発行日 2009年5月1日
Published Date 2009/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2009234172
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55歳男。患者は発熱、腹痛、腰痛を主訴とした。所見では白血球増多とCRP高値がみられ、腹部CTでは腎動脈分岐部から両側総腸骨動脈まで及ぶ腹部大動脈瘤が認められた。また、計6回の血液培養は陰性であった。抗生物質を投与したところ解熱となったが、炎症所見や腹痛、腰痛は持続した。そのため、第13病日目に腰椎体炎を疑いMRIが施行され、大動脈瘤径は著明に拡大しており、厚い壁在血栓層、固有の瘤壁、外膜の三層を呈していた。一方、瘤の辺縁は明瞭で感染性動脈瘤の所見ではなかった。中心静脈栄養管理を行なった結果、第69病日目に炎症は改善し、以後、第82病日目にYグラフト置換術が施行された。切除組織所見では動脈壁全体に散在する出血巣やその周囲にリンパ球の集積を伴う炎症性細胞浸潤や線維化が認められたが、明らかな菌体や菌糸は認めず、手術時肉眼所見、病理所見等により本症例は最終的に炎症性腹部大動脈瘤(IAAA)と診断された。尚、目下は経過良好である。
©Nankodo Co., Ltd., 2009