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専門性を決めていない若手医師にとって,血液疾患といえば「専門性が高くとっつきにくい」「重症化しやすい」などのイメージがあり,ややもすると敬遠されがちな診療分野である.実際,化学療法に伴う好中球減少時の対応など,他の診療科とは異なる血液疾患ならではの対処法が種々存在するのも事実である.しかしながら,一方では基礎研究の成果がいち早く臨床応用される分野でもあり,かつて難病と言われた疾患が医学進歩により克服されていくことを実感できる分野でもある.血液疾患の面白さや醍醐味に魅せられると,疾患の分子異常の理解や種々の分子標的薬剤やエピジェネティック関連薬剤の使い分けなど,興味が尽きない分野でもある.
そんな若手医師の血液診療に対する一抹の不安を払拭してくれるのが本書である.『レジデントのための血液診療の鉄則』というタイトルの本書を手にしたとき,「鉄則」という,いわば古めかしい文字がまず目に飛び込んでくる.さらに序には,若手医師に「血液診療の鉄則」を刷り込む本である,とあり,かなり硬派なイメージである.今風のタイトルでいえば,「わかりやすい○○診療の基本」「○○診療のツボ」あるいは「○○診療のガイドライン」といったところか.しかし,本書を読んでみると,聖路加病院血液内科のベテラン医師たちの若手医師への,さらには血液患者さんへの愛情が溢れているのを実感でき,なぜあえて「鉄則」との表現を用いたのか,納得できる.特に,本書の強みは豊富な経験に基づいて作成された「プラクティス」の項目であり,さまざまな症例提示を通して,その鑑別診断に始まり,治療法の選択とその効果,さらには患者さんへの説明内容まで,実際にその症例を体験できる形で知識が整理されることにある.それぞれの項目は,決して表面的な記述のみにとどまらず,最先端の情報がくどくない程度にちりばめられてあり,若手医師のみならず血液専門医にとっても大変有用な実用書であるといえる.
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