報告。対象と方法:両眼に白内障がある35例を対象とした。第1眼の白内障手術の術中に一次房水を採取し,過酸化物質の総量を測定した。その直後からアスタキサンチン1日量6mgの服用を開始し,2週間後に第2眼の白内障手術を行い,再び過酸化物質の総量を測定した。結果:アスタキサンチン2週間服用後の房水内過酸化物質は有意に低下した(p<0.05)。男性群では低下が有意であり,女性群では有意差がなかった。男性の糖尿病者と女性の非糖尿病者ではアスタキサンチン服用後の房水内過酸化物質の低下は有意であり(p<0.05),男性の非糖尿病者と女性の糖尿病者では有意差がなかった。結論:アスタキサンチンの経口投与により,房水の過酸化物質が低下する可能性がある。

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要約 目的:トラボプロストまたはタフルプロスト点眼による視神経乳頭の循環の変化の報告。対象と方法:25~48歳の健康者14名を対象とした。7名には片眼に0.004%トラボプロスト,7名には0.0015%タフルプロストを1日1回点眼した。他眼は対照とした。乳頭面の動静脈と組織の循環はレーザースペックル法で測定した。結果:2週間の点眼後に,トラボプロストでは乳頭面の動脈と静脈の循環速度は他眼と比較して有意に増加し(p<0.01),乳頭組織の循環には変化がなかった(p>0.05)。タフルプロスト点眼では,網膜動脈の循環速度は有意に増加し(p<0.05),静脈と組織には変化がなかった(p>0.05)。結論:トラボプロストの2週間点眼で,乳頭の動静脈の循環速度が増加し,タフルプロスト点眼で乳頭の動脈部位の循環速度が増加した。

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要約 目的:タフルプロスト点眼による緑内障眼の視神経乳頭血流変化の報告。対象と方法:広義の原発開放隅角緑内障24例を対象とし,無作為割付比較試験を行った。11例にはタフルプロスト,13例にはラタノプロストを点眼し,6か月間の経過を追った。視神経乳頭辺縁部の血流はレーザースペックル法で測定した。結論:両群の平均眼圧は有意に下降し,群間に差はなかった。血圧,脈拍,眼灌流圧には変化がなかった。タフルプロスト点眼群では,乳頭の上方,下方,耳側で血流が有意に増加した。ラタノプロスト点眼群では,乳頭辺縁の各部位で血流が変化しなかった。結論:広義の原発開放隅角緑内障に対するタフルプロスト点眼によって,鼻側以外の乳頭辺縁部で血流が増加した。

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要約 目的:滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対するラニビズマブ硝子体投与併用光線力学療法(PDT)の結果の報告。対象と方法:滲出型AMD 45例45眼を対象とした。男性36眼,女性9眼で,年齢は53~90歳(平均72歳)である。6か月以上の経過を追跡した。結果:ラニビズマブの平均硝子体投与回数は2.56回,PDTの平均回数は1.10回であった。平均logMAR値は治療前0.57,治療後0.34と有意に改善し(p<0.01),平均中心窩網膜厚は治療前428μm,治療後248μmと有意に減少した(p<0.01)。治療6か月後におけるlogMAR値0.3以上の視力変化では改善40.0%,維持57.8%,悪化2.2%であった。結論:AMDに対するラニビズマブ硝子体投与併用光線力学療法は,短期的に視力の改善および滲出性変化の改善に有効である。

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要約 目的:治療歴のないポリープ状脈絡膜血管症(PCV)に対するラニビズマブ硝子体注入(IVR)に光線力学療法(PDT)を併用した症例の6か月間の治療成績の報告。対象と方法:症例は治療歴のないPCV 17例17眼(男性15眼,女性2眼,平均年齢74歳)。投与前視力が0.1を超えた症例を視力良好群,0.1以下の症例を視力不良群とし,ETDRS視力と中心窩網膜厚(CRT)の評価を行った。導入期に月1回のIVRを3回(1回目は1週間後PDT併用)を施行後,維持期に再投与基準に則ってIVRを行った。結果:視力良好群ではCRTの減少に伴い視力の改善が得られたが,視力不良群ではCRTが減少したにもかかわらず視力が悪化する傾向にあった。結論:PCVに対するIVR併用PDTの短期成績は概ね良好であったが,視力不良例に対する本治療法の適応は慎重に検討すべきである。

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要約 目的:網膜色素変性に併発したポリープ状脈絡膜血管症の症例の経過報告。症例:74歳男性が2か月前からの左眼視力低下で受診した。10年前に網膜色素変性と診断されたが視力は良好であった。家族に網膜色素変性はなかった。所見:矯正視力は右1.2,左0.8であり,両眼の周辺部眼底に網膜色素変性の所見があった。左眼の黄斑部に橙赤色の隆起性病変とその周囲に漿液性網膜剝離があった。光干渉断層計と蛍光眼底造影の所見から,ポリープ状脈絡膜血管症と診断した。黄斑部病巣と網膜剝離は徐々に拡大し,4か月後に視力が0.6に,その6か月後に0.1に低下した。結論:網膜色素変性の経過中に視力が低下した場合には,ポリープ状脈絡膜血管症が併発している可能性がある。

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要約 目的:強度近視眼に生じた脈絡膜新生血管が自然退縮した高齢者の報告。症例:61歳男性が2週間前からの右眼変視症で受診した。矯正視力は右0.4,左1.2で,右眼に-9.5Dの近視があった。所見:近視性網脈絡膜萎縮が強く,黄斑部に橙赤色の隆起性病変があった。光干渉断層計と蛍光眼底造影で脈絡膜新生血管と診断した。経過中に黄斑部病変が徐々に退縮し,18か月後には蛍光眼底造影などで脈絡膜新生血管は消失と判断され,視力は0.6に改善した。結論:高齢者の強度近視に併発した脈絡膜新生血管は,無治療で寛解することがある。この可能性は治療方針の決定で考慮される必要がある。

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要約 目的:特発性黄斑部毛細血管拡張症に対するラニビズマブ硝子体内注射の短期治療成績の報告。対象と方法:特発性黄斑部毛細血管拡張症9例9眼を対象とした。男性5例,女性4例で,年齢は54~85歳(平均63歳)である。全例がYannuzzi分類の1型であった。視力はlogMARで評価し,中心窩網膜厚はスペクトラルドメイン光干渉断層計で測定した。3か月までの経過を追った。結果:3か月間に平均1.8回の硝子体内注射を行った。術前の視力は平均0.19±0.11で,1か月後と3か月後には有意に改善した(p<0.01)。中心窩網膜厚は1か月後に有意に改善し(p<0.05),3か月後には有意差がなかった。結論:特発性黄斑部毛細血管拡張症に対するラニビズマブ硝子体内注射は短期的には有効である可能性が示されたが,さらに併用療法の検討も必要である。

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要約 目的:特発性黄斑円孔に対する硝子体手術の成績と,術後のうつ伏せ期間との関連の報告。対象と方法:過去27か月間に2つの医療施設で硝子体手術を行い,3か月以上の経過を追えた特発性黄斑円孔54例55眼を診療録に基づいて検索した。全例で内境界膜剝離を行い,SF6によるタンポナーデを実施した。術後のうつ伏せ期間は31眼が数日間,24眼が数時間であった。結果:術翌日の眼圧,初回閉鎖率,最終閉鎖率は両群間に有意差がなかった。術後合併症として,数時間群の2眼に眼内レンズの虹彩捕獲が生じた。結論:特発性黄斑円孔に対する硝子体手術では,数時間のみの術後うつ伏せ姿勢でも良好な成績が得られる。眼内レンズの虹彩捕獲には留意する必要がある。

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要約 目的:角膜染血症を併発した増殖硝子体網膜症に対して一時的な人工角膜を使用した手術を行い,網膜復位とともに新たな角膜移植をせずに透明化が得られた症例の報告。症例:58歳,男性。左眼の網膜剝離の再手術に対して硝子体手術を施行したところ,駆逐性出血が発生した。その後,角膜染血症を生じたため一時的人工角膜を使用して硝子体手術を施行した。術中,シリコーンオイル充填術も併施し,新鮮角膜の移植は行わずに自己角膜を再縫着した。術後半年経過した頃から角膜の透明性が回復し,角膜移植は行わずにオイル抜去のみ行った。その後も網膜は復位し,角膜の透明性も保たれている。結論:角膜染血症では経過とともに透明性が回復することもあるので,染血症を併発した重篤な眼底疾患に対しては,一時的人工角膜を使用した硝子体手術も治療法の選択肢の1つであると考えられた。

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要約 目的:未熟児網膜症の経過観察中に家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)が発見された一家系の報告。症例:在胎29週6日の双胎児に未熟児網膜症の眼底所見が発見された。第1子は1,352gの女児,第2子は586gの男児であった。両児とも未熟児網膜症国際分類のzone Ⅰ stage 3になり,両眼に光凝固を施行した。家族の検索で,父親とその2人の妹に網膜血管の異常走行と眼底周辺部の無血管野が発見され,FEVRの家系と診断した。結論:遺伝的にFEVRの素因がある児が低体重児として出生し,FEVRと未熟児網膜症の両原因により網膜血管の異常が生じたと解釈される。未熟児網膜症の診断では,FEVRの可能性も念頭におくべきである。

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要約 背景:抗アクアポリン4抗体陽性の視神経炎は,特発性視神経炎よりも予後が不良とされている。症例:抗アクアポリン4抗体陽性の視神経脊髄炎9例12眼を診療録の記録から解析した。男性2例,女性7例で,3例が両眼性,6例が片眼性であった。初発時の年齢は46~81歳(平均59歳)である。傍中心暗点,耳側半盲,水平半盲などがあった。平均6.5回の再発があり,最終視力は8眼が0.1以下,うち3眼が光覚なしであった。全例にステロイドパルス療法を行い,6例に免疫グロブリンの大量静注,4例に血漿交換,2例に免疫抑制薬投与を行った。結論:抗アクアポリン4抗体陽性の視神経炎は女性に多く,高齢での発症,両眼の罹患,視力転帰が不良な症例が多かった。

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要約 目的:術前予想より深部に存在した色鉛筆による眼窩内異物の手術経験の報告。症例:2歳男児が金色の色鉛筆で受傷した。術前のコンピュータ断層撮影では眼窩内の内直筋近傍に異物像を認めた。全身麻酔下で経結膜切開にて手術を行った。目視で確認できないため,術中透視を行うと術前予想より深部にあり眼窩隔膜を破り眼窩脂肪織内に入り込んでいた。異物は水分を含み脆弱化,細分化しており摘出時,脂肪織と一緒にさらに深部に移動したが透視下ですべて摘出した。眼瞼腫脹と結膜浮腫が長期強度にみられた。結論:異物が眼窩脂肪織に入り込むと,術中透視によって位置を把握しないと術前の予想より深部に存在する場合があるので注意が必要である。

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要約 目的:前頭洞または前篩骨洞囊胞で視力が低下し,手術で寛解した2症例の報告。症例:症例は56歳と63歳女性で,主訴は1例では1か月前からの眼瞼腫脹と眼球偏位,他の1例では1週間前からの眼瞼腫脹と眼瞼突出であった。いずれも片側性で,患眼の矯正視力はそれぞれ0.4と0.5であった。両症例とも黄斑部に及ぶ網脈絡膜皺襞があった。頭部CTで1例には前頭洞囊胞,他の1例には前篩骨洞囊胞があり,手術が行われた。術後視力はそれぞれ1.2と0.6で,第2例には眼底に鮮明な皺襞痕が残った。結論:前頭洞または前篩骨洞囊胞による圧迫で網脈絡膜皺襞が強い場合には,皺襞が残存し視力の改善が不完全なことがあり,早期診断と早期手術が望ましい。

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要約 目的:進行した網膜色素変性患者に赤いリンゴの写真を呈示し,色相の再現を試みた。対象と方法:対象は網膜色素変性を伴う3例である。年齢は40~57歳,矯正視力はそれぞれ指数弁と0.03,両眼とも手動弁,0.03と0.1である。5個のリンゴが茶色のかごに入っている写真を呈示し,10段階のトーン記号,12種の色相記号,6段階の明暗を組み合わせた色彩での表現を試みた。結果:正常者は両眼による観察で,3個を赤色(R3vv)(60%),2個を橙色(R3lt, Olvv)(40%)と判断した。患者は両眼もしくは左右眼それぞれの観察で,5個のリンゴを紫,緑,黄色,肌色,褐色と判断し,ごく稀に赤と認識した。結論:黄斑に変性がある網膜色素変性では,長波長のL錐体,中波長のM錐体,短波長のS錐体が障害され,無彩色で観察している可能性がある。

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一般口演

 一般口演は4題,眼内レンズ素材から視覚再生におけるまで広範囲な内容であった。

 第一演題は眼内レンズ表面の血液成分の付着に関し東邦大学の小早川信一郎先生が発表した。近年増殖糖尿病網膜症患者に硝子体手術と眼内レンズ挿入は同時に行われることが多くなり,術後に眼内レンズ表面に,細胞や蛋白が付着することに着目し,動物眼を用い基礎実験を行った。家兎の皮下に疎水性および親水性アクリル眼内レンズを1.3か月埋殖した実験結果を報告した。結果は親水性アクリルに細胞や蛋白付着が多くみられたとのことであり,まさにハイドロビューIOLの混濁に一致した結果となった。

日本視野研究会 鈴村 弘隆
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Ⅰ.一般講演  座長:白柏基宏(新潟大学)

 1.HEP(Heidelberg Edge Perimeter)の使用経験  江浦真理子(近畿大学)・他

 Flicker defined formを利用しM細胞系の異常を選択的に捉え,早期緑内障視野異常の検出を目的とした視野計HEPの有用性を検討した。正常20眼,緑内障32眼にHFA C24-2(SITA-Standard,SITA-SWAP),Octopus 311 flicker,Humphrey Matrix 24-2,HEP 24-2(ASTA-Standard)を用い視野測定を行った。早期例におけるHEPの感度は83%,特異度は65%であった。一方,SITA-Standard,SITA-SWAP,flicker,Humphrey Matrixの特異度はそれぞれ90%,85%,90%,90%であった。HEPのトータル偏差は正常でもびまん性沈下が出やすいので,パターン偏差での判定が有用だった。測定時間は5つのなかでHEPが最も長かった。HEPは,検査の難易度がやや高く,特異度は低いものの早期の緑内障視野障害を検出できる検査法の1つであることを示した。

連載 今月の話題

前眼部OCTでわかること 前田 直之
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 前眼部光干渉断層計は,有水晶体眼内レンズ,角膜移植,エキシマレーザー治療的角膜切除術の適応,術式選択や術後評価,LASIKでのフラップ厚測定,緑内障の隅角評価,線維柱帯切除術後の濾過胞の評価,角膜上皮と実質の詳細な観察,および従来の角膜形状解析装置で測定不可能であった高度の角膜形状異常の評価などに有用である。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・16

MMP 大黒 浩
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 コラーゲン,プロテオグリカン,フィブロネクチンなど細胞外マトリックスは組織中で種々の細胞間を埋める重要な構造物で,細胞間のバリア,シグナル伝達,組織リモデリングなど非常に重要な生理作用をもつ一方,これらの代謝バランスが崩れることにより多彩な病態を示す。この代謝バランスに関係するのがマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase:MMP)である。

連載 つけよう! 神経眼科力・13

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固視とはどのようなメカニズムで成り立っているのか?

 固視とは,静止した指標を中心窩に保持することであり,それには眼球運動系が関わってくる。基本的な眼球運動系は,衝動性眼球運動(以下,サッケード),滑動性眼球運動(以下,パスート),前庭動眼反射,視運動性眼振,輻湊運動であり,それぞれ視覚への入力の違いでどの系が働くのかが決められている。サッケードは周辺の網膜に現れた指標を中心窩で捉える際に働き,パスートは動いている指標を追視する際に働く。また,静止している指標を固視しつづける運動には前庭動眼反射と視運動性眼振が働いている。

連載 『眼科新書』現代語訳【新連載】

その1 清水 弘一
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 日本の眼科には今でも大きな影響を与えている『眼科新書』1)の現代語訳を次号から連載することにした。ここではその理由と『眼科新書』をめぐる諸事情,それに現代語訳の方針などを説明する。

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 48歳,男性。8年前に左眼を打撲したが放置していた。最近,眼科を受診し,左眼の水晶体脱臼を指摘され当院を紹介された。初診時,左眼視力は(0.5×-3.50D()cyl-2.50D 90°),左眼の角膜,前房,隅角には異常なく,虹彩に外傷性散瞳を認め,瞳孔運動は不全であった。一部の毛様体小帯が断裂して水晶体は鼻下側へ偏位し,白内障もみられた。以上の所見から外傷性毛様体小帯断裂による水晶体偏位と診断,水晶体囊外摘出術と眼内レンズ縫着術を行い,最終視力(1.0)を得た。

 撮影は,ライト製作所RS-1000を用い,倍率16倍,スリット幅10mm,スリット長14mmで,鼻側45°より入射させた。カメラはNikon D200を使用し1/200秒,ISO400で撮影,水晶体偏位により牽引され伸長した毛様体小帯が断裂している部分を狙った。水晶体囊が変形している様子や毛様体小帯に絡み付く色素沈着も併せて収めるように構図を工夫した。

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 『眼科ケーススタディ 網膜硝子体』が,𠮷村長久先生と喜多美穂里先生を編者に医学書院から発刊された。板塀を思わせるチョコレート色の瀟洒な表紙の本書,京都大学医学部眼科学講座が精魂を込めて完成させた網膜硝子体疾患のガイドブックであるが,一見して,その構成に多くの創意と工夫が凝らされていることがわかる。基本線として,患者背景や主訴あるいは眼底所見をベースにした31に及ぶ症例バリエーションが呈示され,それぞれにOCTを中心とする詳細な病態解説が続く。次の【Point】では,類似症例をリストアップし,鑑別診断のコツが要約されているほか,随所に散りばめられた【Memo】では,その項目に関連した豆知識を学ぶこともできる。眼底写真をはじめとする多数の図表,そして程よい量のテキストの中,フリーな気分で網膜硝子体疾患を学ぶことができる設計になっているのである。

 「序」において編者らも述べているように,光干渉断層計(OCT)の出現は網膜硝子体疾患の臨床に革命的な変化をもたらしたと言える。眼底所見や蛍光眼底造影所見といった平面的な情報を基に感覚的に網膜硝子体疾患を考える時代から,個々の眼底所見を病理解剖学的な側面から確認しつつ,生じている病態をより深いレベルで考察しうる時代に入ったからである。本書編集のリーダーシップを取られている𠮷村先生はわが国を代表するclinician scientistであり,基礎研究者としても,また臨床家としても卓越した識見の持ち主であるが,この書に彼の理想とする網膜硝子体の臨床のあり方が具現化されているに違いない。京都大学眼科といえば網膜硝子体が看板であるが,これほどの長きにわたってその伝統が続いている教室は全国でも他に類を見ない。本書の行間にその歴史が生み出す凛としたオーラを感じるのは評者だけであろうか。

やさしい目で きびしい目で・136

知ることの楽しさ 前嶋 京子
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 研修医生活を終え臨床に明け暮れる生活のなか,基礎の研究室で血管新生の研究をしてくれる人を探しているとの話があり,何となく基礎研究の門をたたいてみました。臨床の場では,医者として治療の楽しさを実感し,若気ながら少々得意げになりはじめた頃,昔習った化学の基礎知識すら思い出せない状態で,モルの計算,実験試薬を作ることから,さまざまな実験手技を習得するまで,日々黙々と勉強する毎日でした。結果を客観的に評価しそれを検証する地道な作業は,努力と忍耐も必要ですが,ここは山場と自分を制しながら,PubMedで論文検索をしながらモチベーションを上げる,眼科医から今度はにわか科学者になったような生活でした。

 そんな少々ストイックな大学院生活でしたが,実験結果を早く知りたいという好奇心や,結果をみるときのドキドキ感は,ほかでは味わえないものです。結果に一喜一憂し,ラボの仲間と実験秘話(?)に花を咲かせながら飲み会をするのも非常に大きな楽しみでした。大学院に進み,未知の事を知るという楽しさと責任感の合わさったような感覚を感じ取れたのが自分には大きな宝であったように思われます。

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要約 目的:脊髄小脳失調症6型に対するアセタゾラミドの長期投与後に発症した重症再生不良性貧血の1症例の報告。症例:71歳女性が2時間前に突発した飛蚊症で受診した。15年前に常染色体優性遺伝の脊髄小脳失調症6型と診断され,10年前からアセタゾラミドを内服していた。9年前に両眼に白内障手術を受け,右0.9,左1.0の視力を得た。所見:矯正視力は右0.4,左0.5で,眼振があり,両眼の乳頭周囲に出血と軟性白斑があった。内科での検査で汎血球減少があり,骨髄所見から重症再生不良性貧血と診断された。8か月後に網膜出血が増加し,視力は右0.05,左0.02になった。初診から11か月後に肺炎で死亡した。結論:本症例は,眼所見を契機として重症再生不良性貧血が発見された。原因としてアセタゾラミドの長期内服が関与していた可能性がある。

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要約 背景:腹臥位での脊椎手術では,稀ではあるが重篤な視機能障害が続発する。目的:腹臥位での脊椎手術後に片眼が失明した症例の報告。症例:49歳男性が頸椎椎間板ヘルニアに対し腹臥位で全身麻酔下で手術を受けた。術中は頭部を馬蹄形の枕に固定し,輸血は行われず,手術は3時間かかった。手術の3時間後に右眼が見えないことを自覚し,緊急受診した。所見:矯正視力は右光覚なし,左1.2であり,右眼に対光反射がなく,眼球運動が全方向に制限され,眼瞼下垂と球結膜の充血があった。右眼底に桜実紅斑があった。磁気共鳴画像検査(MRI)で右眼の外眼筋腫大があった。右眼は前方に変位し,視神経と眼球後壁との角度が90°であった。眼窩内に出血などはなかった。網膜中心動脈閉塞症を伴う虚血性眼窩コンパートメント症候群(ischemic orbital compartment syndrome)と診断した。3か月後に眼球運動が回復したが,視力は光覚なしであった。結論:眼窩内圧の急激な上昇による眼窩内の循環不全が本症候群の原因と推定される。

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欧文目次

べらどんな モノモライ
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 同じものの名前が地域によって違うことがある。「方言」ともいうが,古い日本語の姿を反映していることが多く,尊重される価値がある。

 昭和53年に国立国語研究所が『日本言語地図』を刊行した。日本中2,400の地点で,「これは何と言いますか」と古老に質問し,その結果を300枚の地図にまとめたものである。

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 お酒を飲んで度をすごすと複視になる人がいます。こういう人は,ものが二重に見えだした時点が「切り上げ時」と判断できます。なぜ飲酒でこうなるのかを調べてみました。

 どうせ文献にあたるのなら,飲酒一般の用語がどうなっているのかを知りたくなります。まず必要なのが「お酒一般」の名称です。

べらどんな 疾患の好発年齢
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 ニューヨークに留学しているにF先生から電話があり,「いままでに診た原田病の最低年齢は」と質問された。

 これはよく覚えている。ある有名人の妹で,もう40年も前のことである。確か16歳で,片眼の後極部だけに発症し,中心性漿液性脈絡網膜症,いわゆる中心性網膜炎にそっくりだった。

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あとがき 中澤 満
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 『臨床眼科』4月号をお送りいたします。新年度が始まり,慌ただしくも新しい職場で勤務されておられる方,新しいスタッフを迎えられて新鮮な気分でお仕事を継続されている方も多いことと思います。

 今月は第64回日本臨床眼科学会の講演原著の第2弾であり,いよいよ本格的な掲載が始まりました。なかなか興味深い報告が多く,勉強になります。抗VEGF抗体薬や抗緑内障点眼薬による眼底血流への影響が,近年大幅に改良されたレーザースペックル法によって評価されるようになりました。本検査法の位置づけが今後どのように変遷してゆくかはまだ不明ですが,本号に掲載された報告などによる新しい知見の集積が今後さらに増えることが期待されます。また,最近は酸化ストレスと疾患や老化現象との関係が注目されるようになってきました。本号ではアスタキサンチン経口服用で前房中の過酸化物質が有意に低下したとする橋本浩隆氏の研究報告があり,注目に値するものと思います。実際にヒトを対象にアスタキサンチンを2週間服用してもらい,白内障手術時に前房水を採取して計測した研究で,新しい知見であると思います。さらに注目に値するものとして,田邉美香氏らによる眼窩筋円錐内腫瘍の経涙囊アプローチによる摘出術の症例報告があります。筋円錐内腫瘍というと摘出術を施行するのは少しばかり躊躇することが多いのですが,本症例報告は今後の新しい手術の選択肢を提供するものとして評価されるのではないでしょうか。

基本情報

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臨床眼科
65巻4号 (2011年4月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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