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EBMとは
evidence based medicine(EBM)とは,診療を行うにあたって,良質な臨床研究によって得られたエビデンスと医師の経験に基づく臨床技能を統合して実施するものです.最新のエビデンスを正しく理解・解釈し,個々の患者の病態や発症にある背景,価値観や嗜好などを把握し,臨床経験を生かして診療方針を決めていくこと,ともいえます1).
診療では日々多くの疑問が生じます.その疑問を解決すべくエビデンスを得ようとします.しかし,実際は数多くの臨床研究成果が論文化されているので,遭遇するあらゆる疾患に関するエビデンスすべてに目を通すことは多様な疾患に遭遇する実地医家には難しいこともあり,アップデートは大変です.そこで頼りになるのがガイドラインです.糖尿病診療のガイドラインは最新のエビデンスに基づき定期的に更新されます.質の高いエビデンスを網羅されているのでEBMにおいて大変有用なものです.しかし,ガイドラインはあくまで一般的な診療指針を示すものであり, “cookbook” のように書いてあることに従っていればEBMができる,というわけではありません1).つまりガイドラインに従った診療をすることがEBMではありません.ガイドラインの内容を正しくかつ柔軟に解釈したうえで,その適応については個々の患者の状況に応じて臨床経験のある医師の判断を交えて診療しなくてはEBMとはいえないのです.また,ガイドラインに書いていない状況における個別の患者の診療で生じる新たな疑問については,自分でエビデンスを収集する必要があります.欲しいエビデンスの検索と正しい解釈ができなければなりません.そして実際の診療でエビデンスから得られた知識を生かしながら実践し,そしてその結果を自己評価していく.これがEBMです.まとめると以下の5つのステップです2).
①診療上の疑問を明確にする
②疑問に関するエビデンスを収集する
③収集したエビデンスを批判的に吟味する
④解釈したエビデンスと臨床経験を生かしつつ個々の症例に応じた診療をする
⑤自分の診療を振り返って評価する
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