特集 循環器薬up to date 2015
扉
木原 康樹
1
1広島大学大学院医歯薬保健学研究院循環器内科学
pp.7
発行日 2015年1月10日
Published Date 2015/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223008
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
循環器疾患で通院加療を行っている患者は本邦において3,000万人とも言われ,高齢化の進行に伴い今後さらに増加することが予測される.それら患者の大多数が実地医家の下で慢性管理されており,それぞれの循環器疾患の背景には複数の危険因子が潜んでいるのが実情である.高血圧治療ガイドラインJSH2014(日本高血圧学会)では,単剤少量でコントロール不良の患者に対してはエビデンスに基づき単剤の増量よりも多剤少量併用への移行を勧めている.高血圧のみならず脂質異常症や糖尿病あるいは虚血性心疾患や心房細動などの合併例も稀ではなく,関係諸学会のガイドラインに準じるとそれら危険因子の管理にさえ多種多様の薬剤が必要である.すなわち個々の患者において,想像を絶する投薬重積状態が常態化している.
そのようななかにあって,これまでにない作用点を有するいくつかの循環器薬が新たに市販され,従来の薬物との使い分けや適応の相違などについても少なからず混乱が生じている.NOAC[新規(あるいは非ビタミンK阻害性)経口抗凝固薬]と呼ばれる薬剤の比較的低リスク(脳卒中予備軍)患者への適応拡大やワルファリンとの相克などがその事例に当たる.このような時代においては,各薬剤の特性や相互作用,あるいは限界を包括的に学習・認識し,副作用を回避するとともに,各自の処方が薬剤本来の効能を発揮できる環境を維持していることを担保することが肝心であると思われる.大半は長期慢性治療が前提であるから,患者の服薬アドヒーランスへの目配りも必須である.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.