臨床雑誌内科 104巻5号 (2009年11月)

呼吸器感染症2010 新たな脅威と必要な新知識

新型インフルエンザ 工藤 宏一郎
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2009年4月、WHOはメキシコ発の豚由来新型インフルエンザ(S-OIV,A/H1N1)の発生を宣言した。H1N1で抗原ドリフト型であったが、遺伝子の構成からはほとんどの人にとっては新型であったため、とくに小児、若人、成人(65歳以下)に感染が広まっている。幸い毒性は強くない。臨床的には大多数にとって、軽症、通常のインフルエンザ並みであるが、基礎疾患を有する者、妊婦、小児、幼児、肥満に重症化することがある。健常者でも重症化する例もある。重症化とは、重症ウイルス肺炎、脳症、基礎疾患の悪化で、ウイルス性肺炎は急激に進行し、呼吸不全となる。病理像はDAD(びまん性肺胞障害)と細気管支炎である。重症肺炎の臨床像、病理像は鳥インフルエンザ(H5N1)と類似している。基礎疾患に対する日常の十分な治療、重症化の早期診断のもと、早期治療(抗ウイルス薬の投与)などで重症化を防ぐ。治療薬は抗ウイルス薬が主であるが、他の病態に応じて十分な治療が必要である。

市中肺炎 渡辺 彰
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市中肺炎の診療には、日本呼吸器学会の成人市中肺炎診療ガイドラインが参考となる。市中肺炎の起炎菌には肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジアが多い。肺炎球菌やインフルエンザ菌による肺炎を細菌性肺炎といい、βラクタム系薬が奏効する。肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジアによる肺炎を非定型肺炎といい、ニューキノロン系薬やマクロライド系薬、テトラサイクリン系薬が奏効する。起炎菌不明であっても、細菌性肺炎と非定型肺炎とに鑑別すれば、その後の治療薬選択は容易となる。細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別は、初診時でも簡単な臨床病態因子の把握のみで可能である。A-DROPシステムを用いると、重症度が迅速かつ正確に判断できる。尿中抗原検査法などの肺炎病原体迅速診断法が発達しており、有用である。市中肺炎に対するニューキノロン系薬の第一選択は、慢性の呼吸器基礎疾患を有する例である。

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結核は飛沫核(空気)感染でヒトからヒトへと伝播する二類感染症であり、とくに喀痰塗抹陽性の結核は隔離入院の対象となる。結核の院内感染対策の第一は、肺結核の見逃しをなくすことである。2週間以上続く咳、痰、発熱が典型的な症状であり、糖尿病、担癌状態、免疫抑制薬や副腎ステロイドの投与、高齢が重要なリスク要因である。HRCT上の木の芽様所見は、活動性肺結核に比較的特異的な画像所見である。QFT検査は、結核感染有無の判定にきわめて有用である。治療は多剤併用化学療法で行うが、薬剤耐性、薬剤副作用、服薬コンプライアンスの問題点がある。

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レジオネラは細菌ではあるがほかの細菌にはないいくつかの特徴を有しており、レジオネラ肺炎を臨床的に疑う場合は本症の特徴を理解することが重要である。主な特徴として(1)グラム染色で鏡検できない、(2)通常の細菌性培地で培養できない、(3)βラクタム系薬、アミノ配当体薬、clindamycinなど通常の細菌性肺炎に有効な抗菌薬が無効である、(4)集団感染を引き起こす、(5)感染源が病院施設を含む人工水源が中心である。(6)宿主の危険因子が知られている、(7)急速に重症化し発症後早期に有効な抗菌薬が投与されなければ致命率が高くなる、などがあげられる。レジオネラ肺炎は早期治療が予後を左右するので、重症肺炎では常に鑑別にあげることが重要である。

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ヒトに肺炎を起こすクラミジアは4種(C.pneumoniae、C.trachomatis、C.psittaci、C.felis)報告されているが、中でも頻度の高いのはC.pneumoniaeである。C.pneumoniae呼吸器感染症の最大の特徴は症状が軽微または無症候で、終生免疫が成立しないため感染を繰り返しやすい点にある。抗菌薬治療が行われていない症例が多数存在し、このことが病態形成に重要な役割を果たしていると推測されている。治療はマクロライド系薬、テトラサイクリン系薬、ニューキノロン系薬(レスピラトリー・キノロン)およびケトライド系薬が有効で、治療に難渋する症例がない。

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マイコプラズマは、市中肺炎の重要な原因菌の一つである。近年、国内の小児を中心にマクロライド系薬耐性マイコプラズマ肺炎が急増している。頑固な咳嗽や高熱と、白血球増加がないことが臨床上の特徴である。基礎疾患のない若年成人や学童に好発する。胸部X線写真では特徴的所見に乏しいが、CTでは気管支壁の肥厚、気管支周囲に強い浸潤影などの特徴がある。本症を疑った場合は、PPLO培地でも喀痰培養を行うことが重要である。マイコプラズマIgM抗体(迅速診断法)陰性で、本症を除外できない。治療にはマクロライド系薬、テトラサイクリン系薬、レスピラトリーキノロンなどが応用される。

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成人の遷延性咳嗽の原因として、百日咳は重要な位置を占める。成人の百日咳は、小児に比べて特徴的な臨床所見や検査所見に乏しく、他の感染後咳嗽との鑑別は困難である。ワクチン既接種者では慢性抗体保有率が高いこと、および診断基準が確立していないことより、シングル血清での判定には留意を要する。早期にマクロライド系薬等の抗菌薬を投与すれば有効とされるが、その後は対症的治療となり有効な治療のエビデンスはない。家族内感染を防ぐため、成人でのワクチンの再接種も検討されている。

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肺放線菌症は、健常人の口腔内等に常在する嫌気性のグラム陽性桿菌の放線菌症による慢性化膿性疾患である。口腔内病変、糖尿病などの基礎疾患を有する例が多い。臨床像、画像所見から悪性腫瘍、肺結核等との鑑別が困難であり、確定診断には、外科的切除が必要となることが多い。治療はペニシリン系抗菌薬の長期投与である。好気性放線菌とも呼ばれるNocardia spp.によるノカルジア症は近年、日和見感染症として増加傾向である。肺ノカルジア症は脳膿瘍を合併した場合は、予後不良であり、適切な診断、治療が重要である。

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非結核性抗酸菌症、とくにMAC(Mycobacterium avium-intracellulare complex)症は増加している。多彩な臨床所見を認め、症状が軽いことも多く一般診療にしばしば紛れ込む。非結核性抗酸菌症の診断指針が改訂され、一般医にも使いやすくなった。診断と治療開始は分けて考える必要がある。診断が遅れると、外科的治療を含めた初期治療を受けるチャンスを失う。発病早期の治療は選択肢も広く有効性も高いため、早期診断が重要である。通常の気管支拡張症との鑑別が遅れると、clarithromycin単剤投与で難治化する例もある。

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今年はPneumocystisが発見されて100年目の節目を迎えるが、いまだに人工的な培養が不可能であり、遺伝子解析から生物学的な解明が進められている。肺炎のない免疫能低下患者だけでなく、慢性肺疾患患者や健常者の肺からもPneumocystisが検出されている。臨床症状・画像所見に加え、呼吸器検体から顕微鏡的にPneumocystisを検出できれば確定診断となるが、PCR法による検出や血清1,3-β-D-glucan高値も有用な所見である。治療は、trimethoprim/sulfamethoxazole(TMP/SMX)が第一選択であり、低酸素血症を伴う中等症~重症例では、副腎皮質ステロイドの併用を行う。HIV感染以外の多彩な免疫抑制患者が増加しており、ニューモシスチス肺炎(PCP)の可能性を常に念頭に置きつつ、ハイリスク症例においてはTMP/SMXを中心とする予防を行う必要がある。

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1990年代に入り、深在性真菌症に対する抗真菌薬は多様化し、菌種・病態に応じた適切な治療が求められ、深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2007(深在性真菌症のガイドライン作成委員会(編)、2007)が出版されている。呼吸器領域における深在性真菌症は、血液疾患と異なり、免疫状態は比較的保たれていることが多く、侵襲性肺アスペルギルス症や肺接合菌症など急激に致死的な転帰をたどる一部の肺真菌症を除き、真菌学的検査や病理学的検査による確定診断後に、適切な抗真菌薬を投与することが望まれる。

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サイトメガロウイルスは、ヘルペスウイルスに属し、多彩な感染症を引き起こす。サイトメガロウイルス肺炎は、細胞性免疫が低下した患者の日和見感染症として発症する。ニューモシスチス肺炎などとの合併がある。同種異型幹細胞移植後、臓器移植後、AIDSなどでリスクが高い。肺組織の感染細胞の証明が、確定診断になる。アンチゲネミア、CMV特異的IgM抗体測定も、重要な診断法である。呼吸困難、発熱、全身倦怠感、低酸素血症がみられたら、本症を疑う。治療はganciclovir、CMV高力価γ-globulinなどの投与である。

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院内肺炎は診断がむずかしく、分離された細菌が定着菌か原因菌かの鑑別は困難である場合が多い。グラム染色の貪食像などが参考になるが、グラム染色の所見を利用することのできる施設は少ない。そのため、エンピリック治療が優先され、その場合には耐性菌としての緑膿菌とMRSAの存在を想定するか否かで、抗菌薬の選択が変わってくる。すでに培養が陽性であったり、グラム染色で推定された場合には、これらの耐性菌に有効な抗菌薬を選択する。薬物動態(PK)と薬力学(PD)の視点からは、日本における抗菌薬の投与量は十分ではなく、とくに耐性菌を疑う場合には投与量、投与法の工夫が必要である。

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高齢者肺炎は、ほとんどが誤嚥性肺炎である。高齢者の急速な増加により、高齢者肺炎の医療的な重要性が高まっている。その実態は、夜間の不顕性誤嚥による下気道感染症である。不顕性誤嚥は高齢者には広く認められる現象であり、特殊な現象ではないが、口腔内や咽頭・喉頭の細菌叢の悪化と結びつくと肺炎の重要な原因となる。適切な抗菌薬選択と同時に、肺炎の原因である誤嚥予防を行うことが、治療と予防のうえから必須である。誤嚥性肺炎は、抗菌薬の投与だけではよくならない。そのことが理解できれば、誤嚥性肺炎の治療と予防戦略は明快になる。

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タミフル使用による異常行動の出現の疑いが提起され、社会的な反響を呼んだ。全国の臨床医の協力を得て行った筆者らの研究班では、インフルエンザ様疾患における異常行動はタミフル未使用群でも使用群でも同様に出現することがわかった。これらの研究成績などについて検討した調査会の結論などについて、本稿で述べた。近年インフルエンザA/H1N1(ソ連型)のほとんどは、oseltamivir耐性遺伝子H275Yに置換している。新型インフルエンザウイルスH1N1pdmは、幸いこれまでのところは世界でもごく少数株の出現にすぎないが、国内でも数株が検知されている。現在、新型インフルエンザウイルスにおける耐性株について臨床上の問題はないが、今後の動向に注意が必要である。

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インフルエンザ流行前の準備としては、サーベイランスの実施、対策マニュアルの作成とその周知、抗インフルエンザ薬の予防内服に関する取り決め、職員へのインフルエンザワクチン接種の推奨、があげられる。インフルエンザ流行期に行うこととしては、インフルエンザ様症状のある外来受診患者のスクリーニング、入院患者および外泊患者による病棟へのインフルエンザ持ち込みの防止、面会者による病棟へのインフルエンザ持ち込みの防止、咳エチケットの啓蒙、職員がインフルエンザ様症状を発症した場合の適切な対応、があげられる。病棟でインフルエンザが発生した場合の対応としては、発端者の治療、発生状況の把握と濃厚接触患者のリストアップ、抗インフルエンザ薬の予防投与、があげられる。

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わが国における侵襲性感染症の原因菌は血清型12F,3、肺炎では3型、19Fの頻度が高かった。75歳以上の高齢者、自立歩行困難者における23価肺炎球菌ワクチンによる肺炎予防効果、費用対効果が示され、また慢性閉塞性肺疾患における感染による急性増悪を有意に予防した。しかしながら、本ワクチンの高齢者における接種率はいまだ低く、今後の接種率向上のためにはわが国における本ワクチンの臨床効果のエビデンスの蓄積、さらには再接種の承認が不可欠である。

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呼吸器感染症の感受性遺伝子研究には、二つの試みがある。一つ目は、候補遺伝子アプローチで、感染症の病態や免疫学の知識を前提として、標的とする遺伝子を選択し、遺伝子多型の機能にまで踏み込んで、集中的に解析を加えるものである。二つ目は、ゲノムワイド関連解析により、予備知識なしに、染色体全領域から統計学的な方法のみを頼りに、主要な疾患関連遺伝子を同定するものである。いずれにせよ最終目的は、その成果が新興、再興呼吸器感染症の分子病態の理解、治療、予防へとつながり、医療資源の乏しい国々も含めた国民の福祉に貢献することである。本稿では、その背景と展望について概説する。

診療controversy medical decision makingのために 経口糖尿病薬のfirst choice

インスリン分泌促進系薬剤 森 豊

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予防できる感染症は予防接種で予防することが基本である。本稿では、小児が接種すべき予防接種の種類とその意義・方法・有用性について述べる。主たる予防接種の対象は、BCG、ポリオ、DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)、麻疹、風疹、ムンプス、水痘、インフルエンザである。接種方法、接種してはいけない状態を見極める。診療医は、問診・診察時、接種時、接種後の注意事項、とくにアナフィラキシーへの対応を知っておくべきである。インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンなどの新しい予防接種も紹介する。

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63歳女。3ヵ月前からの体重減少、食欲不振、全身倦怠感で受診し、前庭部に胃癌3型を認めた。入院後に低血糖発作による意識レベル低下・失見当識・冷汗を認め副腎不全による低血糖発作を疑った。甲状腺エコーでびまん性甲状腺腫を認め、ホルモン基礎値では橋本病による甲状腺機能低下所見を示した。ホルモン負荷試験(第4者負荷試験)の反応はGRH負荷でGHは基礎値が軽度高値で正常反応、TRH負荷でTSH、PRLは基礎値が高値で過大反応、CRH負荷ではACTH、コルチゾールとも全く無反応、LH-RH負荷ではLH、FSHとも低反応で遅延した。以上から、橋本病と甲状腺機能低下を合併したACTH単独欠損症と診断した。hydrocortisoneの補充後にlevothyroxine sodiumを追加併用し良好なコントロールを得て低血糖発作も消失した。手術前日に甲状腺ホルモン投与を中止したが機能低下は認めず、周術期にはhydrocortisoneを静注に変更して胃癌に対する幽門側胃切除(B-I再建術)を行うことができた。

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54歳女。飲酒時に突然の非拍動性頭痛および排便時の頭痛が出現し、3時間程で改善したが頭重感は残存してその後も頭痛は出現した。近医にて右1/4半盲を指摘され精査加療目的で当院入院した。MRIで左基底核付近に脳梗塞を示唆する点状像、MRAで脳動脈にびまん性の数珠状狭窄を認め、脳血管造影で前大脳動脈を中心に頭蓋内血管に狭窄、狭窄後拡張像を認めた。脳血管炎を疑いprimary angiitis of the CNS(PACNS)と診断してcilostazol内服、ステロイドパルス療法を3日間施行した。その後、エンドキサンパルス療法を施行し、prednisolone(PSL)内服を開始した。頭痛は改善傾向を示し、第17病日に2回目のエンドキサンパルス療法を施行してPSLを減量した。第20病日にamlodipineを併用してPSLは2週ごとに漸減し第51病日に退院した。毎週MRAを施行し、前・中脳動脈の狭窄は徐々に改善し、第28病日には狭窄像は認めず血管造影でも同様の所見を示した。以後神経症状や頭痛の再燃は認めなかった。

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59歳男。16年前に糖尿病を指摘されたが無治療で経過し5年前より口渇、多飲、多尿、視力低下を自覚したが放置していた。右足背腫脹の悪化で当科紹介入院となった。右足背から足趾は悪臭、膿汁排泄を伴って発赤腫脹し、第III、IV趾は暗紫色調に変化して両下肢遠位の感覚鈍麻、振動覚低下、アキレス腱反射消失を認めた。蛋白3+、白血球増多、CRP高値、貧血、腎不全を認め、膿培養よりStreptococcus agalactiae 3+、Staphylococcus aureus 1+を検出した。増殖糖尿病網膜症、腎症4期、進行性の多発神経障害・自律神経障害の合併症を認めた。インスリン頻回注射療法で血糖コントロールを開始し、PGE1製剤投与、低アルブミン血症にアルブミン製剤投与、貧血に輸血を行った。形成外科で多量の膿汁貯留に皮膚切開・壊死組織にデブリードマン・創洗浄を施行し、piperacillin、clindamycin投与とスルファジアジン銀外用を行い感染徴候は徐々に改善した。第35病日に黒色壊疽に陥った第IV趾を切断し第103病日に第III趾腐骨除去を行った。インスリン量は炎症の改善に伴い減少し、26~28単位/日とコントロール良好で、増殖糖尿病網膜症に硝子体手術を計3回行い第142病日に軽快退院した。

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35歳女。約2週間のケニア共和国滞在の帰国直後より下痢・血便を認めた。2日間で改善したがその後発熱して改善しないため第6病日に受診した。白血球の左方移動、血小板の著明な減少、FDP高値と更にLDH、間接ビリルビン、CRPの上昇を認めた。熱帯熱マラリアを疑い、血液塗抹標本の鏡検から赤血球原虫寄生率30.3%の熱帯熱マラリア原虫を認めた。同日ファンシダール内服およびメフロキン投与を行うが無効で、脳症の出現も認めた。入院3日目より入手できたアーテスネート坐剤およびキニーネ注射薬を併用投与し、2日後には赤血球原虫寄生率は10.1%に低下し脳症も改善した。入院5日目よりアーテスネート坐剤のみの投与で症状も軽快し、入院10日目頃より認めた高度肝障害および腎障害は全身管理にて改善した。入院43日目のDAPI染色の再検でマラリア原虫を確認してアーテスネート坐剤を3日間追加投与し、入院58日目に後遺症なく退院した。

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60歳男。半年前より食事量の低下と倦怠感を自覚し近医にて糖尿病性ケトアシドーシスと診断され、入院した。入院中左上肺野に腫瘤陰影を指摘され当院紹介入院となった。末梢血に正球性正色素性貧血を認めたが腎機能は正常で、鉄利用障害を呈した。腫瘍マーカーは正常範囲内であった。X線で左上~中肺野に10×10cmの辺縁が比較的明瞭な類円形の腫瘤を、CTで左肺上葉に肋骨まで進展する98×95mmの腫瘤を認めた。気管支肺生検より核の大小不同、不整を示す異形細胞の充実性増殖を認め、肺大細胞癌、T4N0M0、StageIIIbと診断してcisplatinとvinorelbineの化学療法および原発巣中心の放射線療法で肺病変は29%縮小した。加療開始46日目に上部消化管内視鏡で胃体部大彎側に潰瘍底を有する隆起性病変を認め、生検により肺大細胞癌の胃転移と診断した。化学療法6コース施行後に腫瘍の小彎側までの進展を認め、腫瘍の増大と潰瘍底からの出血を認めた。内視鏡的な止血は困難となり胃全摘術を施行し、腸瘻を空腸-空腸吻合により腹壁に固定した。合併症なく食事摂取も良好となり術後40日目に自宅療養となったが術後61日目に肝転移、全身倦怠感の増悪で再入院し、その後緩和ケア目的転院となった。

基本情報

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臨床雑誌内科
104巻5号 (2009年11月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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