医道そぞろ歩き—医学史の視点から・10
北イタリアの学都パドヴァ
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.400-401
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904976
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ヴェサリウスの『人体構造論(ファブリカ)』が書かれた北イタリアのパドヴァ大学は,医学の歴史を語るときに重要な大学です.ヴェサリウスと同じ頃にはコロンボ,ファロピウス,ファブリキウスなど医学史で有名な教師がこの大学で教えていました.そのあと1592年にはガリレオ・ガリレイが来て数学を教え,18年間滞在しました.
パドヴァは,小さな静かな町です.前にお話したことがありますが,パドヴァ駅から町に出る途中のスクロヴェニ礼拝堂は1300年の1月にエンリコ・スクロヴェニが建てたもので,その清楚で美しい建築で有名です.そして一度この礼拝堂に足を踏み入れた人は,四周の壁に描かれた見事な壁画に心を奪われることでしょう.新約聖書のキリストの生涯の物語が,ジョット・ディ・ボンドネの手で39面のフレスコ画に描き出されています.これほど人の心を奪う壁画は少ないと思います.マリアの誕生からキリストの復活,そして最後の審判まで,どの絵もすばらしい傑作ですが,とりわけユダがキリストに口づけして逮捕させる場面は,ジョットの筆力による表情と内面描写の凄さで有名です.この絵を見てヴェサリウスは何を思ったことでしょうか.
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