やさしい目で きびしい目で・137
なにも捨てない女
五藤 智子
1,2
1鷹の子病院
2愛媛大学
pp.737
発行日 2011年5月15日
Published Date 2011/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103666
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まだ医学部の学生だった頃,私は夏休みを利用していろいろな病院へ見学に行ったものです。その中のある病院の朝礼に参加した時,たまたま挨拶にみえられた理事長が私に声をかけて下さいました。「君は女医になるのか,苦労するぞ。男の3倍は努力しなければならない。がんばりなさい」こう言われました。
ほどなく研修医となり,すばらしい仲間や上司に出会い,厳しい中にも頼りがいのある先生方や看護師,技師の方々に囲まれ,医師として成長していくことに大きな期待や憧れを持つようになりました。今振り返っても自分の医師としての原点はあの場所,あの時間にあると信じています。でも好きな人ができ,結婚をし,子供を産むことになりました。たいてい仕事場ではやっと信用してもらえるようになった頃,女性は選択を迫られます。仕事を続けるか,家庭に入るか……,今でこそ女性が働きやすい環境作りが声高く叫ばれていますが,当時は,いえ実は今でも女性が子供を育て,家庭を守りながら働き続けることは簡単なことではありません。
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