medicina 52巻1号 (2015年1月)

特集 循環器薬up to date 2015

木原 康樹
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 循環器疾患で通院加療を行っている患者は本邦において3,000万人とも言われ,高齢化の進行に伴い今後さらに増加することが予測される.それら患者の大多数が実地医家の下で慢性管理されており,それぞれの循環器疾患の背景には複数の危険因子が潜んでいるのが実情である.高血圧治療ガイドラインJSH2014(日本高血圧学会)では,単剤少量でコントロール不良の患者に対してはエビデンスに基づき単剤の増量よりも多剤少量併用への移行を勧めている.高血圧のみならず脂質異常症や糖尿病あるいは虚血性心疾患や心房細動などの合併例も稀ではなく,関係諸学会のガイドラインに準じるとそれら危険因子の管理にさえ多種多様の薬剤が必要である.すなわち個々の患者において,想像を絶する投薬重積状態が常態化している.

 そのようななかにあって,これまでにない作用点を有するいくつかの循環器薬が新たに市販され,従来の薬物との使い分けや適応の相違などについても少なからず混乱が生じている.NOAC[新規(あるいは非ビタミンK阻害性)経口抗凝固薬]と呼ばれる薬剤の比較的低リスク(脳卒中予備軍)患者への適応拡大やワルファリンとの相克などがその事例に当たる.このような時代においては,各薬剤の特性や相互作用,あるいは限界を包括的に学習・認識し,副作用を回避するとともに,各自の処方が薬剤本来の効能を発揮できる環境を維持していることを担保することが肝心であると思われる.大半は長期慢性治療が前提であるから,患者の服薬アドヒーランスへの目配りも必須である.

特集の理解を深めるための29題

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木原 本座談会を始めるにあたり,循環器疾患の薬物治療における現状を,私からオーバービューをさせていただきます.

 高血圧を例にとると,昨今製薬メーカーと専門家との適切でない関係が指摘され,臨床試験データの信頼性そのものが揺らいでいます.また,エビデンスに基づいたガイドラインが作成されてはいますが,国内外の学会ごとに血圧の管理基準は一致しておらず,基準の差異については十分な説明がなされていません.

急性期治療

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ポイント

●心電図調律によって適応となる薬剤が異なる.

●目標血圧は平均血圧で蘇生後80mmHg,心原性ショック65mmHgを目安にする.

●不整脈の誘発に注意して昇圧薬を選択する.

急性心不全 猪又 孝元
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ポイント

●急性心不全では,患者救命と苦痛改善を最優先する.すなわち,呼吸を管理し,血行動態を改善させる.

●受診時の収縮期血圧を用いたClinical Scenario(100および140mmHgを境目とする)をもとに急性心不全の初期対応を決める.

●うっ血に対しては血管拡張薬と利尿薬を,末梢循環不全ではカテコラミン薬の静脈内投与を行う.

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ポイント

●急性冠症候群はプラーク破綻と冠動脈内の血栓形成という共通の基盤を有する病態であり,薬物治療においては抗血栓薬が重要である.

●ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)ではprimary PCIが第一選択であるが,状況により薬物による血栓溶解療法を考慮する.

●非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)では,リスクの層別化により早期侵襲的治療戦略と早期保存的治療戦略を選択する.

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ポイント

●抗凝固療法が基本的治療法であり,疑った段階で開始する.

●初期治療は未分画へパリンやフォンダパリヌクスといった即効性を有する抗凝固薬で開始し,慢性期にかけてワルファリンやエドキサバンに切り替える.

●血栓を生じた危険因子に応じて抗凝固療法の継続期間を決定する.

●重症例にはより迅速な血栓溶解を期待して血栓溶解療法を行う.

慢性期治療─日常遭遇する疾患

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ポイント

●慢性虚血性心疾患に対する薬物治療は,心筋虚血への直接的な治療と,長期予後改善を見据えた二次予防の二本立てで行われる.

●近年の研究によれば,心機能が保持されている慢性虚血性心疾患に対するβ遮断薬の投与は長期予後の改善効果がないことが示唆されている.

●慢性虚血性心疾患に対する薬物治療は,危険因子のすべてに強力に介入するため多剤併用となりやすく,副作用や有効性を慎重に考慮して選択すべきである.

高血圧 大蔵 隆文 , 檜垣 實男
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ポイント

●降圧療法の基本は,薬物の種類よりも厳格な降圧によって,心血管病に発症・再発を予防することである.

●降圧目標値は,糖尿病もしくは蛋白尿が陽性のCKDを合併した高血圧患者では,低めに設定されている.

●合併症のない高血圧患者に対して,最初に投与すべき降圧薬(第一選択薬)は,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,サイアザイド系利尿薬のなかから選択する.

●合併症を有する高血圧患者では,合併症によって積極的に推奨される降圧薬がある.

●2剤の併用としてRAS阻害薬+Ca拮抗薬,RAS阻害薬+サイアザイド系利尿薬,Ca拮抗薬+サイアザイド系利尿薬が推奨される.

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ポイント

●心室レートの上昇が持続した場合は,心機能が低下することがある(頻拍誘発性心筋症).

●心房頻拍に対するアブレーション治療は,頻拍誘発性心筋症や限局した頻拍ではClassⅠの適応がある.

●心房粗動は心房細動と同様に,塞栓症の原因となるため抗凝固療法を検討する.

●通常型の心房粗動は,アブレーションがきわめて有効である.

心房細動 鈴木 信也 , 山下 武志
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ポイント

●心房細動において臨床的に問題となるのは,頻拍による動悸や心不全と,左心耳内血栓による脳梗塞や全身性塞栓症である.

●CHADS2スコア2点以上は血栓塞栓症高リスクであり,抗凝固療法を開始することが推奨されている.

●心不全を有さない心房細動患者の心拍数調節には,ベラパミルまたはビソプロロールを用いることが多いが,ビソプロロールは心不全症例にも用いることができる.

●1〜2剤の抗不整脈薬で洞調律維持が不十分の場合は,カテーテルアブレーションを考慮する.

心室性不整脈 吉田 幸彦
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ポイント

●基礎心疾患がない症例における心室期外収縮(PVC),非持続性心室頻拍(非持続性VT)は,自覚症状がなければ薬物投与を行う必要はない.

●基礎心疾患に伴うPVCを抗不整脈薬で治療して予後が改善したというエビデンスはない.

●基礎心疾患を有する症例の心室性不整脈では,抗不整脈薬よりもβ遮断薬,ACE阻害薬,ARBによる原疾患治療を優先する.

●アミオダロンの通常用量を長期に使用すれば,しばしば副作用が出現する.

拡張型心筋症 絹川 弘一郎
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ポイント

●拡張型心筋症は,左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とする疾患群である.

●拡張型心筋症の治療は,収縮不全による慢性心不全の治療指針に則って行う.

●拡張型心筋症の薬物治療は,無症状の時からACE阻害薬とβ遮断薬の併用が基本である.

●症状を有する拡張型心筋症の薬物治療には,上記2剤に加えてアルドステロン拮抗薬を併用する.

下肢末梢動脈疾患 曽我 芳光
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ポイント

●下肢の動脈硬化疾患である閉塞性動脈硬化症(ASO)は近年,末梢動脈疾患(PAD)と呼ばれるようになっている.

●PADの定義はAnkle-Brachial Index(ABI)0.9以下である.

●PADのキードラッグは抗血小板薬とシロスタゾールである.

●跛行距離の延長が期待できる薬剤はシロスタゾールとカルニチンである.

慢性期治療─しばしば遭遇する疾患

PCI・CABGと抗血小板療法 中川 義久
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ポイント

●冠動脈インターベンション(PCI)ではステント,なかでも薬剤溶出性ステント(DES)を用いることが通常である.

●ステント血栓症の予防のために,アスピリンとADP受容体P2Y12拮抗薬の2剤による抗血小板療法(DAPT)が行われる.

●第2世代のDESが普及してからステント血栓症は減少しており,DAPTの期間は短縮する傾向にある.

●新規の抗血小板薬の開発が進行しており,その成績が期待されている.

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ポイント

●冠攣縮発作の予防には,まず長時間作用型のCa拮抗薬を投与する.それでコントロールできなければCa拮抗薬の増量や併用,硝酸薬やニコランジルの併用を考慮する.

●発作予防薬の内服時間は,冠攣縮の起こりやすい時間に血中濃度が高くなるように調整する(例:起床時,眠前内服).

●冠攣縮の発作時には,硝酸薬の舌下ないしはスプレーの投与を行う.

●β遮断薬は冠攣縮を悪化させる恐れがあるため,高度な器質的冠動脈狭窄を伴う場合でもβ遮断薬は単独では用いず,必ずCa拮抗薬を併用する.

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 拡張期心不全が“左室収縮能の維持された慢性心不全”(heart failure with preserved ejection fraction:HFpEF)と称されるようになって久しい.驚くべきことに,その予後に関しては左室収縮不全を伴う心不全患者とほぼ同等であり1),「左室収縮不全=心不全」という考え方に楔を打ち込んだ.しかもいまだ効果的な薬物治療は不明であり,それどころかこれまで絶大な威力を誇ってきたrenin-angiotensin aldosterone system(RAAS)阻害薬やβ遮断薬がほとんど効果をもたないことも判明しつつある.本稿では,HFpEFに対する薬物治療の現状について概説する.

弁膜症 大倉 宏之
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ポイント

●大動脈弁狭窄症では,血管拡張薬により末梢血管抵抗を低下させることが圧負荷の軽減に有効な場合がある.

●高血圧を合併する大動脈弁逆流症には,ニフェジピンやACE阻害薬が推奨されている.

●器質性僧帽弁逆流には有効な薬剤はないが,機能性僧帽弁逆流では利尿薬や血管拡張薬,β遮断薬により逆流量を減少させる.

●心房細動を合併した僧帽弁狭窄症の基本治療は,血栓予防と心拍数コントロールである.

●三尖弁逆流に伴う右心不全には利尿薬を用いる.

肥大型心筋症 南 雄一郎 , 志賀 剛
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ポイント

●肥大型心筋症は,多彩な病態および臨床経過を呈する疾患であるため,数多くの循環器用薬が経過中に使用される.

●主な薬物療法の介入点は,自覚症状の改善と合併する不整脈の管理である.

●β遮断薬が肥大型心筋症の各種病態において,薬物療法の主流であり第一選択薬である.

肺高血圧症 福井 重文 , 中西 宣文
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ポイント

●まず投薬の前に肺動脈性肺高血圧症(PAH)の確定診断と病型分類,重症度評価が重要である.

●診断後早期に肺高血圧症診療の経験豊富な専門施設への紹介が望ましい.

●カルシウムチャネル拮抗薬(CCB)は,急性肺血管反応性試験陰性例では漫然と継続しない.

●PAH特異的治療薬は,個々の副作用や薬剤間の相互作用に十分注意する.

併存症と循環器薬

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ポイント

●脂質異常症を治療する意義は,動脈硬化性疾患の予防にある.

●基本は食生活の是正・身体活動増加による適正体重の維持である.

●動脈硬化性疾患予防が確立されている脂質異常治療薬は,スタチンとEPAである.

●動脈硬化性疾患予防には,脂質異常症を含めた包括的リスク管理が必須である.

メタボリック症候群 安田 知行
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ポイント

●インスリン抵抗性を基礎にするメタボリック症候群患者は日本人にも多い.

●メタボリック症候群は,2型糖尿病,心血管病のハイリスクであり,治療介入が必要である.

●メタボリック症候群治療の2本柱は,生活習慣改善と薬物治療である.

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ポイント

●糖尿病における治療目標は,適正な血糖コントロールを行い,合併症の発症・進展を予防することである.心血管疾患に代表される大血管障害に対する発症・進展予防が生命予後の観点において重要であるが,現状では最適な血糖管理の方法は確立されているとは言えない.

●近年のACCORD,ADVANCEなどの大規模臨床試験において,血糖管理方法と心血管イベント予防との関連が示されている.

●なかでも持続血糖測定器(CGM)などのデータから得られた血糖変動性と心血管障害との関連が注目されている.

●早期からの治療,年齢や心血管疾患合併を考慮し個別化した治療,食後高血糖およびインスリン抵抗性に対する治療,低血糖を避ける治療,および併存リスクに対する包括的治療が薬物治療のうえで重要であると考えられる.

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ポイント

●出血性合併症予防のため,抗血栓療法においては適切な降圧管理が必要である.

●抗血栓薬の併用は出血リスクを増加させるため,適応は慎重に検討すべきである.

●頸動脈狭窄合併例では灌流低下による脳虚血を防ぐため,緩徐な降圧を行うべきである.

慢性腎臓病(CKD) 安斉 俊久
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ポイント

●CKDにおいてはレニン・アンジオテンシン系(RAS)の賦活化が病態を悪化させる.

●RAS,交感神経系,炎症,酸化ストレスによる悪循環が心腎連関の病態を形成する.

●推定糸球体濾過量(eGFR)の低下と蛋白尿・アルブミン尿の増加は独立して心血管疾患(CVD)発症と関連する.

●RAS阻害薬は,特に蛋白尿を認める症例に対して腎保護作用をもたらすと同時に心血管イベントを軽減する.

●RAS阻害薬は,両側性腎動脈狭窄,妊婦,授乳婦には禁忌である.腎障害高度例,高齢者では少量より投与する.

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ポイント

●高齢者に対する降圧薬の第一選択薬は,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,少量の利尿薬である.初期量は常用量の1/2量から開始し,緩徐なスピードで降圧する.

●高齢者の体液過剰な浮腫に利尿薬は有効であるが,合併症も多いため安易な使用を避け,まずは減塩や適正な服薬指導を行う.

●高齢者では,抗血栓薬(抗血小板薬,抗凝固薬)服用中の頭蓋内出血のリスクが高いため,血圧管理・腎機能に注意し,可能な限り多剤併用を避ける.

●高齢者ではジギタリス製剤,抗不整脈薬の副作用により致死的不整脈や心不全が出現することがあるため,漫然と投与することは避ける.

循環器領域における主要薬剤の使い分け

ACE阻害薬とARB 浦田 秀則
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ポイント

●循環器疾患では,十分な降圧と脳心血管疾患合併率減少のために降圧薬を使用する.

●ACE阻害薬とARBは各種臨床試験でほぼ同等の降圧効果をもつことが証明されている.アドヒアランスはARBが優れているが,心疾患でのエビデンスはACE阻害薬のほうが優れている.

●CKDで糖尿病や蛋白尿を合併する場合はRAS阻害薬が第一選択薬であり,ACE阻害薬とARBは同等に有効である.

●RAS阻害薬で降圧が不十分な症例では長期作用型CCBや利尿薬を併用することで,RAS阻害薬の効能が強化される.

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ポイント

●ワルファリンは凝固カスケードの出発点となる第Ⅶ因子の合成を阻害するが,NOACはその合成および活性を阻害しない.

●ワルファリンの効果は食事やほかの薬剤の影響を受けて大幅に変動する可能性があるが,NOACの効果は食事やほかの薬剤の影響をほとんど受けない.

●NOACはワルファリンと比べて脳梗塞発生率を変化させず頭蓋内出血を半減させる.消化管出血は約20%増加したが,総死亡を約10%減少させる.

●NOACは相互作用が少なく治療域が広いため,定期的なモニタリングは必要ないとされるが,ごく一部で血中濃度が過剰となるため初期反応を凝固マーカーで確認しておくとよい.

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ポイント

●サイアザイド系利尿薬は,遠位尿細管におけるNa再吸収を阻害する.また,RA系阻害薬との相性がよい.

●ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は降圧,利尿に加え,臓器保護作用をもつ.副作用として高K血症に注意が必要である.

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ポイント

●神経体液性因子の過剰な活性化と体液量の過剰は,心不全における重要な病態生理であり,その是正は重要な治療ターゲットである.

●近年,臨床使用可能になったバゾプレッシン(V2)受容体拮抗薬は,心不全における体液量過剰の是正に主として用いられてきたループ利尿薬(Na利尿薬)とは全く機序が異なり,Na排泄に影響せず水利尿薬と呼ばれる.

●ループ利尿薬では,低Na,K血症などの電解質異常,腎機能低下,利尿薬抵抗性などの問題が生じうるが,バゾプレッシン受容体拮抗薬ではそれらが生じにくいという利点をもつ.

●ともに短期的に体液量の過剰に伴う病態・症状の是正を行うが,長期的な生命予後に及ぼす影響に関しては不明である.

●ループ利尿薬とバゾプレッシン受容体拮抗薬の上手な併用が今後の心不全治療のカギの一つと考えられる.

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ポイント

●血小板活性のメカニズムと,アスピリンを中心とした抗血小板薬の作用機序,特性を十分理解したうえで薬剤を使用する.

●新規チエノピリジン系抗血小板薬であるプラスグレルは効果発現が早く作用も強いが,今後,出血性イベントの頻度などのデータに関する検証が必要である.

連載 異常所見を探せ! 救急CT読影講座・1【新連載】

単純CTを無下にしない! 石田 尚利
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70代の女性.当日11時より心窩部痛を自覚.徐々に前胸部から咽頭付近に痛みが広がってきたため,20時に救急外来を受診.既往歴は20年来の高血圧症.心電図・血液検査にて,心筋梗塞は否定的.大動脈解離の除外目的で,胸部CT検査を施行した.

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精巣腫瘍の既往はあるが,寛解状態にある46歳の男性.3日前に左腰痛と左下肢のしびれを自覚し,近医整形外科を受診しジクロフェナクを処方された.2日前には右肩痛,右上肢痛も出現し,38℃台の発熱あり.その後,腰痛,関節痛,筋肉痛,しびれが全身に広がっており,発熱も持続するため,当院へ救急搬送された.

連載 総合診療のプラクティス 患者の声に耳を傾ける・6

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 一過性に認めた血液検査異常やバイタルサインの異常,紹介者が重要と認識していない情報,軽微な症状などは紹介状に記載されず,転院時にも申し送りされないことが時にあります.しかし,診療上で疑問に感じたこと,診断・治療などの診療方針に必要と考えられる情報は,遠慮せず,また手間を惜しまず,紹介元へ積極的に問い合わせましょう.一方,問い合わせを受けた側も不快に思わず,内容を包み隠さず情報提供しなければいけません.

連載 Step up腹痛診察・17

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[現病歴]来院直前に右下腹部から鼠径部に引っ張られるような痛み[Numeric Rating Scale(NRS)で2〜3/10]と,同部位の腫脹を自覚した.幼小時にも同様の症状を認めたことがあるため,心配になり独歩で内科受診となった.1カ月前にも右脚付け根に3cm程度の膨らみを認めたが特に痛みはなく,すぐに自然消失していた.右下腹部〜鼠径部の痛みは30分くらい持続し,来院時には消失していた.食事による腹痛の増悪はなく,嘔気,嘔吐,食欲低下,体重減少,下痢や便秘などの便通異常はなかった.腹痛は排便との関連もなく,排尿時痛,頻尿もなかった.

病歴聴取の際,座位でも明瞭な腹部の膨らみを認めたため質問したところ,約1年前よりスカートやズボンのウエストがきつく感じられ,太ったと思っていた.食事と運動でダイエットを開始していたが体重は横ばいで腹囲の減少もなかったとのことであった.最近,労作時に息切れが出現するようになった.

[既往歴]0歳時に右鼠径ヘルニアを認め,4歳時に修復術施行.

[常用薬]なし.

[薬剤アレルギー]なし.

[社会歴]飲酒:機会飲酒.喫煙:10本/日×33年.

[最終月経]来院3カ月前から4日間,周期はここ2年不整になっている.月経困難なし.過多月経なし.

連載 研修医に贈る 小児を診る心得・7

子どもの話を聴く 加藤 英治
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 小児科の診察室では子どもが当事者です.大人の世界で,当事者の話を聞かずに物事を進めることはありません.母親から症状を聴いている時に「咳が出ますか?」と尋ねると急に咳をし始める幼児がいます.言葉をうまくしゃべれない幼児でも,自分のことが話題になっていると察して大人の中に入ってきます.幼児であっても診察室で自分が話題になっていることを理解しています.子ども自身が当事者なので話の輪に入るのは当然です.話の輪に入れることにより子どもが一人前に扱われていると感じるので,子どもの矜持をくすぐることができます.

 子どもに話しかけ,子どもの話を聴くことで子どもに近づくこともできます.子どもと話すことで,子どもが自立した子か依存的な子か,または子どもの性格などを推測することもできます.会話から知的障害や発達障害の疑いをもつこともあります.子どもと良好なコミュニケーションがとれるようになれば,子どもと仲良しになれます.

連載 西方見聞録・13

Interviewとは面接なのか? 山口 典宏
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医学生「この病院で働いていて,いいことは?」

レジデント「フレンドリーなスタッフとバラエティに富む症例?」

連載 失敗例から学ぶプレゼンテーション患者説明から学会発表まで・9

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聴き手の評価はいい加減?

 あなたは医学生に「ネフローゼ症候群」の講義をすることになった.そこでコンピュータのスイッチを入れ,パワーポイントを立ち上げた.しばらく考えた後で,季節に合わせて桜の花をあしらった背景を選んで文字を打ち込んだ.そして,医学書・雑誌を参考にしながら次々とスライドを作った.治療のアルゴリズムと細胞などの図や写真は,インターネットからコピーしたり,本からスキャンしてスライドに取り込んだりした.かなり枚数も多く充実した内容のスライドができあがった.

 当日は用意したスライドを投影し,自信をもって講義を行った.ところが,終盤にはスライドの枚数が多かったことと,1枚の情報量が多かったため,予想以上に時間がかかり,最後は早口になってしまった.何枚かのスライドはすっ飛ばして,眼にもとまらぬ早業で最後のスライドまで行き着いた.「ビジーなスライドで申し訳ありませんでした」と言い,時間通りに終えた.最後は駆け足だったものの,充実した講義ができたと満足した.ところが,ふと学生のほうを見ると,なにやらよそよそしい態度で教室から出て行った.

REVIEW & PREVIEW

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 膠原病患者の血清中には,自己の細胞核や細胞質成分と反応する多種類の自己抗体が検出される.これらの自己抗体は特定の疾患や病態と密接に関連するものが多く,補助診断,病型分類,予後の推定,治療効果判定など,臨床的に有用である.

 膠原病の自己抗体は臓器特異的自己抗体とは異なり,一部を除き直接の病原性が証明されていないものが多い.しかし,自己抗体の産生機序と膠原病・自己免疫疾患の発症機序は互いに深く関連し合っていると考えられ,自己抗体の検出とそれらの対応抗原の分析は,自己免疫疾患の臨床に役立つのみならず,病因・病態の解明にも重要な手掛かりを与えてくれる.

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 抗菌薬について調べたり勉強したりするときには何を使えばよいか.まず,サンフォードは意外に使いにくい.日本では使用できない薬剤があったり,用量も国内で認可されていない量が記載されていたりする.網羅的ではあるがポイントがわかりにくいので学習リソースには向かない.製造元の発行する添付文書はそれにも増して使いにくい.当該抗菌薬において抗菌作用のある菌種名を延々と羅列しているのをよく見るが,いくら眺めてもどのような感染症で適応があるのかが不明だ.

 そんな中で本書が出版された.読みやすく書かれたスタイルの本書は,抗菌薬の使用に関しての実践書として,とても役に立つ本である.まず,著者グループは臨床感染症の実地診療を精力的に行っている若手感染症医たちである.構成と内容をみると,実際の臨床医が行うスキームで抗菌薬の選択の在り方が書かれていることがわかる.また,日本の臨床シーンでよくあるピットフォールがわかりやすく書かれている.例えば,bioavailabilityのよくない第3世代セフェムの経口抗菌薬の使用が勧められないこと,抗菌薬の適正使用のための実践的やり方などだ.また,最近話題のピットフォールについてもよくまとめている.クリンダマイシンのBacteroides fragilisに対するカバーが不良になっていること,ニューキノロンの大腸菌カバーが不良になっていることなどだ.各章末についている27のクイズは,ピットフォールを意識したポイントをカバーしており,これを解いてみるだけでもかなりの学習効果が得られるであろう.

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 専門性を決めていない若手医師にとって,血液疾患といえば「専門性が高くとっつきにくい」「重症化しやすい」などのイメージがあり,ややもすると敬遠されがちな診療分野である.実際,化学療法に伴う好中球減少時の対応など,他の診療科とは異なる血液疾患ならではの対処法が種々存在するのも事実である.しかしながら,一方では基礎研究の成果がいち早く臨床応用される分野でもあり,かつて難病と言われた疾患が医学進歩により克服されていくことを実感できる分野でもある.血液疾患の面白さや醍醐味に魅せられると,疾患の分子異常の理解や種々の分子標的薬剤やエピジェネティック関連薬剤の使い分けなど,興味が尽きない分野でもある.

 そんな若手医師の血液診療に対する一抹の不安を払拭してくれるのが本書である.『レジデントのための血液診療の鉄則』というタイトルの本書を手にしたとき,「鉄則」という,いわば古めかしい文字がまず目に飛び込んでくる.さらに序には,若手医師に「血液診療の鉄則」を刷り込む本である,とあり,かなり硬派なイメージである.今風のタイトルでいえば,「わかりやすい○○診療の基本」「○○診療のツボ」あるいは「○○診療のガイドライン」といったところか.しかし,本書を読んでみると,聖路加病院血液内科のベテラン医師たちの若手医師への,さらには血液患者さんへの愛情が溢れているのを実感でき,なぜあえて「鉄則」との表現を用いたのか,納得できる.特に,本書の強みは豊富な経験に基づいて作成された「プラクティス」の項目であり,さまざまな症例提示を通して,その鑑別診断に始まり,治療法の選択とその効果,さらには患者さんへの説明内容まで,実際にその症例を体験できる形で知識が整理されることにある.それぞれの項目は,決して表面的な記述のみにとどまらず,最先端の情報がくどくない程度にちりばめられてあり,若手医師のみならず血液専門医にとっても大変有用な実用書であるといえる.

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第8回「呼吸と循環」賞 論文募集
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 医学書院発行の月刊誌「呼吸と循環」では,「呼吸と循環」賞(Respiration and Circulation Award)を設け,呼吸器領域と循環器領域に関する優れた論文を顕彰しております.第8回「呼吸と循環」賞は,第63巻(2015年)第1号〜第12号の「呼吸と循環」誌に掲載された投稿論文(綜説は除く)のうちオリジナリティのある論文を対象とし,原則として呼吸器領域1編,循環器領域1編(筆頭執筆者各1名,計2名)に,賞状ならびに賞金を授与いたします.

 「呼吸と循環」誌の投稿規定(http://www.igaku-shoin.co.jp/mag/toukodir/kokyu.html)をご参照のうえ,奮ってご投稿ください.

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52巻1号 (2015年1月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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