臨床雑誌内科 121巻1号 (2018年1月)

特集 エビデンスを2型糖尿病臨床にどう生かせばいい?―Evidence Based MedicineをReal Worldへ

特集のねらい

糖尿病のEBM 大西 由希子
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EBMとは

 evidence based medicine(EBM)とは,診療を行うにあたって,良質な臨床研究によって得られたエビデンスと医師の経験に基づく臨床技能を統合して実施するものです.最新のエビデンスを正しく理解・解釈し,個々の患者の病態や発症にある背景,価値観や嗜好などを把握し,臨床経験を生かして診療方針を決めていくこと,ともいえます1)

 診療では日々多くの疑問が生じます.その疑問を解決すべくエビデンスを得ようとします.しかし,実際は数多くの臨床研究成果が論文化されているので,遭遇するあらゆる疾患に関するエビデンスすべてに目を通すことは多様な疾患に遭遇する実地医家には難しいこともあり,アップデートは大変です.そこで頼りになるのがガイドラインです.糖尿病診療のガイドラインは最新のエビデンスに基づき定期的に更新されます.質の高いエビデンスを網羅されているのでEBMにおいて大変有用なものです.しかし,ガイドラインはあくまで一般的な診療指針を示すものであり, “cookbook” のように書いてあることに従っていればEBMができる,というわけではありません1).つまりガイドラインに従った診療をすることがEBMではありません.ガイドラインの内容を正しくかつ柔軟に解釈したうえで,その適応については個々の患者の状況に応じて臨床経験のある医師の判断を交えて診療しなくてはEBMとはいえないのです.また,ガイドラインに書いていない状況における個別の患者の診療で生じる新たな疑問については,自分でエビデンスを収集する必要があります.欲しいエビデンスの検索と正しい解釈ができなければなりません.そして実際の診療でエビデンスから得られた知識を生かしながら実践し,そしてその結果を自己評価していく.これがEBMです.まとめると以下の5つのステップです2)

①診療上の疑問を明確にする

②疑問に関するエビデンスを収集する

③収集したエビデンスを批判的に吟味する

④解釈したエビデンスと臨床経験を生かしつつ個々の症例に応じた診療をする

⑤自分の診療を振り返って評価する

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Summary

▪根拠に基づく医療(EBM)とは,臨床家の行動規範を示す概念である.

▪SackettらはEBMを実践する5つの手順を提唱した.EBMとは,個々の患者に対し最新最良のエビデンスを一貫して適用すること,エビデンス・患者の意向・臨床能力を統合することである.

▪最強のエビデンスはランダム化比較試験(RCT)であるというのは誤解である.臨床研究の多くはRCTでなく観察研究である.

▪エビデンスには根源的なジレンマがある.集団に対し効果が証明された治療が,個々の患者に必ず有効とは限らない.

▪エビデンスは隙間だらけである.未解明の臨床的疑問に答えるには,日常臨床からエビデンスをみずから生み出さねばならない.

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Summary

▪日本人を含む東アジア人と欧米人では,インスリン感受性や分泌能など糖尿病の基本的な病態,大血管障害の頻度が大きく異なることに留意する必要がある.

▪大血管障害などのアウトカムは,試験の対象患者の背景(大血管障害の既往の有無,糖尿病罹病期間など),試験期間などの影響を受けることに留意する必要がある.

▪大規模臨床試験の結果をリスク比,リスク差などを含め定量的に把握し,実臨床へのインパクトがどの程度なのか考慮する必要がある.

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Summary

▪治療満足度が低いほど,受診中断意思があることが報告されており,受診を中断した場合,治療に満足していなかった可能性が考えられる.

▪糖尿病の治療満足度を規定する因子には,血糖値への満足度,治療法の融通性・利便性,他者に同じ治療法を勧めるか,治療法への満足度などがある.

▪疾患に対する理解が十分でないと考えられる場合には,十分に疾患の説明を行うことにより,治療満足度の向上につながるであろう.

糖尿病の発症予測,発症予防,発症後のコントロール

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Summary

▪久山町研究の成績では,空腹時血糖異常(IFG)および耐糖能異常(IGT)よりもさらに低い血糖レベルから糖尿病発症のリスクが高かった.Toranomon Hospital Health Management Center Studyの成績をみると,IFGとHbA1c高値の合併群において糖尿病発症のリスクが大幅に増加した.

▪インスリン抵抗性の関連因子であるメタボリックシンドローム(MetS)および肝酵素の上昇はいずれも糖尿病発症の有意な危険因子であった.

▪リスクスコアは簡便な問診や検査データにより,糖尿病発症の高リスク群を同定することができる.リスクスコアの活用は効率的な糖尿病対策につながると期待される.

糖尿病の発症予防 坂根 直樹
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Summary

▪肥満を伴う糖尿病ハイリスク者に減量と運動の生活習慣修正を行うと糖尿病発症リスクはほぼ半減する.

▪糖尿病予防のための基本的な生活習慣の修正は,肥満体重の5%の減量と週に150分以上の運動習慣の獲得である.

▪減量以外の食事目標は,野菜の積極的な摂取と節酒である.

▪ウォーキングなど有酸素運動だけでなく,筋力トレーニングも糖尿病予防につながる.

▪BMI 23以上,HbA1c 5.7%以上,非アルコール性脂肪肝(NAFLD)をもつ糖尿病ハイリスク者が糖尿病予防の効率的なターゲットとなる.

▪日常臨床では体重増加や耐糖能を悪化させる薬剤,糖尿病予防につながる薬剤の情報を学習し,処方する際に念頭に置く.

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Summary

▪日本糖尿病学会から出されている2型糖尿病の血糖コントロール目標には,熊本宣言2013で提示された新しい血糖コントロール目標と,2016年に日本老年医学会と合同で発表された高齢者糖尿病の血糖コントロール目標の2つがある.

▪血糖コントロールを行うことで合併症を改善するエビデンスは多く出されているが,大血管障害の抑制は細小血管障害よりもより長いスパンで捉える必要がある.

▪治療に伴う低血糖によって予後が悪くなるという研究結果もあり,低血糖を避けるように患者の特性に応じた治療目標を定めることが重要である.

糖尿病の療養指導

糖尿病の食事療法 佐々木 敏
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Summary

▪糖尿病の食事療法におけるエビデンスは,薬物療法に比べればはるかに少ないといわざるをえない.

▪生活習慣の一つの運動・身体活動と比べてもそのエビデンスは乏しい.この理由の一つに「食習慣の測定の難しさ」がある.

▪食事療法のエビデンスとは,「栄養疫学」の研究手法を用いて行われた研究によって明らかにされた事実を指す.したがって,その視点で食事療法に関する研究を評価・利用することが勧められる.

糖尿病の運動療法 林野 泰明
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Summary

▪2型糖尿病患者では,疫学的に心肺機能と総死亡,大血管障害の発症リスクが関係することが明らかになっている.

▪2型糖尿病患者を対象とした介入研究では,有酸素運動を行うことにより,血糖コントロール,インスリン抵抗性,血圧,脂質代謝異常,慢性炎症が改善することが示されている.

▪レジスタンス運動ではそれらに加えて,筋力,骨密度,心肺機能が改善し,筋肉量が増加する.

▪有酸素運動とレジスタンス運動の併用に関しては,両者の併用はより大きな血糖効果作用をもたらすが,その効果が相加的であるのか相乗的であるのかについてはまだ十分な結論が出ていない.

▪運動療法の指導を行う前に,変化ステージを評価し,また患者の医学的な状態や社会的背景,嗜好を考慮し,患者個々に個別の対応を行うことが重要である.

糖尿病薬物療法

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Summary

▪日本糖尿病学会による薬物療法のガイドラインでは,大きな流れを規定し,そのなかで,主治医が病態と患者の嗜好を勘案しながら,ベストの治療を選択するという方針が根底に流れている.

▪ADA/EASDによる薬物療法のガイドラインでは,具体的な薬物の選択肢が示されており,多くの選択肢のなかから,最適と考えられる治療法を選択すればよい.

▪実臨床においては,両ガイドラインの長所・短所を十分に理解したうえで,個々の症例ごとに最適な治療法を選択することが理想的である.

ビグアナイド薬 坂本 健太郎
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Summary

▪近年ビグアナイド薬の作用機序が明らかになってきている.

▪欧米のガイドラインでは第一選択薬とされており,本邦でも適応症例は拡大している.

▪単剤の効果に加え,併用療法でも有効性と安全性に優れる.

▪糖尿病発症予防効果や多面的作用に注目が集まっている.

チアゾリジン薬 窪田 直人 , 門脇 孝
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Summary

▪チアゾリジン(TZD)薬はインスリン抵抗性改善系の経口血糖降下薬に分類され,PPARγのリガンドとして作用する.

▪単独投与では低血糖は少なく,脂肪細胞分化の促進とそれに伴う脂肪細胞の形質回復によりインスリン抵抗性を改善すると考えられている.

▪優れた血糖降下作用を有するが,心不全の悪化や骨折,膀胱がんのリスク増加等が報告されている.

DPP-4阻害薬 三田 智也
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Summary

▪一般的に,日本人の2型糖尿病患者は,欧米人に比較して非肥満で早期からインスリン分泌不全が認められるため,糖尿病治療薬の選択としては,インスリン分泌促進薬がよい適応になる.

▪膵β細胞を疲弊させずに長期にわたり持続的に血糖コントロールが行える薬剤が望ましい.また,治療に伴う低血糖の発症や体重増加をきたさないことも重要である.

▪このような点を考慮するとインスリン分泌が低下した日本人2型糖尿病患者の治療薬としてDPP-4阻害薬が有用である.

▪DPP-4阻害薬は,有害事象の発症が少なく,腎機能障害を有する患者や高齢者においても用量調節を行えば,安全に使用できる.さらに,ほかの血糖降下薬との併用も相加的な血糖降下作用がある.

▪GLP-1の作用を高めるという観点からmetforminやα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)とDPP-4阻害薬との併用は,効果が高いと考えられる.

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Summary

▪SU薬・グリニド薬はともに膵β細胞膜のKATPチャネルを介してインスリン分泌を刺激するが,結合部位の違いやその他の付加的な作用機序により効果発現と作用時間が異なる.

▪SU薬はUKPDSにおいて細小血管症を減少させるエビデンスを得たが,心血管イベントのリスクを高める報告もある.グリニド薬はmotforminと同等の一次・二次予防効果を有することが示唆されている.

▪SU薬はHbA1cを1~2%低下させ,第一選択薬として投与可能である.現在はgliclazideとglimepirideが主に用いられるが,過剰投与が低血糖を招く懸念のため少量から開始することが原則である.

▪グリニド薬は食後血糖の改善を期待して早期の糖尿病患者が適応である.食事療法と相乗的に指導することは服用アドヒアランスの維持に効果的である.

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Summary

▪食後高血糖は空腹時高血糖とは独立した心血管イベントや死亡のリスクである1)

▪α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は小腸からの血糖の吸収を遅延することによって食後高血糖を改善する薬剤である.インスリン分泌を増加させないため体重増加がなく,単独使用では低血糖を起こしにくい.

▪インスリン分泌能に関係なく血糖を低下させるため,1型糖尿病にも使用可能な経口糖尿病薬である.

▪最も多い副作用は下痢や腹痛,腹部膨満感などの消化器症状である.とくに腹部手術既往のある患者では,腸閉塞を起こすことがあるため注意を要する.

▪食直前内服が基本なので服薬アドヒアランスが悪い傾向があるが,内服を忘れた場合には食直後までの内服で効果が期待できる2)

SGLT2阻害薬 川浪 大治
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Summary

▪EMPA-REG OUTCOMEおよびCANVASの結果から,SGLT2阻害薬による心血管イベント,腎イベント抑制効果はクラスエフェクトであると考えられる.

▪イベント抑制はHbA1c低下作用だけでは説明できない.体重や血圧の低下,多面的な臓器保護効果が寄与している可能性がある.

▪SGLT2阻害薬は目的をもって投与するべきである.

▪新たな有害事象として下肢切断に注意する必要がある.

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Summary

▪これまで,糖尿病治療薬には心血管疾患発症に悪影響を及ぼさないことが重要で,心血管イベントの発症率に改善効果があるかは念頭にはなかった.

▪しかし,この2年間に相次いで新規治療薬の心血管疾患発症に及ぼすベネフィットを証明した報告がなされ,糖尿病治療も大きく変化し新たな段階にいたっている.

▪GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)については国内の臨床にただちには結びつかないものの,今後長期予後を見据えた治療の一環としてGLP-1RAを応用できるようになることを期待したい.

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Summary

▪近年優秀な持効型溶解インスリンが開発され,2型糖尿病患者のインスリン導入手法として,経口糖尿病薬を残したまま基礎インスリンを補充するBOTが広く行われるようになっている.

▪内因性分泌の保たれているうちに持効型インスリンを導入することで,1日1回の注射でも比較的良好な血糖管理が望める.しかもタイトレーションのターゲットが空腹時血糖値であり評価がしやすい.

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Summary

▪インスリン強化療法は,特徴の異なるインスリン製剤を組み合わせることによって,インスリン内因性分泌の模倣と血糖の正常化を可能とする.しかしながら,適切なインスリンの用量調整を阻む要因の一つとして低血糖に対する懸念がある.

▪2型糖尿病臨床に際して,insulin degludecやinsulin glargine U300製剤など新規製剤の登場により,低血糖リスクが低減,安定した基礎インスリンを補充し,より安全に血糖正常化を目指すことが可能となった.

▪また,insulin degludec/aspart配合薬など個々に適したインスリン製剤や投与方法を考えていくことが,糖尿病治療に携わっていくなかで重要である.

糖尿病合併症予防

腎症 馬場園 哲也
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Summary

▪糖尿病性腎症の発症に対して高血糖が最も重要な危険因子であることから,厳格な血糖コントロールが腎症の発症予防に有効であることのエビデンスレベルは高い.

▪糖尿病治療薬のなかで,SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が腎症の発症・進展を抑制する効果が期待される.

▪高血圧は腎症の発症よりも進展を促進する因子と考えられる.

▪スタチンが腎症の進展を抑制するエビデンスはない.

網膜症 福嶋 はるみ , 加藤 聡
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Summary

▪糖尿病網膜症のスクリーニングには,定期的な眼科受診が欠かせない.糖尿病と診断した時点と,その後最低でも年に1度の眼科受診が必要である.

▪糖尿病網膜症の発症・進展のリスクファクターは,高血糖,高血圧,妊娠,糖尿病罹病期間,喫煙である.

▪治療法には,血糖コントロール,血圧コントロールなどの内科的治療と,網膜光凝固,硝子体手術などの眼科的治療がある.最近では抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療が盛んに行われている.

神経障害 加藤 義郎 , 中村 二郎
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Summary

▪糖尿病患者を診察する際には,必ず神経障害の有無あるいはその病期について診断することが望ましい.

▪厳格な血糖コントロールを行えば,糖尿病神経障害の発症・進展を抑制することができる.

▪成因に基づく治療薬のなかで,その臨床的有効性に関するデータが最も多く確認されているのがepalrestatである.

▪対症療法として使用される薬剤であるduloxetineおよびpregabalinは,本邦での臨床試験でも有効性が確認されている.

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Summary

▪糖尿病患者の一次予防におけるLDL-C目標値は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017」でLDL 120mg/dL未満に設定された.

▪糖尿病患者に対するaspirinの一次予防での予後改善効果は実証されていない,盲目的な投与は控えるべきである.

▪冠硬化症の早期発見には詳細な問診・診察が最も重要である.冠動脈CTを探索的な使用は推奨されない.心筋シンチグラフィーは感度・特異度ともに優れ,造影剤使用もなく,低侵襲な検査であるが,費用が高く施設が限定されることが問題である.

▪冠動脈疾患の二次予防はスタチンによる積極的脂質低下療法が強固なエビデンスに支えられ,確立された治療である.SGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬による新たなエビデンスが次々に報告されている.

認知症 田村 嘉章
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Summary

▪高齢者糖尿病患者では認知症の発症が多い.

▪高血糖,低血糖はいずれも認知症発症に関与する.

▪インスリン抵抗性,血糖変動も認知症発症に関与する可能性がある.

▪血糖コントロールの認知症予防効果に関するエビデンスはほとんどない.

▪食事,運動,薬物療法に関してもエビデンスは乏しい.

▪血糖コントロール目標は,低血糖に留意し,認知機能低下のあるものでは緩和する.

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Summary

▪歯周炎は,嫌気性細菌の感染による慢性の炎症性疾患であるが,その発症や進行過程には,宿主の感受性・抵抗性だけではなく,遺伝的因子や環境的因子などが大きく関与している.

▪糖尿病は,喫煙とともに歯周病の危険因子であり,また,腎症,網膜症,神経障害,動脈硬化性疾患,認知症などとともに,歯周病は糖尿病の慢性合併症として留意する必要がある.

▪糖尿病患者はより重度の歯周炎を伴うこと,血糖コントロール不良者は,コントロール良好者や非糖尿病者と比較して,歯周炎がより進行していること,一方,歯周治療の介入により,糖尿病の血糖コントロール改善の可能性があることが示唆されている.

▪糖尿病患者は,歯周組織検査を含む口腔全体の歯科検診を定期的に継続することが推奨されている.

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Summary

▪レジストリー,データベース研究が統計手法やコンピューターの性能向上などで盛んになっている.

▪電子カルテ情報を標準統一規格(SS-MIX2)で収集する仕組みも整いつつある.

▪糖尿病の全国調査の目的で,電子カルテの情報を匿名化など個人情報に配慮しながら収集するデータベースを構築し,拡充している.

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 大西 私が学生のころは,EBMという概念は授業では習っていなくて,卒後しばらくしてからEBMやガイドラインが一般的になりました.私のように卒後に学び,試行錯誤しながらEBMを実践している医師も多いと思います.教育現場や臨床現場あるいはエビデンスをつくられる現場で活躍されている先生方のEBMについてのお考えや今後の展望などをお伺いして,実地医家の先生方に臨床で活かしてほしいと思います.

 では最初に,先生方の自己紹介からお願いいたします.

Book Review

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 2017年3月に待望の『神経内科専門医試験問題 解答と解説』が刊行された.日本神経学会は1966年に認定医制度の導入を決め,1975年に第一回目の試験が開始されている.その特徴は,このように長い歴史があり,この間,歴代の認定委員長と委員がさまざまな工夫を重ねてきていることである.また,最初から筆記試験・画像試験のみでなく3名の試験委員による面接試験も行われたことであり,現在,面接試験は連続して2組の試験委員から各々実際の診察に関わる過程と診察手技をきちんと評価されている.筆記試験には必修問題,一般問題,症例問題が100題ずつあり,非常に数が多いことでも知られている.

 この試験問題を公開してほしいという声は前からあったが,このたび,ここにその一部を公開し,解答と解説を示したことは,その要望に応え,神経内科専門医を目指す神経内科医の皆さんに非常に役立つものと期待される.一部といっても,必修問題65題,一般問題130題,症例問題156題,合計では351題と多数の問題が取り上げられている.それぞれ広範囲にわたる神経疾患について適切に分布しており,一つ一つが含蓄ある良問となっている.

今日の臨床検査2017-2018 前川 真人
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 臨床検査関係の書籍は大別して2種類の系統に分けられると思う.1つはいわゆる検査項目の辞典のようなもので,それぞれの検査項目を辞書のように調べる目的のものである.もう1つは,系統的に疾患群別に心臓循環器の検査や肝機能検査などという括りのなかで,検査項目も説明されていく教科書的なものであり,比較的説明されている検査項目の数は少ない.本書は,その折衷案的な体裁をもっているだけでなく,膨大な検査項目の説明がなされている.それにもかかわらず,コンパクトな作りになっており,持ち運びで重い感じはないというのが第一印象である.

 中身を順次みていこう.構成としては,最初に「臨床検査 最近の動向」で,臨床検査領域におけるトピックスを扱っている.今版では,エクソソーム解析,クリニカルシーケンス,国際標準検査管理加算とISO 15189施設認定,多項目実用参照物質(MaCRM),うつ病のバイオマーカー,歯周病のスクリーニング検査の6つが取り上げられているが,いずれも非常に新しいキーワードであり,その時点で何が選ばれているのかにも興味がもたれる.次に,主要病態の検査として,27個の疾患・病態の検査が簡潔にまとめられている.適宜,最新の疾患ガイドラインも掲載されており,さらに各検査項目の解説のページが示されているため,すぐにそのページを参照することもできる.

消化器画像診断アトラス 田尻 久雄
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 この度,『消化器画像診断アトラス』(監修:下瀬川 徹教授,編集:小池智幸先生,遠藤克哉先生,井上 淳先生,正宗 淳先生)が,中山書店から刊行された.上部・下部消化管だけでなく,肝胆膵を含めた消化器領域全般の典型的画像所見を網羅したアトラスである.

 本書の特徴は,主要な疾患の様々な画像診断の高品質画像(内視鏡,US,CT,MRI,PET,EUS,ERCP,病理所見等)が豊富に収載されていること,疾患ごとに「概要」「典型的な画像所見とその成り立ち」「確定診断へのプロセス」「治療」の要点が簡潔に解説されていることである.初めて本書を手にとり,非腫瘍性疾患,腫瘍性疾患と臓器別に整理されている項目を1頁毎に開いて読み進みながら, “目を瞠るような鮮明な画像” が “十分な大きさで配列されている” ことに驚きとともに感銘を受けた.

連載 ~キホンをシンプルに考える~ 体液・電解質・酸塩基平衡異常のとらえ方

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Key Point

●Mgは生体内で多数の酵素活性の維持,神経・筋の刺激伝導や収縮,骨形成など多数の重要な役割を有している.

●低Mg血症は多数の病態においてみられる頻度の高い異常である.

●低Mg血症時には低Ca血症や低K血症を伴いやすい.

●高Mg血症はほとんどが腎機能障害を有する場合にみられる.

連載 感染症Basicレクチャー ~明日からの診療に使えるエッセンス~

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Summary

●血管内留置カテーテルがあれば,末梢でも,刺入部に異常がなくても,カテーテル関連血流感染症を考える.

●感染性心内膜炎はまれな疾患と考えると見逃しにつながる.

●血液培養は抗菌薬投与前に採取する.

連載 教えて! レントゲン 胸部単純X線の(得)目付けポイント

連載開始にあたって 瀧川 奈義夫
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 私が医師になった1988年,入局した岡山大学第2内科(現血液・呼吸器・アレルギー内科)では,chest conferenceなるものが毎週開催されていました.当時の故大熨泰亮助教授や上岡 博先生(第53回日本肺癌学会総会会長)を中心に,結核予防会岡山県支部(現岡山県健康づくり財団)の西井研治先生たちがもってこられるたくさんの胸部レントゲン写真を皆で読影していました.当時のCT画像の解像度は悪かったので,主に胸部単純X線写真と(CTではない)断層写真を中心にしたいわゆる “当てっこ” でした.私たち若造は,テキストの読影方法を参考にしながら鑑別診断をしているはずなのに,大熨先生はしばしば「このレントゲン写真はあのときの○○によく似ているから△△の疾患だ」とおっしゃられていました.それがよく当たるものですから,豊富な経験がものを言う世界だと思っていました.一方,岡山大学と川崎医科大学の先生方を中心に始まった岡山胸部疾患懇話会という “当てっこ” の読影会にもよく参加していました.川崎医大の先生は,レントゲン写真をじっくり読んで鑑別診断をあげ,見事に当てていました.岡大の直感的な読影と川崎医大の正確な読影を両方兼ね備えられればと思っておりました.

 私がCTを正確に読む癖をつけたのは,1997年に四国がんセンターで江口研二先生(現帝京大学医学部難治疾患支援学講座特任教授)に出会ってからです.当時はhigh resolution CTがはやってきたころで,細かな読影法を教えていただきこんなに深く読めるのだなと感心しました.

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 61歳女性の方です.当院受診までの経緯を尋ねてみたところ,以下のことがわかりました.

 ✔右肩が痛くて2ヵ月前から整骨院へ通っていたがよくならず,だんだん痛くなるので1ヵ月前に整形外科を受診した.

 ✔整形外科では肩のX線を撮ったが異常は指摘されず,痛み止めを処方され,骨粗鬆症の疑いで注射もされた.

 ✔しかし,それでも痛みはひかず,背中も痛くなり右手もしびれてきたため,内臓が悪いのではと思い内科を受診した.血液検査では肝機能も腎機能も異常なかったが,胸部X線で肺がんが疑われるということで紹介された.

 ✔タバコは1日15本程度,40年間ほど吸っており,咳や痰はずっと前からあった.今回,肺に悪いと思いやめた.

 さて,どこが怪しいでしょうか?

連載 明日から使える! 臨床英語論文の書き方,書かせ方

第7回 藤尾 圭志
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本連載の意義

 本連載は多くの論文を書かれているエキスパートの先生方に同じ質問に対して回答していただきます.共通の質問に回答してもらうことでみえてくる論文執筆に共通する定石や特定の先生だけのTipsを学びとっていただければと思います.(連載企画者 坂倉健一)

連載 呼吸器内科×○○科で語る! Comorbidity患者さんの診かた

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 今回の患者さんは,喘息で当科に通院中の50歳代の女性の患者さんです.数日前に腰痛が発症し近医整形外科を受診したのですが,喘息で当科に通院していることから当院での治療を勧められたため当院整形外科受診となりました.喘息の重症度は中等度ですが,コントロールは比較的良好です.腰痛については発症後持続的に認めていますが眠れないほどではありません.

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Clinical Presentation

 症 例:87歳,男性.

 主 訴:呼吸困難.

 佐塚 経過15年の間質性肺炎で当科に通院しており,副腎皮質ステロイドで治療が行われていました.経過中に複数回,急性増悪をきたし,ステロイドパルス療法などで治療が行われましたが,3年前からはprednisolone 4mg/日の内服で安定して経過していました.しかし,X年Y月上旬の外来日に来院せず,以降はprednisoloneが中断され,入院2日前に外来を受診した際には胸部X線像で肺炎が疑われたため,抗菌薬が開始されていました.入院前日夜から呼吸困難を認め,入院同日朝から動けなくなったために救急要請され,当院へ搬送,緊急入院となりました.

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 は じ め に 偽膜性アスペルギルス気管気管支炎は,気道に限局した病変を形成する侵襲性アスペルギルス症であり,診断困難なことから致死的経過をたどる例が多い.今回,われわれは糖尿病患者に発症した1例を経験した.

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 は じ め に 溶接ヒュームは金属の溶接作業に伴って発生する,数μmの酸化鉄やその他の金属粒子を主体とした蒸気である.ヒュームは長期間吸入すると溶接工肺と呼ばれる塵肺を発症することが知られているが,ときに化学性肺炎をきたすことがある.これまで急性症状を伴った溶接ヒュームによる化学性肺炎に対して気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)を施行した症例の報告は少ない.今回,われわれは血中,気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid:BALF)中のフェリチン上昇を伴った溶接ヒュームの吸入による化学性肺炎の1例を経験したので報告する.

基本情報

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臨床雑誌内科
121巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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