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1. 疾患概念
限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)は,良性の肝腫瘤である.近年の画像診断,特に超音波の進歩・普及により,日常診療で偶発的に,または検診などで発見される頻度が増加しており,もはやめったに遭遇する病変ではなくなってきた印象である.局所動脈血流異常に伴う過形成性変化が成因と考えられている.通常,無症状であり,肝機能検査で異常を認めず,肝炎ウイルス陰性,腫瘍マーカー陰性を示し,肝硬変などの慢性肝障害を伴わない.比較的若い女性に多いとされている.診断学上,肝細胞癌,fibrolamellar hepatocellular carcinoma,肝腺腫,血管筋脂肪腫,肝血管腫などとの鑑別診断が問題となる.
2. 超音波像
腫瘤の多くは肝被膜下に発生し,多くは単発性である.多発例も存在する.境界明瞭な充実性腫瘤として描出される.内部エコーはさまざまで,低エコー,等エコーあるいは高エコーを示す.低エコーまたは等エコーが多い.最も特異的所見は,中心性瘢痕内の動脈が腫瘤辺縁に向かって放射状に分布する車軸様血流パターン(spoke-wheel pattern)である.ただし,神代らによれば,肉眼的に明瞭な中心性瘢痕が認められたのは63.3%と報告されており1),中心性瘢痕のはっきりしない病変も少なからず存在するので,診断に際して留意すべきである.カラードプラでは,車軸様血流パターンを最も簡便に描出可能である.しかし,機器の感度,プローブから腫瘤までの深さ,motion artifactなどの要因で,その描出は必ずしも容易ではない.最近は経静脈性造影検査の普及により,腫瘤内の血管構造のみならず血流動態の詳細がわかるようになってきた(図1).われわれの経験では,造影早期相にて8例中明瞭な車軸様血流パターンの描出が4例,腫瘤全体の造影効果が全例で認められ,遅延相での造影効果の残存が7例中7例,中心瘢痕の描出が3例に認められた.これらの造影所見を組み合わせることによりFNHの質的診断能を高めることができると考えられた2).造影超音波検査は他のモダリティに頼ることなく鑑別診断に非常に有用と思われる.良性病変だけに不必要な過剰な検査は避けたいと考える.
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