medicina 33巻2号 (1996年2月)

今月の主題 糖尿病臨床の最先端

糖尿病の予知と予防

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ポイント

●世界の糖尿病患者は1億1,000万人と推定される.

●有病率は北米,欧州に多く,アジア,アフリカに少ない.

●本質的な民族差は,一部の例外を除いて存在しないと思われる.

●ライフスタイルの変化,特に動物性脂肪と単純糖質の摂り過ぎ,および運動不足が重要な危険因子である.

●一次予防戦略は糖尿病の発症を低下させるのに有効である.

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ポイント

●全国小児糖尿病患者数は,厚生省小児慢性特定疾患治療研究費受給者数の調査によれば,18歳未満の登録数で1974年(昭和49年)の577人から1993年(平成5年)には6,146人に増加した.

●人口10万人当たり小児インスリン依存型糖尿病(IDDM)の発生率は平均1.5人,有病率は10万人当たり14.7人となっている.小児インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)も高年齢肥満児を中心に増加の傾向にある.小児IDDMの生命予後は専門医療の整備により改善の傾向にある.

●成人糖尿病は40歳以上の国民の10%に達し,全人口では約600万人の糖尿病有病者と,その約2倍の予備軍があり,予防対策が焦眉の急である.

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ポイント

●インスリン依存型糖尿病(IDDM)の頻度には国および人種間で極めて大きな差が存在し,世界的に見ると日本におけるIDDMの頻度は非常に低い.

●家族歴,遺伝子型,自己免疫マーカーおよびこれらの組み合わせにより,ハイリスク群におけるIDDMの発症危険度を推定することが可能となりつつある.

●IDDM発症の予防法は,主に環境因子の除去および自己免疫機序の進展阻止である.

糖尿病発症の分子機構

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ポイント

●わが国のインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の多くはインスリン抵抗性は軽度で,インスリン分泌の低下を主徴とする.

●インスリン分泌,特にグルコースに対する選択的なインスリン分泌の低下が特徴である.

●NIDDMのβ細胞ではグルコース代謝に障害があり,十分なATP産生が行われないためKATPチャネルの閉鎖不全が生じ,グルコースによるインスリン分泌が障害される.

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ポイント

●遺伝・環境要因を背景とした自己免疫機序により,膵B細胞が破壊されてインスリン依存型糖尿病(IDDM)が発症する.

●遺伝因子としてはHLA遺伝子の関与が最も重要である.

●環境因子として,ウイルスや牛乳中の蛋白と膵B細胞蛋白の構造上の類似性(分子相同性)が注目されている.

●膵島では細胞傷害性T細胞が膵B細胞を抗原特異的に認識して,Fas依存性機構,あるいはパーフォリン依存性機構により傷害すると考えられる.マクロファージやT細胞から分泌されるサイトカインも細胞傷害作用を有している.

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ポイント

●インスリンはインスリン受容体に結合して内在するチロシンキナーゼ活性を活性化する.活性化されたチロシンキナーゼは細胞内にあるIRS(insulin receptor substrate)-1,IRS-2,Shc(src homology/α-collagen-related)などの蛋白質のチロシン残基をリン酸化する.

●このチロシンリン酸化部位に,SH 2(src homology 2)ドメインを介して,PI 3(phosphatidyl inositol 3)-キナーゼ,Grb 2(growth receptor-bound protein 2)・Sos(son of sevenless)複合体,SH PTP-2などが結合する.PI 3-キナーゼは糖輸送活性化の,他の2者はras活性化のシグナルを伝達する.

●インスリン受容体の異常によりインスリン抵抗性を生じた症例は報告されているが,細胞内の情報伝達蛋白の明らかな異常はまだ報告されていない.

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ポイント

●細胞へのグルコース取り込みには糖輸送担体と名づけられた膜蛋白が必要である.

●インスリンに反応する糖輸送担体の代表が筋脂肪組織に存在するGLUT4である.

●インスリンはGLUT4を細胞内から細胞膜へトランスロケーション(動員)する.

●インスリン非依存型糖尿病患者ではGLUT4量の低下は軽度である.

●糖尿病患者ではGLUT4のトランスロケーションあるいは活性化へのシグナル伝達が障害されていると推測される.

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ポイント

●糖尿病の病態は,膵β細胞のインスリン分泌不全と標的臓器のインスリン抵抗性を特徴とするが,高血糖そのものによっても二次的に標的組織にインスリン抵抗性を惹起しうる.

●高血糖によるインスリン抵抗性の発症機構には,インスリンシグナル伝達経路の障害とグルコサミンといわれる糖代謝産物による代謝阻害機構が考えられる.

●インスリン受容体キナーゼの障害機構には,プロテインキナーゼC(PKC)やチロシン蛋白脱リン酸化酵素(PTPase)の活性化異常が想定される.

●高血糖によるインスリン抵抗性にもインスリン抵抗性解除薬であるチアゾリジン誘導体は有効である.

糖尿病の新しい検査法

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ポイント

●糖尿病は臨床症状と高血糖,あるいは耐糖能低下を総合して診断すべきものである.

●糖尿病と判定する血糖値の基準は糖尿病を多発する集団の血糖値の分布,特有の合併症のリスクをもとにして定められた.

●日本糖尿病学会の正常型は追跡しても糖尿病を発病する危険の少ない群として,境界型は糖尿病型でも正常型でもない群として定義された.

●IGT(impaired glucose tolerance)は糖尿病になる危険,妊娠時の危険,動脈硬化症の危険が高い群として定められた.

●疫学調査と臨床では目的が異なり,診断基準への要件も異なる.

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ポイント

●インスリン依存型糖尿病(IDDM;1型糖尿病)の診断には,膵島関連自己抗体(ICA,IAA,GAD抗体など)の測定が非常に有用である.

●GAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)抗体(RIA法)は簡便かつ高感度の検査法であり,発症早期IDDM患者の70〜90%に検出される.

●GAD抗体はICA(坑ラ氏島抗体)に比較し遷延化するため,長期経過した患者におけるIDDM(1型糖尿病)の診断にも有用である.

●GAD抗体はインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)患者における将来のインスリン分泌不全の予知マーカーとして最近注目されている.

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ポイント

●HbA1c測定値の標準化は,①安定型(stable)HbA1cのみの測定に統一すること,②標準品の表示値を用い実測値を補正すること,この2点を遵守することにより達成可能である.このようにして測定された測定値はDCCTの測定値に近似する.

●1,5AG(1,5-anhydroglucitol)測定の意義としては,①2〜3日という短期間のコントロール指標,②治療効果の判定,③軽微な変化の指標,となることである.

●糖化アルブミン測定の意義は,①約2週間の短・中期的コントロール指標となること,②治療効果の判定に有用であること,③糖尿病妊婦,腎症・貧血・肝硬変合併患者の指標として有用であること,である.

糖尿病治療の最近の進歩

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ポイント

●細小血管血流量増加はautoregulationの破綻の結果である.

●細小血管症進展は細小血管血流量増加と相関する.

●高血糖と高血圧はautoregulationを修飾する.

●それゆえ,糖尿病治療の原則は高血糖と高血圧を抑制して細小血管のautoregulationを維持させることであり,継続治療の意義はautoregulation破綻の悪循環を阻止することである.

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ポイント

●食品交換表では摂取エネルギー量を容易に把握できるよう,各食品を1単位80kcalで示してある.

●食品交換表が示す食品分類と各食品グループ内での多様な食品選択は,誰もが利用し得るもので,栄養のバランスに留意した食生活において,家族ぐるみで活用し得る内容になっている.

●食事指導に際しては過去の食習慣を明らかにし,これに基づいて量と栄養のバランスを適正な方向に導く.

●食品交換表で行われている食品分類以外の方法についても,それを否定することなく受け容れる柔軟な姿勢をもつ.

●食事指導は画一的ではなく,個々人のQOLを損ねない立場でアプローチする.

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ポイント

●身体トレーニングの実施は,体重減少の有無にかかわらず,糖尿病,殊に非インスリン依存型(NIDDM)で低下している個体のインスリン感受性を改善させる.

●個体のインスリン感受性改善(⊿MCR)と歩数計の歩数とは正の相関関係にあり,トレーニング効果を歩数計で評価できる.

●具体的運動処方としては,散歩,ジョギングなどの有酸素運動を中等度の強さ(40〜50歳台,脈拍:120/分)で,1回10〜30分以上,週3日以上行わせる.食事療法も併行して指導する.

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ポイント

●αグルコシダーゼ阻害剤は,空腹時血糖はあまり高くないが,食後の高血糖が目立つインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)がよい適応である.

●インスリン抵抗性改善剤は肝糖産生の抑制や末梢組織でのインスリン抵抗性を軽減することによって血糖低下作用,中性脂肪低下作用を示す.

●膵外作用の強いスルホニル尿素(SU)剤や速効性の非SU系インスリン分泌促進剤も開発され,臨床試験が進行中である.

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ポイント

●インスリン製剤の進歩の中で,最も注目を浴びているのはLys-Proインスリンであり,過去1年間に抄録を含めて多くの文献が存在する.

●超速効型インスリンであるこのアナログの臨床治験から,食直前の皮下注射で食後血糖のコントロールが良くなることが明らかとなったが,ヒト速効性インスリンよりHbA1cが有意に改善するという効果はまだ報告されていない.

●他の超速効型インスリンも開発されているが,まだ大規模な臨床治験に到っていない.

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ポイント

●インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)は若年者にもあり,妊娠時にしばしば見逃されている.発見されたときは直ちに眼底検査を行う.

●家族歴のある女性はNIDDMのチェックが必要である.

●妊娠時の糖尿病の治療はインスリンで行う.

●計画妊娠が大切である.

●妊娠を希望するときはHbA1c 6%以下とする.

●妊娠中のコントロール目標は血糖の正常化である(HbA1c正常,食前ならびに食後血糖は100mg/dl以下).

●妊娠中のインスリン需要量は,非妊時の1.5〜2倍に増加する.

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ポイント

●インスリン依存型糖尿病(IDDM)の廃絶したインスリン分泌能を再建する膵移植は,近年,欧米を中心に急速に増加しつつある.

●膵移植が成功すると,インスリン治療や低血糖発作などから解放され,また神経障害などの改善が期待できるため,IDDM患者のquality of lifeは著しく改善する.

●わが国でも,1984年以降計15例の膵移植が行われているが,血栓,拒絶などの合併症のため移植膵機能を喪失することが多く,満足できる成績は得られていない.

●わが国の膵移植成績向上のためには,脳死移植の実現や,ネットワークの整備が急務の課題である.

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ポイント

●現在推奨されている強化インスリン療法は,間歇的血糖計測と,それに基づくインスリン投与量の修正というopen-loop control方式であり,血糖コントロールは不十分,かつ時に重篤な低血糖を発症することがある.

●厳格,かつ生理的な血糖コントロールを長期間にわたり維持し,細小血管合併症の発症,進展を阻止するには,計測(血糖計測)と制御(必要最少量のインスリン補充)というclosed-loop control system,いわゆる治療制御システムの開発が望まれる.

●21世紀の糖尿病治療に向け,生体医用工学技術,遺伝子工学技術など,構成的手法が臨床医学の発展に貢献するものと考える.

糖尿病合併症の診断・治療の新しい展開

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ポイント

●DCCT(the Diabetes Control and Complications Trial)の研究方法(ランダム化された対象についての前向きの臨床研究)は臨床上の問題点を解決するための最も信頼できる研究方法である.

●その方法により,インスリン依存型糖尿病(IDDM)患者で血糖のより正常に近いコントロールは,糖尿病合併症の出現・進展阻止に有効であることが確認された.

●HbA1cで約7.0%(基準範囲の上限=6.0%)またはそれ以下が代謝調節の目標である.インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)でも同じ目標値を用いてよいであろう.

●現実の糖尿病診療の場で,よりよい代謝コントロールへの努力は十分価値があることを認識し,エネルギーを注ぐべきである.

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ポイント

●糖尿病性腎症の早期診断には“微量アルブミン尿”を検出することが必要である.

●糖尿病性腎症は連続性の経過を辿るが,病期分類およびその病態を理解し,病期に応じた治療法を行うことが重要である.

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ポイント

●糖尿病性腎症は進行すると患者のQOLは著しく低下し,予後不良である.したがって,発症あるいは進展の遅延・阻止が最重要課題である.

●管理・治療に際しては高リスク者の特定と早期診断が重要である.

●糖尿病病型にかかわらず,腎症対策としては,①良好な血糖コントロール,②有効な血圧コントロール,の長期効果が確認されており,また③蛋白質摂取制限,④高脂血症治療,⑤禁煙などの有用性が示されている.これら対策の病期に応じた適用が必要である.

●尿アルブミン(あるいは尿蛋白)排泄率の変化は経過観察の良い指標ではあるが,GFR(糸球体濾過値)低下率あるいは末期腎不全への移行時期の変化が最も重要な指標となる.

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ポイント

●糖尿病患者の眼底管理は初めての眼底検査で始まり,網膜症を無網膜症・単純網膜症・増殖前網膜症・増殖網膜症に診断し分類する.

●病像から眼底管理・経過観察とするか,眼科的治療を開始するかを決める.

●眼底管理・経過観察には網膜症の全身性変動因子に注意する.

●眼科的には光凝固術と硝子体手術で,黄斑部機能の保存と眼内増殖の抑制を図る.

●早期硝子体手術や黄斑浮腫に対する硝子体手術に新しい展開がみられる.

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ポイント

●糖尿病性神経障害の疫学データは施設間差が大きいが,診断基準が一定していないことが主因の一つである.

●糖尿病性神経障害の診断基準のスタンダードの一つに,自覚症状,神経学的所見,知覚機能,神経伝導速度,自律神経機能の5項目のうち,2項目以上が異常の場合を「神経障害あり」とする基準がある.

●腱反射と振動覚検査は糖尿病性神経障害の診断において,再現性と特異性の優れた検査である.

●診断基準は使用する目的に応じたものが作成されるべきである.

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ポイント

●糖尿病性神経障害の成因としては代謝異常説と血管障害説がある.治療薬は両者の異常を是正するものである.

●薬効評価には症状,神経生理学的検査値,末梢神経病理変化をエンドポイントにして,プラシボ効果と判別することが望ましい.

●ビタミンB1,B12,キネダック(アルドース還元酵素阻害薬),リプル,パルクス(プロスタグラジンE1)が保険診療に使われている.

●新しくacetyl-L-carnitineの臨床試験が始まった.

●今後,これら薬物のコンビネーション治療が予測される.

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ポイント

●糖尿病の特徴は「持続する高血糖状態」である.この「持続する高血糖状態」と糖尿病の各種慢性合併症の関係を説明する現在最も有力な説にAGE(advanced glycation end-product)成因説がある.

●AGEはブドウ糖より形成される物質で,近年,AGEによる合併症発症の機序やAGEレセプターを介した複雑な防御機構や傷害過程が明らかにされている.

●さらに,AGE阻害剤による大規模な臨床治験が米国やヨーロッパ各国で進められており,糖尿病の治療が現在の血糖を下げるだけの治療から,さらに一歩進んだ合併症治療薬による治療法の確立に期待が寄せられている.

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ポイント

●耐糖能異常,IGT(impaired glucose tolerance)は特にインスリン抵抗性を基盤とした耐糖能異常,高血圧,高VLDL-TG(triglyceride)血症,低HDL-C(choleserol)血症,高インスリン血症,肥満が合併した病態であるSyndorome Xという概念が虚血性心疾患に至りやすいという意味で重要である.

●高インスリン血症は脂質代謝異常を発症させるとともに,血管収縮性を亢進し,高血圧を発来させる.それがまた動脈硬化病変形成の原因となる.

●IGTは糖尿病予備群と考えられているが,冠動脈硬化症の危険群という意味からも注意が必要である.

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ポイント

●インスリン抵抗性は各種動脈硬化性疾患の危険因子として重要な役割を果たす.

●冠動脈スパスムは,その多くが初期動脈硬化が既に存在している病態として注目されている.

●インスリン抵抗性は冠攣縮の進展,発症に深く関与していると考えられる.

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ポイント

●糖尿病患者の動脈硬化は,境界型糖尿病の時期より進展しており,虚血性心疾患,脳血管障害を高頻度に発症する.

●インスリン依存型糖尿病(IDDM)では,動脈硬化は発症直後から進展し,虚血性心疾患発症が高頻度に見られる.

●糖尿病患者および境界型糖尿病症例の動脈硬化の危険因子は,耐糖能異常,高脂血症,高血圧,喫煙である.

●糖尿病患者および境界型糖尿病症例の動脈硬化は,高血糖,高脂血症などの是正により,その進展を抑制し,動脈硬化性疾患の発症予防が可能となる.

トピックス—糖尿病発症関連遺伝子の解析

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ポイント

●IRS-1(insulin receptor substrate-1)はインスリン受容体の細胞内基質であり,インスリンの様々な作用を分岐・伝達している.

●IRS-1ノックアウトマウスとは,発生工学的手法により作製されたIRS-1蛋白を全く持たないマウスである.

●IRS-1ノックアウトマウスはインスリン抵抗性の糖尿病を呈し,IRS-1が個体における糖取り込み作用を伝達していることが証明された.

●ただし,この糖尿病は当初の予想に反し軽度であり,この原因としてIRS-1作用を代償する新しい蛋白IRS-2が発見された.

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ポイント

●若年発症インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)とグルコキナーゼ(GK)遺伝子座との連鎖が報告されて以来,GK遺伝子異常症が報告されるに至った.

●GK遺伝子異常症では若年発症が多く,一見正常でも負荷試験では若年から耐糖能異常を呈する.

●GK遺伝子異常症ではグルコース反応性インスリン分泌不全と肝臓でのグルコース取り込み低下の双方の障害が想定される.

●GK欠損マウスは正常に生まれるものの,生後1日以内に著明な尿糖を呈し,未治療では高血糖,脱水のため数日で死亡する.

●GK欠損膵島はグルコース反応性インスリン分泌が欠如しているものの,スルホニル尿素(SU)剤やアルギニンに対しては反応する.

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ポイント

●ミトコンドリア遺伝子異常は母系遺伝を示す.

●ミトコンドリア脳筋症では耐糖能障害や糖尿病をよく合併する.

●ミトコンドリア遺伝子異常糖尿病はインスリン分泌低下を示す.

●ミトコンドリア遺伝子3243A→G点変異は,PCR-Apa I消化法で診断できる.

●ミトコンドリア遺伝子3243A→G点変異は,糖尿病患者の約1%に認める.

●遺伝子診断は必ずインフォームドコンセントを得て実施する.

●ミトコンドリア遺伝子異常糖尿病では感音性難聴をよく合併する.

●組織ごとのヘテロプラスミーの差異が多様な臨床病型を決定する.

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ポイント

●インスリン依存型糖尿病(IDDM)は発症に遺伝因子と環境因子が複雑に関与する多因子遺伝疾患,あるいは“complex trait”という範疇に属する疾患である.

●Complex traitの遺伝解析には罹患同胞対法が有用である場合が多い.

●罹患同胞対法は同胞発症家系を多数集めて同胞で共有している遺伝子を同定する方法である.

●罹患同胞対法を用いた遺伝解析により,現在までに少なくとも10個のIDDM遺伝子がマップされている.

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ポイント

●肥満(ob)遺伝子は遺伝性肥満のob/obマウスの病因遺伝子としてクローニングされ,ob/obマウスでナンセンス変異が認められた.

●ob遺伝子産物のレプチン(leptin)は脂肪組織特異的に生合成され,血中へ分泌される.また,レプチンの動物への投与により,摂食抑制とエネルギー消費増加が観察された.

●レプチンは脂肪組織から血中に分泌されて,中枢に作用するsatiety factorであると想定される.

●ob/obマウス以外の動物およびヒト肥満患者でob遺伝子の構造の異常は報告されておらず,脂肪組織におけるob遺伝子発現の亢進が認められる.

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 糖尿病治療の3大原則は食事療法,運動療法,薬物療法であり,その3者をいかに上手に組み合わせて良好な血糖コントロールを図り,病状の進展と細小血管および大血管病変の阻止に努めるかに糖尿病治療の究極の目標がある.本座談会では長年糖尿病治療に従事してこられた5人のエキスパートにお集まりいただき,特に薬物療法に焦点を絞り,各種血糖降下剤とインスリン製剤の使い方について,実地臨床に即した実際的な内容をお話しいただく.

理解のための31題

カラーグラフ 塗抹標本をよく見よう・2

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 今回は大きな赤血球が末梢血塗抹標本で観察される貧血(大球性貧血=macrocytic anemia)である巨赤芽球性貧血(megaloblastic anemia)から紹介する.

グラフ 高速CTによるイメージング・2

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 血管造影検査と併用して行われる動脈造影下CTの有用性は論をまたない.しかし,検査の実施は血管造影検査室とCT検査室が隔離して設置されている場合,様々な制限により症例を限定せざるを得ないことがある.制限のうち,担送による負担と各検査室間の調整はこの検査を煩雑にしている.血管造影装置とCT装置を組み合わせたIVR-CT/Angio Systemではこのような煩雑さは解消され,必要に応じた動脈造影下CTの施行が可能である.IVR-CT/Angio Systemの概要と臨床応用について述べる.

連載

目でみるトレーニング

図解・病態のメカニズム—分子レベルからみた神経疾患・6

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疾患概念

筋緊張性ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)は,常染色体優性遺伝を呈し,わが国における頻度は10万人に5.5人といわれ,欧米の8,000人に1人の頻度と比べ少ない.多くは20歳台後半に遠位筋に強い筋力低下や筋萎縮で気づかれる.骨格筋,舌筋のミオトニアを伴い,針筋電図では刺入時のdive bomber soundが特徴的である.障害は骨格筋のみならず,中枢,末梢神経系や多臓器に及び,知能低下,耐糖能異常,胆道系異常,甲状腺機能障害や性腺機能低下などの内分泌異常,低γ-グロブリン血症,心伝導障害,呼吸器障害を呈する.また,前頭部禿頭,myopathic face,咬合不全が外見上の特徴である.

本症は白内障のみか,筋症状はあってもごく軽症の潜在型,成人期に発症する成人型,小児期に発症する小児型,周産期の羊水過多,胎動微弱,遷延分娩を経て,生下時より呼吸障害,筋緊張低下を呈し,強い知能低下を伴う先天型の4型に分類される.

知っておきたい産科婦人科の疾患と知識・6

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 生殖年齢にある女性が,嘔気,嘔吐,食欲不振などの消化器症状を主訴に来院した場合,常に患者が妊娠していないかどうかを念頭に置く必要がある.なぜなら,このような消化器症状が妊娠初期に特有な“つわり”による場合も少なくないことや,患者が妊娠している場合,妊娠初期の妊婦への不必要な放射線被曝や禁忌薬の投与を避けることができるからである.そのために,最終月経の確認,場合によっては妊娠検査(尿中hCG〔ヒト絨毛性ゴナドトロピン〕検査)を行うことが望ましい.

 また,逆に,妊娠しているがために消化器の器質的疾患によるこのような症状を妊娠悪阻と見誤ったり,内視鏡検査を躊躇してしまい,胃癌などの重篤な疾患の発見が遅れる場合もある.

演習 胸部CTの読み方・8

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 Case

 64歳,男性.労作時呼吸困難を訴えて来院.胸部異常陰影を指摘され,胸部CTの撮影となる.喫煙歴は15本/日×42年間.特記すべき職歴なし.両肺にfine cracklesを聴取.ばち指を認めた.図1a,bは単純CT(肺野条件),図1cは造影CT(縦隔条件)である.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・10

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 ヴェサリウスの『人体構造論(ファブリカ)』が書かれた北イタリアのパドヴァ大学は,医学の歴史を語るときに重要な大学です.ヴェサリウスと同じ頃にはコロンボ,ファロピウス,ファブリキウスなど医学史で有名な教師がこの大学で教えていました.そのあと1592年にはガリレオ・ガリレイが来て数学を教え,18年間滞在しました.

 パドヴァは,小さな静かな町です.前にお話したことがありますが,パドヴァ駅から町に出る途中のスクロヴェニ礼拝堂は1300年の1月にエンリコ・スクロヴェニが建てたもので,その清楚で美しい建築で有名です.そして一度この礼拝堂に足を踏み入れた人は,四周の壁に描かれた見事な壁画に心を奪われることでしょう.新約聖書のキリストの生涯の物語が,ジョット・ディ・ボンドネの手で39面のフレスコ画に描き出されています.これほど人の心を奪う壁画は少ないと思います.マリアの誕生からキリストの復活,そして最後の審判まで,どの絵もすばらしい傑作ですが,とりわけユダがキリストに口づけして逮捕させる場面は,ジョットの筆力による表情と内面描写の凄さで有名です.この絵を見てヴェサリウスは何を思ったことでしょうか.

アメリカ・ブラウン大学医学部在学日記・17(最終回)

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恩師

多くの素晴らしい師に巡りあえた幸運がこの4年間の支えであった.ブラウン大学医学部に導いて下さったT先生,問診と身体検査の本当のあり方を教えて下さったM先生,内科に進むことを決心するきっかけとなった内科のS先生,国際医療研究所の恩師であり,また4年間私のアドバイザーになって下さったN先生など,書き切れないほど多くの素晴らしい師に私は恵まれた.それはアメリカにおいてのみではない.例えば上智大学のY先生なくして今の私はなかったであろう.

限られた一生の間にどのような人に出会うかによって,その一生は随分違ってくる.特に,本当に尊敬できる師に出会うことはその人のそれからの人生を大きく左右しかねない.もしハーバード大学で心から尊敬するブラウン大学のT教授に出会わなかったらば,私はアメリカで医学部には進まなかったであろう.こういった出会いとは誠に不思議なものである.自分も誰かと出会った際に,その人の人生に何か良い影響を与えるような生き方ができるようになりたいと思う.

基本情報

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medicina
33巻2号 (1996年2月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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