臨床雑誌内科 103巻5号 (2009年5月)

頭痛・めまいの診療 確実な診断・治療をするために今必要なこと

  • 文献概要を表示

片頭痛に代表される一次性頭痛の病態が神経科学の進展に伴って進んでいる。片頭痛の疼痛は三叉神経血管系の神経原性炎症が中心的病態であり、片頭痛前兆は皮質拡延抑制(cortical spreading depression:CSD)がその本質であることが明らかにされている。家族性片麻痺性片頭痛の原因遺伝子が明らかになり、イオンチャネルの異常とCSD閾値の変化が注目されている。CSDにはグルタミン酸の代謝異常が重要な役割を果たしている可能性がある。片頭痛をチャネル病と捉える提唱もなされている。これまでCSDと神経原性炎症は独立したパラレルな現象と考えられていたが、プロテナーゼなどを介してCSDが神経原性炎症のトリガーとなる可能性が注目されている。今後の研究のさらなる展開と新たな治療薬の開発が期待されている。

  • 文献概要を表示

めまいはプライマリ・ケアの代表的な訴えの一つである。その原因の多くを占めるのが内耳性であるが、内耳性めまいの三大疾患はメニエール病(メニエール症候群)、前庭神経炎、良性発作性頭位めまい症である。症状は類似しているが、病態生理はそれぞれ異なる。内耳の構造は聴覚の蝸牛と蝸牛神経、回転感覚の三半規管、水平・垂直加速度感覚の耳石器と前庭神経および内リンパ嚢からなる。メニエール病は蝸牛と半規管の内リンパ液の内リンパ嚢における吸収障害で、前庭神経炎は前庭神経のウイルス性の炎症、良性発作性頭位めまい症は、浮遊する耳石器から剥脱した浮遊する耳石の後半規管の前庭感覚細胞への刺激と推察されている。内耳は小さいが鋭敏な感覚器装置である。めまいの訴えにはこのような病態が背景にある。

  • 文献概要を表示

新しい国際頭痛分類第2版(ICHD-II)は2004年に公表され、本邦では2007年に新訂増補版が発行されている。ICHD-IIは、第1部:一次性頭痛、第2部:二次性頭痛、第3部:頭部神経痛・顔面痛、付録の4部構成からなり、頭痛は14のグループに分類されている。片頭痛(前兆のない片頭痛および前兆のある片頭痛)、緊張型頭痛、群発頭痛、薬物乱用頭痛の診断基準について精通する。疫学調査によると15歳以上の日本人における慢性頭痛有病率は約40%(片頭痛8.4%、緊張型頭痛22.3%、その他9%)であり、慢性頭痛患者の多くが日常生活に支障をきたしている。現時点ではICHD-IIが疫学研究や的確な頭痛治療計画を立てるのに必須である。ICHD-IIの普及と、それに則った頭痛の診療が切望される。

  • 文献概要を表示

危険な頭痛を見落とさないためには、一次性頭痛の病態生理、臨床症状を把握し、それとの相違点を鑑別することが重要である。片頭痛と群発頭痛の発症には脳血管周囲の三叉神経終末が密に関与しているため、結果として三叉神経終末を刺激する疾患である。もやもや病、脳動静脈奇形、副鼻腔炎などは、近似した頭痛を呈する。緊張型頭痛と近似する頭痛を呈する疾患としてラトケ嚢胞が代表的であるが、近年、雷鳴頭痛の原因として、その壁細胞内にある杯細胞からの自然排液が注目されている。一次性頭痛の診断基準から、明らかに、その頻度、程度が逸脱している場合には、増悪因子として、甲状腺機能障害や帯状疱疹ウイルスの影響を考慮して、必要に応じて血液学的検査を施行する。

  • 文献概要を表示

片頭痛は、悪心、嘔吐および光過敏や音過敏などを伴う拍動性の頭痛で、前兆のあるものとないものの2つに分類される。頭痛の性質として、(1)片側性、(2)拍動性、(3)中等度~重度の頭痛、(4)日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪するなどの特徴をもつ。前兆は通常5~20分にわたり徐々に伸展し、かつ持続時間が60分未満の可逆性脳局在神経症状である。片頭痛に関する情報を客観的に整理するため、頭痛ダイアリーは有用なツールである。片頭痛急性期治療薬として、acetaminophen、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤、トリプタン系薬剤がある。本邦で処方可能なトリプタン系薬剤はsumatriptan、zolmitriptan、eletriptan、rizatriptanおよびnaratriptanの5種類である。

  • 文献概要を表示

緊張型頭痛は発現頻度に応じて稀発反復性、頻発反復性、慢性の3つに分類される。反復性では末梢性疼痛メカニズム、慢性では中枢性疼痛メカニズムの関与が重視されている。診断はICHD-IIに基づいて行うが、軽症の片頭痛との鑑別はそれほど容易ではなく、とくに緊張型頭痛と片頭痛を合併する患者では個々の頭痛の初期に両者を鑑別することはなかなかむずかしい。反復性では急性期治療が、慢性では非薬物療法を含めた予防療法が治療の中心となるが、エビデンスレベルの高い治療は少なく、個々の患者に応じたきめ細かい対応が必要である。

  • 文献概要を表示

群発頭痛は、一次性頭痛の中で最強の頭痛である。診断は、診断基準の正しい理解と、特徴的症状(痛みの部位、持続時間、自律神経症状)の把握により容易となる。治療は、発作時にはsumatriptanの皮下注が第一選択である。予防治療としては、verapamilと副腎皮質ステロイドの併用が中心となる。ergotamine tartrateは、夜間、早朝の発作予防にある程度効果的である。

  • 文献概要を表示

くも膜下出血では、典型的な頭痛を伴わない場合もあり、注意を要する。脳出血では、くも膜下腔への進展、あるいは局所への圧迫をきたす場合に、頭痛を呈する。脳出血が軽症化しており、頭痛の有無による脳梗塞との鑑別は不可能である。眼窩部痛や頭痛を伴う眼筋麻痺では、内頸動脈・後交通動脈瘤、頸動脈・海綿静脈洞瘻(硬膜動静脈瘻)など、注意すべき疾患が多い。虚血性脳血管障害で頭痛を伴う場合には、脳動脈解離を疑う。脳静脈血栓症、CADASIL、下垂体卒中など頭痛を伴う注意すべき疾患もある。頭痛患者でも神経症候を的確に把握して、CT・CTA、MRI(拡散強調画像、FLAIR、T2*を含む)・MRA・MRV、髄液検査など、補助検査を必要に応じて適切に選択する。

  • 文献概要を表示

頭痛は、大きく一次性頭痛と二次性頭痛とに分けられる。一次性頭痛で生命に危険が及ぶことはないが、二次性頭痛では診断の過ちが、重篤な状態を引き起こす。このため二次性頭痛の機序や臨床像の特徴を把握し、早期に的確な診断をしなければならない。脳腫瘍の頭痛は牽引性頭痛であるが、腫瘍自体の牽引と頭蓋内圧亢進による牽引があり、変化をみせるため、注意深い観察が必要である。

  • 文献概要を表示

中枢神経系の感染症で、激しい頭痛を呈するのは、髄膜に炎症を起こしている場合と、脳浮腫による場合である。緩徐に進む神経感染症である神経梅毒やプリオン病などは、初発症状として、激しい頭痛を呈することは一般にはない。激しい頭痛を伴うもので、迅速に診断、治療を行えば救命可能な急性発症の中枢神経系感染症のうち、代表的なウイルス性感染症としては単純ヘルペス脳炎があげられ、一刻を争う神経救急疾患としては、重症の細菌性髄膜脳炎があげられる。

  • 文献概要を表示

めまいのタイプには回転性めまい、浮動性めまい、失神性めまいがあり、随伴症状として蝸牛症状(聴力低下・耳鳴・耳閉塞感)、耳痛、意識消失、中枢神経症状(呂律が回らない・複視・しびれ・麻痺など)、自律神経症状(嘔吐、嘔気、血圧異常)などが知られている。問診ではこれらの有無を確認し、鑑別すべき疾患、および必要な検査を決定していく。自律神経症状を含まない純粋なめまいの持続時間、およびめまいの誘因を確認すること、頭位眼振検査や頭位変換性眼振検査を行うことが重要である。定方向性眼振を観察しても、末梢性(内耳性)めまいと決めつけてはいけない。小脳の脳血管障害でも、同様の眼振が観察されることがあるため、注意が必要である。

  • 文献概要を表示

症状がめまいのみの場合、もっとも多い原因は良性発作性頭位めまい症(BPPV)であり、中枢疾患(脳卒中)が原因である可能性はわずか1~3%にすぎない。実際のめまい診療では、まず脳幹と小脳上部の障害のチェックのために、めまい以外の神経症候を探す。次いで末梢前庭障害をチェックするために、頭位・頭位変換眼振の有無を調べる。最後に小脳下部の障害をチェックするために、起立・歩行障害の有無を調べる。

  • 文献概要を表示

良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、起床時や寝返り時など頭位の変化によって誘発されるめまいである。中枢神経所見はなく聴力検査も正常だが、頭位・頭位変換眼振検査で眼振を認める。病因は、半規管結石症とクプラ結石症が主である。後半規管型BPPVがもっとも多く、次いで外側半規管型BPPVとなる。治療には薬物療法、理学療法、手術療法がある。

  • 文献概要を表示

前庭神経炎・メニエール病は、良性発作性頭位めまい症に続く、頻度の多い疾患である。前庭神経炎は、持続性の激しい回転性めまいを特徴とし、聴力変化、耳鳴などの蝸牛症状はない。激しいめまいのため、入院が必要となることも多い。治療では、早期に副腎皮質ステロイドを用いると平衡障害の代償がよいとされる。メニエール病は有名な病名であるが、正確に診断されていないことが多い。確実例といわれる症例は、それほど多くない。感音難聴と、繰り返す回転性のめまい発作を特徴とする。耳鳴りや耳閉感などの症状を伴うこともある。ストレス疾患であり、生活指導やストレスに対する心理治療などが試みられている。両疾患ともに、めまい急性期には、自発眼振が観察される。

  • 文献概要を表示

急性のめまい発作は、神経救急の現場ではもっとも遭遇することの多い症状の一つである。大半は末梢性のめまいであるが、少数ながら、重篤な脳幹部の脳血管障害の一症状である場合がある。動揺性めまいはもとより、回転性めまいであっても、他の神経症状合併の有無を確実に評価することが重要であり、たとえ随伴症状に乏しくても、血管障害の可能性は残されていることを忘れてはならない。脳幹部脳血管障害の診断に関しては、頭部CT検査は無力に近く、可能な限り早い時期に、頭蓋内外の血管も含めた頭部MR検査を実施し、除外診断を行う必要がある。

  • 文献概要を表示

めまいは多彩な症状の表現であり、原因となる病巣の存在部位も多岐にわたるため、すべての脳腫瘍の症状となる可能性がある。ここではとくに、めまいと関連が深いと考えられる脳腫瘍に限定し、言及することとする。めまい症状のみで脳腫瘍を鑑別することは不可能であり、随伴する症状の観察と画像診断が重要である。

  • 文献概要を表示

薬物は治療、診断、予防を目的として投与されるが、これらの目的とした反応を主作用といい、目的でない残りのすべての反応を副作用(side effect)という。また、目的でなく好ましくない反応を有害反応(adverse drug reaction)と呼んでいる。副作用には、薬効に関連したものとしないものとがある。頭痛とめまいの副作用を起こす頻度の高い薬物には、中枢神経作用薬と循環器作用薬がある。副作用のメカニズムは、薬物血中濃度の上昇や感受性の上昇によるものと考えられる。とくに注意が必要であるのは、薬物間相互作用による薬物血中濃度上昇や薬理作用の増強であり、薬物の選択に注意が必要である。

  • 文献概要を表示

頭痛やめまいを呈することが多い疾患として、うつ病、パニック障害、身体表現性障害が知られている。大うつ病では、抑うつ気分などの精神症状がみられるほか、全身の身体症状を認めることが多い。パニック発作の特徴は、突然出現する不安発作であり、めまいを呈することが多い。身体表現障害では、適切な検査を行っても説明することができない多彩で不安定な身体症状を特徴する。身体疾患の中で、心理・社会的要因が発症や経過に関与している病態は、心身症と呼ばれている。

トピックス 小児の頭痛 藤田 光江
  • 文献概要を表示

小児にも一次性頭痛は多く、片頭痛と緊張型頭痛がほとんどを占める。小児の前兆のない片頭痛は、頭痛の持続時間が1~72時間、前頭側頭部であれば、両側性でも片頭痛と診断される。小児の片頭痛の治療は、まず非薬物療法が勧められるが、薬物が必要な場合も鎮痛薬(ibuprofenとacetaminophen)が第一選択薬である。小児片頭痛に対するトリプタン系薬は、sumatriptan点鼻薬が12歳以上でエビベンスがある。心理・社会的要因が関与する慢性連日性頭痛は、難治であることが多く、頭痛ダイアリーの記載と長期フォローアップが必要である。

  • 文献概要を表示

薬物乱用頭痛は、片頭痛患者に多い。市販薬、エルゴタミン製剤、トリプタン系薬剤のいずれも薬物乱用頭痛を起こしうる。薬物乱用頭痛を予防するためには、患者教育が必要である。治療は患者への説明、原因薬物の中止、予防薬の投与が有用である。薬物乱用頭痛の70%は改善するが、難治性のものも存在する。治療成功例でも、5年以内に再び再物乱用に陥る患者が多い。

  • 文献概要を表示

めまい診療においては、詳細な問診とともに、眼振の性状を観察することが重要である。自発眼振や注視眼振、頭位・頭位変換眼振所見などから有意な診断情報が得られることが多く、また、継時的なめまいの推移も把握できる。眼振図(ENG)検査は、開眼、暗所開眼、閉眼時および視性・前庭誘発刺激時の眼振や異常眼運動などを記録でき、また、定性的および定量的解析が可能なことから、めまい診療には必須の検査である。めまい診療では、眼振検査、ENG検査のほかに直立検査(Romberg、Mann、片足立ち)、歩行検査、継ぎ足歩行、足踏検査、あるいは重心動揺検査などがルーチン検査として行われるが、近年、前庭性頸筋誘発電位(VEMP)なども導入されている。

  • 文献概要を表示

小児神経疾患は疾患の特性を考慮し、緊急性を判断し、適切に対応する必要がある。「けいれん」では熱性けいれんがもっとも多い。熱性けいれんは単純型か複雑型かを判別し、複雑型の場合は背景に基礎疾患がある可能性が高く、専門医療機関での対応が必要である。けいれんの鑑別には発作時や発作前後の様子などを詳細に問診することが重要で、発作時ビデオ撮影も有用である。「意識障害」は開眼の有無、音や刺激への反応性、普段の様子との違いから判断する。基礎疾患の有無、意識障害発症の経過やそれまでの治療内容を聴取し、発症機転が不明な場合や保護者の受け答えが不自然な場合は虐待も念頭に置いて慎重に対応する。「頭痛」は一次性頭痛か感染症や頭痛外傷に伴う二次性頭痛がほとんどである。髄膜刺激徴候、けいれん、意識障害、局在性神経徴候、激烈な頭痛の場合は緊急性を要する二次性頭痛の可能性がある。発達はある一面のみで評価せずに、運動面、社会面、言語面を横断的かつ縦断的に評価して判断する。

診療controversy medical decision makingのために 肥満症に対する食事療法

まず炭水化物制限 宮崎 滋
  • 文献概要を表示

肥満症の治療には食事療法が有用である。エネルギー制限量が同じであるとき、どの栄養素の摂取量を減らすと、さらに体重減少が大きいかは、これまで多くの議論があった。とくに炭水化物と脂肪のいずれを制限すると効果がより大きいかという問題については、近年、2年未満であれば炭水化物の制限がより有効であるとの報告が出されている。脂肪摂取量が欧米人より少ない日本人では、炭水化物摂取制限が有用ではないかと思われる。

まず脂肪制限 千葉 政一 , 吉松 博信
  • 文献概要を表示

肥満症患者の食行動特性は非肥満者のそれと比べて大きく異なっており、その食行動特性の逸脱が肥満症の重要な原因でもある。肥満症治療では、この食行動特性の逸脱を「グラフ化体重日記」などの行動療法を用いて修正する。事実・大幅な減量に成功した患者では、食事摂取様式の大幅な変容が観察される。具体的には、高脂肪食摂取の減少と高食物繊維食摂取の増加であり、このような食事摂取状況の変容が、一回食事摂取重量(g)を維持しながら一回食事摂取熱量(kcal)のみを抑制し、結果的に肥満症患者を大幅な体重減少に導く。以上より、肥満症に対する食事療法として、まず高脂肪食の摂取の減少を治療目標とすることは有用である。

  • 文献概要を表示

31歳女。患者は2ヵ月前から7.5kgの体重減少があったが放置していた。今回、突然腹痛および悪心・嘔吐が出現し、意識障害も出現して救急受診となった。所見では血糖高値、尿中ケトン体強陽性、著明なアシドーシスを認め、糖尿病性ケトアシドーシスと診断された。一方、グルカゴン1mg負荷試験では血清CPRの反応が消失しており、尿中CPR排泄も著減していたことからインスリン依存性の二次糖尿病と考えられた。また、肝線維化、心機能障害、下垂体前葉機能低下症、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を伴っており、腹部CTでは肝臓、膵臓、脾臓のCT値が正常より高く、鉄沈着が疑われた。尚、肝生検では肝臓細胞内にはび漫性に褐色の色素沈着が認められ、ベルリンブルー染色で染色された。輸血や鉄剤投与歴がなく、両親が従兄弟婚であることにより、原発性ヘモクロマトーシスと診断され、糖尿病性ケトアシドーシスに対しては食事療法と強化インスリン療法を、原発性ヘモクロマトーシスに対しては瀉血療法を行い、患者は目下、改善傾向にある。

  • 文献概要を表示

54歳男。患者はアルコール性肝硬変の既往があり、また、当時の上部消化管内視鏡では胃体部小彎側に毛細血管拡張を認めるも、胃前庭部に異常はなかった。今回、意識障害を主訴とし、所見では著明な低色素性貧血、肝機能障害、腎機能障害をはじめ高アンモニア血症、低血糖、代謝性アシドーシスが認められた。そこで、輸血、ブドウ糖・分枝鎖アミノ酸製剤投与が開始されたところ、第4病日目には意識はほぼ清明となった。だが、第6病日目の上部消化管内視鏡では胃前庭部に毛細血管拡張の散在が認められ、diffuse antral vascular ectasia(DAVE)と診断された。幽門洞には凝血塊の付着がみられ、これを除去すると滲出性の出血が認められた。対処としてアルゴンプラズマ凝固法(APC)で止血を行なった結果、第14病日には瘢痕は潰瘍化したものの、第20病日から貧血が徐々に増悪し、DAVEからの再出血が確認された。以後、再度のAPCによる止血が行なわれ、貧血は増悪は認めず、患者は第50病日目に独歩退院となった。

  • 文献概要を表示

55歳男。患者は発熱、腹痛、腰痛を主訴とした。所見では白血球増多とCRP高値がみられ、腹部CTでは腎動脈分岐部から両側総腸骨動脈まで及ぶ腹部大動脈瘤が認められた。また、計6回の血液培養は陰性であった。抗生物質を投与したところ解熱となったが、炎症所見や腹痛、腰痛は持続した。そのため、第13病日目に腰椎体炎を疑いMRIが施行され、大動脈瘤径は著明に拡大しており、厚い壁在血栓層、固有の瘤壁、外膜の三層を呈していた。一方、瘤の辺縁は明瞭で感染性動脈瘤の所見ではなかった。中心静脈栄養管理を行なった結果、第69病日目に炎症は改善し、以後、第82病日目にYグラフト置換術が施行された。切除組織所見では動脈壁全体に散在する出血巣やその周囲にリンパ球の集積を伴う炎症性細胞浸潤や線維化が認められたが、明らかな菌体や菌糸は認めず、手術時肉眼所見、病理所見等により本症例は最終的に炎症性腹部大動脈瘤(IAAA)と診断された。尚、目下は経過良好である。

  • 文献概要を表示

18歳女。患者は低身長を契機に、1歳時に染色体検査でTurner症候群(45,X)と診断され、無月経や外反肘、後頭部毛髪線低位等を伴っていた。今回、下腹部痛と発熱を主訴とし、検査所見では鉄欠乏性貧血、CRP高値、低アルブミン血症、血小板数増多が認められた。一方、腹部CTでは下行結腸周囲に脂肪織濃度の上昇が認められ、大腸内視鏡では横行結腸、下行結腸に縦走潰瘍、敷石像、浮腫がみられ、S状結腸に易出血性の潰瘍が散在していた。以上より、本症例は大腸型のCrohn病と診断され、治療として中心静脈栄養を行い、あわせてmesalazine投与を開始したが、高熱が出現し、内服を中止した。その後、症状は改善傾向にあったものの、泥状便と間欠的微熱は持続したため、第27病日目からazathioprineの内服を開始し、第29病日目にinfliximabを投与したところ、症状は速やかに改善した。以後、退院となってからはinfliximab維持投与を行い、目下は寛解を維持している。尚、Turner症候群とCrohn病の併発は検索した限り5例の報告を認めるのみであった。

  • 文献概要を表示

症例1(74歳男性)。腹痛、食欲低下を主訴とした。症例2(45歳男性)。左側腹部痛を主訴とした。両症例とも明らかなホルモン機能性は認めなかったが、MRI T1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号の造影効果を呈したことから褐色細胞腫が否定できなかった。また、症例1では副腎腫瘍か副腎外腫瘍かの局在診断が困難であった。そこで、手術を施行したところ、術後の病理診断ではいずれも良性の後腹膜神経鞘腫であった。

  • 文献概要を表示

70歳女。患者は動作緩慢と歩行障害でパーキンソン病と診断された。抗パーキンソン病薬に対する反応は良好で、心臓への123I-MIBG集積も低下していた。しかし、その後、1回の転倒で寝たきりとなり、4日経過しても腰痛が改善せず、起立不可能となった。そして、入院翌日の早朝、喉頭での喘鳴が著明となり、SpO2も93%のため酸素投与が開始された。だが、呼吸状態は悪化に伴い意識レベルは低下し、SpO2も更に低下した。そこで、喉頭ファイバースコープを施行したところ、両側声帯外転麻痺を指摘され、気管内挿管が施行された。症状は急速に改善し、意識レベルも回復したことで第8病日目には気管切開が施行され、続いて第17病日目の検査では声帯の動きに軽度の改善を認めた。しかし、両側声帯外転麻痺は繰り返され、突然の呼吸停止、意識レベルの低下、CO2ナルコーシスを認める等をして患者は人工呼吸器装着となった。以後、呼吸器離脱は困難となったものの、全身状態は安定し転院となった。

基本情報

24329452.103.05.cover.jpg
臨床雑誌内科
103巻5号 (2009年5月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

文献閲覧数ランキング(
7月27日~8月2日
)