Cancer Board Square 4巻2号 (2018年7月)

特集1 皮膚科専門医が教える! がん治療に伴う“危険な”皮膚障害の診かたと考えかた

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がんの治療中には皮膚もさまざまな表情を見せます。

そのなかでも見逃してはいけない重症薬疹やそれに準じる皮膚障害には注意が必要です。

とはいえ、皮膚障害の鑑別は専門の皮膚科医でも難しい……。

また皮膚障害を認めたとしても、薬物療法を続けていいのか? それとも中断すべきか?

その判断は現場の治療医が苦労させられる問題です。

「臨床で注意すべき“危険な”皮膚障害の診かたと考えかた」を皮膚科専門医がレクチャー。

これであなたも皮膚障害の困りごとから解放されます!

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1 皮膚科専門医が教える危険な皮疹の見分けかた

はじめに

 担がん患者には、抗がん剤治療、その支持療法、持病に対する治療、免疫不全、栄養不良などの皮疹の発症に関連する要因が多数存在する。したがって、なんらかの皮膚病変が出現した際に、薬剤性か薬剤以外の原因によるものなのか? 薬剤性ならばどの薬剤が原因なのか? 薬剤投与を中止すべきか? 中止後に抗がん剤治療の再開(再投与)はできるのか? などについて悩むことになる。

 そこで、本稿ではまずは、抗がん剤治療を受けている患者になんらかの皮疹が出現した場合に、原因に関わらず(原因がわからない場合も少なくないので)、注意すべき(皮膚科医へのコンサルトが望ましい)皮疹の性状について解説する。

特集2 上手な予測と現場ですぐできる予防策で快適な治療を実現しよう 先回り式抗がん薬副作用対策トリビア

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誰のための、何のための副作用対策なのか—。

ある人は言いました、「抗がん薬治療は副作用対策が9割」。

辛い抗がん薬治療をそうでないものにする方策は、新薬の開発だけではありません。

副作用対策は、世界中でユニークな研究が数多く行なわれ、エビデンスや研究結果が発表されています。

遂行中の治療のことを深く考え、時に原理に戻り、目の前の手持ちの武器の中でできることを突き詰める。

そんな風に積み重ねられてきた根拠ある副作用対策を実践することで、多くの人がハッピーになれるかもしれません。

今日から始める副作用対策の特集です。

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はじめに

 手術技量が治療成績や合併症発症に影響することは、一般的にも広く認識されている。一方で、抗がん薬治療においても専門的知識や技量が治療成績や副作用発症に影響することは、それほど認識されていない。本稿では、同じ治療レジメン・用量を選択しながらもその有効性や安全性を最大限に高めるポイントについて概説する。

症状別副作用対策

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ラパチニブは朝食前に内服し下痢・皮疹を予防

 抗HER2薬ラパチニブ(タイケルブ®)は乳がん治療において広く使用されているが、しばしばその副作用が問題となる。下痢・皮疹・肝毒性の頻度が高く、患者のQOLを著しく損なうのみならず、有効な治療の減量や中止を招くことも多い。なかでも下痢は60〜70%の頻度で出現し、Grade 3(Table1)以上の重篤な下痢になることもしばしばある1

 乳がん術前療法におけるラパチニブ併用の有効性を検討した第Ⅲ相試験においては、30%を超える症例で計画通りの治療を行なうことができなかったと報告されており、その大部分は下痢をはじめとする副作用が原因であった2。不十分な副作用コントロールが治療の有効性を損なっているのは明らかである。

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B型肝炎ウイルスの再活性化対策

 B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus;HBV)の再活性化は、抗がん薬治療後の合併症として、一部の症例においては劇症肝炎にいたり、致死的な経過をたどることが報告されている。しかし、あらかじめHBV再活性化リスクグループを同定し、そのリスクに応じた対策を立てることで“予防可能”であることが検証されてきた。

 日本肝臓学会のB型肝炎診療ガイドライン1に従い、スクリーニング検査としてのHBs抗原、HBc抗体、HBs抗体およびHBV DNA定量を実施し、その結果に基づいてリスクグループを同定することが、HBV再活性化対策として最も重要なステップである(Fig.1)。

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転移性骨腫瘍に対する放射線療法とその有害事象

 転移性骨腫瘍(骨転移)に対する放射線療法は疼痛緩和や身体機能保持に有効であり、患者のQOL維持・改善に重要な役割を果たしている。本稿では骨転移に対する放射線療法とその有害事象の予防対策を含めて概説し、そのなかでも特に放射線療法では気を付けたい「ペインフレア」の予防対策について解説する。

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乳がん患者の脱毛予防のために

 化学療法は乳がん治療のなかで大きなウエイトを占めている。特に治癒率向上目的に行なわれる術前・術後化学療法では、アンスラサイクリン系および/あるいはタキサン系の化学療法剤使用は不可欠と考えられている。

 しかし、いずれにおいても多くの有害事象が起こり、それもきつく、その施行には注意と種々の工夫が必要である。そのなかでも必発ではあるが避けることができないと考えられてきたものに「高度の脱毛」がある。脱毛は、有害事象のなかで患者にとって最もつらいもののひとつにも挙げられている。

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冷却療法で予防する末梢神経障害

weeklyパクリタキセル投与患者への臨床試験

 著者らはweeklyパクリタキセル療法時に手足を冷却することで、化学療法起因性末梢神経障害(chemotherapy induced peripheral neuropathy;CIPN)の主観的・客観的症状が予防可能であることを示した1。CIPNを予防することで、がん治療中および治療後の生活の質の低下の抑制や、CIPNを理由とする化学療法の延期や中断を防ぐことができると期待される。

 本研究の対象者は、weeklyパクリタキセル療法(80mg/m2、1時間)を累積960mg/m2以上施行予定の成人患者のうち文書によるインフォームドコンセントが得られた者とした。ただし、パクリタキセル投与前に有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events;CTCAE)v4.0においてGrade 2以上の神経障害または浮腫が発現している患者、レイノー症状・末梢動脈虚血症状・hand-foot syndromeなど冷却が不適当である患者は除外した。

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タキサン系薬剤による末梢神経障害を抑制する圧迫療法

 我々は、手術手袋を90分装着するだけでタキサン系薬剤による末梢神経障害の発現を非装着時と比較して28%に抑制する方法を考案した。本圧迫療法は、手術手袋の圧迫により指先の微小血流が減少する作用を利用して、末梢神経への抗がん薬の曝露を抑制する新しい予防方法である。手術手袋さえあれば、どの施設でも簡単に実践できる末梢神経障害予防方法と考える。その原理と臨床試験の結果に基づく予防効果、今後の課題について述べたい。

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口腔粘膜炎の予防のための化学療法前の口腔ケアは必要か?

「口腔粘膜炎(口内炎)の予防のためだけに化学療法前の口腔ケアは必要か?」という問いに対して現状では“必要である”と言い切るほどのエビデンスはない。しかし、「化学療法前に口腔ケアは必要か?」という問いに対しては、“口腔内に起こるさまざまなトラブル、また口腔内のトラブルから派生する全身のトラブルを予防するために口腔ケアは必要である”と言える。

 口腔内のトラブルが多く発生する、頭頸部がんへの化学放射線療法や造血幹細胞移植では事前に口腔ケアをルーティンとして行なっている施設が多い。一方で、その他の外来がん化学療法においては、歯科・口腔外科がその施設に置かれているか、もしくは歯科・口腔外科や抗がん剤を処方する医師にがん患者の口腔ケアについて理解があるかどうか、に口腔ケアの存在は大きく左右されているのが現状である。

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分子標的薬による副作用には副作用対策のシステム作りが重要!

 分子標的薬の登場以降、がん患者の予後は改善してきた。しかし、従来の殺細胞薬では認めなかった高血圧・手足症候群・甲状腺機能障害などの独特な副作用を認めるようになっている。これら分子標的薬には経口抗がん薬も多く含まれるため、患者の副作用に対する理解と在宅における自己管理が非常に重要になってくる。

 当院では、経口抗がん薬の分子標的薬のひとつであるソラフェニブ(ネクサバール®)において、チーム医療を行なうことで副作用を適切にマネジメントし、治療効果を最大限に発揮させている。医師や薬剤師、看護師、治験コーディーネーター、ソーシャルワーカーなどが協働し、肝細胞がんを対象として立ち上げた「チームネクサバール」である。ソラフェニブの副作用対策や患者教育、サポート体制の統一をチームとして行なうことで、有害事象による治療中止を減らしている。肝細胞がんに対して行なわれた第Ⅲ相試験(SHARP試験1、Asia Pacific試験2)や特定使用成績調査3では、有害事象による中止割合が19.5〜47.5%であるのに対して、当院では8.8%と非常に低い頻度(Table1)1〜3となっており、チーム医療の有用性・重要性を示す結果となっている。

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CINVのコントロールはがん治療医の腕の見せどころ

「がん化学療法による悪心・嘔吐」(chemotherapy induced nausea and vomiting;CINV)は患者にとって非常に大きな苦痛です。近年は身体的苦痛よりも社会的な苦痛の重要性が認識されつつあるとはいうものの、悪心・嘔吐をはじめとする身体的苦痛を訴えている患者は依然として少なくはなく1、これらに対する支持療法が患者のQOLや治療経過を大きく左右することは言うまでもありません。

 一方で近年の制吐療法の発展はめざましく、CINVというがん患者に多大な苦痛を強いてきた副作用も支持療法を上手く使うことによって大きく軽減できる時代になってきています。言い方を変えると、CINVのコントロールはがん治療医の腕の見せどころでもあるということです。

日常生活で困ること

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インフルエンザの流行時期

 インフルエンザは毎年12月〜3月にかけて流行する。2017〜2018年シーズンも多くのインフルエンザ罹患者を経験し、2018年3月2日の時点で推定患者数は1,932万人と過去10年で最多であった1。今シーズンは例年より早く流行が始まったこと、B型インフルエンザが例年より多く半数を占めたことが特徴であった(Fig.1)2。また、ワクチン製造の遅れにより、接種が遅れたことも問題となった。

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「適度な運動は健康によい」ことが科学的に証明されてきた

「適度な運動が健康によい」ことに関して世界中でエビデンスが蓄積されてきている。安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する全ての営みを「身体活動(physical activity)」、身体活動のうち、体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施する一定の活動を「運動」として、運動処方によらない日常的な身体活動の推奨に特に注目が集まっている。

 わが国で行なわれた79,771人を対象とした調査においても、仕事や運動などにより身体活動量が高くなるほど、がん全体の発症リスクや死亡全体のリスクが低くなることが示されている1。また、1日1時間程度の中等度の身体活動で、長い坐位時間に起因する死亡リスクが減少することが示されており、少しでも体を動かすことの重要性が注目されてきている2

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正しい知識に基づいたマネジメント

 白血球減少、特に好中球減少は、がん化学療法に最もよくみられる副作用のひとつである。時に重篤な発熱性好中球減少をきたし、その対応に追われることになった経験は、がん治療に携わる方であれば、誰にでもあることだろう。好中球減少とそれに伴う感染症は、患者の体調を著しく損ねてしまう可能性があり、非常に怖い副作用であることに異論はないだろう。その一方で、好中球減少を恐れ過ぎるあまり、がん化学療法を減量して行ない、本来の期待できる効果を下げてしまうことや、患者に不安を募らせ日常生活を制限させてしまうことも、また望ましくない。好中球減少や感染に対して正しい知識を取り入れ、正しく好中球減少や感染をマネジメントすることが必要である。

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吃逆に対する副腎皮質ステロイド変更の理論とエビデンス

 Goら1は、デキサメタゾン誘発性の吃逆(dexamethasone-induced hiccup;DIH)に対する副腎皮質ステロイド変更の有効性について、2017年の「The Oncologist」に報告している。

 まずはこの研究から紹介し、吃逆対応のエビデンスについて考えてみたい。

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搔痒感を防ぐためにできること

 搔痒感の治療としてさまざまな薬物療法、非薬物療法が試みられている。そのなかでも搔痒感の予防として重要になってくるのは非薬物療法である。

 非薬物療法の重要なポイントは次の3点である。

 A.スキンケア⇒皮膚の乾燥を防ぐ

 B.身体を温めすぎない、刺激しない⇒搔痒感の増悪因子を避ける

 C.ストレスをためない⇒搔痒感の感受性を下げる

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症例

50歳代、男性。

連載 患者さんに「寄り添って」話を聴くってどういうこと?[1]【新連載】

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連載を始めるにあたって

「寄り添う」という言葉は、臨床現場でよく使われる用語だと思う。自分もよく使っていた。きっと医療者にとって「そうありたい」というイメージに合致する言葉なのだと想像するが、あらためて「『寄り添って』話を聴くってどういうこと?」と尋ねられると、説明するための言葉に詰まってしまう。そこで、「寄り添う」という言葉の語源をいろいろと調べてみたり、詳しそうな人たちに尋ねてみたりしたのだが、今のところその正体はわからず、それらしい定義も見当たらない。どうやら、この「寄り添う」ということは簡単には説明できないようだ。

 だが、私自身は「寄り添いたい」という漠然としたイメージを心の中にもちながら臨床で苦心するなかで、支持的精神療法1の方法論が、私が患者さんに「寄り添う」ためのいくつかの方向性を示してくれたように感じている。そこで、この方法論を援用しながら、「寄り添う」ことについて考えることは、私と同じように日々の臨床で苦心している方々にとってなにか役に立つのではないかと思い、本連載を開始することになった。

 なお、本文中では私、清水が困っている医療者のコンサルタントとして登場するが、解説が独りよがりになってしまわないかとの懸念があった。そこで日ごろからアドバイスをいただいている白波瀬丈一郎先生からテーマの「補助線」となるコメントを加えていただいた。

連載 國頭ゼミの課外授業 わたしたちは、こう考える[2]

事前指示書と終末期医療 國頭 英夫
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はじめに

國頭 ご存じの通り、私は日赤看護大学で1年生を対象にコミュニケーション論のゼミを行なっています。これは『死にゆく患者と、どう話すか』(医学書院)に講義録としてまとめ、2016年10月に出版しました。このシリーズは、その講義録のスピンオフ企画と思ってください。

 今回のテーマは、がん医療では避けられない終末期についてです。『死にゆく患者と、どう話すか』でも「DNR」の項目はかなりのスペースを割いて議論しています。ちなみにDNRとは“Do not resuscitate”、つまり心肺停止などの状況になったときは蘇生努力をしないでくれ、という意思表示ですね。「しないでくれ」もなにも、がんの末期なんかで、そもそも蘇生できないもしくは適応がない場合は、「DNAR」(“Do not attempt to resuscitate”)として別扱いにすることもあります。

 とはいえ、「その場」になってみると家族も慌てますし、医療者もつい手が先に出て心肺蘇生をやってしまって、患者の意に反するとか、かえって悲惨な結果を招く、ということも多いのが現状です。これを防ぐためにあらかじめ、いざというときにはこうなったらこうしてもらおう、という計画を立て、それを書面に残すべきだ、という考え方が有力になっています。これをアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)といい、残す書類が事前指示書です。

 レイとチカには、それこそ「あらかじめ」この事前指示書およびACPについて勉強してもらっています。私からは二人に日本集中治療医学会倫理委員会の委員会報告(日集中医誌2017;24:216-226)を渡しました。

連載 臨床医のためのワンテーマ腫瘍病理[9]

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 先日届いたとある図鑑を眺めています。載っているのは、恐竜? 星座? いえいえ、載っているのはなんとウイルスです。ヒトに感染し病気を引き起こすもの、ヒト以外の動物に感染するもの、更には植物に感染するものまで、揃いも揃った101種類のウイルスの透過型電子顕微鏡画像。マニアックで気に入ったので、Twitterでも紹介してみました。早速フォロワーの一人から、このような感想が寄せられました。

「ウイルスの色合いがきれいですねえ」。

連載 これからの免疫療法の話をしよう[8]

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はじめに

 前回は、2017年9月に開催されました欧州臨床腫瘍学会年次総会(ESMO2017)から、注目演題の概説をしました。今回は、免疫チェックポイント阻害薬におけるバイオマーカー研究の現況について解説させていただきます。過去の連載でも取り上げさせていただきましたが、免疫チェックポイント阻害薬は、従来の抗がん剤治療とは異なり、一部の患者に限られるものの何年にもわたって治療効果が長期間持続する例が報告されています。

 しかしながら、免疫チェックポイント阻害薬の単剤投与では承認されている固形がんの約2〜4割の患者さんに奏効を認めるに過ぎません。免疫チェックポイント阻害薬を投与するにあたり、治療効果が期待できる適切な患者の選択、すなわち個別化医療の推進は重要な課題です。そのため、現在世界中で治療選択の指標となるバイオマーカーの探索研究が盛んに行なわれています。

 また、今回のTopicでは、2018年4月に開催されました米国癌学会総会(AACR2018)でその結果が発表され注目を集めた「進行期の非小細胞肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬と化学療法との併用療法の試験の結果」と今後の展望について述べさせていただきます。

連載 Medical Oncology 2.0[4]

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「最適解」という考え方—日常診療に正解はあるのか?

 前回までは、「問題を設定する」ことに焦点をあててきました。今回からは「問題を解く」に取り組んでいきます。そのなかで、私たちが得るべき「解」というものの性質を考えながら、患者さんにとっての「よい」解決策を得るための頭の整理をしていきましょう。

 私たちは、学校でのテストや受験などで「正解」が設定されている問題に慣れてきました。一方で社会に出ると、『全てのことに「正解」があると思うな』とも教えられます。もし、試験問題のように医療にも「正解」と「不正解」があるものと考える立場であれば、自分が「正解」と考える以外の治療を「不正解」として扱うことになります(治療方針を検討するカンファレンスが紛糾し、他の医師に心ない思いを抱く原因はここにあります)。

連載 ID consult—がん患者の感染症診療[8]【最終回】

がん患者の真菌感染症 荒岡 秀樹
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はじめに

 真菌感染症は細菌感染症と比較して日常臨床で遭遇する頻度が低い。その診断、治療の一連の流れを経験する機会が多くないため、「なんとなく真菌感染症」という漠然としたくくりで考えられていることをしばしば目にする。その背景には、培養検査の感度の低さ、血清診断の限界、薬剤感受性試験とその臨床効果の相関の不確からしさなど、細菌と比べても未だ解決すべき問題が多く、そもそも基礎疾患が重篤な患者に生じた日和見感染症の治療にあたる臨床医を不安に陥れる要素が多いこともあるだろう。

 近年、PCR法や質量分析法(matrix assisted laser desorption/ionization, time of flight, mass spectrometry;MALDI-TOF MS)といった診断法の進歩により、正確な真菌の同定がなされるようになってきた。特にMALDI-TOF MSは平成30年度診療報酬改定で「質量分析装置加算(40点)」が新設されたため、今後更に臨床現場に導入する医療機関は増加するだろう。これまでは生化学的性状や診断キットでの菌種同定にとどまっていたものが、より詳細な菌種同定が可能になると思われる。また、そのような状況下でCandida aurisやCryptococcus gattiiなどの新興感染症もトピックスになっている。

 一方、がん患者の診療に携わる臨床医にとって、想定すべき感染症の原因真菌のリストはそれほど多くない。真菌の固有名詞を想起し、感染臓器を推定、適切な検査を施行し、治療を開始する一連の流れを把握することがポイントである。

 誌面の関係で、本稿ではがん患者の真菌感染症の全てを網羅することはできないが、がん患者の診療にあたる臨床医が理解しておきたい真菌感染症の全体像をはじめに提示する。そのうえで、いくつかの最新のトピックスに触れてみたい。詳細な治療法などは成書やガイドラインを参照することをお勧めする。IDSA(Infectious Diseases Society of America)や欧州からの各種ガイドラインが参照可能であり、そして日本からもガイドラインが刊行されている14。本稿の目的は、読んでいただいた方に、真菌感染症への興味をもっていただくことである。

連載 目から鱗のがん薬物療法—薬学的視点からみたケーススタディ[9]

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化学療法誘発性悪心・嘔吐と制吐療法の臨床試験

・化学療法誘発性悪心・嘔吐(chemotherapy induced nausea and vomiting;CINV)に対する制吐薬の使用においては、国内外からガイドライン14が公表されています。

・『制吐薬適正使用ガイドライン 第2版』(2015年10月)4では、高度催吐性リスクの化学療法(high emetic risk chemotherapy;HEC)を行なう際に、予防的に5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬のアプレピタント(APR)、デキサメタゾン(DEX)を投与する3剤併用制吐療法を推奨しています。

連載 レジメンマネジメントの流儀[9]【最終回】

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はじめに

 前回は、レイアウトの見本として連載第2回でご紹介した、浜松医療センターのレジメンを分析した。共用レジメンでありながら、記載内容が統一化されている点や、注意点が表となっている点で使いやすく、リスク軽減に役立つ仕様となっていた。さて、今回は連載最終回として、連載第5回でご紹介した、私の所属先である練馬光が丘病院のレジメンを再度取り上げる。連載とともに考察してきたレジメンマネジメントを用いて、変更を加えた実際をおみせしたい。

連載 漢方のすゝめ—支持療法における処方の考え方[4]

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はじめに

 本連載では、支持療法における漢方薬の処方についてこれまでに3回、科学的エビデンスに基づいた漢方薬の重要性ががん政策の観点から叫ばれるようになったこと、そして基礎および臨床研究に支えられた漢方薬の具体例として半夏瀉心湯、六君子湯を紹介した。今回は、漢方薬のなかで最も多く処方され、臨床効果および科学的エビデンスレベルも最も高い大建中湯の研究の一端を紹介する。

 なお、大建中湯は漢方薬のなかで唯一、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)で臨床治験薬として認可されている。2009年より米国において種々の消化器疾患の治験薬として臨床試験が進められてきた経緯があり、2018年からは術後イレウス(postoperative ileus;POI)に対する改善候補薬として本格的に米国で開発が進められる予定である。

連載 これからのがんサポート[9]

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地域包括ケアシステムのなかでのがん医療

「地域包括ケア」という言葉が医療現場で聞かれるようになって5年ほど経過しました。地域ケアシステムなどと言われることもありますが、2012年に厚生労働省から発表された「地域包括ケアシステム」がその正式名称です。医療・介護・福祉を統合的に地域(日常生活圏内)で完結させようとするしくみのことを指します。

 法制度的には、「医療介護総合確保推進法」(2014年)が現場に大きく影響しています。この法律により、各都道府県は2025年までに「医療、介護、住まい、予防、生活支援サービスが身近な地域で包括的に確保される体制を構築する」(第46回社会保障審議会介護保険部会 資料3 「地域包括ケアシステムの構築に向けて」、平成25年8月28日より引用)ことになったのです。今回は、この「地域包括ケアとがん」について、普段はあまり考えることが少ないマクロな視点から皆さんと一緒に考えていきます。

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2017年11月5日(日)〜8日(水)、英国・リバプールで開催されたNCRIフォーラム〔The National Cancer Research Institute Cancer Conference 2017(http://conference.ncri.org.uk/)〕に参加してきました。フォーラムには、1,500人以上の英国を拠点に活動する研究基金(Fundraising Agency)関係者、医療者、患者などが参加をしており、フォーラムで発表される研究は、それらの団体からの資金提供を受けたものになります。研究テーマは、ゲノム関連、創薬、緩和ケア、医療系機器、心理・社会学、疫学、政策提言など多岐にわたります。

連載 フクシマ日記—A diary from Fukushima[9]

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 今から約10年前の2007年、石原慎太郎氏が東京都知事であった頃に開催が実現した東京マラソン。これを皮切りに市民マラソンの文化が日本にも根付いてきたと言われています。それまでただぼーっとマラソン中継をテレビで見ていた頃は、まさか42.195kmを私の周りにいる“普通の人”が走るなんて想像もできなかったですし、更にまさか自分がそうなるとは思ってもいませんでした。

 始めるきっかけは人それぞれですが、マラソンの趣味としての利点は、比較的簡単に始められる、コストは下げようと思えばシューズ代だけ、場所もほとんど選ばず、更によいことには、周囲からうらやましがられたりねたまれることもありません。例えば、毎週末にひとりでゴルフに出掛けていると、家族や周囲からの批判も高まるかと思いますが、なぜかマラソンは“かわいそうな人”と思われるだけで済みます。しかも、その“かわいそうな人”が走っていると、見ず知らずの方から、「がんばれー」と声が掛かったり、食べ物や飲み物を恵んでくださることもあるという不思議さ。一体、このスポーツの本質はなんでしょうか?

連載 人間はいつから病気になったのか—こころとからだの思想史[9]

未生の生 橋本 一径
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臓器移植とカニバリズム

 脳死患者が痛みを感じている可能性は否定できないから、臓器摘出には慎重になるべきである。前回はベルギーの哲学者ジャン=ノエル・ミサのこのような議論を参照しながら、その議論と、「ヴィーガン」と呼ばれる完全菜食主義者たちの主張との近似性を指摘した。痛みを感じる者の臓器を摘出してはいけないという主張と、痛みを感じる動物を食べてはいけないとする主張には、似たところがありはしないだろうか。他人の体の一部を自らのうちに取り込む臓器移植は、ある意味で他人の臓器を「食べる」ことである。臓器移植とは一種のカニバリズムなのだとするのは言い過ぎであろうか。

 前回のこの欄で、このような臓器移植を一種の人肉食とみなす議論が、これまで皆無であったかのように述べたのは、いささか筆を走らせ過ぎたようだ。確かに数は少ないものの、臓器移植をめぐる議論においてカニバリズムが引き合いに出されたことは、これまでにもなかったわけではないからである。例えばアメリカの大統領生命倫理評議会(Presdent's Council on Bioethics)議長を務めた医師・哲学者で、著書『飢えたる魂』(法政大学出版局、2002年)では食をめぐる哲学を展開させてもいるレオン・R・カスは、臓器移植が、「無菌の手術室や驚嘆すべきテクノロジーといった装いをひとたび取り除いてしまえば」、「単なる上品な形態のカニバリズム(simply a noble form of cannibalism)」にすぎないのだと述べる1

連載 Art of Oncology[9]

覧古考新 大坂 巌
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 私は緩和ケアを専門としているが、oncologyの進歩が日進月歩であることを少しは理解している。そして、緩和ケアもoncologyほどではないが確実な進歩を遂げている。ただ、緩和ケアの場合には薬剤や治療方法の画期的な進歩というよりは、考え方やケアの提供の仕方が変化しており、アップデートといったほうが的確かもしれない。また、最近はがん治療と同時に提供されることを目指してintegrationという言葉も用いられるようになってきた。

 がん治療も緩和ケアも多様化しつつある現在、今一度原点に立ち戻ってみることも必要ではないだろうか。本稿では、緩和ケアの原点を探ることで、よりよいがん治療のヒントになりそうなことを述べてみたい。

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目次

企画・執筆者紹介

次号予告

Editorial

基本情報

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Cancer Board Square
4巻2号 (2018年7月)
電子版ISSN:2189-6429 印刷版ISSN:2189-6410 医学書院

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